2014/10/16 (新用語・難解用語)グリーンボンド(会員限定)

 地球温暖化は企業にとっても真剣に取り組まなければならない重い課題となっているが、温室効果ガスの排出を削減する技術の開発や代替エネルギーの導入といった気候変動対策を目的とする事業活動に資金の使途を限定した債券が「グリーンボンド」である。

 2008年に世界銀行が初めて発行して以来、欧州投資銀行やアジア開発銀行、アフリカ開発銀行など公的な国際機関により起債されてきたが、昨年(2013年)後半あたりからは事業会社が発行体となるケースが目に付く。例えば昨年11月にはフランスの電力公社(EDF)がユーロ建てとしては初のグリーンボンドを起債したほか、今年に入ってからはトヨタの米国子会社トヨタモータークレジットや英国のユニリーバなどが起債を行っている。日本では10月に日本政策投資銀行が日本の金融機関として初めてグリーンボンドを発行した(リリースはこちら)。2014年には、発行額の半分は事業会社が占めると予想されている。

 これに伴い、グリーンボンド市場は急成長しており、2013年には全世界で約110億ドルだった発行額は2014年においては既に第1四半期で90億ドルに到達、年間では400億ドルに到達する見込み。このようにグリーンボンド市場が急拡大している背景には、先進国の財政状態悪化と開発途上国における資金ニーズの拡大により、ODA(政府開発援助)等だけでは気候変動対策コストを賄い切れず、金融市場を通じた民間からの資金調達が必要になっているということがある。また、グリーンボンドを発行することは事業会社にとってもメリットがあるため、当該市場は益々拡大していくだろう。

 企業がグリーンボンドを発行するメリットとして挙げられるのが、“グリーン・ブランド”の獲得による企業イメージのアップと、投資家層の拡大だ。グリーンボンド市場の成長には機関投資家も注目しており、例えばスイスの大手保険会社チューリッヒでは、CSR投資の一環として、グリーンボンドを発行する世界銀行等の金融機関に対し10億ドルの投資をコミットするとともに、今後さらに投資額を増やしていく方針を打ち出しており、世界最大の「グリーンボンド投資家」となることを目指すという。

 日本企業でもグリーンボンドの発行体となるところが増加していくものと予想されるが、発行体には、投資資金が実際に気候変動対策に使われているかどうかなどを管理し、投資家に報告する仕組み作りなどに一定のコストがかかる点には留意したい。こうした中、欧米の民間金融機関は、グリーンボンドの透明性と情報開示を促進するため、企業や金融機関等向けに、自主的ガイドラインとして「グリーンボンド原則」を作成、みずほ銀行や大和証券など日本の金融機関でもこれに賛同を表明するところが相次いでいる。

 企業がCSR投資の一環としてグリーンボンドに投資する際には、こうしたガイドラインに頼るだけでなく、自ら投資先に対する継続的なモニタリングを実施する必要もあろう。

2014/10/15 M&A案件検討時に取締役会が必ずしておくべきこと

 M&Aは「時間を買う」ための有効な手段である一方、その成功確率は20%とも30%とも言われており、まさにハイリスク・ハイリターンな経営戦略の典型と言える。M&A案件は、金融機関や相手先から持ち込まれることもあれば、経営トップや経営企画室等が立案することもある。そういった案件の1つひとつに対して、取締役会ひいては個々の取締役は、リスクに見合ったリターンを得られるのかどうか、慎重に議論する必要がある。具体的には、M&Aの失敗確率を低減するため、以下の観点からM&A案件の対象や価格の妥当性、代替プランとの比較、M&Aによる影響について、“批判的に”検討しなければならない。・・・

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2014/10/15 M&A案件検討時に取締役会が必ずしておくべきこと(会員限定)

 M&Aは「時間を買う」ための有効な手段である一方、その成功確率は20%とも30%とも言われており、まさにハイリスク・ハイリターンな経営戦略の典型と言える。M&A案件は、金融機関や相手先から持ち込まれることもあれば、経営トップや経営企画室等が立案することもある。そういった案件の1つひとつに対して、取締役会ひいては個々の取締役は、リスクに見合ったリターンを得られるのかどうか、慎重に議論する必要がある。具体的には、M&Aの失敗確率を低減するため、以下の観点からM&A案件の対象や価格の妥当性、代替プランとの比較、M&Aによる影響について、“批判的に”検討しなければならない。
・市場の成長見通しおよび当該市場における競合他社の状況について十分な情報を収集し、的確な分析を尽くしたか?
デューデリジェンス*は、M&Aの相手方の協力体制のもと社外の専門家を活用しながら、時間をかけて十分に行われているか?
・価格は合理的な水準と言えるのか? 社外の専門家による価格算定が行われており、それは信頼に足るものであることを社内的に検証しているか?
・買収後、速やかに成果を出すための統合プランは、優先順位を意識した現実性の高いものか?
・対象企業をM&Aすることで、むしろ既存事業の事業展開において制約や不利益を受ける可能性はないか?
・そもそも当該会社でなければいけないのか? 社内で育成する方が安上がりではないか?

