周知のとおり、2015年にフランス・パリで開催された第21回「国連気候変動枠組み条約締約国会議」(COP21)において、地球の気温の上昇を1.5度以内に抑えるという温室効果ガス排出量削減に関する世界的な取り決めである「パリ協定」が採択され、翌年から発効されている。このパリ協定は同じく2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と呼応して、世界的な潮流となっている。各国は温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、日本を含む多くの国が、2050年までに「ネットゼロ」を達成することを宣言している。ネットゼロとは、温室効果ガスの排出量から、森林等による温室効果ガスの吸収量を差し引いた量を正味ゼロにするというものだ。
SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。
こうした世界的な潮流に金融機関も反応、2021年には金融機関によるネットゼロを目指す団体「グラスゴー金融同盟(Glasgow Financial Alliance for Net Zero=GFANZ)」が発足している。この下部組織には、アセットオーナー(年金基金や保険会社)により構成される「Net Zero Asset Owners Alliance=NZAOA」やアセットマネージャー(運用会社)により構成される(Net Zero Asset Managers Initiative= NZAM)があり、2023年6月現在で NZAOAには86社、NZAMには315社が加盟しているが、これらの団体に加盟するアセットオーナーやアセットマネージャーが今後日本の上場企業に対しも、「ネットゼロ」を求めエンゲージメントを本格化させる可能性が高まっている。
エンゲージメントのポイントは二つある。一つは、・・・
このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。