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TOB価格引き上げの代償

新聞等でも報道されているとおり、化粧品製造販売のマンダム(東証プライム)は2025年11月27日、MBO(マネジメント・バイアウト)の実現に向けたTOB(株式公開買付)の価格が、1株1,960円から2,520円に引き上げられたことを発表した(同社のリリースはこちら)。同日の株価は2,428円となっており、従来の買付価格ではTOBの成立が危ぶまれていたが、一転して実現に向けて前進することになった。大株主であるアクティビスト2社、国内系のシティインデックスイレブンス(約20%保有)およびシンガポール拠点のひびき・パース・アドバイザーズ(約5%保有)も、今回示された価格による買い付けに応募することに合意しており、今後さらなる好条件の対抗TOBの提案でもない限り、マンダムのMBOが実現する可能性は高い。本事案の経緯は下表のとおり。

2025年9月 英PEファンドCVCキャピタル・パートナーズ(CVC)の支援を受け、1株1,960円でのMBOを目指すことを発表
シティインデックスイレブンス(CI11)が野村絢と共同で大量保有報告書を提出(6.7%)
2025年10月 CI11が継続的に買い増し、10/28時点で18.8%を保有
2025年11月 CI11を主な対象として、大規模買付行為等に関する対応方針(新株予約権の無償交付)を決議、CVC系以外の第三者による買収提案も求めることを公表
ひびき・パース・アドバイザーズ(ひびき)による大量保有が判明(5.0%)
TOB価格を2,520円に引き上げ、ひびき及びCI11との間でTOBに応募する旨の契約を締結

当初のTOB価格1,960円は、過去3か月間の終値平均1,418 円を38.22 %上回っている。また、マンダムのBPS
(1株当たり純資産)は直近期末で1,543.08円であり、TOB価格に基づくPBR(株価純資産倍率:株価がBPSの何倍まで買われているかを示す)は「1.27倍」ということになる。PBRが1倍割れとなるTOB価格によるMBOが資本市場で問題視される中、マンダムの当初TOB価格は著しく低い水準とは言えないだろう。


BPS : 「Book Value Per Share:1株あたり純資産」の略称で、通常は「株主資本÷発行済株式数」により算出される。
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

一方で、マンダムは実質無借金のキャッシュリッチ企業(自己資本比率が71.68%、総資産に占める現預金の割合が29.87%)であり、・・・

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