我が国でコーポレートガバナンスに関する議論が本格化するきっかけとなったスチュワートシップ・コードの導入(2014年2月~、所管:金融庁)以来、はや5年が経過した。その間、コーポレートガバナンス・コードが導入(2016年6月~、所管:東証)されたほか、経済産業省から「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(通称:CGSガイドライン 2018年9月に公表された改訂版はこちら)、「価値協創のための統合的開⽰・対話ガイダンス- ESG・非財務情報と無形資産投資 -」(通称:価値協創ガイダンス)、昨年(2018年)6月1日からの改訂コーポレートガバナンス・コード施行時には金融庁から「投資家と企業の対話ガイドラン」と様々な文書が政府等から公表されている。こうした中、一部企業の間では“ガバナンス疲れ”と言われる現象も起きているようだ。
コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 : 経済産業省が昨年(2017年)3月にとりまとめた「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」のこと(通常、CGS ガイドライン)で、「企業価値向上を目的として企業が具体的に検討すべき事項や取り組むべき事項を示す実務的な指針」と位置付けられる。具体的には、「取締役会の在り方」「社外取締役の活用の在り方」「経営陣の指名・報酬の在り方」「経営陣のリーダーシップ強化の在り方」について、コーポレートガバナンス・コードの各原則を補完する形で、企業に具体的な検討の着眼点を示すものとなっている。2018年9月に改訂版が公表された。
先進的なガバナンス体制を導入する企業の取締役会は人数が絞り込まれ、その過半数を独立社外取締役としたうえで、主に経営戦略を策定したり、経営陣による執行をチェックしたりする機能を果たし、指名委員会は独立社外取締役が主導するといったケースが多い。また、取締役への報酬は業績連動型報酬や株式報酬が一般的となっている。その一方で、こうしたガバナンス体制の導入には至っていない上場企業も少なくないのが現状だ。このような企業の取締役会は社内取締役が多数派であり、平時の業務執行が議論の中心となる。また、指名委員会はCEOが主導し、独立社外取締役の役割はCEOの決定を「検証」するにとどまる。さらに、取締役への報酬は業績感応度が低く、金額も抑え気味だ。
一見すると、先進的なガバナンス体制を導入する企業の方が投資家のウケも良さそうに見えるが、実は必ずしもそうとは言い切れない。投資家が重視しているのは・・・
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