ラクスルの新社長に対する報酬パッケージが10年で300億円にも及ぶ(ただし、全ての条件を達成した場合)という報道に衝撃を覚えた上場企業の経営陣も多いことだろう。報酬の大部分は株式報酬(本人による取得分も含む)で構成されており、日本では非常に限定的な事例と言えるが、米国に目を向けると、有名企業のいくつかでは同様の事例が確認できる。例えばアップル社のティム・クック氏のCEOに就任時(2011年)には100万株のRSUが臨時付与されたほか(5年後に50%が権利確定、10年後に残りの50%が権利確定するという設計)や、テスラ社のイーロン・マスク氏は最終的に数千億円規模と推計される報酬パッケージ(時価総額の伸長や事業上のマイルストーン達成を条件とするストックオプション)を手にしている。このように日本の上場企業には珍しいアスクルの事例では、どうしても報酬額(300億円)の高さに目が行ってしまいがちだが、実は本事例にはもう一つ、“普通の日本の上場企業”にはない特徴がある。それは、・・・
RSU : 譲渡制限付株式報酬(リストリクテッド・ストック)には、株式交付のタイミングによって、「事前交付型」(リストリクテッド・ストック(略称:RS))と「事後交付型」(リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU))に分けられる。事前交付型は、取締役等の報酬対象勤務期間の開始後、速やかに取締役等に株式の発行(or自己株式の交付)を行い(この時が会社法上の「割当日」に該当)、取締役等と会社の契約において、当該株式に譲渡制限を付しておき、権利確定条件(例えば「3年間勤務する」「3年後に株価を倍増させる」など)が達成された場合に譲渡制限が解除され(すなわち、取締役等は当該株式を売却して換金できる)、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得(没収)する仕組み。事後交付型とは、取締役等と会社の契約において、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる仕組み。
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