先月6月20日、会社法改正案が成立し、社外取締役1名の選任が実質義務化されたが(施行は平成27年4月1日の見込み)、日本のコーポレートガバナンス改革はようやく端緒についたに過ぎないと言える。グローバルでは、社外取締役が取締役会の大部分を占めるのが通常となっているからだ。
例えば米国では、約9割の企業で社外取締役が取締役会の過半数を占めており、社外取締役が取締役会に占める割合を平均すると7割を超える(ISS:Institutional Shareholder Services調べ)。このようなメンバー構成の取締役会では、経営トップの経営責任を厳しくチェックすることのは当然となっている。米国の最新事例を紹介しよう。
全世界で数百店舗を展開する米国の有名アパレルメーカーは2014年6月18日、取締役会が創業者兼CEOの解任を決めたと発表した。決定を不服とするCEOは株主総会の招集を試みるとともに、大株主であるヘッジファンドと組んでTOBを進めるなど、巻き返しを図っている。対する取締役会も、敵対的買収防衛策である「ポイズンピル*」の導入を決めるなど、事態は泥沼化している。
* 毒薬条項とも言われる。敵対的買収がされた場合、既存株主に時価より安く新株を発行して買収費用をかさ上げし、買収されることを抑止する手法。
同社は解任の理由を「調査中の不正行為」とし、具体的には明示していない。創業者兼CEOは物議をかもすような発言や行動で知られ、同社のいう「不正行為」にはセクシュアルハラスメントや会社資産の不正利用が含まれるとみられる。さらに同社は2010年から経営が悪化、株価も低迷している。現在、同社は2.5億ドルを超える純損失を抱え、この春先にも倒産の危機を回避するために保有株式の売却を検討しているとして話題になった。
今回の解任決定の発効には、CEOと同社間の契約に基づき30日間の“ホールド期間”が必要で、発効日は7月18日となる。同氏はこのホールド期間を利用して巻き返しを図っており、最初の1週間で、同氏に協力する大株主のヘッジファンドが17%の株式を買い増した結果、CEOの持分と合わせた持株比率は44%まで上がっている。2週間目には、同じファンドがさらに10%の株式を取得するとともに、ファンドが保有する株式を同氏に取得させるため同氏に貸付金を付与する計画が、証券取引所に提出された書類からも明らかになった。この計画が実現すれば、同氏の持株は同社の過半数に達し経営権を得ることから、「解任決定」を覆せることになる。
一方、同社取締役会は、上記書類提出の2日前にポイズンピルを導入し、同氏の持株比率が過半数に到達しないよう、敵対的買収の防衛を図っている。
このほか、CEOは解任決定後、自らを支持する取締役を会社に送り込むため株主総会の招集を試みたものの、・・・
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