多くの部門が存在する大手企業では、どうしても部門ごとの“セクト主義”に陥りがちだ。しかし、企業のリスクマネジメント上、このセクト主義がいかに問題であるかは、これまで起きた企業不祥事が物語っている。
例えば、2008年のリーマンショックは、金融機関にはびこるセクト主義が組織横断的な情報共有を妨げたことにより、各金融機関がサブプライムローンの貸出金額の合計額を正確に把握できなかったことが原因の1つになったと言われる。また、2010年に英国の石油会社BPが起こしたメキシコ湾石油流出事故は、担当技術者はかなり前から掘削上の技術的問題点を把握していたにもかかわらず、これを安全管理責任者に報告していなかったことが大きな原因となり発生した。さらに最近は、アメリカの大手自動車メーカーであるGMが、点火スイッチの不具合によって走行中にエンジンが停止するという大規模なリコール問題を起こし、メディアを賑わせたばかりだ。本件でも、担当部署の一部の社員は点火スイッチの技術的欠陥に気付きながらも10年以上放置し、会社全体で情報共有がなされなかったことが、今回のリコールにつながったという。
これらはいずれも外国企業の例ではあるが、日本企業、特に巨大企業においては、効率化のために組織を細分化した結果、特定の部署で何か問題が発生しても会社全体での情報共有がなされずに大規模な事故や不祥事につながるということが十分に起こり得る。
では、経営陣としては、こうしたセクト主義を解消するためにはどうしたらよいのだろうか。実際、米国のフェイスブックや、紅茶のリプトンなど食品や洗剤など多数のブランドを抱える多国籍企業ユニリーバなどで見られるのが、・・・
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