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ノンコア事業の売却における経営陣の視点

「VAIO」というと未だに「ソニーのパソコン」と思っている人も少なくないだろう。確かに現在もソニーの公式オンラインストアでも販売されているが、今や「VAIO株式会社」というソニーから売却されて設立(カーブアウト)された企業の商品である。2014年に投資ファンドに売却する形でカーブアウトされてから約5年、現在の株主構成は投資ファンド(VJホールディングス2株式会社 )93.6%、ソニー4.9%、経営陣 1.5%となっている。過去3期(2016年5月期~2018年5月期)の業績を見ると、売上は198億7百万円⇒188億6千9百21万円⇒214億8千8百万円、当期純利益は6千4百万円⇒1億8千5百万円⇒4億8千2百万円で推移している。VAIO事業がソニーに属していた頃と比べれば、従業員数は1/5以下に、販売台数は1/20以下に減少したとはいえ、黒字転換を果たしたことと、最近のソニーの好調な業績を踏まえれば、本カーブアウトは成功だったとの見方はできるだろう。

カーブアウト : 企業が事業の一部を新たな企業として独立させること。「カーブアウト(Carve out)」とは「切り出す」という意味。

コーポレートガバナンス・コードが、「事業ポートフォリオ」の見直しについて、具体的に何を実行するのか、株主に分かりやすい言葉・論理で明確に説明するよう経営陣に求めているように(原則5-2.経営戦略や経営計画の策定・公表)、今後日本企業においても、事業ポートフォリオの見直しは益々重要な経営課題となっていくことは間違いない。その過程では、カーブアウトの事例も増加していくはずだ。かつて経営危機に直面した欧米のコングロマリット企業では、・・・

コングロマリット : コングロマリット(conglomerate)とは、異なる分野の事業を複数同時進行で営む企業(「複合企業」とも呼ばれる)のことを指す。原子力、航空機エンジン、医療機器、家電製品、金融事業などを行うGE(ゼネラル・エレクトリック)社は世界最大のコングロマリットとされる。また、それぞれ銀行、証券、保険などの業務を行う子会社を持株会社の傘下に持つ金融グループもコングロマリット(金融コングロマリット)の1つである。コングロマリットには、経営資源を複数の事業に分散して投下することでリスクを低減するというメリットがある一方で、好調な事業と不振な事業が共存する場合、不振事業に足を引っ張られる形で、好調な事業の業績等が当該企業の株価に十分反映されず、株価が割安(ディスカウント)になりかねないというデメリットがある。このデメリットを「コングロマリット・ディスカウント」という。

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