* 投資対象の資産価値、収益力などを調査すること

 M&Aの担当取締役や担当者は、往々にして、「この案件は乾坤一擲*の大勝負であり、何としてでも完遂させたい」と考えがちである。さらに「こんな出物は滅多に(二度と)ない」「早く決めないと他社に奪われる」といった意識が働くことで、いつしかM&Aの成立自体が目的化してしまい、不十分なデューデリジェンスや過大な買収価格、おざなりのPMI(統合マネジメント)といった失敗要因を抱え込むことになりかねない。

* 「けんこんいってき」と読む。一か八かの大勝負に出ること。

 買収価格の妥当性で最近話題に上がったのが、サントリーホールディングスだ。同社は今年(2014年)5月1日に、米国のビーム社を160億ドルで買収した。この買収価格は、EBITDA倍率()の観点からは割高との指摘もある。

 買収価格が「割高」か「割安」を簡易的に判断するために用いられる。

 もっとも、EBITDA倍率による考え方は、あくまでビーム社が現状の収益力のみでグループに貢献することを前提としたものであり、シナジー(相乗効果)は織り込まれていない。原料調達のスケールメリットや物流網の共有などによるコストシナジー、さらにはお互いのブランドや販売ルートを共有することによる拡販などのセールスシナジーを実現してはじめて、この巨額な買収価格は正当化される。もちろん、サントリーホールディングスの取締役会は、「十分に割りが合う」「グループ企業価値の向上につながる」と判断した上で、ビーム社の買収に踏み切ったのであろう。

 マネジメントの「暴走」を防ぐことがガバナンスの重要な役割であるならば、M&Aの局面こそ取締役(会)の存在意義が問われると言えそうだ。

2014/10/14 商品購入や投資における企業選択の基準

 経営陣にとって、顧客や投資家がどのような基準で自社の商品を購入したり、自社に投資をしようと判断したりしているのかは、非常に気になるところだろう。

 この点について興味深い調査結果がある。・・・

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2014/10/14 商品購入や投資における企業選択の基準(会員限定)

 経営陣にとって、顧客や投資家がどのような基準で自社の商品を購入したり、自社に投資をしようと判断したりしているのかは、非常に気になるところだろう。

 この点について興味深い調査結果がある。

 企業の風評(reputation)に関する調査を毎年実施している米国の調査会社 Reputation Institute社が、日本を含む世界15ヶ国のマーケット(下記参照)の約5万5千人の消費者を対象に行ったアンケート(2013年度版)によると、回答者の約6割が購買や投資に関する選択を「会社の評判」で決定するとし、そのうち約4割は企業のCSRへの取組みに基づき判断するとの結果が出ている。

<調査対象マーケット>
欧州:フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペイン、イギリス
アジア・パシフィック:オーストラリア、中国、インド、日本、韓国
北米:アメリカ、カナダ
南米:ブラジル、メキシコ

 また、調査対象となった15カ国の優良企業100社は7つの領域(職場環境、ガバナンス、シティズンシップ、業績、リーダーシップ、商品・サービス、イノベーション)においてスコアが付けられ、これらのうち「シティズンシップ(市民性)」「ガバナンス」「職場環境」の3つによりCSRに関する評価が行われている。

 2013年度の調査においてCSR分野でもっとも高い評価を得たのがマイクロソフト社だ(2年連続1位)。CSRに関する各領域別では、シティズンシップではウォルト・ディズニー社、ガバナンスではBMW社、職場環境ではGoogle社がトップとなっている。各社が評価されたCSRへの取組みは以下のとおり。
<ウォルト・ディズニー社>
・温室ガス排出削減等、環境への取組みに関する目標数値設定
・30年間にわたるDisney VoluntEARS(ディズニーの従業員によるボランティア活動)による地域活動の推進
<BMW社>
・環境に優しいCleaner/Greenerブランド戦略の推進
・世界に拡がるサプライチェーンの課題把握、サプライヤーの厳選採用
<Google社>
・先進的な建造物による、従業員にとって働きやすい職場環境の提供
・水質汚染や野生動物密猟等の困難な課題に対し科学的な解決を試みる企業家への資金提供

 このアンケート結果を見る限り、製品の購入や投資に影響する自社の評判は、CSRに相当程度依存していることが分かる。顧客や株主の信頼を得るための“戦略的なCSR”は、日本企業にとっても今後ますます重要な経営課題となりそうだ。

2014/10/12 チェックリスト:海外子会社へのコントロールを強めたい(会員限定)

■チェックリスト:海外子会社へのコントロールを強めたい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
(海外子会社でのガバナンスの強化)
定款、取締役会規則、職務権限規定、就業規則などの社内諸規則・規程が整備されているか。
親会社の経営理念や行動基準などが海外子会社で浸透しているか。
内部牽制が働くような体制になっているか。 特に、発注・検収・支払の担当者は分けて、お互いにチェックし合えるような体制になっているか。
得意先への与信管理は適切に確立されているか。 取引開始前に調査会社を用いた与信調査を実施するとともに、得意先を信用状況に応じてランク分けして、それぞれに与信限度額を設け、売掛金残高がその与信限度額に収まるようにしたり、信用状況の低いところとは現金取引や取引保証金を積んでもらったりする等の方策が考えられる。
紛争や係争が発生した場合の対応体制は構築されているか。
大型の自然災害等が発生した場合の非常時の対応体制は構築されているか。
電子情報に係るセキュリティ体制は構築されているか。
意見箱の設置や内部通報制度は構築されているか。
税務当局から指摘された内容がある場合や移転価格の問題が発生する可能性がある場合には、現地の税務専門家への相談も含めて対応しているか。
特殊で通例でない取引があるような場合には適時に親会社へ報告するようになっているか。
現預金・有価証券の帳簿残高と金融機関が発行した残高証明書との照合はされているか。 担当者以外の者(担当者の上長や親会社における海外子会社を管理する部門)が、残高証明書の原本に基づいて実施すべきである。
役員等への資金の貸付についての承認プロセスの明確となっているか。
棚卸資産の実地棚卸は実施されているか。
固定資産の台帳と現物との照合は行われているか。
(親会社からのモニタリング)
海外子会社を管理する部門において、定期的に海外子会社から業績の報告を受けているか。
海外子会社を管理する部門において、投資や融資等の重要な案件については親会社で承認を行っているか。
海外子会社を管理する部門において、海外子会社との積極的な情報交換により、親会社の経営方針に沿った事業運営がされているのかなどを継続的にモニタリングしているか。
内部監査部門において、全社的な内部統制や業務レベルでの内部統制が海外子会社において適切に構築されて、運用されているかを評価しているか。
(監査役監査)
監査役は、内部監査部門や会計監査人の指摘事項を確認しているか。
監査役は、海外子会社の社長や各所管役員等へのインタビューを行っているか。
監査役は、海外の工場・販売会社等への視察を行っているか。
監査役は、往査をしない海外子会社について、内部監査部門や会計監査人の監査結果を聴取したり、質問状等を送付してその回答を受領したりしているか。
(会計監査人監査)
海外子会社の会計監査人は選任されているか。 親会社の会計監査人と同一のファームであることが望ましい。
現地の会計監査人から、監査意見を受領しているか。

ケーススタディ役員実務「海外子会社へのコントロールを強めたい(会員限定)」はこちら

2014/10/12 【ガバナンスのあり方】海外子会社へのコントロールを強めたい

 

海外子会社の管理が難しい理由

製造コストの引き下げや輸送コストの削減を目的として、製造拠点を海外に設ける企業は少なくありません。また、メーカーでなくても、長引く不況や少子高齢化により国内マーケットが縮小傾向にある中、多くの企業が販路を海外へ求めています。製造面に限らず販売面まで含めてグローバルに展開する動きは加速する傾向にあります。そのような動向に伴い、海外子会社の重要性はますます高まっています。その一方で、海外子会社の不正や不祥事も増加しているため、親会社である日本企業にとって、海外子会社のコントロールの強化は急務となっています。

ただ、海外子会社とのコミュニケーションは、言葉の壁があることから、国内子会社のようにスムーズにはいきません。また、距離の問題から、ミーティングを頻繁に行うことは難しく、日常的なコミュニケーションはどうしても電話やメールが中心にならざるを得ません。訪問するとしても、時差を踏まえた事前の日程調整や航空機、ホテルの予約など、手間やコストがかかります。さらに、海外子会社の所在地国によって法令や規制、文化や商慣習が異なるという問題もあります。

こうした中、海外子会社へのコントロールを強化するためにはどうしたらよいのか、以下で詳しく解説していきます。

海外子会社のコントロールを強める4つの視点

海外子会社のコントロールを強めるためには、次の4つの視点から取り組むことが大切です(下図参照)。
(1)海外子会社における自律的なガバナンスの強化
(2)日本の親会社の「管理部門」「内部監査部門」による海外子会社のモリタリング
(3)日本の親会社の「監査役」による海外子会社の監査
(4)会計監査人(現地および親会社の監査法人等)による海外子会社の監査

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日本の親会社側から一方的に管理するだけでは限界があります。そこで、まずは海外子会社自身にガバナンスの強化に取り組んでもらうことが不可欠となります。そして、それがきちんと実行されているかどうかを、親会社、親会社の監査役、会計監査人の3方向から、異なる視点でチェックすることにより、海外子会社へのコントロールを効果的かつ効率的に行えるようになります。

以下、各視点に基づく海外子会社のコントロール手法について詳しく解説します。

海外子会社におけるガバナンスの強化

海外子会社におけるガバナンスの強化としては、社内諸規則・規程の整備、内部統制システムの構築、リスク管理体制の整備、財務報告体制の整備、資産保全体制の整備などを行います。一つずつ見て行きましょう。

(1)社内諸規則・規程の整備
社内諸規則・規程(以下、規程)は、定款、取締役会規則、職務権限規程、稟議規程、就業規程、給与規程・退職金規程・年金規程、経理規程、勘定科目処理要領、金銭・資金取扱規程、市場リスク管理規程、外国為替取引管理規程、販売管理規程、製品在庫管理規程、生産管理規程、原価計算規程など多岐に渡ります。

海外子会社においてこれらの規程を整備する際には、 親会社の規程を参考にするのがよいでしょう。ただし、子会社は親会社と比べると人的リソースが不足しがちであることから、親会社の規程をそのまま子会社に展開してしまうと、規模の割には重い規程となりかねません。さらに、現地の法令や海外子会社独自の事情への対応も必要となるため、親会社の規程をそのまま直訳することはできない条項もあります。そこで、親会社の規程を現地の実情に合わせるためのカスタマイズが不可欠となります。

