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2025年 DEI政策のテーマ

トランプ政権は米国におけるDEI(Diversity, Equity, Inclusion:多様性、公平性、包摂性)推進は「行き過ぎ」だとして、これにストップをかける動きを見せている。日本企業におけるDEIへの取り組みは、政府等による働きかけに加え、機関投資家からのプレッシャーも大きな動機となってきただけに、米国での風向きが変わる中で、機関投資家のスタンス、ひいては日本企業の取り組みにどのような影響があるのか注目を集めている。


包摂性 : 社会や組織が多様なる人々を受け入れ、差別や排除をなくし、全ての人が平等に参加できる状態を指す。

この点についてまず確認しておきたいのは、日本におけるDEIへの推進状況だ。SDGs(持続可能な開発目標)の達成期限を5年後の2030年に控える中、政府はSDGsの進捗状況などを報告する「自発的国家レビュー(VNR=Voluntary National Review)」の取りまとめ作業を進めているが(2025年7月に公表予定)、それに先立ち2024年6月にドイツのベルテルスマン財団持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN=Sustainable Development Solutions Network)が発表した「Sustainable Development Report2024」によると、日本のSDGs達成状況は調査対象166か国中18位と上位にランクされたものの、ゴール別評価では概ね「進展中」とされ、ゴール5の「ジェンダー平等」に至っては「停滞」という評価を受けている。また、2024年6月の世界経済フォーラムが公表したジェンダーギャップ指数でも、日本は146か国中118位とされており、改善が求められている。さらに、2024年10月には国連の「女性差別撤廃委員会」が日本政府に対し、夫婦同姓を定めた民法の改正を求めるなどしている。このように、日本におけるDEIの推進は国際的には周回遅れとなっている。・・・


SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。
ベルテルスマン財団 : ドイツを本拠に世界規模で新聞、出版、放送、レコードなどのメディア事業を展開しているベルテルスマン・グループを母体に1977年に設立されたイツ最大規模の財団。社会福祉に貢献する目的で、文化をはじめ、教育、国際交流、政治、医療など多くの分野で公益事業を展開している。
持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN=Sustainable Development Solutions Network) : SDGsに関する世界最大のネットワークで、国連事務総長の後援の下、世界中の大学、シンクタンク、国立研究所と協働し、持続可能な開発に関わる重要課題へのグローバルおよびローカルな解決策を特定することを目的としている。具体的には、科学、政策、そして持続可能な開発の実践活動が交差する領域で活動し、教育、研究、政策分析、国際協力を通じて、SDGsおよびパリ協定の推進に取り組んでいる。
世界経済フォーラム : 経済、政治、学究、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界、地域、産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組むことを目的とし、1971年に発足した非営利財団。世界経済フォーラムが毎年1月に開催する年次総会である「ダボス会議」には、日本の首相を含む各国を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマについて議論するだけに、同会議における決定・公表事項は世界に強い影響力を持つ。スイスの有名な保養地であるダボスで開催されることから「ダボス会議」との名前が付いた。

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