PBR(株価純資産倍率)1倍未満の企業に対するプレッシャーが高まっている。プライムおよびスタンダード市場に上場する全企業約3,300社を対象として、資本コストや成長性の改善に向けた具体的な取り組みや進捗状況の開示を通じて、企業価値向上に対する経営者の意識改革が強く迫られている。まだ検討段階にあった頃からメディア等の関心も非常に高く、東証から正式な通知のあった2023年3月31日以降は(通知の内容については2023年4月5日のニュース『「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」における要請事項と開示時期』参照)、多くの新聞記事等でも、その必然性や前向きな期待が述べられている。4月14日には英語版も公表されており、欧米の市場環境が軒並み芳しくない中、海外の機関投資家が日本市場に投資機会を見出し、企業に改革を迫る一つの観点を与えることになるだろう。
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
こうした動向は、今後、役員報酬にも影響を及ぼすことが容易に想像される。経営陣の意識改革とインセンティブ付け・評価の問題は常に表裏一体にあるからだ。特に影響を受けるのは中長期インセンティブ、株式報酬だろう。
企業価値向上への意識付けを更に高めていくためには、まず・・・
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