2025年5月9日付ニュース「監査等委員会設置会社に移行する際の投資家への説明のポイント」などでもお伝えしたとおり、監査等委員会設置会社への移行が継続的に増加しており、2025年6月の株主総会後には監査等委員会設置会社がプライム市場において最も多い機関設計となっている。東証コーポレートガバナンス情報サービスにて各市場に上場する会社の機関設計を確認したところ、プライム市場では監査等委員会設置会社が全体の48.2%と、監査役会設置会社の46.8%を1.4ポイント上回っていた(2025年7月31日時点)。スタンダードおよびグロース市場では依然として監査役会設置会社が多数派ではあるものの、監査等委員会設置会社の割合は着実に高まっており、スタンダード市場においては大きな差はなくなっている。
機関設計 | プライム | スタンダード | グロース |
指名委員会等設置会社 | 82社(5.1%) | 11社(0.7%) | 3社(0.5%) |
監査等委員会設置会社 | 780社(48.2%) | 703社(44.7%) | 226社(37.2%) |
監査役会設置会社 | 757社(46.8%) | 858社(54.6%) | 378社(62.3%) |
下表のとおり、東証はプライム市場を「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業」向けの市場と位置付けるとともに、同市場には「建設的な対話の実効性を担保する基盤」としてのガバナンスを有する銘柄を選定するとしている。
プライム市場の コンセプト |
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場 | |
上場基準の 考え方・狙い |
流動性 | 多様な機関投資家が安心して投資対象とすることができる潤沢な流動性の基礎を備えた銘柄を選定する。 |
ガバナンス | 上場会社と機関投資家との間の建設的な対話の実効性を担保する基盤のある銘柄を選定する。 | |
経営成績 財政状態 |
安定的かつ優れた収益基盤・財政状態を有する銘柄を選定する。 |
では、プライム市場に上場している監査等委員会設置会社は、他の機関設計と比較して「持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミット」していると言えるのだろうか。当フォーラムでは、TOPIX100採用銘柄(銀行業・保険業を除く90社)について、3つの機関設計別に株価パフォーマンスおよび財務パフォーマンスを比較することで、それぞれの機関設計における収益構造の特徴および投資家の評価を検討した。具体的には、①PBR(株価純資産倍率)=PER(株価収益率)×ROE(自己資本利益率)、②ROE=財務レバレッジ(自己資本比率の逆数)×ROA(総資産利益率)」③ROA=ATR(総資産回転率)×ROS(売上高営業利益率)、の3つの指標および分解式を活用して分析している(株価データは2025年6月末時点、財務データは2020-2024年度の平均値を使用)。・・・
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。
PER : Price Earnings Ratio=株価収益率(株価/1株当たり純利益)。PERが高いほど、株価がその企業の利益に対して「割高」に評価されているということになるが、それは必ずしも「悪い」わけではなく、一般的には、将来の成長期待が大きいということを意味する。
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
財務レバレッジ : 株主資本(自己資本)を1とした場合、その何倍の総資産を有しているかを示す数値。「総資産/株主資本」によって計算される。財務レバレッジ(=テコ)が大きい会社とは、借入金の大きい会社である。財務レバレッジが高ければ、株主資本よりも大きな取引を行うことができる。ただし、その反面、有利子負債が増加して、金利負担、返済負担が増加し、会社の収益性が下がったり、財務リスクを抱えたりする可能性がある。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。
ATR : 「Asset Turnover Ratio」 の略で、企業が保有する総資産を使ってどれだけ効率的に売上を生み出しているかを示す指標で、「売上高÷総資産」によって算出される。資産活用の度合いを測る財務分析に用いられる。
ROS : 「Return on Sales」の略で、企業が売上に対してどれだけ効率よく利益を出しているかを示す。「営業利益 ÷ 売上高」によって計算され、ROSが低い場合には、売上に対してコストがかかりすぎており、利益が出ていない可能性がある。
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