印刷する 印刷する

「特許を受ける権利」の帰属を企業に 職務発明制度の見直し議論が迷走

 メーカー等にとって、従業員の発明は将来の会社の浮沈を左右する生命線と言えるが、従業員の発明を巡ってしばしば問題になるのが、発明への「対価」の支払いだ。

 従業員が職務として行なった研究を通じて生まれた発明は「職務発明」と呼ばれ、会社の指示を受けないところで生まれた「自由発明」とは区別される。ただ、職務発明と言っても「発明者」はあくまで従業員であり、特許公報等に名前が掲載されることも法的に保障されている(氏名掲載権)。また、日本の職務発明制度は、「特許を受ける権利」を当初は発明者に帰属させ、これを使用者(会社)に譲渡することで権利が移転する「従業員帰属」という仕組みになっており、会社が権利の譲渡を受けるにあたっては、発明者に対し「相当の対価」を支払うことが義務付けられている。

 とはいえ、従業員の発明は会社の用意した研究環境で、会社の予算を使って生まれたもの。このため、イギリス、フランスのほか、研究開発と国際競争力の両分野のランキングでいずれも世界1位の地位にあるスイスなど諸外国では、「特許を受ける権利」を当初から会社に帰属させる「法人帰属」制を採用しているところが少なくない。法人帰属制では、会社は安定的に発明に関わる権利を取得できる一方、従業員は発明者としての名誉を保障されることになる。ちなみに、アメリカではすべて「契約」で定めることになっている(ドイツは日本と同じく従業員帰属制)。

 日本の職務発明制度の根本的な問題が浮き彫りになったのが、90年代に起こったいくつかの大型訴訟だ。対価の額が低いとしてその追加払いを求める発明者の訴えに対し、裁判所が高額の対価支払いを認める判決を出したため、訴訟が続出。提訴した発明者の中には既に退職しており、“退職金の上乗せ”を求める気分で訴えを起こす例も少なくないという。こうした訴訟の背景には「在職時の処遇への不満」があるように見られがちだが、実際には、給与水準や役職の面で厚遇されてきた人による訴訟が大半とのデータもある。

 こうしたなか・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから