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ROICではなくROEやROAではダメなのか?

2021年10月19日のニュース「ROICの弱点」では、立ち上げ時には利益がわずかしか出ていない新規事業が中長期的には多くの利益を獲得できるとしても、事業の立ち上げ当初は資本効率が悪いためROICに基づくと低評価となり、投資が抑制されてしまう恐れがあるというROICの弱点について解説したが、それでも、資本コストを意識した経営、すなわちCAPM等で算定した資本コストをベースとして設定することになる収益力・資本効率等に関する目標値として最も適したKPIがROICであることに変わりはない(CAPMについては【2018年7月の課題】資本コストの把握 の「資本コストの算出方法 最も有力な方法はCAPM」を参照)。

資本コスト : 資本コストとは「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」を指す(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

もっとも、投資家は、ROIC以外のみならずROEROAにも注目している。そのため、上場企業の取締役と話をしていると「ROICではなくROEやROAではダメなのか?」といった声も聞かれる。本稿ではこの疑問への回答に努めたい。・・・

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。

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