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同床異夢の中でスタートしたCGコードの改訂作業

2025年6月11日のニュース「CGコード改訂の方向性」でお伝えしたとおり、6月2日に金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)が約1年ぶりに開催され、コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の見直し作業がスタートした。前回の改訂(2021年6月)から4年を経ての改訂となるが、2023年4月のフォローアップ会議で取りまとめられた「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム(意見書(6))」で「各コードの改訂時期については、必ずしも従前の見直しサイクルにとらわれることなく、コーポレートガバナンス改革の実質化という観点から、その進捗状況を踏まえて適時に検討すること」とされ、3年に1回という定期的な改訂は行なわないこととされただけに、企業からは今回の改訂時期について「想定より早く来た」との声が聞こえてくる。6月11日には同じく金融庁の「有価証券報告書の定時株主総会前の開示に向けた環境整備に関する連絡協議会」が開催され、有価証券報告書の総会前開示(今後、「有価証券報告書の開示後の総会開催」という表現に変更される模様)の流れも決定的となり、会社法や金商法といったハードローの改正と同時並行での改訂となる。

今回のCGコード改訂の目的は以下のとおり。

①企業と投資家の自律的な意識改革に基づくコーポレートガバナンス改革の実質化を促す
②企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に真に寄与する「緊張ある信頼関係」に基づく対話の促進に向けた環境整備
③上場企業の対応コスト・開示負担に配慮し、策定・改訂時から一定期間が経過し実務への浸透が進んだ箇所等を削除・統合・簡略化する
④前回コード改訂時(2021年)以降に法制化された内容との重複排除に努めることで、コードのスリム化/プリンシプル化も同時に検討する

さらに、より具体的な改訂の方向性として以下が示されている。

① 経営資源の配分先には、設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備等・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等、様々な投資先が考えられ、これらの多様な投資機会があることを認識することが重要である。このうち、知的財産等の無形資産への投資については、コーポレートガバナンス・コードと整合的な取組の促進に向け、引き続き関係機関との連携や事例の共有を進める。
また、人的資本への投資に関する開示を充実させる観点から、有価証券報告書における従業員給与・報酬に関する記載事項を集約するとともに、新たに企業戦略と関連付けた人材戦略や従業員給与・報酬の決定に関する方針、従業員給与の平均額の前年比増減率等の開示を求める。
② 上記の経営資源の配分に関し、現状の資源配分が適切かを不断に検証しているか、例えば現預金を必要以上に積み増していないか(cash hoarding 問題)の検証・説明責任の明確化を検討する。


hoarding : 「貯蔵」「買いだめ」といった意味。

本日6月13日に開催される「新しい資本主義実現会議」を経て閣議決定される「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2025年改訂版」においても、上記の方向性を概ねなぞる形で、CGコードを改訂する理由と内容が示される。具体的には、「コーポレートガバナンス改革を引き続き推し進めることにより、中長期的な企業価値の向上を更に後押しする」とともに、「企業による積極投資を促進し、価値向上による果実を家計を含めた主体に広く分配することが重要である」としたうえで、「企業の稼ぐ力を更に向上させるため、」「経営資源の配分先には設備投資・研究開発投資・地方拠点の整備・スタートアップ等を含む成長投資、人的資本や知的財産への投資等を含む多様な投資機会があることを認識することが重要であり、」「経営資源の適切な配分が行われているかの検証・説明責任の明確化を含むコーポレートガバナンス・コードの見直しを検討する」としている。

若干唐突感があるのが、「地域のまちづくり・スタートアップ等の成長投資をコーポレートガバナンスに位置づけることで企業の投資を促すべきであり、企業の積極的な投資による地方における拠点整備が、中長期的な企業価値の向上につながることを(明らかにするために)」コーポレートガバナンス・コードの見直し等を行うとの記述が入ったことだ。これは、自民党の「新しい資本主義実行本部」(岸田文雄本部長)の提言(5月15日)に基づいている。同提言の47ページには「地域のまちづくり・スタートアップ等の成長投資をコーポレートガバナンスに位置づけることで企業の投資を促すべきであり、企業の積極的な投資による地方における拠点整備が、中長期的な企業価値の向上につながることをコーポレートガバナンス・コードの見直し等により明らかにすべきである。」とある。「成長投資」を促す文言は・・・

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