企業にとってジェンダー・ダイバーシティ(女性の活躍推進)は優先度の高い経営課題となっている。とりわけ上場企業は、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)【原則2-4】により「女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進」することを迫られており(グロース市場上場企業を除く)、有価証券報告書には【従業員の状況】に「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」の3つの記載項目が追加される見通しだ(有価証券報告書の記載項目の追加については2022年5月17日のニュース「男性の育休取得率、女性管理職比率も開示義務化へ 英文開示の義務化は見送り」を参照)。
【原則2-4.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保】 上場会社は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することは、会社の持続的な成長を確保する上での強みとなり得る、との認識に立ち、社内における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進すべきである。 |
上場企業は社内のあらゆるレイヤーでジェンダー・ダイバーシティに取り組む必要があるが、なかでも「取締役」「執行役員」といったいわゆるマネジメント層での取り組みの重要度は高い。マネジメント層でのジェンダー・ダイバーシティが進めば、会社全体としてのジェンダー・ダイバーシティへの取り組みに対するマネジメント層のリーダーシップが増すだけでなく、その下のレイヤーの女性社員の間で「自分もマネジメント層に昇進するチャンスがある」といった気運が生まれ、自ずと将来のマネジメント層候補の人材プールができやすくなるからだ。また、「女性取締役の選任の有無」は株主にとって分かりやすい指標であり、ボードメンバーのトップである代表取締役の選任議案への賛否にも影響しかねない。議決権行使助言会社大手のグラスルイスは、2022年版ポリシーより女性役員(監査役、執行役を含む)が一人もいない上場企業の経営トップなどの選任議案に反対助言を行うこととしている(グラスルイスの2022年版ポリシー改定については2021年12月24日のニュース「グラスルイスが2022年版ポリシーの改定内容を公表、ジェンダー・ダイバーシティに高い要求水準を設定」を参照)。株主によるエンゲージメントや議決権行使のプレッシャーを受け、日本の上場企業の取締役会に占める女性比率は年々上昇してはいるものの、依然として他の先進国の水準をはるかに下回っているのが現状だ。
この現状を改善すべく、・・・
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