ニッセイアセットマネジメント(以下、ニッセイAM)は2月27日、「国内株式議決権行使の方針と判断基準」の改訂版を公表している。主な改訂内容は下記のとおり。
<2024年6月の株主総会から適用>
1 女性取締役基準(1名以上)の適用対象をTOPIX100からプライム市場全体に拡大
2 気候変動リスクについて「最低限の対策」の開示を求める(Climate Action100+の選定企業および気候変動リスク面で特に課題のある企業が対象)
3 原則賛成の株主提案(有価証券報告書の総会前開示、クローバック条項の導入、筆頭独立社外取締役の選任)を追加
<2025年6月の株主総会から適用>
4 独立社外取締役基準(支配株主がいる場合は取締役会の過半数、その他の場合は3分の1)、および女性取締役基準の適用対象をプライム市場から全市場に拡大
5 PBRが1倍未満の場合、「資本コスト・株価を意識した経営への対応」の開示を求める
Climate Action100+ : 機関投資家が、温室効果ガスを排出する世界最大級の企業と協力し、こうした企業が気候変動に関するガバナンスを改善するとともに、排出量を抑制し、気候関連の財務情報の開示を促進するために設立された団体。
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
いずれも重要なコーポレートガバナンスの論点を踏まえたものだが、特に最近の関心事項として注目されるのが5だ。具体的には、PBRが1倍未満にもかかわらず、東証「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表」において「開示済」のステータスとなっていない場合、代表取締役の選任議案に対して原則反対する。ただし、この議決権行使基準には1年間の猶予期間が設定されている。ニッセイAMの基準では・・・
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