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経営判断を要する「配偶者手当」の見直し

 政府は持続的な経済成長に向け、女性の活躍推進(=女性の就労拡大)に躍起となっているが、こうした中、先月(2014年10月)21日に開催された政府の経済財政諮問会議では、「女性の働き方に中立的な制度整備に向けて~制度と慣行の見直し~」と題した民間議員のペーパーにより「妻の年収に応じて配偶者手当を段階的に減額」する案が示されるとともに、安倍総理が企業に対して「配偶者手当」の見直しを求めたことで、企業の間に波紋が広がっている。

 「配偶者手当」とは主に専業主婦の配偶者を持つ従業員に対して支給される手当のこと(扶養家族を対象とする「家族手当」が支給されている場合には、そのうち配偶者に対して支給される部分を指す)。人事院の「2014年職種別民間給与実態調査」によると、民間企業の実に76.8%で支給されており、その金額は月額平均1万4,347円となっている(ちなみに、国家公務員は1万3,000円)。

 月額1万5千円弱とはいえ、配偶者手当を見直すかどうかは経営判断を要する問題であることを役員は認識すべきだろう。

 その理由の1つ目は、配偶者手当の見直し(廃止あるいは低減・縮小)には労働法上のさまざまな要件が問われるということだ。まず、配偶者手当の見直しは「労働条件の不利益変更」に該当するため(労働契約法9条)、企業経営上「必要不可欠」であり、変更の必要性が労働者の受ける不利益を上回るという「高度の必要性」がなければ見直しが認められる可能性は極めて低い。また、労働組合や従業員代表との協議を十分行って理解を得る努力が求められることなどから、その見直しには相当の時間がかかる。さらに、配偶者手当を含む諸手当の変更は通常、労働協約や賃金協定等の変更も伴うことから、変更の必要性や変更内容の相当性の検討、代替案(基本給への繰り入れ、別手当の増額など)の提示、労働組合等との交渉も求められる。このように配偶者手当見直しのハードルは決して低くなく、それでも見直しに踏み切るというのであれば、経営側にもそれなりの覚悟が必要になる。

 2つ目の理由は、・・・

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