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買収防衛策導入で取締役が「信認義務に違反していない」と判断されやすい3つのケース

フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男

ニデックが牧野フライス製作所に提案した同意なき買収に対し、牧野フライス製作所が導入した対抗措置に注目が集まっている。

「買収防衛策」には、ホワイトナイトによる対抗買収、MBO高額配当など様々な手法があるが、最も一般的なのは「ポイズンピル」であろう。1980年代初頭の米国では同意なき買収が急増し、裁判所も「異常(anomaly)」 と指摘していたが、裁判所はこれを食い止めることができなかった。そこで、弁護士やアドバイザーなどのディールプランナーが1982年に開発したのがポイズンピルだ。


ホワイトナイト : 敵対的買収を仕掛けられた際に、当該買収者に対抗して、友好的な買収を提案してくれる会社等のこと。白馬の騎士(ホワイトナイト)に例えてこう呼ばれる。通常は、敵対的買収者よりも高い価格で株式を買い取るか、第三者割当増資を引き受けることになる。
MBO : MBO(マネジメント・バイアウト)とは、現在の経営者が全部または一部の資金を出資し、事業の継続を前提として一般株主から対象会社の株式を取得することをいう。
高額配当 : 企業が非常に高額な配当金を株主に支払うことで、企業の資金を大幅に減少させ、買収を経済的に非効率なものにすることにより買収防衛を図る手法。短期的には株主に利益を還元することになるが、企業の資本が減少することで、将来の成長投資や研究開発に悪影響が及び、長期的な競争力が失われるリスクもある。
ポイズンピル : 「敵対的買収者が被買収企業の株式の一定割合を取得した場合、既存株主は時価より安い価格で新株を購入できる」という権利(ライツ)を既存株主に与える手法。新株が発行されれば、敵対的買収者の持株比率は低下するとともに、1株当たりの株価も安くなり、敵対的買収者は大きな損失を被ることになる。「ポイズンピル(毒薬条項)という名称は、毒薬が回って体が弱るようなイメージがあることから来ている。

ポイズンピルは、買収対象会社に対する買収者の持株割合が一定割合(トリガー)を超えると、全ての株主に対して、株価に比べ大幅にディスカウントされた金額を払い込めば普通株式と同様の権利内容を有する議決権付き優先株式を取得できる権利が付与される一方、買収者とその関係者は当該権利を行使できないという内容となっている。このため、買収者の持株割合がトリガーを超えると、当該持株割合が希釈化され、買収者は経済的に大きな損害を被る。

当然ながら、買収者はポイズンピルの発動を差し止めるため、訴訟を提起することになる。米国の裁判所で判断のメルクマールとなっているのが「取締役が信認義務に違反してるか否か」だ。総じて、買収提案が以下の3つの型のいずれかに当てはまる場合には、取締役は「信認義務に違反していない」と判断されるケースが多い。・・・

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