従来、役員退任後の処遇として一般的であった相談役・顧問制度は、その役割や報酬等の処遇が不透明であること、会社経営に対し責任を負わない形で(本人の意思を問わず)不当な影響力が生じる懸念などが指摘され、各社において制度の廃止、報酬の縮減や無報酬化といった見直しが進められ、一定の成果があったものとみられる。その一方で、相談役・顧問とは異なり「会社法上の役員」ではあるものの、同質の懸念が生じやすい存在として挙げられるのが、「取締役会長」だ。
経済産業省が公表している「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」(2022年7月改訂版)も、「経営陣のリーダーシップ強化の在り方」の観点から「取締役会長の在り方」に言及しており、会長として居座ることで現・社長にとって業務執行を行い難い状況をもたらす可能性等が指摘されている(52ページ~の「5.7. 取締役会長の在り方」参照)。
実際、各社の状況を見てみると、役員の“上がり”のポジションという様相となっており、役割や報酬が不透明であることが多い。通常、取締役会長は「元・社長」であるため、社内の人間や報酬委員の社外取締役でさえも、正面を切って“あるべき論”を展開し難いといった事情もあろう。しかし、いまだに社内役員の中でもトップレベルの報酬水準を維持しているとなると、今後、投資家等からの批判の声が高まる可能性があり、企業は取締役会長の「報酬ガバナンス」について説明責任を果たすことが求められよう。
では、取締役会長の「報酬ガバナンス」とはどのようなものだろうか。第一に挙げられるのは、・・・
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