東証は今年1月に「従属上場会社における少数株主保護の在り方等に関する研究会」(第2期)をスタートし、支配株主を有する上場子会社における少数株主保護について検討を重ねている。もともと同研究会(第1期)は、上場子会社であるアスクルの取締役選任議案(代表取締役社長および社外取締役3名)が親会社のヤフー(現Zホールディングス)の反対によって否決されたことを契機に、2019年11月29日に設置されたもの。アスクルの一件では、支配株主が上場子会社のトップ人事に決定的な影響力を及ぼすことのガバナンス上の是非や、上場子会社における少数株主保護が問題となった(2019年8月21日のニュース「上場子会社を持つ親会社のジレンマ」参照)。
少数株主 : ここでいう「少数株主」とは、支配株主(あるいは支配的な株主)以外の株主であって、会社の経営(意思決定機関)に対して直接又は間接の支配力を持たない株主が想定されている。
同研究会が2020年9月1日に中間整理を公表し、以下4つの検討課題を示して以来、東証における検討にとどまらず、様々な施策が講じられてきた。
(1)情報開示 | ガバナンスに関する合意や、利益相反およびその監督・コントロールの考え方・方針等を含めた情報開示の充実 |
(2)手続 | 支配株主が上場子会社の非公開化を目的とした公開買付けを行う局面における、特別委員会に期待される役割も踏まえた少数株主保護の枠組み |
(3)ガバナンス | 独立社外取締役の選任等 |
(4)適用範囲 | 「支配株主」に適用される少数株主保護の枠組みの「支配的な株主」への拡大 |
ガバナンスに関する合意 : 自社の株主との間で“ガバナンスに影響を及ぼし得る”以下の合意等を指す。
(a)役員候補者指名権の合意
(b)議決権行使内容を拘束する合意
(c)事前承諾事項等に関する合意
利益相反 : 典型的には、支配株主を有する上場会社の取締役が、自らを実質的に選任する支配株主の意向を無視できず、当該上場会社にとって不利な条件の取引を承認することが挙げられる。
特別委員会 : 経済産業省が公表している「企業買収における行動指針」では、特に取締役会の過半数が社外取締役でない会社」が買収提案を受領した場合には、取締役会の独立性を補完するため、社外取締役を中心とした「特別委員会」を設置し、その判断を尊重することは有益であり、取引の公正性および株主利益の確保につながるとしている。特別委員会の設置が有用な場合として、以下のケースが例示されている。
● キャッシュ・アウトの提案のため、取引条件の適正さが特に重要である場合
● 買収への対応方針・対抗措置(買収防衛策)の導入・発動を検討する場合
● 複数の買収提案が行われている場合など、市場における説明責任が高い場合
支配的な株主 : 議決権の過半数を有していないものの、実質的な支配力を持つ株主のこと。
「(1)情報開示」に関する施策としては、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。