印刷する 印刷する

日本のコーポレート・ガバナンスのランキング、次回調査では下落必至?

 グローバルな機関投資家の業界団体である「アジア・コーポレート・ガバナンス協会(Asia Corporate Governance Association:ACGA)」は毎年、アジア11か国におけるコーポレート・ガバナンスの質(政府の規制、上場会社の取り組みなど)をランク付けしている。7回目となる2014年版 (CG Watch 2014年版)のランキングによると、日本のスコアは「60%」で第3位となっており、前回の55%・第4位から、スコア・順位ともに上昇している(スコアの単位は%で、高いほど良い評価)。

 3位という順位だけを見れば、日本のコーポレート・ガバナンスはかなり高い評価を受けているようにも感じるかもしれないが、実はスコア・順位が上昇した主な理由は、安倍政権によるガバナンス改革、特に機関投資家向けスチュワードシップ・コードの公表およびコーポレートガバナンス・コード案の作成が評価されたためである。

 実際、日本のコーポレート・ガバナンスに対する指摘事項を見ると、下記のとおりかなり厳しいものが並ぶ。

<日本のコーポレート・ガバナンスに対する指摘事項>
◆指摘された主な課題
・独立取締役の設置がComply or Explainルールにとどまり、義務化されていない。
・3月決算の場合、監査済みの財務諸表は6月最終週にならないと公表されないのが通常である(他のアジア市場の大企業は60日以内)。
・非財務報告の開示システムが複雑な上に、質の面でも改善が必要(異なる報告書に情報が分散している、記載されている情報が限られている、記載が形式的、報告が日本語のみ)。
持続可能性*1に関する報告は質が高いが、環境に関する報告ばかりで、より幅広いCSR*2・持続可能性の報告がなされていない。
・会計基準が統一されていない(IFRS*3JGAAP*4のどちらかに統一すべき)。
・政府は改革に熱心であるが、企業の意識に変化が見られない。
・特に、役員研修および取締役会評価の取組みが遅れている。

*1 社会の持続可能性のこと。“Sustainability”の訳。資源の枯渇、気候変動、生態系の破壊等といった人類が抱える問題の解決を目指すためのスローガンとして用いられる。

*2 “Corporate social responsibility”の略。利潤の追求のみが企業の目的ではないということを前提として、従業員や消費者、下請け、債権者等のステークホルダーとの関わりの中で企業が果たすべき社会的な責任を意味する。

*3 国際財務報告基準。“International Financial Reporting Standards”の略。

*4 日本の国内会計基準。“Japanese Generally Accepted Accounting Principles”の略。

◆次回2016年の報告書において想定されるスコア引き下げの要因
・コーポレートガバナンス・コードが骨抜きであると判明する。・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから