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事業再編に関する実務指針案公表 子会社上場を「切出し」の重要手法と位置付け

既報のとおり、経済産業省に設置された「事業再編研究会」(以下、研究会)は、本年(2020年)6月末を目途に、ノンコア事業の切り出し促進を目的とした「事業再編に関する実務指針(仮称)」(以下、指針)をとりまとめる方向だが(2020年2月4日のニュース『経産省、CGSガイドライン等と“並列”の「事業再編に関する実務指針」取りまとめへ』、2020年3月12日のニュース「投資家が事業セグメントの括り方を問題視、企業は再考迫られる可能性も」参照)、2020年4月20日に開催された同研究会の第5回会合で同指針の案(以下、指針案)が示された。指針の通称(略称)は「事業再編ガイドライン」となる方向。

ノンコア事業 : 必ずしも事業そのものの収益力や成長性が低いというわけではないが、自社グループにとって競争優位性を有する分野でない等の理由で、自社グループ内にあっては十分なリソースが投入されにくいために、相対的に成長可能性が低くなっている事業のこと

指針案は74ページとかなりの量におよぶ。新型コロナウイルス感染症の蔓延や政府の緊急事態宣言による経済活動停止の影響を受け足下の資金繰りを懸念する企業からは、「それどころではない」との声も聞こえてきそうだが、5つの章(1.はじめに、 2.経営陣における課題と対応の方向性、3.取締役会・社外取締役における課題と対応の方向性、4.投資家との対話や情報開示における課題と対応の方向性、5.実行段階における実務上の工夫)に分かれる指針案は、新型コロナウイルス感染症という緊急事態の中で本指針を出す意義を説明するところから始まっている。

具体的には、「『有事』において、対処療法に終始するか、中長期の視点から、このようなグローバル規模のショックに耐えうる強靱な企業体となるための事業構造改革(トランスフォーメーション)まで踏み込んでいけるかが、その後の成否を分けるということは、歴史の教訓である」とし、経営者に事業構造改革の必要性を訴えている。また、かつてない規模でのテレワーク等の“強烈な体験”を経て、社会全体のデジタルシフトが一気に進み、「ポストコロナ」は「コロナ前」とは異なる新たな時代となる可能性もあるとしたうえで、経営者には、足下の危機をいかに乗り切るかということと同時に、「ポストコロナ」を見据え、時が来たら必要な手が打てるよう中長期の経営戦略を練って(練り直して)おくという「遠近両用」の思考が求められていると説いている。

指針案では、他にも経営者への強いメッセージが各所に見られる。・・・

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