長時間労働は「働く意欲」や「会社への忠誠心」を示すものととらえられていた時代もあったが、近年は、判断力や創造性を奪うとともに、仕事の効率を低下させ、さらに、ワーク・ライフ・バランスを崩すことにより従業員のメンタルヘルスに悪影響を与えるものとの認識が広がっている。
こうした中、多くの上場企業は労働時間の削減に取り組んでいるが、必ずしも思うような成果が上がっていないというケースも少なくない。その大きな原因の1つと見られるのが、携帯電話やメールの存在だ。これらのツールは、従業員への連絡のしやすさを劇的に進化させた。特にメールは、受信者が自分の都合の良い時に見るものであるため、送付のタイミングをあまり気にする必要がない。ところが、タブレット端末の普及も手伝い、実際にはメールを常時チェックすることが習慣化している従業員が増加しており、長時間メールを確認しないと「何か仕事上重要なメールが来ていないだろうか」といった不安に駆られることもあるようだ。その結果、勤務時間終了後の在宅時までメールをチェックするようになり、これが実質的な長時間労働(およびその慢性化)へとつながっているケースは決して少なくないという。
こうした状況を変えるには、もはや会社が“強制力”を働かせるしかないのかもしれない。スマートフォン等により社内メールを外部から確認するのが一般的になっている欧米企業のケースを見ると、例えばドイツのフォルクスワーゲン社は、勤務終了後30分後から翌日会社のPCにログオンするまでの間、社外にいる従業員のメールの送受信を停止するシステムを導入している。同じくドイツのダイムラー社では、休暇中のメールを「自動的に削除」するシステムが導入されている。
また、あるイギリスのIT企業では、・・・
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