カスタマイズを進めると、その反面として独自性が強まり、親会社のコントロールが難しくなってくるのも事実です。そこで、カスタマイズする場合であっても、親会社のコントロールが効くように規則・規程の内容を親会社の経営理念や行動基準を踏まえた内容にして、これを海外子会社に浸透、周知徹底を図るのがよいでしょう。

(2)内部統制システムの構築
我が国の財務報告に係る内部統制報告制度では、海外子会社であっても、重要性が高ければ()、その海外子会社の内部統制について経営者が評価しなければなりません。評価は、全社的な内部統制の評価で済む場合もありますが 、場合によっては業務プロセスの評価まで必要になることもあります。全社的な内部統制の整備であれば、統制環境に対して全社的な観点から内部統制を整備することになります。一方、業務プロセスに係る内部統制の整備では、売上取引や仕入取引といった主要な業務プロセスについて内部統制を整備することになります。そのうえで、整備された内部統制が適切に運用されているかどうかを評価しなければなりません。このように、財務報告に係る内部統制報告制度に基づき経営者の評価対象に加えられた海外子会社では、評価対象外となった海外子会社よりも一層内部統制を整備・運用することが必要になります。

財務報告に係る内部統制報告制度 : 上場会社の経営者が、自社の財務報告に係る内部統制を評価した報告書を財務(支)局に提出し、それについて監査法人等が監査をするという制度。平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用されている。

全社的な内部統制の評価 : 財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制のこと。「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」では、参考として42項目のチェックポイントが示されている。

業務プロセス : 販売や購買等の業務に関する仕事の流れのこと。

統制環境 : 内部統制を取り巻く環境のこと。例えば次のようなものがある。経営者の誠実性および倫理観、経営方針および経営戦略、組織構造および慣行等が該当する。

 例えば、「当該海外子会社の売上高」の「連結売上高」に占める割合が高い場合が考えられます。

海外子会社の内部統制を整備するうえで重要になるのは、・・・

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親会社によるモニタリング

親会社によるモニタリングには、親会社の海外事業部などの海外子会社を管理する部門によるモニタリングと、親会社の内部監査部門による内部監査によるモニタリングの2つがあります。

海外子会社を管理する部門によるモニタリングでは、その部門が海外子会社に対して定期的に業績の報告を求めるとともに、業績が悪い場合には、その原因を詳細に分析したうえで、必要な対応策(営業強化、人事異動、冗費の削減等)を遂行します。また、海外子会社が行う投資や融資の重要な案件については、実行前に、案件の重要性に応じて、親会社の取締役会や管理部門長等が承認を行ったり、海外子会社から報告を受けたりすることで、親会社の経営方針に沿った事業運営がされているのかなどを継続的にモニタリングします。海外子会社管理を所管する取締役は、モニタリングの結果を定期的に取締役会に報告することになります。

一方、親会社の内部監査部門によるモニタリングでは、・・・

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親会社の監査役による監査

親会社の監査役には子会社の業務および財産の状況を調査する権限があります(会社法381条)。そこで、監査役は、内部監査部門や会計監査人と協力して、子会社の監査を行います。具体的には、内部監査部門や会計監査人の指摘事項の状況を確認するとともに、海外子会社の社長や各所管役員等へのインタビューや工場・販売会社等への視察を行うことによって、海外子会社のガバナンスに問題がないかを監査します。例えばリスク管理体制の不備など、ガバナンス上の問題を把握した場合には、海外子会社の経営者に必要な体制の整備を求めます。

海外子会社が多数ある場合には、・・・

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会計監査人の積極的活用で海外子会社監査を効率的に

最後に会計監査人(監査法人等)による監査の活用を解説します。海外子会社の所在地国の法制度によっては、その海外子会社の財務報告について(現地の)会計事務所による監査が必要とされる場合があります。そのような法制度がない国でも、海外子会社の財務報告の信頼性を確保するためには、現地の会計事務所を監査人として選任し、任意に監査を受けることは有効な方法です。

現地の会計事務所は、会計専門家の立場から、海外子会社の財務諸表が所在地国の会計基準に準拠して適正と言えるかどうかの監査意見を表明します。また、監査の過程で、会計処理の誤りの指摘に限らず、例えば、承認もれや文書の不備など改善することが望ましい内部統制の不備が検出され、報告を受ける場合もあります。場合によっては、会計監査の過程で現地従業員の使い込みが発覚することもあるでしょう。これらの指摘や改善提案を受け入れ、より適切なガバナンス体制の構築に継続的に取り組むことで、海外子会社の管理体制の強化に役立ちます。

現地の会計事務所による会計監査に加えて、・・・

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2014/10/12 【ガバナンスのあり方】海外子会社へのコントロールを強めたい(会員限定)

 

海外子会社の管理が難しい理由

製造コストの引き下げや輸送コストの削減を目的として、製造拠点を海外に設ける企業は少なくありません。また、メーカーでなくても、長引く不況や少子高齢化により国内マーケットが縮小傾向にある中、多くの企業が販路を海外へ求めています。製造面に限らず販売面まで含めてグローバルに展開する動きは加速する傾向にあります。そのような動向に伴い、海外子会社の重要性はますます高まっています。その一方で、海外子会社の不正や不祥事も増加しているため、親会社である日本企業にとって、海外子会社のコントロールの強化は急務となっています。

