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ROICの弱点

2021年8月5日のニュース『2021年3月期の有報で判明 「ROIC」の開示は道半ば』で述べた通り、資本コストを意識した経営において、資本コストと比較する上で最も適したKPIはROICと言える。しかしながら、各社の有価証券報告書を見ると、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】において開示されているKPIは、損益計算書(P/L)の売上高、利益といったフローに関するものが多い。我が国の上場会社の経営陣の多くは未だにP/L至上主義であり、売上、利益の規模増大に目が行っているようだ。

資本コスト : 資本コストとは「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」を指す(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

一方、投資家は、ROE、ROIC、ROAといった資本効率に関するKPIに注目している。資本効率とは、要するに「投下した資本からどれだけ効率よくリターンが得られたか」ということである。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。

損益計算書のフローに関する指標(売上高、営業利益)および資本(投資)効率に関する指標であるROICに基づき、A社とB社ではどちらが優れた会社と言えるのか、考えてみよう。・・・

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