2014/09/30 2014年9月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
 東京証券取引所の調べによると、全上場会社のうち独立取締役を2人以上選任している会社は390社(21.5%)に過ぎません。現在策定中のコーポレートガバナンス・コード(11月下旬に公開草案が公表予定)では、上場会社に2人以上の独立取締役を選任することが盛り込まれる見込みです。その結果、2人以上の独立取締役を選任していない上場会社は、その理由(なぜ2人以上の独立取締役を選任しないのか)をコーポレートガバナンス報告書に記載する必要が生じることになります。
 問題文は、独立取締役を2人以上選任している上場会社が「半数を超える」としている点で誤りです。

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2014/09/02 策定中のコーポレートガバナンス・コードで注目の“株主総会遅延化”、決算早期化の流れを変えるか?(会員限定)

2014/09/30 2014年9月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
 東京証券取引所の調べによると、全上場会社のうち独立取締役を2人以上選任している会社は390社(21.5%)に過ぎません。現在策定中のコーポレートガバナンス・コード(11月下旬に公開草案が公表予定)では、上場会社に2人以上の独立取締役を選任することが盛り込まれる見込みです。その結果、2人以上の独立取締役を選任していない上場会社は、その理由(なぜ2人以上の独立取締役を選任しないのか)をコーポレートガバナンス報告書に記載する必要が生じることになります。
 問題文は、独立取締役を2人以上選任している上場会社が「半数を超える」としている点で誤りです。

こちらの記事で再確認!
2014/09/02 策定中のコーポレートガバナンス・コードで注目の“株主総会遅延化”、決算早期化の流れを変えるか?(会員限定)

2014/09/30 2014年9月度チェックテスト

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【問題1】

独立取締役を2人以上選任している上場会社は、全上場会社の半数を超える。


正しい
間違い
【問題2】

国家公務員または地方公務員でなければ、取引業者から接待を受けたとしても収賄で逮捕されることはない。


正しい
間違い
【問題3】

企業の政治献金は「政策をカネで買う」だけでなく「産業界と政界の癒着」をもたらすことから、最高裁は八幡製鉄事件で「企業の政治献金は違憲」との判決を出した。


正しい
間違い
【問題4】

企業の組織再編はスキーム次第で納税額が大きく異なるため、対税務当局といった観点から税務部門が組織再編プロジェクトを主導すべきである。


正しい
間違い
【問題5】

自社製品の販売後に欠陥等が発見された場合、リコールを行えば集団訴訟が提起されることはない。


正しい
間違い
【問題6】

買収防衛策の議案への反対が多数にのぼったとしても、会社側が強引に買収防衛策導入に踏み切ることも理屈のうえでは可能である。


正しい
間違い
【問題7】

独占禁止法違反の疑いがあるとして公正取引委員会による立入検査を受けた際に、担当者が「任意の事情聴取」を求められても、事実把握のための社内調査を優先して、事情聴取を後日にするよう申し入れるべきである。


正しい
間違い
【問題8】

アクティビスト・ファンドの運用資産残高は伸びているが、有力なアクティビスト・ヘッジファンドであってもそのリターンは全ヘッジファンド平均の半分にも満たない。


正しい
間違い
【問題9】

改正会社法が平成26年4月か5月に施行された場合、社外取締役を選任していない3月決算の上場会社は平成27年6月の定時株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主に対して説明しなければならないのが原則だが、同じ株主総会で社外取締役の選任議案を提出すれば、例外的に「相当でない理由」の説明を省略できる。


正しい
間違い
【問題10】

就業規則の副業禁止規定に違反したことを理由に行った懲戒解雇の是非が会社と元従業員との間で裁判により争われても、就業規則に副業禁止規定が明記されている以上、裁判所は大半のケースで懲戒解雇を肯定している。


正しい
間違い

2014/09/29 “女性活躍法”で公表が求められる項目は?

 企業における女性登用を推進するための「実効性の高い法的枠組み」を構築するための議論が厚生労働省の労働政策審議会(雇用均等分科会)で進められている。安倍総理が今秋(2014年秋)の臨時国会での法案の提出に強い意欲を示していることを踏まえ、同審議会は10月7日にも答申をとりまとめる予定だ。

 ただ、こうした政府の動きと企業の現実の間には若干のズレがある。政府は企業に対し、2020年までに「指導的地位」に占める女性の割合を30%以上とすることを求めているが、女性の採用・育成が本格化したのは1986年の男女雇用機会均等法施行後であり、現時点では、指導的地位就任を前提としたキャリアを積んで来たと言える女性は多くない。業種によってはそもそも女性従業員の数が少なく、目標の達成は難しいというのが企業側の本音と言える。

 こうした企業サイドの声を踏まえ、女性活躍法案では、一定割合の女性役員や管理職の設置の“義務付け”は見送られる方向だが、(1)女性の活躍に関する状況や分析結果を公表するとともに、(2) 従業員300人超の会社は(1)を踏まえた「行動計画」を策定し、政府に「届出」をするとともに、「公表」することを求められることになりそうだ。具体的には、・・・