ただ、海外子会社とのコミュニケーションは、言葉の壁があることから、国内子会社のようにスムーズにはいきません。また、距離の問題から、ミーティングを頻繁に行うことは難しく、日常的なコミュニケーションはどうしても電話やメールが中心にならざるを得ません。訪問するとしても、時差を踏まえた事前の日程調整や航空機、ホテルの予約など、手間やコストがかかります。さらに、海外子会社の所在地国によって法令や規制、文化や商慣習が異なるという問題もあります。

こうした中、海外子会社へのコントロールを強化するためにはどうしたらよいのか、以下で詳しく解説していきます。

海外子会社のコントロールを強める4つの視点

海外子会社のコントロールを強めるためには、次の4つの視点から取り組むことが大切です(下図参照)。
(1)海外子会社における自律的なガバナンスの強化
(2)日本の親会社の「管理部門」「内部監査部門」による海外子会社のモリタリング
(3)日本の親会社の「監査役」による海外子会社の監査
(4)会計監査人(現地および親会社の監査法人等)による海外子会社の監査

governance6159

日本の親会社側から一方的に管理するだけでは限界があります。そこで、まずは海外子会社自身にガバナンスの強化に取り組んでもらうことが不可欠となります。そして、それがきちんと実行されているかどうかを、親会社、親会社の監査役、会計監査人の3方向から、異なる視点でチェックすることにより、海外子会社へのコントロールを効果的かつ効率的に行えるようになります。

以下、各視点に基づく海外子会社のコントロール手法について詳しく解説します。

海外子会社におけるガバナンスの強化

海外子会社におけるガバナンスの強化としては、社内諸規則・規程の整備、内部統制システムの構築、リスク管理体制の整備、財務報告体制の整備、資産保全体制の整備などを行います。一つずつ見て行きましょう。

(1)社内諸規則・規程の整備
社内諸規則・規程(以下、規程)は、定款、取締役会規則、職務権限規程、稟議規程、就業規程、給与規程・退職金規程・年金規程、経理規程、勘定科目処理要領、金銭・資金取扱規程、市場リスク管理規程、外国為替取引管理規程、販売管理規程、製品在庫管理規程、生産管理規程、原価計算規程など多岐に渡ります。

海外子会社においてこれらの規程を整備する際には、 親会社の規程を参考にするのがよいでしょう。ただし、子会社は親会社と比べると人的リソースが不足しがちであることから、親会社の規程をそのまま子会社に展開してしまうと、規模の割には重い規程となりかねません。さらに、現地の法令や海外子会社独自の事情への対応も必要となるため、親会社の規程をそのまま直訳することはできない条項もあります。そこで、親会社の規程を現地の実情に合わせるためのカスタマイズが不可欠となります。

カスタマイズを進めると、その反面として独自性が強まり、親会社のコントロールが難しくなってくるのも事実です。そこで、カスタマイズする場合であっても、親会社のコントロールが効くように規則・規程の内容を親会社の経営理念や行動基準を踏まえた内容にして、これを海外子会社に浸透、周知徹底を図るのがよいでしょう。

(2)内部統制システムの構築
我が国の財務報告に係る内部統制報告制度では、海外子会社であっても、重要性が高ければ()、その海外子会社の内部統制について経営者が評価しなければなりません。評価は、全社的な内部統制の評価で済む場合もありますが 、場合によっては業務プロセスの評価まで必要になることもあります。全社的な内部統制の整備であれば、統制環境に対して全社的な観点から内部統制を整備することになります。一方、業務プロセスに係る内部統制の整備では、売上取引や仕入取引といった主要な業務プロセスについて内部統制を整備することになります。そのうえで、整備された内部統制が適切に運用されているかどうかを評価しなければなりません。このように、財務報告に係る内部統制報告制度に基づき経営者の評価対象に加えられた海外子会社では、評価対象外となった海外子会社よりも一層内部統制を整備・運用することが必要になります。

財務報告に係る内部統制報告制度 : 上場会社の経営者が、自社の財務報告に係る内部統制を評価した報告書を財務(支)局に提出し、それについて監査法人等が監査をするという制度。平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用されている。

全社的な内部統制の評価 : 財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制のこと。「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」では、参考として42項目のチェックポイントが示されている。

業務プロセス : 販売や購買等の業務に関する仕事の流れのこと。

統制環境 : 内部統制を取り巻く環境のこと。例えば次のようなものがある。経営者の誠実性および倫理観、経営方針および経営戦略、組織構造および慣行等が該当する。

 例えば、「当該海外子会社の売上高」の「連結売上高」に占める割合が高い場合が考えられます。

海外子会社の内部統制を整備するうえで重要になるのは、「内部牽制」(お互いが監視・チェックしあうことで、不正やミスの発生を防ぐ仕組み)が働くような体制を作ることです。特に「購買」の業務プロセスでは、発注・検収・支払の担当者が同一だと、例えば水増し発注のような不正につながりかねませんので、発注・検収・支払の業務ごとに担当者を分けて、お互いにチェックし合う(牽制が効く)体制を整備することが必須となります。もちろんこうした不正は日本企業においても起こり得ることですが、会社へのロイヤリティ(忠誠心)が低くなりがちな海外子会社では、国内子会社よりも不正発生リスクが高いと考えておいた方がよいでしょう。

