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CEOの任期制とPBRの関係

この1年間で東証プライム市場およびスタンダード市場上場企業の多くが、いやがおうにも意識せざるを得なくなったのが「資本コスト」「ROE」「PBR」などの経営指標だ。その背景には、東証が2023年3月31日にプライム市場およびスタンダード市場の上場企業に対して要請した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」があることは周知のとおり。


資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

ところで、コーポレートガバナンス・コード補充原則4-1③では、取締役会に対し最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用への関与や監督を求めている。この補充原則4-1③については、プライム市場上場企業の8割、スタンダード市場上場企業の5割がコンプライを表明している(東証の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2022年7月14日時点)の24ページ参照)。

コーポレートガバナンス・コード補充原則4-1③
取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

この後継者計画において重要な要素となるのが、「CEOの任期制」だ。CEOの任期に制限を設ければ、任期が終わるまでに後継者を選ばざるを得なくなる。一方、CEOの任期に制限がなければ、業績の動向やCEOの健康状態などに応じて任期は不確定で可変となる。

この「CEOの任期制」と冒頭で述べた「PBR」は、片やCEOの交代プロセスの話であり、片や企業評価の一指標であるため、一見無関係のように見える。しかし、実は「CEOの任期制」と「PBR」の間には相関関係が認められることが分かった。・・・

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