2014/11/17 社外役員の独立性基準、TOPIX100企業の多くが「ひな形」より厳しく

 金融庁・東証は現在、有識者会議を設けてコーポレートガバナンス・コードの策定を進めているが、その中で企業が注目するポイントの1つが、社外役員の独立性基準だ。

 独立性基準とは、社外取締役・社外監査役(以下、社外役員)を選任するにあたって、当該役員の利益が株主の利益と相反しないか、独立性を判断する基準のこと。この独立性基準は、金融商品取引法に基づくいわゆる「開示府令」により開示することが求められている。

 では、具体的にどのような独立性基準を設ければよいのだろうか。1つの「ひな形」となっているのが、・・・

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2014/11/17 社外役員の独立性基準、TOPIX100企業の多くが「ひな形」より厳しく(会員限定)

 金融庁・東証は現在、有識者会議を設けてコーポレートガバナンス・コードの策定を進めているが、その中で企業が注目するポイントの1つが、社外役員の独立性基準だ。

 独立性基準とは、社外取締役・社外監査役(以下、社外役員)を選任するにあたって、当該役員の利益が株主の利益と相反しないか、独立性を判断する基準のこと。この独立性基準は、金融商品取引法に基づくいわゆる「開示府令」により開示することが求められている。

 では、具体的にどのような独立性基準を設ければよいのだろうか。1つの「ひな形」となっているのが、日本取締役協会が2014年2月に公表した「独立取締役選任基準モデル」だ(表1参照)。この基準は、「数値」により定量化されているという点に大きな特徴がある。この表は、例えば「取引先」から社外役員を迎える場合には、「年間連結総売上高の2%未満」の企業に属する者であれば、独立性要件に抵触しないというように読む。

(表1)日本取締役協会による独立取締役選任基準モデル

主要な取引先 年間連結総売上高の2%
(主要な取引の主体によって提出会社あるいは取引先グループの売上高を基準とする)
士業やコンサルへの報酬 年間1,000万円、または事務所やファームの連結総売上高の2%
寄付の上限 年間1,000万円、または当該組織の平均年間総費用の30%
持株比率 議決権所有割合10%
(社内役員から見た)親等 3親等

 実際に独立性基準を設定している企業がどの程度上記の「ひな形」に沿っているか見てみよう。

 TOPIX100のうち、独立性基準を設定し、開示している企業は21社(2014年9月までに開示された直近の有価証券報告書)あるが、このうち、「定量化」された基準を開示している企業は17社ある。この17社の独立性基準を分析したのが表2だ。おおむね「ひな形」に沿っているものの、いずれの基準においても「ひな形」が下限であり、より厳しい基準を設ける企業が散見されることが分かる。

(表2)TOPIX100の17社が設定した「定量化」された独立性基準

主要な取引先 2%(14社)、1%(1社)、算定分母に年間連結総売上高(14社)、連結営業収益(1社)
士業やコンサルへの報酬 1,000万円(12社)、 500万円(1社)
寄付の上限 1,000万円(12社)
持株比率 10%(7社)、5%(3社)
(社内役員から見た)親等 2親等(10社)、3親等(5社)

 自社のコーポレートガバナンスに関する取り組みに対し投資家の支持・コンセンサスを得るためにも、まだ独立性基準を設けていない企業は、これを社内ルールとして整備することは必須。その際には、TOPIX100企業の独立性基準も参考にしたい。

2014/11/17 【議案】役員に賞与を支払いたい(会員限定)

 

会社法では役員の「報酬」と「賞与」に違いなし

会社の業績は従業員の日々の努力が積み重なった結果ですが、その努力を上手に引き出したり会社の進むべき方向性を適切に見極めたりするのは取締役の経営手腕と言えます。そこで、従業員の頑張りに昇給や賞与で報いるのと同様、取締役の経営手腕に対して金銭的に報いることが、業績向上のために必要になります。

取締役や監査役等の役員に金銭的に報いる手立てとして、一般的に「役員報酬」と「役員賞与」の2つがあります。役員報酬は生活給的な要素があるため従業員の給与と同様に支給額は固定され、かつ、毎月1回決められた日に支給されるのが通常です。一方、役員賞与はいわゆるボーナスのことであり、支給額は業績に応じて大きく変動します。支給タイミングは年に1回~2回であり、業績が悪ければ支給されない年もあります。

このように「役員報酬」と「役員賞与」は、会社の運営上、“支給のタイミング”“支給の意図”“支給額の変動の有無”といった観点から明確に区別されるものと言えます。では、“支給手続き” や“会計面”においても「役員報酬」と「役員賞与」は別物として取り扱われているのでしょうか。

かつて(会社法導入前)、役員賞与は“支給手続き” や“会計面”において定時株主総会における配当と同じ取扱いが行われていました。具体的には、役員賞与は利益処分案の一項目として承認を得て支給され、“会計面”でも税引後利益を計算した後の配当と同様に、費用項目ではなく利益処分項目として会計処理(「未処分利益」のマイナス)されていました。つまり、その当時は、役員賞与の支給額を損益計算書に計上しないのが実務慣行になっていました。

しかし、会社法の導入により、役員賞与は役員報酬と同様に職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として整理されました。これに伴い、“会計面”における役員賞与の取扱いも変わり、役員賞与の額は発生した会計期間の費用として処理され(発生主義)、損益計算書の「販売費及び一般管理費」に計上されることになりました。ここで注意したいのは、「役員賞与の支給議案を株主総会に提出する」こと自体が禁止されたわけではないという点です。現在でも役員賞与議案を定時株主総会に提出する会社は数多くあります。そのような会社であっても、上述した“会計面”の変更を受け、役員賞与議案の可決を待たずに役員賞与を発生主義に基づき費用項目に計上する必要が生じたことになります。以上より、現在では、「役員報酬」と「役員賞与」は、どちらも“会計面”の取扱いでの差異がなくなったと言えます()。

 勘定科目としての区別や後述するような税務上の取扱いの違いはあります。
役員賞与の具体的配分額は誰がどうやって決める?