また、「販売」の業務プロセスでは、営業の担当者と債権管理の担当者が同一だと、例えば、架空売上のような不正につながりかねませんので、営業担当者と債権管理の担当者は分けて、お互いにチェックし合う体制にします。さらに、得意先の与信管理についても適切な方法を確立する必要があります。具体的には、取引開始前に調査会社を用いた与信調査を実施するとともに、得意先を信用状況に応じてランク分けして、それぞれに与信限度額を設け、売掛金残高がその与信限度額に収まるようにしたり、信用状況の低いところとは現金取引や取引保証金を積んでもらったりすることなどが考えられます。

(3)リスク管理体制の整備
リスク管理体制の整備としては、まず、紛争や係争に対応する体制の整備が挙げられます。例えば、テロや地域紛争等による社会的混乱が生じた際に、顧客への対応や従業員の安全確保等をどのように進めるのかについて、方針や体制をあらかじめ整備しておくことが必要となります。とりわけ治安が悪化している地域では、社員が身代金目的で誘拐される事態も現実味を帯びたリスクとして考慮しなければなりません。また、海外で事業活動を展開する中で、知的財産権、製造物責任、環境、労務等さまざまな法的問題で訴訟を起こされるリスクがありますので、そのリスクに対応した体制を整えることも重要です。

大型の自然災害も考慮しなければならないリスクです()。例えば、製造設備の損傷や電気・水道・物流等の社会インフラの機能の低下に備えて、製造拠点や物流拠点を複数持ったり、自家発電設備等の備えをしておいたりといったことが考えられます。

 自然災害については、竜巻、ハリケーン、津波、洪水など国によって起こりやすいものが異なりますので、それに合わせた対策が必要です。

また、情報漏洩などを防止するため電子情報に係るセキュリティ体制も整備しておくべきです。子会社において情報漏洩が起これば、親会社や企業グループ全体に影響が及ぶ可能性があります。もっとも、上場会社でも、国内子会社全体に対して情報セキュリティ体制を整備できている会社はいまだ一部にとどまっています。さらに海外子会社まで含めた体制を構築できている上場会社となると、その数はもっと少なくなります。その背景には、M&Aで取得した海外子会社などはそもそも情報管理の体系が全く異なっていることや、法令や政府の規制の問題、翻訳の問題、海外子会社の社員の意識の問題などがあります。そのため、日本の親会社と同じレベルの情報セキュリティ体制を海外子会社に求めることは容易ではないでしょう。ただ、情報漏洩などはセキュリティの弱いところから発生するのが常であり、この状態を放置すれば、いつか事故が発生する可能性があります。実際、日本企業の海外子会社による情報漏洩事故は毎年のように発生しています。

こうした事態を防ぐためには、少なくとも、親会社が導入している情報セキュリティの基準のうち主要なものについては海外子会社に導入させるべきです。そのうえで、現地の法令や規制に応じて必要なカスタマイズを行います。また、匿名による意見箱の設置や内部通報制度も構築するのが望ましいでしょう。

海外子会社への情報セキュリティ体制の導入にあたっては、経済産業省の「情報セキュリティガバナンス導入ガイダンス」が参考になります。また、グローバルなネットワークを持つ情報セキュリティ導入支援会社を活用することも考えられます。

その他、税務当局から何らかの指摘を受けた場合、特に海外子会社間の取引について移転価格税制に関する指摘を受けた場合には、親会社への報告はもちろんのこと、親会社の顧問税理士および現地の税務専門家への相談も含めて早急に対応をすることが望まれます。移転価格税制では税額が巨額に上るうえ、(再び移転価格税制が適用されないようにするため)今後の取引価格も再考せざるを得ないなど、業績への影響が大きいからです。

移転価格税制 : グループ取引において低税率国から高税率国への輸出価格を不当に高くし、グループ全体の税負担を減らすような租税回避を防ぐため、通常の取引価格が行われたと仮定して課税を行う制度

(4)財務報告体制の整備
財務報告体制の整備として重要なのは、親会社への財務報告が適切な会計基準により行える体制を整備することです。具体的には、親会社が定めたグループアカウンティングポリシー等に基づいた財務報告ができるように、海外子会社の経理部門の人数を増やしたり、教育訓練を行ったりすることが考えられます。

グループアカウンティングポリシー : 連結グループで統一して適用される会計方針や具体的な会計処理の方法・手続きについて文書化されたもの

また、例えば未出荷売上など特殊で通例でない取引があるような場合には適時に親会社へ報告するようになっていることが必要です。そのためには、どのような取引が特殊で通例でない取引なのかを海外子会社の担当者へ例示しておき、そのような取引が生じた際には親会社へ必ず報告するように指示しておくといった対応が考えられます。

なお、子会社からのレポートだけでは、不正会計や業績悪化の兆しなどは発見するのは困難といわざるを得ません。こうした場合、子会社の取引を直接監視するようなシステムを導入したり、親会社からの内部監査や監査役監査を抜き打ちで行ったりすることなどが有効な場合もあります。