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2014/09/29 “女性活躍法”で公表が求められる項目は?(会員限定)

 企業における女性登用を推進するための「実効性の高い法的枠組み」を構築するための議論が厚生労働省の労働政策審議会(雇用均等分科会)で進められている。安倍総理が今秋(2014年秋)の臨時国会での法案の提出に強い意欲を示していることを踏まえ、同審議会は10月7日にも答申をとりまとめる予定だ。

 ただ、こうした政府の動きと企業の現実の間には若干のズレがある。政府は企業に対し、2020年までに「指導的地位」に占める女性の割合を30%以上とすることを求めているが、女性の採用・育成が本格化したのは1986年の男女雇用機会均等法施行後であり、現時点では、指導的地位就任を前提としたキャリアを積んで来たと言える女性は多くない。業種によってはそもそも女性従業員の数が少なく、目標の達成は難しいというのが企業側の本音と言える。

 こうした企業サイドの声を踏まえ、女性活躍法案では、一定割合の女性役員や管理職の設置の“義務付け”は見送られる方向だが、(1)女性の活躍に関する状況や分析結果を公表するとともに、(2) 従業員300人超の会社は(1)を踏まえた「行動計画」を策定し、政府に「届出」をするとともに、「公表」することを求められることになりそうだ。具体的には、(1)では男女別の採用や登用・継続就業の状況、労働時間など、(2)の行動計画では女性の活躍状況とその分析、女性の活躍に向けた目標・取組内容、それらの実施時期・計画期間などの策定・届出・公表が求められる。

 女性の活躍推進に関しては、既に東京証券取引所と経済産業省が、優れた取組みをしている企業を「なでしこ銘柄」として選定・公表することにより、投資を促している。女性活躍法も、これと同様にあくまで企業の自主的な取組みを促進するための仕組みと考えてよいだろう。

 もっとも、女性の活躍は企業が繁栄するための「手段」であって「目的」ではない。そう考えると、女性をどう活用していくかは企業の経営戦略の1つに位置付けられるはずであり、上記の「行動計画」もその文脈の中で検討されるべきであろう。経営戦略の裏付けがない単なる数値目標を立てても、市場の評価を得るのは難しいと言えそうだ。

2014/09/29 【経営上のリスク】取引先が経営危機にあることがわかった

 

毎年1万社の企業が倒産

「あの取引先が危ないらしい」――自社の営業担当者などから、こうした噂話を耳にしたことがあると思います。単なる噂話ならよいのですが、事実である場合も少なくありません。

帝国データバンクの集計によると、倒産件数は2007年度以降、毎年1万件を超えていましたが、2009年12月4日に施行された中小企業金融円滑化法の効果もあり、2009年をピークとして減少傾向にあります。今後の景気動向にもよりますが、同法の適用期限が2013年3月末で切れたこともあって、今後は倒産件数がある程度高い水準で推移していく可能性もあります。

中小企業金融円滑化法 : 中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律。金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた場合に、できる限り貸付条件の変更等に対応するよう努めることなどを内容とする法律であった。

このように毎年多数発生している倒産が、いつ自社の取引先に起こっても何ら不思議ではありません。もっとも、会社は人間と同じで“突然死”することは少なく、倒産までに何らかの兆候が見られるのが通常です。では、取引先の倒産の兆候としてどのようなものがあるか、また、そういった兆候が見られた場合に取締役はどのように対処するべきかを見て行きましょう。

倒産の兆候とは?

倒産の兆候には様々なものがありますが、典型的な事象は以下のとおりです。

(1)支払猶予
「支払猶予」とは、販売先からの要請に基づく現金払いの猶予、買掛金の支払期日の延長などのことです。買掛金(自社から見ると売掛金)を例にすると、買掛金の決済日が翌月末日のところを翌々月末に延長すれば、資金繰りに1か月の余裕が出ます。このような支払猶予は、それを要請した会社の資金繰りが悪化している兆候と言えます。また、取引先が保証金(取引開始にあたり、信用を担保するため仕入先から要求される金銭)の一部または全部の返還を求めてきた場合も、同様に資金繰りが悪化している兆候と言えます。

(2)決済の早期化の要請
仕入先と掛取引をしている場合、仕入先から売掛金(自社から見ると買掛金)の入金予定日を早めてもらえないかと打診を受ける場合があります。その背景には、仕入先の資金繰り悪化があることから、このような要請があることは、倒産の兆候と言えます。

(3)手形のジャンプ
手形のジャンプとは、(1)で説明した支払いの猶予と同様、手形を振り出した相手に対して、不渡りになるのを避けるため手形を取立てに出さないように要請し、手形の決済日を延長してもらうことです(その代わりに、支払期日を数か月先に設定した別の手形を渡すことになります)。手形の決済日が本来の期日よりも数か月先に“ジャンプ”することから、このように呼ばれています。

