5月16日に開催された今年度最初の金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)では、今年度の同会議において何を議論すべきか、アウトプットとして何を目指すべきかが議論された。具体的には大きく2つのテーマ、①コーポレートガバナンス・コード再改訂(2021年6月)後の中間点検、②個別論点(持続的な成長に向けた課題、エンゲージメントに係る課題)が提起されている。
①においては、2021年6月の改訂によってコーポレートガバナンス・コードの細則化が進み、企業に“コンプライ至上主義”が蔓延する原因となったことへの反省、企業価値ひいては時価総額の向上という本来の趣旨に還るべきとの意見が強く示された。②の「持続的な成長に向けた課題」としては、企業にとって成長投資(特に人的資本)の重要性が認識される中、内部留保が右肩上がりで増加している現状に疑問が呈され、株主還元の更なる積極化も含めた資本政策の再考が期待されている。②の「エンゲージメントに係る課題」としては、協働エンゲージメントとして許容される範囲が未だ不明確(共同保有者、重要提案行為との関連など。この点については2018年4月11日のニュース『機関投資家が語る「集団的エンゲージメント」が普及するために必要なこと』、2017年5月30日のニュース『「集団的エンゲージメント」明記で今後の機関投資家の動きは?』参照)、またパッシブ化が進展する中で運用機関におけるエンゲージメントの負担が過大であることなどが指摘された。
細則化 : 具体的なルールを細かく規定すること。本来、コーポレートガバナンス・コードは、大まかな原理・原則だけを定め、細かな運用は現場の判断に任せるという規制方法である原則主義(プリンシプルベース・アプローチ とも呼ばれる)をとっている。
共同保有者 : 大量保有報告制度上、たとえ単独での保有割合が5%以下でも、「保有者との間で、共同して株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者」のこと。当該「共同保有者」がいる場合、その保有割合も合算して保有割合を判定する。
重要提案行為 : 投資先企業の株主総会において、又は、その「役員」に対し、発行者の事業活動に重大な変更を加え、又は重大な影響を及ぼす行為として「一定の事項」を提案する行為。「一定の事項」としては、例えば代表取締役の選解任、株式交換・移転、会社の分割・合併、配当に関する方針の重要な変更、資本政策に関する重要な変更などがある。
パッシブ : 東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法のこと。パッシブとは「消極的な」という意味である。パッシブ運用に対し、銘柄を選別し、魅力のある銘柄を購入する一方で、見劣りする銘柄を売却するなどして利益を得ようとする投資手法がアクティブ運用である。
企業にとっては、フォローアップ会議の議論が今後のコーポレートガバナンス改革の方向性およびスピード感に対してどのような影響を与えるのか気になるところだが、その意味では、・・・
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