買収防衛策(ライツプラン*1、ポイズンピル*2)の導入を諮る株主総会議案に対して、機関投資家が議決権行使で反対票を投じるケースが目立っている。5月20日から6月20日に提出された臨時報告書によると、買収防衛策の導入議案は16個提出されており、そのうち時価総額が500億円以上の10社について賛成率を確認したところ、単純平均で73.7%にとどまっている。3月決算企業の株主総会は6月23~28日の週にもっとも多くの開催が予定されており、さらに賛成率の低い事例が多数出てくるものと予想される。
*1 買収防衛策の1つで、敵対的買収者が被買収企業の株式(議決権)の一定割合を取得した場合、一定条件の下で、既存の株主が時価より安い価格で新株を購入できる権利を、あらかじめ既存の株主に与えておく、もしくは与えることを定めておく手法。敵対的買収者の持株比率を低下させるとともに、(株数を増やすことで)買収者が保有する株式1株当たりの価値を低下させる、すなわち買収コストを引き上げることを狙いとする。
*2 「毒薬条項」と訳される、米国で主流の買収防衛策。日本ではライツプランと同義で使われている。
特に今年の株主総会シーズンでは、初めて買収防衛策の否決事例が出ている。過去には、株主総会開催日の直前に議案を撤回するという、いわば“実質否決”となった事例が2008年9月と2013年6月に1社ずつ存在する。しかし「反対多数により否決となった」旨が株主総会の場において報告された例は、2005年に日本で買収防衛策が導入されて以来、初めてのケースだと見られる。否決された会社は、来年の株主総会で買収防衛策を再提案することも検討中というが、株主構成における機関投資家の割合や同社のコーポレートガバナンス体制などが大きく変わらない限り、可決されることは極めて難しいと予想される。
では、なぜ多くの機関投資家は、日本企業の買収防衛策に反対するのだろうか。
日本企業でもっとも多く採用されている「事前警告型ライツプラン」は、(1)買収者に対して提案内容など詳細な情報を要求する、(2)社外有識者などによる独立委員会が買収提案を精査する、(3)独立委員会の勧告を踏まえて取締役会が対応を決定する、という流れを基本的な構造としている。(1)の情報に不備・不足がある場合や、(2)で買収提案が不適当なものと判断された場合など、“濫用的な買収行為”に相当すると認められれば、(3)において新株予約権の発行が決議されることになる。
問題は、日本企業のほとんどにおいて、・・・
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