上述のとおり、「役員賞与」と「役員報酬」は、会社法においてはどちらも「役員の職務執行の対価」であるため取扱いが区別されていません。どちらも定款に金額の記載がなければ(上場会社であれば定款に金額まで記載されていないケースが通常です)、株主総会で承認された取締役全員(監査役の場合、監査役全員)の報酬総額(枠)の中から支払われることになります。

では、役員報酬の総額(枠)はどのようにして算定されるのでしょうか。役員と会社の関係は委任関係にあるため、その職務の対価はアルバイトの賃金のように時間単価に勤務時間を乗じて計算するといったたぐいのものではありません。実際のところ、同規模の会社、あるいは同業種の役員報酬を参考にして役員の人数や懐具合といった各社の事情を反映させるという方法で総額を算出している会社が多いと言えます。

この総額の中から役員賞与が支払われている限り、各取締役への具体的な支給金額は取締役会(さらにそこから代表取締役)に一任されるのが通常です。また、各監査役への具体的な支給額は、監査役報酬の総額の範囲内で監査役の協議(監査役全員の意見の一致が求められます)により決めることが会社法上求められています。

取締役は、取締役の報酬総額(枠)や監査役の報酬総額(枠)と実際発生額を比較して、枠に余裕が少ないのであれば、枠を広げることを検討する必要があります。とりわけ、役員報酬や役員賞与を増額したいにもかかわらず現行の役員報酬の枠では賄いきれない場合や社外役員の増加を見込んで役員報酬の枠を拡大しておきたい場合には、株主総会に取締役の報酬総額や監査役の報酬総額の改定議案の提出は必須となります。

役員賞与を法人税上の損金にする方法

役員賞与は上述のとおり業績に応じて支給するものであるため、もし役員賞与を損金に計上できるのであれば、利益が増えた分だけ役員賞与の額も増やすことで法人税額をゼロに抑えるといった節税策が可能になってしまいます。そこで、税収確保の観点から、役員賞与は損金として認められないのが原則です()。

損金 : 法人税額の算定基礎となる法人の「所得」を計算する際に、収益(益金)からマイナスできる費用や損失のこと

 法人税額の算定に際して、役員への支給額のうち定期同額(2017年改正により「額面額が一定」の場合だけでなく「手取り額が一定」の場合も定期同額として扱われることになりました)でないものは損金として認められません。ここで「定期」とは月に1回(正確には「1か月以下の一定の期間」)を意味します。役員賞与は、支払いタイミングが年に1~2回程度であるため、「定期」の要件を満たさず、損金として認められません。

もっとも、例外的に次の2つのどちらかに該当する役員賞与であれば、損金に計上することが認められています。

・「事前確定届出給与(*1)」や「利益連動給与(*2)」に該当する役員賞与
・取締役経理部長、取締役工場長など「使用人兼務役員」に支給する賞与のうち、使用人としての地位に対して支給された部分(*3
*1 「事前確定届出給与」とは、事前に所定の届出書を「決められた期限」まで(通常は「支給額を決定した株主総会の1か月後」または「決算日から4か月後」のうち早い日まで)に税務署に提出し、その届出どおりの金額を支給した場合に損金算入が認められる役員報酬です。夏冬の賞与であっても金額が事前に確定したものであれば、事前に届け出ることで損金算入が可能になります。ただし、実際には届出と異なる額を支給する場合、基本的に役員報酬の全額が損金不算入となるため注意が必要です。
*2 その事業年度の利益に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定される役員報酬です。「利益連動給与」(利益に関する指標を基礎として算定される給与)に関しては次の①から④までの全ての要件を満たす場合に、損金算入が認められます。

① 同族会社以外の法人が業務を執行する役員全てに対して支給するものであること(2017年改正により非同族会社の100%子会社が支給するものも対象とされました)
② 算定方法が、有価証券報告書に記載されるその事業年度の利益に関する指標を基礎とした客観的なもので、次の要件を満たすものであること。

イ 確定額を限度としているものであり、かつ、他の業務を執行する役員に対して支給する利益連動給与に係る算定方法と同様のものであること。
ロ その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに報酬委員会での決定等の一定の適正な手続を経ていること。
ハ その内容が有価証券報告書への記載等一定の方法で開示されていること。

③ 利益に関する指標の数値が確定した後1か月以内に支払われ、または支払われる見込みであること。
④ 損金経理をしていること。

なお②の報酬の算定指標について、2017年税制改正により従来の「利益の状況を示す指標」に加え、「株式の市場価格・売上高の状況を示す指標」の利用が可能となるとともに、「当該事業年度」の指標だけでなく「複数年度・将来の所定時点での指標」の採用も可能となり、企業の中長期的な成長を考慮したより柔軟かつ多様な役員報酬の設計促進が図られています。
*3 (1)類似した職務に従事している使用人の賞与、(2)そのような使用人がいない場合には、「役員就任直前に支給されていた賞与にベースアップを加味した額」や「最上位の使用人の賞与を参考に見積もった額」とされます。

