アクティビスト投資家として知られるストラテジックキャピタルは2025年1月30日、モバイルゲーム大手のガンホーオンラインエンターテイメントに対し、経営者報酬に関する重要な株主提案を行っている。昨今、アクティビストの活動が活発化しているが、その中でも本件は、欧米で一般的な「Say on Pay(経営者報酬への株主意見表明)」の日本版とも言える意義深い取り組みとして、注目すべき事例と言えるだろう。
提案の背景には、ガンホーの業績等と経営者報酬の著しいミスマッチがある。同社は2014年をピークに業績が大幅に悪化し、過去10年間で売上高は1,730億円から1,250億円に、利益は1,000億円から300億円へと約70%の激減、株価総額もピーク時から約80%下落している。それにもかかわらず、森下社長の報酬は2023年度に3億4,000万円(2014年度時の1.2億円と比べると183%増)と、任天堂社長の3億6,000万円に次ぐ業界第2位の水準を維持している。特に問題視されているのは、任天堂の報酬制度を模倣しながら、営業利益に対する報酬乗数を0.2%から0.5%に引き上げている点。これは、任天堂の15分の1の売上高、20分の1の利益しかない企業としては著しく不釣り合いな設計と言わざるを得ない、というのがストラテジックキャピタルの主張だ。その是正のためストラテジックキャピタルは、(1)業績連動報酬の構成比の引上げとROEを基準とした評価方法への変更、(2)TSR条件付き譲渡制限付株式報酬の導入、(3)固定報酬を増額する場合の理由開示、を要求している。
Say on Payは欧米諸国で導入されている、上場企業の経営者報酬の支給額、支給方針やその運用状況の妥当性について株主が賛否を表明する「株主投票」の仕組みであり、この投票は多くの場合において拘束力のない“勧告的”なものにとどまる。しかし、・・・
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
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