既報のとおり、2024年1月22日、英国のコーポ―レートガバナンス・コード(以下、CGコード)改訂版が公表された(2024年3月4日【特集】~将来的には再度改訂議論の俎上に載せられる可能性~ 削除された英国コーポレートガバナンス・コード改訂案の全容 参照)。当初提案されたCGコードを厳格化する方針が撤回されるという不穏な動きも見られ、最終版では、取締役会構成におけるダイバーシティ要素の具体例が削除される一方、内部統制に関する改訂、報酬返還に関する規定(マルス条項およびクローバック条項)の義務化などが盛り込まれた。
このうちマルス条項およびクローバック規定の義務化は、昨年の米国のNYSE(ニューヨーク証券取引所)およびNASDAQに続く動きであり、役員報酬支給後(確定後)に、業績修正や不正会計などによって過剰な報酬額であったことが判明した場合、その返還を求めることを予め雇用契約等に含めるべき、という内容となっている。また、当該規定の有無とともに、「当該規定が適用される可能性がある状況」「当該規定の対象期間とそれが最適である理由」「直近報告時点における当該規定の適用有無(適用された場合はその明確な理由の説明も含む)」を年次報告書(Annual Report)に記載することも求められている。
日本でも、こうした先進諸国の動向と相次ぐ不祥事の発覚が相まって、マルス条項およびクローバック規定を巡る議論が活発化しており、“マルス・クローバック条項・ブーム”に発展する可能性がある。それ自体は、報酬ガバナンス機能の強化の観点からは良い傾向と言えるが、日本流のブームにならないか、一抹の不安がある。そう感じさせるのが、・・・
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