上場会社で役員賞与を支給している会社の多くは、「事前確定届出給与」を用いて損金算入できる範囲で役員賞与を支給しています。損金算入できるかどうかは会社の税額負担、ひいてはキャッシュ・フローに影響するため、税務担当取締役は導入の是非を真剣に検討すべきです。

未支給の役員賞与も費用計上が可能

役員賞与は「職務の遂行の対価」という性質を持つ点が役員報酬と同じですが、役員報酬が確定額を支給するのに対し、役員賞与は当期の業績に連動して算定されるという違いがあります。例えば3月決算の会社であれば、6月の定時株主総会で役員賞与の支給が決定され、6月末または7月上旬頃に支給されるケースが多いです。そこで事業年度終了後に支給される役員賞与のうち前事業年度の職務に対する対価については、支給される可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合、前事業年度末において見込み額を費用計上します。その場合、貸借対照表上は「流動負債」の区分に「役員賞与引当金」として計上し、損益計算書上は、「販売費及び一般管理費」の区分に、「役員賞与引当金繰入額」として表示します。

経理担当取締役は、事業年度末後に実際に支給した役員賞与の額が、前事業年度末に見込んだ役員賞与引当金計上額からどの程度乖離していたかを事後的に検証する必要があります。もし、大幅に異なっていた場合には、そもそも役員賞与の見積りが甘かった可能性があり、来期の見積り時に同じ過ちを繰り返さないよう再発防止策を講じなければなりません。もっとも、上場会社では支給額と見込額に大幅な差異はほとんど見られません。その理由は、引当金の見積りの精度が低い場合は、J-SOX(財務報告に係る内部統制報告制度)において、決算財務報告プロセスに重大な問題があるとして、開示が必要になる可能性が生じるからです。J-SOXが適用されている上場会社では、J-SOXの適用がない非上場会社よりも、引当金の計上に、より慎重になる傾向があると言えます。

なお、次のようなケースでは、役員賞与のうち期末日現在にて未支給の分はもはや確定債務と言え、見込額であることを前提にした「役員賞与引当金」ではなく、「未払役員報酬」や「未払費用」等の科目で計上します。

未支給の役員賞与が
確定債務と言えるケース
・役員賞与規程等で支給額が決められている場合のように株主総会の決議がなされなくても実質的に支給額が確定しているケース
・報酬の総額の範囲内で株主総会の決議を経ずに役員賞与を支払う旨取締役会等で決議しているようなケース
・株主総会の決議を経て支給する役員賞与で、親会社など大株主が役員賞与の議案に賛成することがかなりの確度をもって見積もれるケース
役員報酬・賞与が1億円以上であれば氏名を公表

役員賞与は株主等に開示しなければなりませんが、開示の場所、開示される役員の範囲などは、すべて役員報酬と同じです。また、役員賞与と役員報酬の総額を記載しなければならない部分もあるため、以下、両者を合わせて説明します。

役員報酬および役員賞与は、会社法で作成が求められる事業報告の「会社役員に関する事項」および金融商品取引法で作成が求められる有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】で開示されます。有価証券報告書の開示内容の方がやや詳細となっていますが、報酬の総額、人数等を記載する点では共通しています。

また、証券取引所に提出し、開示されるコーポレート・ガバナンスに関する報告書においても、個別の取締役の報酬についての開示状況や報酬の額またはその算定方法の決定方針の有無を記載します。以下では、有価証券報告書における役員報酬等の記載内容について説明します。

(1)【コーポレート・ガバナンスの状況】での開示
・開示される役員の範囲
有価証券報告書提出会社の役員()が対象となります(「子会社の役員」で、かつ、「提出会社の役員ではない」者は対象外です)。

 役員とは取締役、監査役および執行役をいい、最近事業年度(直近で終了した事業年度。以下同じ)の末日までに退任した役員を含みます。

・開示される報酬等の範囲
報酬、賞与その他の職務遂行の対価としてその会社から受ける財産上の権利(ストック・オプションなども含む)であって、最近事業年度に係るものおよび最近事業年度において支給を受けるか(例えば毎月の役員報酬)、受ける見込みの額が明らかとなったもの(上述のように、「見込額」を計上する役員賞与が典型です)が対象となります。ただし、退職慰労金の引当額の様に最近事業年度前のいずれかの事業年度に係る有価証券報告書に記載したものを除きます。

なお、記載すべき報酬は、提出会社の役員としての報酬のほか、連結子会社の役員を兼任している場合の連結子会社における報酬も含みます(金額的な重要性が低いものについては合算不要)。

・開示内容
(役員の区分ごとの総額)

「取締役(社外取締役を除く)」「監査役(社外監査役を除く)」「執行役」「社外役員」の区分ごとに、報酬の総額、報酬の種類別(基本報酬、ストック・オプション、賞与、退職慰労金等)の総額および対象となる役員の数を記載します。

(役員一人ひとりの額)
さらに、一人ひとりの役員についても、氏名、上記の役員区分、報酬(主要な連結子会社の役員としての報酬がある場合には、その報酬を含む)の総額、上記の報酬の種類別の額について、提出会社と各主要な連結子会社に区分して記載するのが原則ですが、一人ひとりの役員についての開示は、報酬の総額が1億円以上である者に限ることができます。報酬が1億円を超えた役員の氏名は、新聞や経済誌等で報道されるほど注目を集める開示と言えます。

(方針)
役員の報酬の額やその算定方法の決定に関する「方針」を定めている場合には、「当該方針の内容及び決定方法」を記載します。なお、当該方針を定めていない場合には、「定めていない」旨を記載することになりますが、現状では当該方針を定めている会社が大半と言えます。「方針」として、固定報酬、業績連動型報酬の決定方法等について記載している例があります。

(2)【経理の状況】での開示
役員賞与の費用計上額は、有価証券報告書の【経理の状況】における提出会社の損益計算書の「販売費及び一般管理費」の区分に「役員報酬」や「役員賞与引当金繰入額」(引当金に計上した場合)等として開示されます。

なお、同じく【経理の状況】における関連当事者情報の注記では、役員と会社(や連結グループ)との取引が1,000 万円を超えれば開示しなければなりませんが、役員報酬や役員賞与についてはその記載対象から除外されています(関連当事者情報の注記については「会社と関係が深い者との取引があった」の「関連当事者取引注記が必要になる取引とは?」」を参照してください)。

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2014/11/17 チェックリスト:役員に賞与を支払いたい(会員限定)

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■チェックリスト:役員に賞与を支払いたい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
取締役の役員賞与と役員報酬の合計は、株主総会で承認された取締役全員の報酬総額(枠)の中に収まることを確認しているか。
監査役の役員賞与と役員報酬の合計は、株主総会で承認された監査役全員の報酬総額(枠)の中に収まることを確認しているか。
各取締役への具体的な支給金額は取締役会または代表取締役に一任しているか。
各監査役への具体的な支給金額は、監査役の協議により決めているか。
総務担当取締役は、取締役の報酬総額(枠)や監査役の報酬総額(枠)と実際発生額を比較して、枠を広げることを検討しているか。 役員報酬や役員賞与を増額したいにもかかわらず現行の役員報酬の枠では賄いきれない場合や社外役員の増加を見込んで役員報酬の枠を拡大しておきたいといった場合には、枠を広げる必要がある。
税務担当取締役は役員賞与を損金に計上するための方策として「事前確定届出給与」や「利益連動給与」の制度の利用を検討したか。 解説本文の「役員賞与を法人税上の損金にする方法」を参照
税務担当取締役は、「事前確定届出給与」を利用する場合、期限内に税務署への届け出を行うとともに、届出通りの支給を行っているか。 解説本文の「役員賞与を法人税上の損金にする方法」を参照
税務担当取締役は、「利益連動給与」を利用する場合、税務上の要件を満たしていることを確認しているか。 税務上の要件については解説本文の「役員賞与を法人税上の損金にする方法」を参照
事業年度終了後に支給される役員賞与のうち前事業年度の職務に対する対価については、支給される可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もれる場合、前事業年度において見込み額を費用計上しているか。 貸借対照表上は「流動負債」の区分に「役員賞与引当金」として計上し、損益計算書上は、「販売費及び一般管理費」の区分に、「役員賞与引当金繰入額」として表示する。
事業年度末に支払っていない役員賞与のうち確定債務と言える分については、貸借対照表上「未払役員報酬」等の適当な科目をもって計上しているか。 確定債務と言えるケースとしては次のようなものが考えられる。
・役員賞与規程等で支給額が決められている場合のように株主総会の決議がなされなくても実質的に支給額が確定しているケース
・報酬の総額の範囲内で株主総会の決議を経ずに役員賞与を支払う旨取締役会等で決議しているようなケース
・株主総会の決議を経て支給する役員賞与で、親会社など大株主が役員賞与の議案に賛成することがかなりの確度をもって見積もれるケース
経理担当取締役は、事業年度末後に実際に支給した役員賞与の額が、前事業年度末に見込んだ役員賞与引当金計上額からどの程度乖離しているかを検証しているか。 もし大幅な乖離があれば、J-SOX(財務報告に係る内部統制報告制度)における決算財務報告プロセスに重大な問題があるとして、開示が必要になる可能性がある。
有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】における開示に備えて、役員の報酬の総額が1億円以上かどうかを判断する際、役員が連結子会社の役員も兼任している場合における当該連結子会社側での役員報酬を合算しているか。 金額的な重要性が低いものについては合算不要。

ケーススタディ役員実務「役員に賞与を支払いたい(会員限定)」はこちら

2014/11/17 【議案】役員に賞与を支払いたい

会社法では役員の「報酬」と「賞与」に違いなし

会社の業績は従業員の日々の努力が積み重なった結果ですが、その努力を上手に引き出したり会社の進むべき方向性を適切に見極めたりするのは取締役の経営手腕と言えます。そこで、従業員の頑張りに昇給や賞与で報いるのと同様、取締役の経営手腕に対して金銭的に報いることが、業績向上のために必要になります。

取締役や監査役等の役員に金銭的に報いる手立てとして、一般的に「役員報酬」と「役員賞与」の2つがあります。役員報酬は生活給的な要素があるため従業員の給与と同様に支給額は固定され、かつ、毎月1回決められた日に支給されるのが通常です。一方、役員賞与はいわゆるボーナスのことであり、支給額は業績に応じて大きく変動します。支給タイミングは年に1回~2回であり、業績が悪ければ支給されない年もあります。

このように「役員報酬」と「役員賞与」は、会社の運営上、“支給のタイミング”“支給の意図”“支給額の変動の有無”といった観点から明確に区別されるものと言えます。では、“支給手続き” や“会計面”においても「役員報酬」と「役員賞与」は別物として取り扱われているのでしょうか。

かつて(会社法導入前)、役員賞与は“支給手続き” や“会計面”において定時株主総会における配当と同じ取扱いが行われていました。具体的には、役員賞与は利益処分案の一項目として承認を得て支給され、“会計面”でも税引後利益を計算した後の配当と同様に、費用項目ではなく利益処分項目として会計処理(「未処分利益」のマイナス)されていました。つまり、その当時は、役員賞与の支給額を損益計算書に計上しないのが実務慣行になっていました。

しかし、会社法の導入により、役員賞与は役員報酬と同様に職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として整理されました。これに伴い、“会計面”における役員賞与の取扱いも変わり、役員賞与の額は発生した会計期間の費用として処理され(発生主義)、損益計算書の「販売費及び一般管理費」に計上されることになりました。ここで注意したいのは、「役員賞与の支給議案を株主総会に提出する」こと自体が禁止されたわけではないという点です。現在でも役員賞与議案を定時株主総会に提出する会社は数多くあります。そのような会社であっても、上述した“会計面”の変更を受け、役員賞与議案の可決を待たずに役員賞与を発生主義に基づき費用項目に計上する必要が生じたことになります。以上より、現在では、「役員報酬」と「役員賞与」は、どちらも“会計面”の取扱いでの差異がなくなったと言えます()。

 勘定科目としての区別や後述するような税務上の取扱いの違いはあります。
役員賞与の具体的配分額は誰がどうやって決める?

上述のとおり、「役員賞与」と「役員報酬」は、会社法においてはどちらも「役員の職務執行の対価」であるため取扱いが区別されていません。どちらも定款に金額の記載がなければ(上場会社であれば定款に金額まで記載されていないケースが通常です)、株主総会で承認された取締役全員(監査役の場合、監査役全員)の報酬総額(枠)の中から支払われることになります。

では、役員報酬の総額(枠)はどのようにして算定されるのでしょうか。役員と会社の関係は委任関係にあるため、その職務の対価はアルバイトの賃金のように時間単価に勤務時間を乗じて計算するといったたぐいのものではありません。実際のところ、同規模の会社、あるいは同業種の役員報酬を参考にして役員の人数や懐具合といった各社の事情を反映させるという方法で総額を算出している会社が多いと言えます。

この総額の中から役員賞与が支払われている限り、各取締役への具体的な支給金額は取締役会(さらにそこから代表取締役)に一任されるのが通常です。また、各監査役への具体的な支給額は、監査役報酬の総額の範囲内で監査役の協議(監査役全員の意見の一致が求められます)により決めることが会社法上求められています。

取締役は、取締役の報酬総額(枠)や監査役の報酬総額(枠)と実際発生額を比較して、枠に余裕が少ないのであれば、枠を広げることを検討する必要があります。とりわけ、役員報酬や役員賞与を増額したいにもかかわらず現行の役員報酬の枠では賄いきれない場合や社外役員の増加を見込んで役員報酬の枠を拡大しておきたい場合には、株主総会に取締役の報酬総額や監査役の報酬総額の改定議案の提出は必須となります。

役員賞与を法人税上の損金にする方法

役員賞与は上述のとおり業績に応じて支給するものであるため、もし役員賞与を損金に計上できるのであれば、利益が増えた分だけ役員賞与の額も増やすことで法人税額をゼロに抑えるといった節税策が可能になってしまいます。そこで、税収確保の観点から、役員賞与は損金として認められないのが原則です()。

損金 : 法人税額の算定基礎となる法人の「所得」を計算する際に、収益(益金)からマイナスできる費用や損失のこと

 法人税額の算定に際して、役員への支給額のうち定期同額(2017年改正により「額面額が一定」の場合だけでなく「手取り額が一定」の場合も定期同額として扱われることになりました)でないものは損金として認められません。ここで「定期」とは月に1回(正確には「1か月以下の一定の期間」)を意味します。役員賞与は、支払いタイミングが年に1~2回程度であるため、「定期」の要件を満たさず、損金として認められません。

もっとも、例外的に次の2つのどちらかに該当する役員賞与であれば、損金に計上することが認められています。・・・

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未支給の役員賞与も費用計上が可能

役員賞与は「職務の遂行の対価」という性質を持つ点が役員報酬と同じですが、役員報酬が確定額を支給するのに対し、役員賞与は当期の業績に連動して算定されるという違いがあります。例えば3月決算の会社であれば、6月の定時株主総会で役員賞与の支給が決定され、6月末または7月上旬頃に支給されるケースが多いです。そこで事業年度終了後に支給される役員賞与のうち前事業年度の職務に対する対価については、支給される可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合、前事業年度末において見込み額を費用計上します。その場合、貸借対照表上は「流動負債」の区分に「役員賞与引当金」として計上し、損益計算書上は、「販売費及び一般管理費」の区分に、「役員賞与引当金繰入額」として表示します。

経理担当取締役は、事業年度末後に実際に支給した役員賞与の額が、前事業年度末に見込んだ役員賞与引当金計上額からどの程度乖離していたかを事後的に検証する必要があります。もし、大幅に異なっていた場合には、そもそも役員賞与の見積りが甘かった可能性があり、来期の見積り時に同じ過ちを繰り返さないよう再発防止策を講じなければなりません。もっとも、上場会社では支給額と見込額に大幅な差異はほとんど見られません。その理由は、・・・

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役員報酬・賞与が1億円以上であれば氏名を公表

役員賞与は株主等に開示しなければなりませんが、開示の場所、開示される役員の範囲などは、すべて役員報酬と同じです。また、役員賞与と役員報酬の総額を記載しなければならない部分もあるため、以下、両者を合わせて説明します。

役員報酬および役員賞与は、・・・

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2014/11/15 使用高払い(会員限定)

<解説>
一口に「収益の認識基準」と言っても様々

 D社では「収益の認識基準」が争点になっています。収益の認識基準とは、文字通り収益(売上)の発生を認識するタイミングのことです。企業会計原則では、収益の認識は実現主義によるとされています。また、実現主義により収益を認識するためには、一般的に次の2つの要件が必要とされています。

(1)財貨の移転または役務の提供の完了
(2)(1)に対する現金または現金等価物その他の資産の取得による「対価の成立」

 この実現主義の要件を満たす具体的な認識基準(一般に公正妥当と認められる収益の認識基準)として、出荷基準(出荷のタイミングで収益を認識)、納品基準(得意先に納品したタイミングで収益を認識)、検収基準(得意先が検収したタイミングで収益を認識)などがあります。

 収益認識基準は業種によって異なります。例えば建設工事業であれば工事完成基準(工事完成時に収益を認識)や工事進行基準(工事の進行度合いに応じて収益を認識)があり、サービス業であれば役務提供完了基準があります。収益認識基準は販売形態によっても異なります。例えば委託販売時には、受託者が委託品を販売した日に売上を認識します。また、試用販売時には、得意先が使用した後に買取りの意思を表示したタイミングで売上を計上します(試用販売であれば、得意先が試用した結果購入しない可能性もあるため、得意先に引き渡したタイミングでの売上計上は認められていません)。

 このように一般に公正妥当と認められる収益の認識基準はいくつか認められており、会社はその中から自社に適した収益の認識基準を採用します。なお、会社は収益認識基準を1つしか採用できないわけではありません。経済的実態が同様の取引には同じ収益認識基準を適用すべきですが、経済的実態が異なるものは、その実態をもっとも適切に反映できる別の収益認識基準を適用することになります。

 具体的な収益認識基準を見て行きましょう。メーカーでは、出荷基準がよく見受けられます。出荷基準が広く採用されている理由は、売上の事実(出荷)をリアルタイムに把握でき、運用が容易な点にあります。返品が少ない業種であれば合理的な基準と言えます。また、納品基準はIFRS*を任意に適用している企業や適用を予定している企業で多く見かけます。IFRSの収益認識基準の1つに「物品の所有に伴う重要なリスクおよび経済価値が買手に移転している」といった要件があり、出荷しただけではその要件を満たさないものの、納品により要件を満たすケースが多いのが理由です。納品基準では、得意先の受領印が押された納品書などが売上の計上根拠資料になります。

* 国際財務報告基準

 小売業であれば、店舗販売とインターネット等を通じた通信販売とでは、事情が異なります。店舗販売では出荷と納品が同時に行われるため出荷と納品を区別する意味はありませんが、通信販売では発送(出荷)と着荷に時間差が生じるため、収益の認識基準をどちらにするのかを検討しなければなりません。

 また、機械や設備であれば出荷先に設置したタイミング(設置完了基準)で売上を認識する方法も考えられます。工業機械のように設置後もラインに組み込むための調整や仕様通りの性能が発揮されている点を確認するといった作業が必要となるものは、検収*されるまでに相当の時間がかかるため、得意先が検収したタイミングで売上を認識する検収基準が合理的です。検収基準では、得意先の検収印が押された検収書が売上の計上根拠資料となります。海外への出荷に際してFOB()契約を締結しているのであれば、船荷基準によります。

 Free On Boardの略で、本船甲板渡しのこと。船に積み込んだ時点で所有権が得意先へ移転します。

* 数量や仕様が注文通りであることを確認する作業

 「富山の薬売り」や「オフィス向け置き菓子」のように、売手が得意先に医薬品や菓子を備え置き、得意先は医薬品等の消費をもって購入の意思表示とする契約もあります。そのような取引では、売手は得意先を定期的に訪問し、消費量(販売量)を計り、売上を認識します。

明確に区別すべき「収益の認識基準」と「支払い条件」

 収益の認識基準とは明確に区別したいのが「支払い条件」です。収益の認識基準は自社の収益をどのタイミングで認識するのかといった話であるのに対し、支払い条件とは売り手と買い手が合意した対価の決済タイミングの話です。例えば「月末締め翌月末払い」といった支払い条件であれば、月末で締めた後、翌月末に支払うことになります。現金(預金)で支払いが行われるタイミングで収益を認識する基準を現金基準と言います。掛取引や手形取引を前提にすると、現金基準では収益の認識があまりに遅れてしまう(現金が実際に動く時まで売上を計上しない)ため、上述した実現主義に基づく収益の認識基準により売上を認識する必要があります。

 D社の取締役会で、営業取締役は「X社と交わした取引基本契約書によると、X社の支払い条件は“月末締め翌月末払いの使用高払い”となっています」と「支払い条件」イコール「使用高払い」である旨の発言をしていますが、X社が購入の意思表示をするタイミングがいつであるのかについては明確にしていません。C取締役はそれに気付き、「取引基本契約書を確認すべき」といった指摘を行っています。

以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役C:「収益の認識基準と支払い条件とは分けて考えた方が良いのではないでしょうか。X社と支払い条件を合意した際に、『X社は“使用した分だけ”購入する』という点も合意しているのであれば、従来の出荷基準を適用できないケースが新たに生じたと考えられます。そこで、まずは取引基本契約書を読み直して、『どの時点で当社が販売したと言えるのか』を探るべきです。」
コメント:当社とX社との間で製品の販売につきどのような合意が交わされたのかといった点を探るには、契約当時の担当者に質問を行うとともに、取引基本契約書を読み直す必要があります。もし当社とX社との間で「当社がX社の工場に製品を納品した時点」で製品が販売されるといった合意を交わしていたのであれば、X社への売上は出荷基準または納品基準で計上すべきです。そして、使用量に応じて売掛金の支払いを受けることになります。当社としては、「支払額」の根拠資料として、X社の担当者から使用の都度届く「使用量の報告メール」に加えて、X社に対して各月の「使用量および未使用在庫」が記載され社印が押された報告書を要請します。
 一方、「X社が製品を使用した時点」で製品が販売される(それまでは当社の預け在庫となる)といった合意を交わしていれば、X社への売上は使用量に応じて計上すべきです。その場合は「売上計上」のための根拠資料として、X社の担当者から使用の都度届く「使用量の報告メール」に加えて、X社に対して各月の「使用量および月末の預かり在庫」が記載され社印が押された報告書を要請します。また、期末にて預け在庫の金額が多額であれば、在庫証明書の入手に加えて、実際に棚卸をさせてもらうことも検討すべきです。

BAD発言はこちら
取締役A:「X社への売上を出荷基準に基づき計上した点が誤りであったと考えます。X社と合意した支払い条件が使用高払いになっている以上、使用した量に対応する分だけ売上を計上すべきたったのではないでしょうか。そうすれば入金差異にならなかったはずです。」
コメント:確かに「使用した量に対応する売り上げを計上していれば入金差異は生じなかった」と言えます。しかし、「支払い条件が使用高払い」イコール「使用高に応じて売上を計上」とするのは、あまりに短絡的な発言です。上述の解説で述べたとおり、「収益の認識基準(収益をどのタイミングで認識するのか)」と「支払い条件(売掛金をどういった条件で支払うのか)」は別々に考えるべきだからです。収益をどのタイミングで認識するのかは、上述のCの発言でコメントしたとおり「当社とX社との間で製品の販売につきどのような合意が交わされたのか」によります。
取締役B:「経理規程に『売上計上基準は出荷基準である』と定められている以上、X社との取引でも出荷基準を適用すべきです。ただし、期末の棚卸に際しては、X社に残っている在庫をカウントし忘れないようにしなければなりません。」
コメント:収益の認識基準が問題になっている以上、経理規程を出発点にして考えるのは定石と言えます。ところが経理規程に「出荷基準」とある以上、すべての取引を出荷基準で計上しなければならないというのも、頑固すぎる考え方と言えます。経理規程は決して万能ではありません。新しい経済事象が出てくれば、それに対応した会計処理を考え、経理規程を更新させる必要があります。
 収益の認識基準は裏返せば在庫の問題であることに気付いた点はGOODと言えます。しかし、「出荷基準を適用する」としておきながら、「期末にX社に残っている在庫を当社の在庫としてカウントすべき」とするのは、相手に売った製品を自社の在庫としてカウントするという矛盾した発言となっています。

2014/11/15 【役員会 Good&Bad発言集】使用高払い

 D社(東証第一部上場の製造業)では、収益の認識基準として出荷基準()を採用しており、得意先に直送する製品を工場から出荷するタイミングで売上を計上している。債権管理の担当者は得意先からの入金額と売掛金の入金予定額に差異*があれば、営業担当者に対して差異の理由につき文書による回答を求め、「所定の金額を超える多額の差異」や「今後の入金の見通しが立たない得意先の状況」を取締役会に報告するという内部統制を整備・運用している。

 D社の経理規程には「売上計上基準は出荷基準である」と記載されている。

* 売掛金の入金予定日に実際に入金された額が入金予定額と異なること。入金差異や違算とも呼ばれる。

 先々月より取引がスタートしたX社の入金差異が一定水準を超えていたため、取締役会で報告され、まず営業担当取締役が入金差異の理由を次のように説明した。

営業担当取締役:「X社と交わした取引基本契約書によると、X社の支払い条件は“月末締め翌月末払いの使用高払い”となっています。また、X社と交わした覚書によると、X社は当社製品の使用の都度、使用量をメールで連絡するようになっており、営業担当者は使用量を台帳で管理しています。先月末にX社より入金された額は、先々月にX社が使用した量に対応した額であることを、営業担当者が確認済みです。」

 営業担当取締役の説明に対して、他の取締役が次のような発言をしました。次のAからCの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

取締役A:「X社への売上を出荷基準に基づき計上した点が誤りであったと考えます。X社と合意した支払い条件が使用高払いになっている以上、使用した量に対応する分だけ売上を計上すべきたったのではないでしょうか。そうすれば入金差異にならなかったはずです。」

取締役B:「経理規程に『売上計上基準は出荷基準である』と定められている以上、X社との取引でも出荷基準を適用すべきです。ただし、期末の棚卸に際しては、X社に残っている在庫をカウントし忘れないようにしなければなりません。」

取締役C:「収益の認識基準と支払い条件とは分けて考えた方が良いのではないでしょうか。X社と支払い条件を合意した際に、『X社は“使用した分だけ”購入する』という点も合意しているのであれば、従来の出荷基準を適用できないケースが新たに生じたと考えられます。そこで、まずは取引基本契約書を読み直して、『どの時点で当社が販売したと言えるのか』を探るべきです。」

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2014/11/14 衆院解散の真の理由?「政治とカネ」問題における企業のリスク

 衆議院の解散が確実となった。表向きは消費税率引上げについて国民の審判を仰ぐということになっているが、経産大臣の辞任につながった野党による「政治とカネ」問題の追及をかわす狙いもあるようだ。

 今回の経産大臣辞任のケースもそうだったように、政治とカネの問題というと、最近は政治資金を受け取る「国会議員側」の不適切な資金管理が批判を集めることが多いが、政治資金を出す側である企業も、「政治資金規正法」への抵触には注意しておく必要がある。

 具体的な注意点を整理しておこう。

 まず、多くの企業にとって関係がありそうなのが、・・・

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2014/11/14 衆院解散の真の理由?「政治とカネ」問題における企業のリスク(会員限定)

 衆議院の解散が確実となった。表向きは消費税率引上げについて国民の審判を仰ぐということになっているが、経産大臣の辞任につながった野党による「政治とカネ」問題の追及をかわす狙いもあるようだ。

 今回の経産大臣辞任のケースもそうだったように、政治とカネの問題というと、最近は政治資金を受け取る「国会議員側」の不適切な資金管理が批判を集めることが多いが、政治資金を出す側である企業も、「政治資金規正法」への抵触には注意しておく必要がある。

 具体的な注意点を整理しておこう。

 まず、多くの企業にとって関係がありそうなのが、“政治資金パーティー”であろう。これは文字通り政治資金を集める目的で開催されるものであり、政治資金規正法上も認められているが、「同一の政治資金パーティー」で「同一の者」が20万円を超えて支払った場合には、その者の氏名、住所が政治資金収支報告書に記載されるルールとなっている。したがって、自社名が出ることを避けたいのであれば、パーティー券を購入する際には「20万円」という金額を意識しておきたい。

 また、政治資金規正法では、企業による寄附についても量的・質的な制限を設けている。企業が政党や政党の支部、政党が指定した政治資金団体に対して「政治寄附」を行うことは政治資金規正法上認められているが、その金額は資本金の額に応じて上限が決まっており、最大でも1億円(資本金1,050億円以上)となっている(政治資金規正法21条の3第1項二号、第2項参照)。

 質的な制限としては、国や地方公共団体から補助金等を受けている会社や、赤字会社、外国人、外国法人などからの寄附への規制がある。例えば、国による出資を受けている企業や、発行済み株式総数の過半数を外国人が保有している企業による政治寄附は禁止されている。

 年間5万円を超える寄附を行った場合には、総務省によって企業名が公表される点にも留意したい。

 1994年に実施された政治制度改革により政党交付金制度*が導入されて以降、企業による政治寄附が政治資金全体に占める割合は減少していることから、2008年に発覚した準大手ゼネコンによる汚職事件を除いて、企業の側の政治資金が問題となったケースはあまりないが、もし違法行為が明るみに出た場合には世間の強い批判にさらされることは間違いない。今回の経産大臣辞任問題を契機に、自社の政治資金を改めて点検しておくのもよいだろう。

* 一定の要件を満たした政党に対し、国が政治活動費を交付する制度

2014/11/13 (新用語・難解用語)行為計算否認規定

 キャッシュフローに大きな影響を与える税負担に経営陣が関心を持つのは当然であり(むしろ関心がない方が問題)、「節税」は経営陣として合理的な行動と言える。もっとも、節税は、税務当局から追徴課税を受けかねない「租税回避」と紙一重であることも少なくない。

 節税とは、「税法が予定する範囲内」で税負担を減少させる行為であり、あくまでも“合法”である。これに対し、例えば売上を意図的に計上しない(いわゆる売上除外)など、“不正”によって税を免れる行為は「脱税」と呼ばれ、違法に当たる。

 節税と脱税の中間に位置付られるのが「租税回避」だ。租税回避とは、「経済合理性のない異常な取引」などにより税負担を減少させる行為を指す。租税回避は形式的には税法の規定を満たしている点で脱税とは異なるが、実際には税法の規定を満たしているように仮装しているケースもしばしばあり、脱税との区分は曖昧である。また、何をもって「経済合理性がない」「異常な」と言えるかの判断は難しいため、「節税」との区分も難しく、しばしば企業と税務当局の紛争の一因となっている。

 こうした租税回避を防止する税法上の規定が「行為計算否認規定」である。行為計算否認規定とは、・・・

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