議決権行使助言会社最大手ISSの日本向け2026年ポリシー改定案については2025年11月10日のニュース『ISSが日本向けポリシーを改定へ「社外役員のサクセッション・プラン」が一層重要に』でお伝えしたところだが、ISSはこれに先立ち、2025年9月22日、ポリシー改定の参考とするために毎年行っている「グローバル・ベンチマーク・ポリシー調査」の結果を公表している。今回の調査には特段日本市場を対象にした項目や日本向け2026年度ポリシー改定案に直結する項目はないが、日本を含む「All countries」を対象とした項目がいくつかあるため、今回の調査結果が今後の日本向けポリシー改定に影響する可能性がある。
そこで本稿では、「All countries」向けの4項目のうち、日本市場に影響が大きいと考えられる3項目「取締役の兼任数」「長期インセンティブ報酬の構造」「AIガバナンスとリスク管理」を取り上げ、投資家(165)と非投資家(83、うち上場会社が57)による回答結果を分析する(1項目ごとに全3回でお伝えする)。なお、本稿では残りの1項目「複数議決権株式(Multi-Class Capital Structures)」は取り上げないが、これは我が国においてはサイバーダイン社以来の導入実績が見られないことによる(2015年5月28日のニュース「(新用語・難解用語)2倍議決権制度」参照)。
複数議決権株式 : 通常の「1株=1票」ではなく、1株に複数の投票権を付与する仕組み。日本のサイバーダイン社が導入した「1株10票」やフランスの「2倍議決権制度」が該当する。1株に複数の投票権を付与することで、創業者や長期保有株主の発言力を強化し、安定的な経営判断を可能にする狙いがある。一方で、特定株主に権限が集中すれば少数株主による牽制機能が弱まり、ガバナンスの形骸化を招く危険もあるため、公共性や透明性とのバランスが重要となる。
取締役の兼任数(Director Overboarding)
ISSは、・・・
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