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若手や女性の役員就任を促すための方策

近年、数年間単位で順繰りに経営トップを務める慣行を廃止するとともに、就任時年齢の若返りを進めることにより、経営陣が精力的に経営戦略を実現できる期間を確保しつつ、そのパフォーマンスを継続して評価すべき(報酬に反映したり、再任・解任の判断材料としたりするべき)という論調が強まっている。従来の“短期間で繋ぐ経営”は、企業が成長軌道に乗り、長期的に安定していた時期には機能していたが、経営環境の変化が激しく、経営の改革や軌道修正が求められる昨今においては通用しなくなりつつある。実際、日本のトップ企業と米国の高業績企業を比較すると、米国企業の“ベストCEO”の平均就任年齢は47歳・平均在任期間は13年であるのに対し、日本のTOPIX100企業のCEOの平均就任年齢58歳・平均在任期間5年となっており、大きな開きがある。また、就任期間が長く、孫の代まで見据えた“超長期視点”で経営を行うオーナー系企業は、他の企業よりも高いパフォーマンスを上げているという研究結果もある。

こうした中、役員の就任年齢の若返りや任期の見直しを図る日本企業は増えている。しかし、若くして役員、場合によっては経営トップに就任するということは、欧米企業に比べ低い報酬で、解任リスクを負うことを意味する。また、退任後の安定的な処遇としての役割を果たしていた相談役・顧問を、現経営陣に対する不当な影響力を排除し経営トップがリーダーシップを発揮しやすい環境を整えるといった理由から廃止又は縮小する企業も相次いでいる()。

 従来は大手企業の8割以上が相談役・顧問制度を有していたが、現在はその半分の4割程度まで減少している。

一方、従業員の定年は徐々に延長されているため()、無理をして役員に就任することへの魅力が薄れ、特に若い世代では、優秀な人材が従業員の地位に留まることを選好する可能性も指摘されている。

 高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保に関する措置を講ずるよう、企業に努力義務(70歳までの定年の引き上げや継続雇用制度の導入等)が課されることとなった(2022年4月から適用開始)。

さらに、仮に若くして役員を退任することとなった場合、経営人材の流動性の低い日本においては再就職が困難という問題もある。企業にとっても、退任することになったとはいえ優秀な人材(かつ企業の機密事項を保持する人材)の流出は痛手となろう。

こうした問題は一企業の努力だけで一朝一夕に解決できるものではないが、一部の企業は既に新たな取り組みを開始している。以下、実際の事例を紹介しよう。・・・

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