(5)資産保全体制の整備
資産保全体制の整備は、海外子会社の役員や従業員による着服やずさんな管理による会社財産の滅失を防止するために行われるものです。具体的には、預金・有価証券残高と金融機関への残高証明書との照合()、役員等への資金の貸付についての承認プロセスの明確化や契約書の整備、棚卸資産の実地棚卸の実施、固定資産の台帳と現物との照合などを行うことになります。これらの仕組みは親会社には内部統制の一環として当然に備わっている仕組みですので、親会社の内部統制と同様の仕組みを海外子会社にも導入することになります。もちろん、費用対効果の視点も重要であり、親会社とまったく同じレベルの仕組みを導入しなければいけないわけではありません。資産保全の観点からリスクを見極めたうえで、必要な統制を導入していくこととなります(従業員の着服については「従業員が会社の金を着服していた」を参照してください)。

 この照合を担当者に任せては、「誤謬」を防ぐことはできても、「不正」を防ぐことはできません。担当者以外の者(担当者の上長や親会社における海外子会社を管理する部門)が、残高証明書の原本に基づいて照合を実施すべきです。
親会社によるモニタリング

親会社によるモニタリングには、親会社の海外事業部などの海外子会社を管理する部門によるモニタリングと、親会社の内部監査部門による内部監査によるモニタリングの2つがあります。

海外子会社を管理する部門によるモニタリングでは、その部門が海外子会社に対して定期的に業績の報告を求めるとともに、業績が悪い場合には、その原因を詳細に分析したうえで、必要な対応策(営業強化、人事異動、冗費の削減等)を遂行します。また、海外子会社が行う投資や融資の重要な案件については、実行前に、案件の重要性に応じて、親会社の取締役会や管理部門長等が承認を行ったり、海外子会社から報告を受けたりすることで、親会社の経営方針に沿った事業運営がされているのかなどを継続的にモニタリングします。海外子会社管理を所管する取締役は、モニタリングの結果を定期的に取締役会に報告することになります。

一方、親会社の内部監査部門によるモニタリングでは、海外子会社の内部統制システムが適切に構築され、かつ、運用されているかを評価します。具体的には、「海外子会社におけるガバナンスの強化」で上述したガバナンスの強化策が実行されているかどうかを確認して、実行されていなければ、実行するように指導を行います。一つの内部監査部門が統一基準をもって各国の海外子会社を指導して回ることで、グローバルな企業グループの全体にガバナンスに関する共通の理解が定着していくはずです。そのためには、内部監査部門が強い指導力を発揮する必要があるので、内部監査部門の指導に従わない場合、改善が見られない場合には海外子会社のトップの交代を求めることができるなど、内部監査部門に一定の人事権を持たせることを検討してもよいでしょう。

親会社の監査役による監査

親会社の監査役には子会社の業務および財産の状況を調査する権限があります(会社法381条)。そこで、監査役は、内部監査部門や会計監査人と協力して、子会社の監査を行います。具体的には、内部監査部門や会計監査人の指摘事項の状況を確認するとともに、海外子会社の社長や各所管役員等へのインタビューや工場・販売会社等への視察を行うことによって、海外子会社のガバナンスに問題がないかを監査します。例えばリスク管理体制の不備など、ガバナンス上の問題を把握した場合には、海外子会社の経営者に必要な体制の整備を求めます。

海外子会社が多数ある場合には、一事業年度内でそのすべてを往査することは困難なため、例えば、主要な海外子会社は毎事業年度、それ以外の海外子会社は2年に1回というようにローテーションを組んで往査を行います。その場合、往査をしない海外子会社については、内部監査部門や会計監査人の監査結果を聴取したり、海外子会社に質問状等を送付し、その回答に基づいて監査を行ったりします。また、海外子会社の経営者が来日する予定があれば、そのタイミングでヒアリングを実施することも、コストを節約しつつ監査を進めるために有効な方法です。

往査 : 公認会計士が監査対象会社の本社、営業所、工場などに会計監査の一環で赴くこと

会計監査人の積極的活用で海外子会社監査を効率的に

最後に会計監査人(監査法人等)による監査の活用を解説します。海外子会社の所在地国の法制度によっては、その海外子会社の財務報告について(現地の)会計事務所による監査が必要とされる場合があります。そのような法制度がない国でも、海外子会社の財務報告の信頼性を確保するためには、現地の会計事務所を監査人として選任し、任意に監査を受けることは有効な方法です。

現地の会計事務所は、会計専門家の立場から、海外子会社の財務諸表が所在地国の会計基準に準拠して適正と言えるかどうかの監査意見を表明します。また、監査の過程で、会計処理の誤りの指摘に限らず、例えば、承認もれや文書の不備など改善することが望ましい内部統制の不備が検出され、報告を受ける場合もあります。場合によっては、会計監査の過程で現地従業員の使い込みが発覚することもあるでしょう。これらの指摘や改善提案を受け入れ、より適切なガバナンス体制の構築に継続的に取り組むことで、海外子会社の管理体制の強化に役立ちます。

現地の会計事務所による会計監査に加えて、親会社の会計監査人が、親会社の連結財務諸表監査の一環で、海外子会社を往査するケースもあります。例えば、親会社の連結財務諸表に占める海外子会社の財務諸表の金額的割合が高い場合などです。親会社の会計監査人は、海外子会社の経営者等へのインタビューや工場等への視察を行うことによって、海外子会社の管理体制に問題がないかを監査します。その際、よく指摘される点として、リスク管理体制や財務報告体制の整備不足といった点が挙げられます。

なお、監査の効率化の観点からは、親会社の会計監査人と現地の会計監査人が同一ファームであることが望ましいです。親会社の会計監査人が日本国内にしか事務所・提携事務所を有していない場合、国際的ネットワークを有する大手監査法人に会計監査人を変更することも検討すべきでしょう。

