印刷する 印刷する

「Board3.0」は特効薬か

ビジネス雑誌でも特集も組まれるなど、株主・投資家を取締役として招聘する「Board3.0」への注目が高まっている(Board3.0 に関するニュースは2022年6月8日『「Board3.0」が注目される理由と現状の社外取締役に足りないもの』、2022年7月21日「改訂CGSガイドラインが公表、Board3.0への詳細な対応方法示す」参照)。Board3.0が注目を集める背景には、米国における標準的な取締役会モデルであるモニタリング・ボードが、①情報の不足、②リソースの不足、③意欲の限界に直面しているとの問題意識から、取締役自らが社内の情報にアクセスして経営陣の戦略策定・遂行をより実効的に監督するべき、といった議論がある。

Board3.0 : 「Board 3.0」とは、2019年にRonald J. Gilson教授(スタンフォード大学/コロンビア大学)およびJeffery N. Gordon教授(コロンビア大学)により公表された論文「Board 3.0: What the Private‐Equity Governance Model Can Offer Public Companies」(プライベート・エクイティ ガバナンスモデルが公開企業に提供できるもの)で提唱された新たな取締役会のモデルであり、要約すれば、長期投資家が取締役として戦略立案に参画するモデルのことをいう。取締役をCEOに近い関係者で固めたアドバイザリー・ボードの「Board1.0」、独立性の高い社外取締役に経営の執行を監督させるモニタリング・ボードの「Board2.0」を経た次の取締役会モデルとして注目されている。
モニタリング・ボード : 経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会

日本の取締役会の多くが「社内取締役中心」であり、社内の経営会議の決定を追認しているに過ぎないこと、また、社外取締役には学者・士業・官界出身者が多く、経営戦略のモニタリング機能を果たしていないという指摘も多い。ただ、だからと言って、取締役会に株主・投資家を加えればこれらの問題が解決するとは限らない。

Board3.0の議論は一頃流行った・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合は
ログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから