予想以上に重い追加コストが店舗閉鎖のタイミングを難しく
「○○社、不採算100店舗を閉鎖」といったニュースを新聞紙上で見かけることがあります。小売業や外食産業などの比較的多店舗展開が多い業種では、このような店舗の大量閉鎖のニュースは珍しくありません。
「100店舗を閉鎖」などという見出しを見ると、「出店に比べ、店舗の閉鎖にはたいしてコストがかからないから、閉鎖の決断は難しくないのだろう」などと思ってしまいますが、果たしてそうでしょうか。
出店時には、店舗の建設費、内装工事費、保証金などのコストがかかるのに対し、店舗の閉鎖の際には、看板や什器の撤去費用、原状回復費用、解約前予告家賃、保証金の割り増し償却といった、出店時とは“逆ベクトル”の諸費用が発生します。撤退にも結構お金がかかるのです。
閉鎖にかかる諸費用として発生が見込まれるものについて、その具体的な内容を主な出店パターンごとにまとめると次のとおりです。
| 費用の種類 | 出店パターン | 内容 |
| 原状回復費用 | テナント | 「テナントを借りた時点」の状態に戻すための費用です。看板、内装、什器、仕切り壁などの撤去費用が該当します。 |
| 借地の上に店舗建物を建設 | 借地を更地に戻すためにかかる費用です。建物の取り壊し費用などが該当します。 ただし、建物の価値が残っているような場合であっても必ず取り壊して更地にしなければならないとするのは、社会経済上不合理であるという理由から、借地権者は、一定の場合には借地権の設定者に対して「建物買取請求権」を行使し、建物を時価で買い取ることを請求できます(借地借家法第13条)。実務上は、例えば賃料不払いなどの債務不履行がないまま借地権の存続期間が満了し、契約更新がないような場合には、借地権者の投下資本の回収を保護する観点から、建物買取請求権の行使が認められるケースが多くなっています。また、契約で建物買取請求権を認めないと規定しても、その条項は無効とされるなど、借地借家法では借地権者を手厚く保護する手当てがなされています。しかし、賃料支払を怠り、賃貸借契約を解除された場合には、借地権者を保護する必要はないため、建物買取請求権の行使は認められないとされています。 |
|
| 解約前予告家賃 | テナント | 「解約の予告」を店舗オーナーに通知してから実際に退去するまでに支払う家賃です。テナントを解約する場合、店舗オーナーに解約予告を通知する必要がありますが、通常、「退去の3か月前」や「半年前」に解約予告期限が設定されているため、店舗閉鎖の意思決定後すぐに退去したくても、3か月、半年といった期間は家賃を支払わなくてはなりません。これは、その間の家賃は、店舗オーナーが新しいテナントを探すまでのつなぎの家賃という性格を持っているからです。したがって、解約予告後に直ちに退去したいという場合でも、3か月分や半年分の家賃を払い続けるか、これらの期間の家賃を一括で支払うことになります。 |
| 保証金の敷引き | テナント | テナントを借りる際に支払った保証金から無条件に差し引かれる金額が「敷引き」です。通常、保証金は退去時に「保証金償却」という名目で何割かを施設オーナーに差し引かれます(敷引き)ので、その全額が戻ってくることは少ないと考えられます。したがって、この敷引き金額も店舗の閉鎖にかかる費用となります。地域や商慣習などによって償却率が異なるため、敷引きの相場は一概に何割とはいえませんが、例えば保証金の20%をテナントの明け渡し時に差し引くといった文言が契約書に盛り込まれることになります。満期解約の場合よりも中途解約の場合の方が償却率は高くなるのが通常です。 なお、敷引きという言葉は「敷金」から来ていますが、保証金と敷金は、法的に規定されているか否かという点で違いがあります。敷金は法律用語であり、賃料不払いなどの債務不履行があった場合の法的な担保という性格を有しています。一方、保証金は特に法律上で定義された用語ではなく、債務不履行の担保というよりはどちらかというと当事者間の金銭消費貸借契約に近い性格のものとされています。ただし、実務上は、契約の中で両者を同じものとして扱っていることが多いようです。 敷金については、返還額を巡りオーナーと揉めることが珍しくないようですが、保証金の場合は契約時にあらかじめ償却率が決められているため、(賃借人の瑕疵により特別な修繕に伴う追加コストが必要であると判断されるような場合でない限り)敷金と比較して解約時のトラブルは起こりにくいと言えます(*)。 |
| その他の費用 | すべてのケース | 什器やレジ等をリースしている場合、解約に伴い解約手数料が発生する場合があります。解約前にリース契約書の解約不能期間と残リース料を確認しておくべきです。 自社所有の什器を廃棄する場合は、産業廃棄物の業者に支払う廃棄コストや固定資産の簿価を落とす除却損が発生します。 また、閉店を知らせるダイレクト・メールを顧客に送る場合には、その作成費用や印刷費用、郵便代、従業員を解雇する場合には解雇予告手当といった諸費用が発生します。 |
テナント : 所有・管理・運営者と賃貸借契約を結び、商業ビルやデパート・ショッピングセンター・鉄道駅構内などで営業する店舗
このように、店舗を閉鎖する際には、様々なコストが追加的に発生します。この追加コストの発生を理由に、店舗閉鎖のタイミングを図りかねている取締役も多いのではないでしょうか。店舗閉鎖の理由としてもっとも多いのは、当該店舗の業績悪化ですが、ただでさえ店舗の赤字が発生していたところに、店舗の閉鎖コストが追加でかかることになり、会社の業績をますます悪化させてしまいかねないからです。そうかといって、閉店を先送りにしても赤字垂れ流しの元凶になってしまいます。だからこそ、店舗を閉鎖するか否かの判断を適時に行う必要があります。
では、店舗を閉鎖するか否かの判断は具体的にどのように行えばよいのでしょうか。次に解説します。
採算が合わなくても「閉鎖しない」との判断もあり得る
「もう少し頑張れば経営環境が変わり、店舗の利益が回復するのではないか」「今までのやり方を変えれば利益が出るのではないか」といった期待を持ち続けてズルズルと店舗を継続した結果、閉店のタイミングを見誤り、会社全体の業績に悪影響を及ぼしてしまうということがあります。特に新規出店効果で売上が伸びている間は不振店舗への目が行き届かなくなりがちですが、会社全体の業績が悪化してから店舗閉鎖に踏み切っても「時既に遅し」という状況に陥っているケースも少なくありません。
また、売上至上主義にとらわれて、売上減少が避けられない店舗の閉鎖に踏み切ることに躊躇するケースも散見されます。店舗を閉鎖するか否かは、売上よりも「利益」に目を向けて判断する必要があります。
経営努力により新たなビジネスチャンスを見出していくことと同様に、不採算店舗を閉鎖するという経営判断も時として重要です。不採算店舗にかけている経費を他の店舗に回すことができれば、資源の効率的な再分配が可能となるかもしれないのです。
店舗閉鎖について適切な時期に適切な判断を下すことができるように、営業担当取締役としては、店舗を閉鎖する際の判断基準(以下、「退店基準」)を規程化しておくべきです。
退店基準は会社によってさまざまですが、「採算が合わない」すなわち「赤字店舗である」ということを重要な基準としている会社が多いようです。赤字店舗かどうかの判断基準は、会社が管理会計上どのような指標を設けているかによって異なります。一般的には、「営業損益が継続してマイナスまたは今後継続してマイナス見込みである」または「営業キャッシュ・フローが継続してマイナスまたは今後継続してマイナス見込みである」の2つの指標のどちらかを判断基準とするケースをよく見かけます。なお、会社の管理会計上、営業損益と営業キャッシュ・フローの両方を把握している場合は、後述する減損の会計処理との関係で留意点があります。「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」第12項(3)および第80項においては、管理会計上、営業損益と営業キャッシュ・フローの両方を把握している場合には、営業損益によって、減損の兆候を判断する(*)とされています。したがって、営業キャッシュ・フローが継続してプラスでも、営業損益が継続してマイナスの場合には、会計上は減損の兆候があると判断されます。なお、「今後継続してマイナス見込みである」のかどうかは、前期実績がマイナスで、当期以降の見込みが明らかにマイナスとなる場合を指します。例えば、競合店が近隣に出店して競争が激化したことから、前期に営業赤字となってしまい、当期において店舗の改装や新メニューの投入などの施策を講じたものの、更なる競合店の登場などにより、マイナスからの脱却が期待できないことが明らかになった、という場合です。
その一方で、たとえ採算が合わなくてもあえて店舗の閉鎖をしないという判断を行うこともあります。「当該店舗がテレビによく取り上げられ、広告塔の役割を果たしている」「当該店舗の存在が企業のブランドイメージと深く根付いている」など、その店舗が、キャッシュ・イン以外の付加価値を生み出しているケースです。このような場合、当該店舗から発生するコストを「広告宣伝費」ととらえることで、これが他店舗の増益につながるとともに、結果としてその収益で当該広告宣伝費を回収できればよいと考えることができるのであれば、店舗継続の意思決定を行うことも、合理的な経営判断といえるでしょう(この点については、「店舗を新規出店したい」も参照してください)。
このように、もし社内で退店基準が整備されていない場合には、取締役(特に営業担当取締役)はこれを整備していくとともに、当該基準が適切に運用されていることを随時確認しておきましょう。退店基準の活用としては、例えば、店舗の月次損益状況を経営会議等で報告するための資料において、退店基準への抵触の有無を店舗毎に明示することが考えられます。
なお、退店基準の機械的な適用による弊害を避けるため、退店基準には例外規定を設ける場合があります。営業担当取締役以外の取締役や監査役は、そういった例外規定を用いているケース(例えば、採算が合わないため退店基準に引っかかるにもかかわらず、退店の意思決定をしない場合)を見つけた場合は、例外規定が適用された理由が合理的なものであることを確認する必要があります。
もっとも、退店基準を整備したとしても、それがずっとそのまま使えるわけではありません。例えば景気の上昇が見込まれる場合には、「採算が合わない赤字店舗」を退店基準として利用するのは妥当ではないかもしれません。景気が良くなればどの店舗も営業黒字になり、退店基準に引っかからなくなります。そのような環境下では、利益が出ているのは当たり前として、より利益率を高めていこう、という考えが一層強まります。特に経営環境の好転により新規出店や事業拡大などの投資活動にお金をかけていく必要性が生じてくると、投資したお金をできるだけ早く回収し、次の投資に振り向けるという循環サイクルを早めていくことも重要となってきます。黒字であっても、利益率が悪ければ投資したお金の回収に時間がかかり、その分だけ新たな利益を生み出すまでに時間がかかることになりますので、利益率の良し悪しは投資の回収期間に大きな影響を与えます。このような場合には、例えば貢献利益率(売った分だけ増えていく利益(売上高-変動費)の売上高に占める割合)ベースで○○%未満の店舗は閉鎖する、といった退店基準の見直しを行う必要性が生じてくるかもしれません。これは退店基準を「店舗の採算性」から「店舗の効率性」にシフトさせるケースと言えます。このように、退店基準は、経済環境の変化等にあわせて随時見直していくべきものと言えます。
また、退店基準は事業計画と密接に連動することになります。経営企画担当の取締役や営業担当の取締役は、退店基準を見直すときに事業計画自体を見直す必要がないのかという点や、事業計画の見直しに際して退店基準を見直さなくてもよいのかという点について検討を加えるべきと言えます。
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また、本ケーススタディを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を、備忘録として登録しておくことができます。登録を行う場合には、下の左側の「所感登録画面へ」ボタンを押し、登録画面に進んでください。過去に登録した内容を修正する場合も、同じ操作を行ってください。
2014/10/10 【事業管理】店舗を閉鎖したい
予想以上に重い追加コストが店舗閉鎖のタイミングを難しく
「○○社、不採算100店舗を閉鎖」といったニュースを新聞紙上で見かけることがあります。小売業や外食産業などの比較的多店舗展開が多い業種では、このような店舗の大量閉鎖のニュースは珍しくありません。
「100店舗を閉鎖」などという見出しを見ると、「出店に比べ、店舗の閉鎖にはたいしてコストがかからないから、閉鎖の決断は難しくないのだろう」などと思ってしまいますが、果たしてそうでしょうか。
出店時には、店舗の建設費、内装工事費、保証金などのコストがかかるのに対し、店舗の閉鎖の際には、看板や什器の撤去費用、原状回復費用、解約前予告家賃、保証金の割り増し償却といった、出店時とは“逆ベクトル”の諸費用が発生します。撤退にも結構お金がかかるのです。
閉鎖にかかる諸費用として発生が見込まれるものについて、その具体的な内容を主な出店パターンごとにまとめると次のとおりです。
| 費用の種類 | 出店パターン | 内容 |
| 原状回復費用 | テナント | 「テナントを借りた時点」の状態に戻すための費用です。看板、内装、什器、仕切り壁などの撤去費用が該当します。 |
| 借地の上に店舗建物を建設 | 借地を更地に戻すためにかかる費用です。建物の取り壊し費用などが該当します。 ただし、建物の価値が残っているような場合であっても必ず取り壊して更地にしなければならないとするのは、社会経済上不合理であるという理由から、借地権者は、一定の場合には借地権の設定者に対して「建物買取請求権」を行使し、建物を時価で買い取ることを請求できます(借地借家法第13条)。実務上は、例えば賃料不払いなどの債務不履行がないまま借地権の存続期間が満了し、契約更新がないような場合には、借地権者の投下資本の回収を保護する観点から、建物買取請求権の行使が認められるケースが多くなっています。また、契約で建物買取請求権を認めないと規定しても、その条項は無効とされるなど、借地借家法では借地権者を手厚く保護する手当てがなされています。しかし、賃料支払を怠り、賃貸借契約を解除された場合には、借地権者を保護する必要はないため、建物買取請求権の行使は認められないとされています。 |
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| 解約前予告家賃 | テナント | 「解約の予告」を店舗オーナーに通知してから実際に退去するまでに支払う家賃です。テナントを解約する場合、店舗オーナーに解約予告を通知する必要がありますが、通常、「退去の3か月前」や「半年前」に解約予告期限が設定されているため、店舗閉鎖の意思決定後すぐに退去したくても、3か月、半年といった期間は家賃を支払わなくてはなりません。これは、その間の家賃は、店舗オーナーが新しいテナントを探すまでのつなぎの家賃という性格を持っているからです。したがって、解約予告後に直ちに退去したいという場合でも、3か月分や半年分の家賃を払い続けるか、これらの期間の家賃を一括で支払うことになります。 |
| 保証金の敷引き | テナント | テナントを借りる際に支払った保証金から無条件に差し引かれる金額が「敷引き」です。通常、保証金は退去時に「保証金償却」という名目で何割かを施設オーナーに差し引かれます(敷引き)ので、その全額が戻ってくることは少ないと考えられます。したがって、この敷引き金額も店舗の閉鎖にかかる費用となります。地域や商慣習などによって償却率が異なるため、敷引きの相場は一概に何割とはいえませんが、例えば保証金の20%をテナントの明け渡し時に差し引くといった文言が契約書に盛り込まれることになります。満期解約の場合よりも中途解約の場合の方が償却率は高くなるのが通常です。 なお、敷引きという言葉は「敷金」から来ていますが、保証金と敷金は、法的に規定されているか否かという点で違いがあります。敷金は法律用語であり、賃料不払いなどの債務不履行があった場合の法的な担保という性格を有しています。一方、保証金は特に法律上で定義された用語ではなく、債務不履行の担保というよりはどちらかというと当事者間の金銭消費貸借契約に近い性格のものとされています。ただし、実務上は、契約の中で両者を同じものとして扱っていることが多いようです。 敷金については、返還額を巡りオーナーと揉めることが珍しくないようですが、保証金の場合は契約時にあらかじめ償却率が決められているため、(賃借人の瑕疵により特別な修繕に伴う追加コストが必要であると判断されるような場合でない限り)敷金と比較して解約時のトラブルは起こりにくいと言えます(*)。 |
| その他の費用 | すべてのケース | 什器やレジ等をリースしている場合、解約に伴い解約手数料が発生する場合があります。解約前にリース契約書の解約不能期間と残リース料を確認しておくべきです。 自社所有の什器を廃棄する場合は、産業廃棄物の業者に支払う廃棄コストや固定資産の簿価を落とす除却損が発生します。 また、閉店を知らせるダイレクト・メールを顧客に送る場合には、その作成費用や印刷費用、郵便代、従業員を解雇する場合には解雇予告手当といった諸費用が発生します。 |
テナント : 所有・管理・運営者と賃貸借契約を結び、商業ビルやデパート・ショッピングセンター・鉄道駅構内などで営業する店舗
このように、店舗を閉鎖する際には、様々なコストが追加的に発生します。この追加コストの発生を理由に、店舗閉鎖のタイミングを図りかねている取締役も多いのではないでしょうか。店舗閉鎖の理由としてもっとも多いのは、当該店舗の業績悪化ですが、ただでさえ店舗の赤字が発生していたところに、店舗の閉鎖コストが追加でかかることになり、会社の業績をますます悪化させてしまいかねないからです。そうかといって、閉店を先送りにしても赤字垂れ流しの元凶になってしまいます。だからこそ、店舗を閉鎖するか否かの判断を適時に行う必要があります。
では、店舗を閉鎖するか否かの判断は具体的にどのように行えばよいのでしょうか。次に解説します。
採算が合わなくても「閉鎖しない」との判断もあり得る
「もう少し頑張れば経営環境が変わり、店舗の利益が回復するのではないか」「今までのやり方を変えれば利益が出るのではないか」といった期待を持ち続けてズルズルと店舗を継続した結果、閉店のタイミングを見誤り、会社全体の業績に悪影響を及ぼしてしまうということがあります。特に新規出店効果で売上が伸びている間は不振店舗への目が行き届かなくなりがちですが、会社全体の業績が悪化してから店舗閉鎖に踏み切っても「時既に遅し」という状況に陥っているケースも少なくありません。
また、売上至上主義にとらわれて、売上減少が避けられない店舗の閉鎖に踏み切ることに躊躇するケースも散見されます。店舗を閉鎖するか否かは、売上よりも「利益」に目を向けて判断する必要があります。
経営努力により新たなビジネスチャンスを見出していくことと同様に、不採算店舗を閉鎖するという経営判断も時として重要です。不採算店舗にかけている経費を他の店舗に回すことができれば、資源の効率的な再分配が可能となるかもしれないのです。
店舗閉鎖について適切な時期に適切な判断を下すことができるように、営業担当取締役としては、店舗を閉鎖する際の判断基準(以下、「退店基準」)を規程化しておくべきです。
退店基準は・・・
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2014/10/10 チェックリスト:店舗を閉鎖したい(会員限定)
| チェック事項 | 備考 | 対応未了 | 対応済 |
|---|---|---|---|
| 営業担当取締役は、店舗を閉鎖する判断基準(退店基準)を策定しているか。 | 例えば、 ・営業損益が継続してマイナスまたは今後継続してマイナス見込み ・営業キャッシュ・フローが継続してマイナスまたは今後継続してマイナス見込み (なお、上記の場合には、会計上、減損の兆候があると判断されることがある) ・広告塔の役割を果たしている、当該店舗の存在が企業のブランドイメージと深く根付いている、などの理由から閉店しない など |
||
| 店舗を閉鎖する基準に該当するものの、例外規定により店舗閉鎖を見送った場合、営業担当取締役以外の取締役や監査役としてはその理由が合理的なものであることを確認しているか。 | 店舗を閉鎖する基準に該当しないものの、例外規定により店舗閉鎖を行う場合も同様である。 | ||
| 営業担当取締役は、退店基準の見直しを行っているか。 | 例えば、景気の上昇が見込まれる場合には、不採算店舗から非効率店舗の閉鎖に退店基準を見直す など。 事業計画の見直しに連動する場合もある。 |
||
| 退店基準の見直しを行った場合、経営企画担当取締役や営業担当取締役は事業計画の見直しの必要性の有無を検討したか。 | |||
| 店舗の閉鎖に伴い、閉鎖コストの見積りを行ったか。 | 原状回復費用、解約前予告家賃、保証金償却、リース解約損 など | ||
| 固定資産の減損損失を適切に計上するために、規程を整備するとともに、減損の兆候の有無を適時に検討するための業務フローを整備・運用しているか。 | 固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理のことを指す(固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書 三 3.)。 | 新規の賃貸借契約締結時に、契約書等の情報が経理部に回付され、資産除去債務の計上の有無について、必ず経理部が判断することができるよう業務フローが整えられ、それが確実に運用されているか。 | 資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって発生した時に負債として計上することとされている(資産除去債務に関する会計基準第4項)。なお、資産除去債務の発生時に、当該債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、これを計上せず、当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上することとされている(同第5項)。 |
| 店舗閉鎖損失引当金を適切に計上しているか。 | 店舗の閉鎖により見込まれる固定資産の除却にかかる損失や、契約に基づかない原状回復費用、テナント賃貸人に対する中途解約違約金、他店舗への異動を予定しない社員に支払う割増退職金などの発生の可能性が高く、金額を合理的に見積もることができる場合は、引当金(店舗閉鎖損失引当金など)を計上する。 | ||
| 店舗の閉鎖に伴い、退店計画を策定したか。 | |||
| 店舗の閉鎖自体についての適時開示の検討を行ったか。 | |||
| 取締役は、「閉鎖に関わる損失の見積りが適切に行われるとともに、その情報が業績予想を管理するIR担当者へタイムリーに伝達される」ための内部統制を整備し、運用しているか。 | |||
| IR担当部署や担当者は、業績予想の見直しを適切なタイミングで実施しているか。 | |||
| IR担当取締役は、店舗の閉鎖に伴うコスト増の業績予想に与える影響を認識しているか。 |
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2014/10/09 (新用語・難解用語)ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法(会員限定)
企業価値を評価する手法の1つ。
ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法による企業価値のベースとなるのが、文字通り企業が将来にわたって稼ぐと予想される「キャッシュ(現金)」だ。これは、企業は株主・債権者から集めた資金で事業を行ってキャッシュを稼ぎ、このキャッシュを原資に株主還元や債権者への利払い・債務の返済を行うことになるため。このようなキャッシュは、経営陣が自由に使い道を決めることができる資金という意味で「フリー・キャッシュフロー(FCF)と言われる。
企業に資金を投じた株主や債権者は、当然ながら一定の収益率(銀行預金でいう金利)をあげることを期待している。この収益率は、企業から見れば「資金調達に伴うコスト」であるため、資本コストと呼ばれる。
DCF法では、「資本コスト(収益率)」を使って、企業が将来にわたって稼ぎ出すFCFを企業価値に置き換えることになる。FCFを企業価値に置き換えることを「現在価値に割り引く」という(詳細は後述)。
以下、企業価値の計算式を構成する各要素や、「現在価値に割り引く」プロセスについて詳しく説明しよう。
1.フリー・キャッシュフロー(FCF)
まずFCFの算出方法だが、通常は以下の式により算出する。
税金はキャッシュを減らすことになるが、営業利益を算出する過程で差し引かれる営業費用の中には法人税等は含まれないため、(1)の営業利益からは法人税等を別途差し引く必要がある。また、営業費用には (2)減価償却などの非現金支出が含まれている。したがって、FCFを算出する際には、(2)を(1)に足し戻すことにより、「会計ベースの利益」を「キャッシュ・ベースの利益」に置き換える必要がある。
一方、企業活動の継続や成長には(3)設備投資や(4)運転資金が必要であるため、これらはキャッシュ・ベースの利益から差し引くことになる。ここで、(4)の運転資金が「増減」となっている点に注意したい。売上代金の回収は売上の数か月後になることが珍しくないが(これを掛売りという)、売上代金を回収する前に、仕入代金の支払時期が到来することがある。この場合、売上代金が回収されるまでは手元にあるキャッシュで仕入代金を立て替える必要がある。この立替金が「運転資金」だ。例えば、前期は1億円の運転資金で十分だったが、事業規模が拡大し今期は1億5千万円必要になった場合、稼いだキャッシュの中から5千万円を運転資金に充当する必要がある。すなわち、運転資金が増えた分、FCFは減少することになる。運転資金は「立替金」であって会計上は費用ではないため、(1)営業利益からFCFを算出する過程で差し引く必要があるというわけだ。
2.資本コスト
資本コストは、株主および債権者の期待収益率の「加重平均」によって算出する。株式の期待収益率を「株式コスト」、債権者の期待収益率を「負債コスト」という。以下、それぞれについて説明する。
●株主の期待収益率(株式コスト)
「株主はリスクに見合った収益率を期待する」というのが基本的な考え方。これを算式で表すと以下の通りとなる。
(1)はリスクを取らずに得ることのできるリターンで、国債利回りを用いるのが通常である。しかし、実際の株式投資はリスクを伴うため、(2)RFRを上回る(超過する)収益率が期待される。
超過的な期待収益率は、TOPIXなど株式市場全体を示す指数をベースに計算される。基本的には、TOPIXなどに基づく期待収益率(Rm=required market rate of return)とRFRの差が株式投資に伴うリスクに対する「超過的な期待収益率」となる。
ただし、当然ながら期待収益率は企業によって異なる。株価がTOPIXと同様の動きをする企業もあれば、TOPIXと乖離しているところもあろう。そこで、各企業の「超過的な期待収益率」は、当該企業の株価のTOPIXなどに対する“感応度”を考慮して調整する必要がある。専門用語でこの感応度のことを「ベータ(β)」という。βの解釈はやや難しいが、要するに株式市場全体の動きに対して大きく反応する場合には感応度(リスク)が高く、あまり大きく反応しない場合には感応度が低い、と理解しておけばよい。これを算式で表すと以下の通りとなる。
具体的な事例で考えてみよう。
| 例) ・RFR=1.0%(国債利回りなど) ・TOPIXの期待収益率=6.0% ・β=0.8(TOPIXが5%上昇するときの当該企業の平均株価上昇率は4%) |
この場合、株式コストは以下のように算出されることになる。
株式コスト=1.0%(RFR)+0.8(β)×(6.0%(Rm)-1.0%(RFR))=5.0%
●債権者の期待収益率(負債コスト)
債権者の期待収益率は「債権者に対する金利」である。したがって、負債コストを求める算式は以下のとおりとなる。
法人税法上、支払利子は損金算入できるので、その分、負債コストは軽減されることになる。逆に配当などの株主還元は損金算入できない。これが、上述の株式コストには(1-税率)の項が付いていない理由である。
3.現在価値に割り引く
単純な例で説明しよう。投資金額100億円、期待収益率5%とすると、期待される収益は以下のように計算できる。
投資金額100億円 × 期待収益率5%=期待収益5億円
この式を書き換えると、以下のようになる。
投資金額100億円=期待収益5億円 ÷ 期待収益率5%
また、上記算式の各要素は、以下のように言い換えることができる。
期待収益=FCF
期待収益率=資本コスト
したがって、毎年5億円のFCFを稼ぐ、資本コスト5%の企業の価値は以下のように計算できる。
企業価値=5億円(FCF)÷ 5%(資本コスト)=100億円
これは、要するに将来企業が稼ぐFCFを現在の企業価値に置き換える式であるが、将来のFCFを単純に合計した金額(例えば30年間では150億円)に比べると企業価値の方が小さくなっている。専門用語で「現在価値に割り引く」という言い方をするのはそのためである。上記算式からも明らかなように、資本コストが高い(低い)ほど、企業価値は小さく(大きく)なる点に注意して欲しい。
役員は、資本コストとは「株主および債権者が期待する(要求する)収益率」であるということを忘れないようにしたい。したがって、企業(経営者)が投資を検討する場合、投資による収益率が資本コストを上回るかどうかが重要なポイントになる。収益率が資本コストを上回る投資案件が見当たらない場合には、株主還元や有利子負債の削減を優先する方が企業価値にプラス寄与することを念頭に置く必要がある。
2014/10/09 (新用語・難解用語)ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法
企業価値を評価する手法の1つ。
ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法による企業価値のベースとなるのが、文字通り企業が将来にわたって稼ぐと予想される「キャッシュ(現金)」だ。これは、企業は株主・債権者から集めた資金で事業を行ってキャッシュを稼ぎ、このキャッシュを原資に株主還元や債権者への利払い・債務の返済を行うことになるため。このようなキャッシュは、経営陣が自由に使い道を決めることができる資金という意味で「フリー・キャッシュフロー(FCF)と言われる。
企業に資金を投じた株主や債権者は、当然ながら一定の収益率(銀行預金でいう金利)をあげることを期待している。この収益率は、企業から見れば「資金調達に伴うコスト」であるため、資本コストと呼ばれる。
DCF法では、「資本コスト(収益率)」を使って、企業が将来にわたって稼ぎ出すFCFを企業価値に置き換えることになる。FCFを企業価値に置き換えることを「現在価値に割り引く」という(詳細は後述)。
以下、企業価値の計算式を構成する各要素や、「現在価値に割り引く」プロセスについて詳しく説明しよう。・・・
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2014/10/09 チェックリスト:店舗を新規出店したい(会員限定)
| チェック事項 | 備考 | 対応未了 | 対応済 |
|---|---|---|---|
| 新規出店の判断に際して、商圏内のターゲット顧客層の昼間・夜間人口分析、予定地の交通量調査・近隣店舗の来店客数分析の結果を利用しているか。 | |||
| 新規出店に伴い、出店計画を策定したか。 | 出店計画に盛り込む主なポイント ・店舗名 ・出店場所(一等立地か二等立地か) ・出店時期 ・出店形態(自社の店舗を構えるのか、テナントにするのか) ・出店規模 ・初期投資額、投資の採算性(初期投資額を回収して業績が軌道に乗るまでの計画など) ・損益推移計画 ・店舗コンセプト ・営業時間(定休日) ・ターゲット顧客層 ・予定客単価 ・来店客数見込 ・取り扱う主要品目、サービス内容 ・人員計画(社員やパートの人員比率やシフト、採用計画、研修計画等) ・集客方法、集客のためのイベント計画 など |
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| 出店計画の承認に際して、計画が中期経営計画と整合したものであることを確認しているか。 | 場合によっては、中期経営計画自体の見直しの是非も検討すべきである。 | ||
| コスト回収の目標を設定するため、新店候補の損益分岐点を計算しているか。 | |||
| 新規出店に際しては、表に出てくる数字だけでなく、その地域に根差したディープな情報を数多く収集し、注意深く分析しているか。 | |||
| 新規出店に伴い、投資の採算性を計算しているか。 | 投資の採算性計算は、主に次のような要素を考慮して行われる。 ・新店の中期的な損益推移計画 ・店舗の規模(初期投資額) ・運営コスト(広告宣伝費や人件費など) ・採算性の判断方法(回収期間法、正味現在価値法、内部利益率法など) |
新規出店に伴い、投資の採算性を計算しているか。 | 投資の採算性計算は、主に次のような要素を考慮して行われる。 ・新店の中期的な損益推移計画 ・店舗の規模(初期投資額) ・運営コスト(広告宣伝費や人件費など) ・採算性の判断方法(回収期間法、正味現在価値法、内部利益率法など) |
| 取締役は、出店判断の前提となる投資の採算性の計算結果を鵜呑みにするのではなく、その妥当性をなんらかの方法で検証する体制を整備・運用しているか。 | 例えば、次のような方法が考えられる。 ・回収期間法の活用にあたり足切りのための基準期間を設定 ・上長が計算ロジックをチェック |
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| 建物の賃貸借取引について、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」に該当するかどうかを検討しているか。 | 賃貸借契約開始後の一定期間の解約を禁止あるいは実質的に禁止(途中解約の場合には建設協力金が返済されないようなケース等)する解約不能リース期間があり、建物を賃借することから生じる経済的利益を受けるとともに維持管理費用等のコストを負担することになる場合、検討が必要になる。 | ||
| 出店基準を設定しているか。 | 投資判断にあたっての出店基準の例 ・損益分岐点売上高 ・目標客単価 ・投資の回収期間 など |
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| 店舗開発の担当者は、出店に関する稟議の起案に際して、売上目標値やその他の出店基準に関するチェック項目について、所定のチェックシートを用いてチェックした結果を出店計画とともにしているか。 | |||
| 出店計画の承認は、取締役会等の機関決定を経ているか。 | |||
| 資産除去債務を合理的に見積り、財務諸表に計上しているか。 | |||
| 出店計画の遅れが業績予想にもたらす影響を認識しているか。 | 業績予想の下方修正が必要になる場合がある。 | ||
| 出店計画の進捗が遅れたことにより、業績予想の修正が必要になり、その修正幅が一定の基準を超える場合、公表される前に情報が漏れないよう、情報管理を徹底しているか。 | その場合、出店計画の進捗状況はインサイダー取引における重要事実に該当することになる。 | ||
| 新規出店の機関決定が「新製品又は新技術の企業化を、会社の業務執行を決定する機関が決定した」にあたる場合、公表される前に情報が漏れないよう、情報管理を徹底しているか。 | 該当すれば、当該新規出店の機関決定はインサイダー取引における重要事実に該当することになる。 | ||
| 新規出店に必要な許認可について、出店までのスケジュールに織り込んでいるか。 | 主な関連法令 ・大規模小売店舗立地法(小売業) ・消防法 ・食品衛生法(飲食業) ・風営法(アミューズメント業) など |
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2014/10/09 【事業管理】店舗を新規出店したい(会員限定)
一等立地への出店を「広告宣伝費」と位置付ける会社も
現在のイオングループの基礎を作った岡田卓也名誉会長は「狸や狐の出る場所に出店せよ」と指示を飛ばしたと伝えられています。イオンは、その言葉のとおり郊外型のショッピングセンターを中心に据えた出店戦略を実現し、今や大成功を収める会社となっています。
一方、採算を度外視して、あえて一等立地に出店することにより、ニュースなどで取り上げられることで知名度をあげている会社もあります。このような会社は、一等立地にある店舗を維持するためのコストを自社ブランドの「広告宣伝費用」ととらえ、そのコストはこの広告宣伝の恩恵を受ける他店舗の収益で回収し、会社全体として採算を確保するブランド戦略を採用していると言えます。
このように、新規の出店戦略は、各会社の目指す方向性に大きく左右されます。特に小売業、飲食業、アミューズメント業などにおいては、この新規出店案件が経営戦略策定の重要なファクターであるため、取締役にとって重要な意思決定事項となっています。
以下、取締役が新規出店に関する意思決定をする際のポイントについて検討していきましょう。
田舎に出店した方がターゲット客数は多い場合も
新規出店に関する意思決定は、出店候補地の選定がもっとも重要なポイントとなります。候補地に関する第一の条件は、「多くのお客が入ってくれる場所」であることは言うまでもありません。単純に考えると、東京などの大都市は人口が多いため、その中心に出店すれば多くのお客様が来店する可能性が高いはずです。しかし、大都市は競合店が数多く存在し、店舗間の競争が熾烈です。人口1,000万人の都市に競合店が1,000店舗ある場合、1店舗あたり1万人をお客様として確保できれば“平均点”ということになります。一方、人口2万人の田舎であっても、競合店がゼロであれば、ここに出店することにより2万人のお客様をターゲットにすることができます。これは極端な例ですが、「人が多い場所に出店すること」イコール「多くのお客様が入ってくれる場所に出店すること」を意味するわけではないことには注意が必要です。
また、出店に際しては商圏内のターゲット顧客層の昼間・夜間人口分析、予定地の交通量調査・近隣店舗の来店客数分析も不可欠です。過去に新規出店の経験があり、商圏分析のノウハウや人材が十分確保されている場合には、調査を自ら行えることでしょう。一方で、自社にノウハウや人材がない場合には、外部の調査機関やコンサルティング会社のような、市場調査等を専門に取り扱う業者を利用し、調査結果を入手した上で新規出店の可否の判断に役立てることが多いと考えられます。
これらのことを念頭に置いて、次に出店計画策定時のポイントについて解説していきます。
- 出店計画策定時のチェックポイント
- 投資コストを把握し採算性を計算
- 出店形態次第で異なる資金負担や会計処理
- 新規出店の機関決定に先立ち出店基準のクリアを確認
- 新規出店が「資産除去債務」を生むことも
- 新規出店の成否と業績予想修正の関係
- 新規出店がインサイダー取引の重要事実に該当する場合も
- 新規出店に必要な許認可を忘れずに
| チェックリスト | チェックリストはこちら |
|---|
また、本ケーススタディを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を、備忘録として登録しておくことができます。登録を行う場合には、下の左側の「所感登録画面へ」ボタンを押し、登録画面に進んでください。過去に登録した内容を修正する場合も、同じ操作を行ってください。
2014/10/09 【事業管理】店舗を新規出店したい
一等立地への出店を「広告宣伝費」と位置付ける会社も
現在のイオングループの基礎を作った岡田卓也名誉会長は「狸や狐の出る場所に出店せよ」と指示を飛ばしたと伝えられています。イオンは、その言葉のとおり郊外型のショッピングセンターを中心に据えた出店戦略を実現し、今や大成功を収める会社となっています。
一方、採算を度外視して、あえて一等立地に出店することにより、ニュースなどで取り上げられることで知名度をあげている会社もあります。このような会社は、一等立地にある店舗を維持するためのコストを自社ブランドの「広告宣伝費用」ととらえ、そのコストはこの広告宣伝の恩恵を受ける他店舗の収益で回収し、会社全体として採算を確保するブランド戦略を採用していると言えます。
このように、新規の出店戦略は、各会社の目指す方向性に大きく左右されます。特に小売業、飲食業、アミューズメント業などにおいては、この新規出店案件が経営戦略策定の重要なファクターであるため、取締役にとって重要な意思決定事項となっています。
以下、取締役が新規出店に関する意思決定をする際のポイントについて検討していきましょう。
田舎に出店した方がターゲット客数は多い場合も
新規出店に関する意思決定は、出店候補地の選定がもっとも重要なポイントとなります。候補地に関する第一の条件は、「多くのお客が入ってくれる場所」であることは言うまでもありません。単純に考えると、東京などの大都市は人口が多いため、その中心に出店すれば多くのお客様が来店する可能性が高いはずです。しかし、大都市は競合店が数多く存在し、店舗間の競争が熾烈です。人口1,000万人の都市に競合店が1,000店舗ある場合、1店舗あたり1万人をお客様として確保できれば“平均点”ということになります。一方、人口2万人の田舎であっても、競合店がゼロであれば、ここに出店することにより2万人のお客様をターゲットにすることができます。これは極端な例ですが、「人が多い場所に出店すること」イコール「多くのお客様が入ってくれる場所に出店すること」を意味するわけではないことには注意が必要です。
また、出店に際しては商圏内のターゲット顧客層の昼間・夜間人口分析、予定地の交通量調査・近隣店舗の来店客数分析も不可欠です。過去に新規出店の経験があり、商圏分析のノウハウや人材が十分確保されている場合には、調査を自ら行えることでしょう。一方で、自社にノウハウや人材がない場合には、外部の調査機関やコンサルティング会社のような、市場調査等を専門に取り扱う業者を利用し、調査結果を入手した上で新規出店の可否の判断に役立てることが多いと考えられます。
これらのことを念頭に置いて、次に出店計画策定時のポイントについて解説していきます。
- 出店計画策定時のチェックポイント
- 投資コストを把握し採算性を計算
- 出店形態次第で異なる資金負担や会計処理
- 新規出店の機関決定に先立ち出店基準のクリアを確認
- 新規出店が「資産除去債務」を生むことも
- 新規出店の成否と業績予想修正の関係
- 新規出店がインサイダー取引の重要事実に該当する場合も
- 新規出店に必要な許認可を忘れずに
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また、本ケーススタディを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を、備忘録として登録しておくことができます。登録を行う場合には、下の左側の「所感登録画面へ」ボタンを押し、登録画面に進んでください。過去に登録した内容を修正する場合も、同じ操作を行ってください。
2014/10/08 売手市場で複数内定者続出 内定辞退者への損害賠償請求は可能か?
今月頭には多くの企業で内定式が行われ、フレッシュなスーツ姿が街に溢れた。最近の就職戦線では、景気回復を背景に各企業が採用人数を増やした結果、複数の企業から内定を得る学生が続出している。できるだけ条件の良いところに就職したい学生にとって、多くの企業から内定を得ようとするのは当然の行動とも言えるが、企業から見れば、コスト・手間をかけて採用を決めた学生から内定の辞退を受けることは大きな痛手となる。特に入社日が近くなってからの内定辞退となると、入社前の研修コスト、あるいは内定者用にそろえた備品購入費などの目に見える損害が発生するケースもある。企業においては、内定辞退者に対して損害賠償請求を行いたいという気持ちが生じることもあり得るだろう。
それが可能かどうか・・・
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2014/10/08 売手市場で複数内定者続出 内定辞退者への損害賠償請求は可能か?(会員限定)
今月頭には多くの企業で内定式が行われ、フレッシュなスーツ姿が街に溢れた。最近の就職戦線では、景気回復を背景に各企業が採用人数を増やした結果、複数の企業から内定を得る学生が続出している。できるだけ条件の良いところに就職したい学生にとって、多くの企業から内定を得ようとするのは当然の行動とも言えるが、企業から見れば、コスト・手間をかけて採用を決めた学生から内定の辞退を受けることは大きな痛手となる。特に入社日が近くなってからの内定辞退となると、入社前の研修コスト、あるいは内定者用にそろえた備品購入費などの目に見える損害が発生するケースもある。企業においては、内定辞退者に対して損害賠償請求を行いたいという気持ちが生じることもあり得るだろう。
それが可能かどうかを検討する前に、まずは新卒採用の流れを確認しておこう。
外資系企業を除く国内企業の多くは経団連の「採用選考に関する指針」を踏まえ、(大学3年生の)12月1日に採用の広報活動、翌年4月1日から選考活動を開始してきたが、「学業を優先すべき」との声の拡がりを受け、2016年に卒業する学生からは、以下のとおり、これまでの採用スケジュールを4か月後ろ倒しすることになっている。
(1)広報活動の開始時期・・・・大学3年生の3月1日開始
(2)選考活動・・・・大学4年生の8月1日開始
(3)正式な内定日・・・・卒業・修了年度の10月1日以降
(2)の段階でなされるものはいわゆる「内々定」であり、これには法律的な効果はない。 これに対し、10月1日以降の正式な内定では、「4月1日以後が就労開始日となる」ことと「提出書類の記載事項に虚偽があった場合には内定を取り消すことができる」という2つの条件を付した「労働契約」が成立すると考えられる(法律用語では「始期付解約権留保付労働契約」と呼ぶ)。
民法では、正社員のような期間の定めのない労働契約については、当事者(会社、労働者)はいつでも自由に解約を申し入れることを認めており、解約の申し入れから2週間を経過すると労働契約は自動的に終了することになっている(民法627条)。内定により成立した「始期付解約権留保付労働契約」も期間の定めのない労働契約であり、やはりいつでも解約することができる。つまり、法的には、内定者が内定を辞退するのは自由ということになる。
心情的には、内定辞退者に損害賠償を請求したいという気持ちも分からないではないが、内定辞退が民法で認められている以上、実際に損害賠償を請求することは困難と考えておいたほうがよいだろう。むしろ、内定辞退者に対して損害賠償を請求したことが世間に明らかになった場合、企業のレピュテーションを大きく傷つけることもあり得る。損害賠償請求よりも、内定者をつなぎとめるための知恵を絞った方が得策と言えそうだ。
