少子高齢化により我が国の人口の減少が予想される中、多くの日本企業が「グローバル化」を経営課題の1つに掲げている。ただ、「海外進出=グローバル化」でない点には注意しなければならない。
では、自社が本当の意味でグローバル化するためには何が必要だろうか。
まず最初に挙げられるのが、経営陣が現地のマーケットに精通するということだ。現在、世界経済を牽引しているのが新興国であることからすると、新興国のマーケットを経営陣が理解することは極めて重要だと言える。そのために効果的なのが、経営陣のダイバーシティ*である。つまり、様々な国の出身者を経営陣に迎え入れるということだ。しかし、現状では外国人を経営陣に加えている日本企業は多くない。グローバル企業のランキングである「フォーチュン・グローバル500」にランクインしている日本企業の経営陣に占める外国人の割合はわずか5%に過ぎない。
* 人材の多様性のこと
この割合は、欧州企業では28%、北米企業では13%となっている。日本企業に比べると欧米企業の方が経営陣のダイバーシティが進んでいるのは明らかだが、それでも十分とは言えないだろう。その原因としては、かつての日本がそうであったように、現地の優秀な人材は、外資系企業よりも、成長著しい国内企業志向であるということが挙げられる。「グローバル化」とは突き詰めれば人の問題であることを考えれば、それを達成するのは簡単ではないということだ。
現地の優秀な人材の獲得が容易でないとなれば、自社で海外マーケットに精通した人材を育成することが考えられるが、基本的に欧米企業では海外駐在経験のある経営陣の割合は低下傾向にあり(1998年には56%あった海外駐在経験率が、2008年には12%に減少したとの報告もある)、グローバル人材が不足している状況にある。また、本社勤務の期間が長い方が昇進が早いという事実も、優秀なグローバル人材が育ちにくい要因の1つになっているようだ。
こうした中、欧米の有力企業では、自社のグローバル化推進のため、様々な策を打っている。もっとも分かり易いのが、商品の市場性が一番高い地域への機能移転だ。例えば米国のGEは、医療部門の中のレントゲン部門を米国から北京に移転した。また、同じく米国のP&Gは、グローバル・コスメティック・パーソナルケア部門を米国からシンガポールに移転している。
機能移転まで踏み切れない場合には、・・・
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