6月17日にエーザイの2022年3月期に係る定時株主総会が開催されたが、同20日に公表された臨時報告書により、CEOである内藤氏の選任議案への賛成率が96.3%と、前年の67.3%から30ポイント近く改善したことが分かった。全取締役の平均賛成率は97.7%と、やはり前年の84.0%から15ポイント近く改善している。下表のとおり、内藤CEOの賛成率は2015年までは90%前後で安定していたが、それ以降は年々切り下がっており、前年は過去最低のレベルまで落ち込んでいた。
CEOの賛成率が7割弱まで落ち込んだ前年の総会だったが、2020年度のROEは6.1%あり、業績不振が問われるほどではない。議決権行使助言最大手ISSが経営トップ(会長、社長)である取締役の選任議案に反対推奨するのは過去5年平均または直近期のROEが5%未満の場合である(2020年以降は新型コロナウイルス感染拡大に鑑みて当該“ROE基準”の適用を停止中)。逆に、2021年度のROEは6.6%で昨年度とほぼ横ばいとなっており、本年総会でCEOの賛成率が急改善した理由にもなり得ない。さらにもう1年遡ってみると、2019年度のROEは18.6%と顕著な好業績であったが、2020年総会におけるCEOの賛成率は71.7%と最低レベルだった。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
また、周知のとおり、コーポレートガバナンスについても同社は盤石と言える。2004年には指名委員会等設置会社(当時は委員会等設置会社)に移行、2021年総会終了後の時点で取締役11人のうち7人を独立社外取締役が占めており、取締役会議長も独立社外取締役が務めている。近年において目立った不祥事も確認されていない。
以上の分析を踏まえると、近年におけるCEOへの賛成率の低下、そして本年における急激な改善の主な理由は、・・・
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