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セブンがROE、ROICではなくTSRを選んだ理由

フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男

カナダのコンビニ大手であるアリマンタシォン・クシュタール(以下、クシュタール)から1株18.19ドル(約2,700円)の買収提案を受けていたセブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン)が創業家によるMBOを断念した周知のとおり。そのうえで、セブン&アイ・ホールディングスは3月6日、下記の5つの企業価値向上策を公表したところだ(同社のリリースはこちら)。

(1)ファーストリテイリングや西友のCEOなどを歴任したスティーブン・ヘイズ・デイカス社外取締役を代表取締役社長 兼 CEOに起用し、経営を刷新する。
(2)セブンの営業収益のうち5割を占める北米の完全子会社であるセブンイレブン・インクを2026年後半までに米国でIPOし、価値を顕在化する。
(3)スーパーや外食などの約30社を保有する中間持株会社であるヨーク・ホールディングスをベインキャピタルに8,147億円で売却する。
(4)上記(2)(3)で得た資金を原資とし、2030年度までに時価総額の約4割にあたる総額2兆円の自社株買いをする。
(5)セブン銀行の株式保有比率を40%未満に引き下げ、非連結化する。

(4)の自社株買いの方針を打ち出したことによるいわゆる「アナウンスメント効果」により、3月6日のセブン&アイ・ホールディングスの株価は一時10%高の2,199円をつけ、2024年11月20日以来の日中上昇率となったが、翌日の終値は2,092円ととどまり、クシュタールの買収価格(約2,700円)には遠く及ばなかった。マスメディアでは、時価総額5兆円のセブン&アイ・ホールディングスが2兆円の自社株買いを行うと株価は4割上昇し(この「4割」は時価総額5兆円に対する自社株買い額2兆円の割合を指すと思われるが、根拠はない)2,900円超になると報道されたが、自社株買いは流通量を減少させるだけで、企業価値を上げるわけではない。

ここで注目すべきは、セブンが企業価値向上策を実行する根拠として株主総利回り(以下、TSR)を挙げたことだ(セブンが3月6日に公表した「マネジメント施策に関するアップデート」13ページの図参照)。・・・

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