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「企業買収における行動指針」が影響力を持つようになった背景

周知のとおり、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)は8月19日、カナダのコンビニエンスストア大手のアリマンタシォン・クシュタールから「内密に法的拘束力のない初期的な買収提案を受けた」と発表している。対するアリマンタシォンも、「拘束力のない友好的な提案を先ごろ提出した」と発表、双方が合意できるように注力しているとした。

1980年にカナダのケベック州でコンビニエンスストア1号店を出し創業したアリマンタシォンは、これまで買収を繰り返して規模を拡大してきた。2003年には総額8億380万ドル(約1200億円)を投じて「サークルK」を買収、米国への本格進出を果たした。2012年にはスカンジナビアのコンビニを買収し、欧州にも進出。北米や欧州など31カ国・地域に店舗を展開し、その数は1万6,000店を超える。

店舗数の多さのみならず、売上高も約10兆円におよぶアリマンタシォンだが、それを上回る売上高11兆円超のセブン&アイをターゲットにしたことに対しては、小売業界のみならずM&A関係者から「本当に買えるのか」「買収資金はどう手当てするのか」「円安で今後は日本企業が相次いで買収のターゲットにされるのではないか」といった声が上がっている。また、アリマンタションが過去に仏カルフールに買収を仕掛けた際、仏政府の反対を受けて断念したことから、「経済安保の観点から日本政府も反対するのではないか」と予想する声もある。

このように様々な論点がある今回の買収劇だが、なかでも注目されるのはセブン&アイの対応だ。セブン&アイは、提案を受けた直後、すぐさま取締役会議長のスティーブン・ヘイズ・デイカス氏を委員長とした独立社外取締役だけの特別委員会を立ち上げている。アリマンタシォンに「買収提案を受け入れるか回答する」と表明したのも、委員会の答申を踏まえたものだ。実はアリマンタシォンは、4年前の2020年にもセブン&アイに対し買収提案を行っている。関係者によれば、・・・

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