現行の開示ルールでは、会計上の見積りに用いた仮定に「重要性」がある場合には、「追加情報」として開示が求められることになっているが、既報のとおり、企業会計基準委員会(ASBJ)はコロナ禍におけるこのルールの運用上、「新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期等を含む仮定に関する追加情報の開示を行うことが財務諸表の利用者に有用な情報を与えることになると思われ、開示を行うことが強く望まれる。」旨、企業に要請したところだ(2020年5月14日のニュース『有報作成に影響も ASBJが「コロナ収束時期の仮定」の開示を強く要請』)。その背景には、JALやANAといった明らかに重大な影響がありそうな企業の決算発表(東証の決算短信)で追加情報の記載がなかったということがある。このASBJの要請を政府の立場からも念押しする意味も込めて出されたリリースが、金融庁が(2020年)5月21日に公表した「新型コロナウイルス感染症の影響に関する企業情報の開示について」ということになる(2020年5月22日のニュース「金融庁、「非財務情報」におけるコロナの影響の開示充実を強く要請」参照)。
会計上の見積り : 繰延税金資産の回収可能性の判断、減損会計における将来キャッシュ・フローの見積りなど、財務諸表を作成するにあたって必要になる様々な見積りのこと
「新型コロナウイルス感染症の今後の広がり方や収束時期」については、おおむね以下のシナリオ(仮定)が考えられる(2020年5月22日のニュース『コロナ影響下の会計上の見積りにおける「一定の仮定」と開示』参照)。
①中国の武漢市の封鎖は約2か月半で解除されたことから、我が国も2020年の第1四半期末(3月末決算企業が前提、2020年6月末)までに収束する。 ②高温多湿となる2020年度の第2四半期(3月末決算企業が前提、9月末)までには収束する。 ③ワクチンが開発されるまで1年以上かかるとされていることから、少なくとも2020年度は現在の状況が続く。 ④ワクチンが開発されていない現状を鑑みると2年くらいはこの状態が続く。 ⑤5年程度はこの状態が続く。 |
自社としてどのようなシナリオを描くべきかは悩ましいところだろう。そこで当フォーラムが、12月決算会社の第1四半期報告書の【経理の状況】(追加情報)に、コロナ影響下の会計上の見積りにおける「一定の仮定」を記載している会社10社を調査したところ、・・・
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