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2014/10/10 会社によって異なる社外取締役選定にかけられる時間的余裕(会員限定)

 上場会社役員ガバナンスフォーラムの調べによると、今年6月の株主総会を経ても社外取締役が1人もいない上場会社(東証一部・二部、マザーズ、JASDAQ)がいまだ1,216社あったことが確認されている。その中には、時価総額が1兆円を超える会社や先進的な経営で知られる会社も含まれる。

 ただ、来年(2015年)4月1日あるいは5月1日の施行が見込まれる改正会社法では、社外取締役を選任していない上場会社に対し、定時株主総会でその理由の説明が求められることを踏まえ(2014年9月24日のニュース「社外取締役を選任しても「相当でない理由」の説明は省略できない」参照)、社外取締役の選任を考えている上場会社は多い。

 また、既に社外取締役を置いている会社でも、改めて社外取締役を選任し直すケースが続出するとみられる。改正会社法では、社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化が図られ、(1)親会社の業務執行者等、(2)兄弟会社の業務執行者等、(3)業務執行者等の近親者は、社外取締役及び社外監査役に就任できないとしているからだ。社外取締役のみならず、社外監査役を親会社から受け入れている会社は多いため、今後は社外監査役の選任ラッシュも見込まれる。

 もっとも、既に社外取締役または社外監査役を置いている場合(上場会社のほとんどが該当する監査役会設置会社では、社外監査役の選任が義務付けられているため、少なくとも社外監査役はいるはずである)には、まだ時間的な余裕は残されている。改正会社法では、会社が人材の確保などの要する時間を考慮して経過措置を設けているからだ。上述のとおり、改正会社法は来年4月あるいは5月の施行が予定されているため、それまでに厳格化後の要件を満たす社外取締役あるいは社外監査役を選任しなければならないのではないかと思うかもしれないが、そうではない。3月決算会社を例にとれば、平成28年6月の定時株主総会で新要件をクリアした社外取締役・監査役を選任すればよいことになっている。

 ここで注意したいのは、この経過措置の適用を受けることができるのは、現在、社外取締役または社外監査役を選任している場合のみであるという点。改正会社法附則4条では、「この法律の施行の際、現に社外取締役又は社外監査役を置く株式会社の社外取締役又は社外監査役については、この法律の施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時までは、新会社法第二条第十五号又は第十六号の規定にかかわらず、なお従前の例による。」とされている(一部簡略化)。要するに、経過措置が適用されるのは「改正会社法の施行時に選任されている」社外取締役または社外監査役に限られるということだ。

 冒頭で触れたとおり、まだ社外取締役が1人もいない会社はたくさんあるが、これらの会社のように来年の株主総会(3月決算会社であれば、平成27年6月の定時株主総会)で“初めて”社外取締役を選任する場合には、厳格化後の要件を満たした社外取締役を選任必要がある。この結果、「現状は親会社から受け入れた社外監査役のみがいる」という会社では、社外監査役は旧要件、社外取締役は新要件に基づき選任するという事例が出て来ることかもしれない。

 なお、旧要件が認められるのは、「改正会社法施行後最初に終了する事業年度」に関する定時株主総会までとなる。3月決算会社であれば平成28年6月の定時株主総会までは旧要件が認められ、平成29年6月の定時株主総会からは新要件で社外取締役等を選任しなければならない。

2014/10/10 会社によって異なる社外取締役選定にかけられる時間的余裕

 上場会社役員ガバナンスフォーラムの調べによると、今年6月の株主総会を経ても社外取締役が1人もいない上場会社(東証一部・二部、マザーズ、JASDAQ)がいまだ1,216社あったことが確認されている。その中には、時価総額が1兆円を超える会社や先進的な経営で知られる会社も含まれる。

 ただ、来年(2015年)4月1日あるいは5月1日の施行が見込まれる改正会社法では、社外取締役を選任していない上場会社に対し、定時株主総会でその理由の説明が求められることを踏まえ(2014年9月24日のニュース「社外取締役を選任しても「相当でない理由」の説明は省略できない」参照)、社外取締役の選任を考えている上場会社は多い。

 また、既に社外取締役を置いている会社でも、改めて社外取締役を選任し直すケースが続出するとみられる。改正会社法では、社外取締役及び社外監査役の要件の厳格化が図られ、(1)親会社の業務執行者等、(2)兄弟会社の業務執行者等、(3)業務執行者等の近親者は、社外取締役及び社外監査役に就任できないとしているからだ。社外取締役のみならず、社外監査役を親会社から受け入れている会社は多いため、今後は社外監査役の選任ラッシュも見込まれる。

 もっとも、既に社外取締役または社外監査役を置いている場合(上場会社のほとんどが該当する監査役会設置会社では、社外監査役の選任が義務付けられているため、少なくとも社外監査役はいるはずである)には、まだ時間的な余裕は残されている。改正会社法では、会社が人材の確保などの要する時間を考慮して経過措置を設けているからだ。上述のとおり、改正会社法は来年4月あるいは5月の施行が予定されているため、それまでに厳格化後の要件を満たす社外取締役あるいは社外監査役を選任しなければならないのではないかと思うかもしれないが、そうではない。3月決算会社を例にとれば、・・・

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