手形のジャンプは、資金繰りがかなり厳しくなった時に緊急措置的にとられる手法であるため、これが行われると倒産の危険性が非常に高まっていると言えます。

(4)融通手形の発行
融通手形とは、親しい取引先などに頼んで、実際には商品の売買等がないのに振り出される空(カラ)手形のことです。金融のために手形を融通することから、融通手形と呼ばれています。手形を受け取った後は、それを金融機関で割り引くことにより 、自社の資金繰りを補います。

手形の割引 : 金融機関が支払期日前に手形を買い受けることを「割り引く」という。金融機関は、手形金額から割引料(手形の買受日から本来の支払期日までの利息に相当しますが、会計上は手形売却損としてP/Lに表示される)を差し引いた金額で買い取ることになる。

例えば、資金繰りに窮したA社が、親しい取引先であるB社に融通手形の依頼をした場合を考えてみましょう。A社はB社に手形を融通してもらい、その手形を銀行で割り引いて、当面の運転資金を確保します。B社から融通を受けた手形の支払期日が来るとA社は何とか資金を作ってB社に渡し、B社はそのお金で手形を決済します。このようにB社から手形を融通してもらったA社が、その後(事業が上手くいって)融通手形を決済する資金が準備できれば、何も問題は生じません。しかし、もともと資金繰りの苦しい会社が、融通手形を決済する資金を準備できる可能性は高くありません。手形を割引いた銀行が手形の振出人であるB社に対して取立依頼をすると、B社は支払いを余儀なくされるのですが、商取引の実態がない手形を振り出したB社としても、満期日までにA社が資金を準備してくれなければ、これを決済することは容易ではありません。

業績が芳しくない会社同士が、相互に融通手形を発行し合うことも珍しくありません。この場合、お互いに相手の信用力を利用し合っているため、そのうち1社の資金繰りが破綻すると、破綻した会社の手形が決済されないうえ、残りの会社が振り出した手形も決済を迫られますので、結局、残りの会社も連鎖破綻してしまいます。

取引先が融通手形を発行しているかどうかを確認するには、同業他社、特に地元の同業者から取引先に関する情報を入手することが有効です。地元の同業者は、取引のある地域の金融機関や商工会議所、共通の仕入先、従業員の知人などから、さまざまな情報を入手していることが多いからです。融通手形を発行しているとなれば、その取引先はすでに金融機関からの借入れが行えないほど信用力が落ちている証拠ですので、倒産の重大な兆候の1つと言えます。

このほかにも、大株主の交代(*1)や経営幹部の相次ぐ転職(*2)、従業員への給与の支払いの遅滞や社会保険料の滞納など、倒産の兆候にはさまざまなものがあります。そこで取締役としては、取引先においてそのような事態が発生していないか、常にアンテナを張っておくことが重要です。具体的には、営業担当者が、取引先の営業所や工場等へ出向いた際に、その雰囲気や代表者をはじめとする役員や従業員の態度、様子などをよく観察し、変化がないかどうかをチェックし、異常があればすぐに上長に報告するような体制を整えます。また、情報入手ルートがあれば、取引先の取引金融機関から取引先に対する考え方、信用状況の変化等を聞いてみるのもよいでしょう。

*1 「大株主の交代」の中でも信用力の高い大株主から信用力の高くない株主に交代するようなケースは、会社の信用力の低下を意味することから注意が必要です。
*2 経営中枢にいる幹部が、経営状況の悪化や資金繰りの悪化を事前に察知して我先にと転職している可能性があるので、「幹部の相次ぐ転職」にも注意が必要です。

さらに、取引先の債権を管理する担当者を置き、営業担当者から取引先のナマの情報を吸い上げる体制を構築することや、帝国データバンク、東京商工リサーチ、リスクモンスターなどの信用調査機関の企業情報データベースを利用することも有効です。特に取引の開始にあたっては、相手先の財務状況や信用の度合いなどについて、信用調査機関に直接、調査依頼することも検討するべきでしょう。

このほか、商業登記簿謄本を入手し、それに記載されている会社の設立年月日、資本金の額、役員構成などを把握し、社歴の長短や資本金などからある程度の信用力を確かめることができます。また、商業登記簿謄本は、役員に悪い噂のある人物がいないかどうかを調べる取っ掛かりになります。さらに、本社土地・建物など自社所有の不動産を保有している取引先であれば、不動産登記簿謄本を閲覧することで、金融機関等の抵当権・根抵当権(後述の「事前にやっておくべきこと」の<物的担保>参照)の情報を知ることができ、被担保債権(抵当権・根抵当権により担保される債権)の額と不動産価値とを比較することで担保余力を知ることもできます。

倒産の兆候を把握したら何をすべきか

では、取引先の倒産の兆候を把握した場合、取締役としては何をすべきでしょうか。考えられる対応は以下のとおりです。

(1)決算書を確認する
まず、倒産の兆候のある取引先の決算書を再確認します。決算書の確認により、問題となる会社の現在の状況を知ることができ、倒産の兆候の真偽についての手掛かりを得るとともに、その会社の危険度をある程度予測することが可能となり、今後の対応方針を決定できます。

もっとも、問題は「そもそも決算書の入手は容易ではない」という点です。取引先が上場会社であれば有価証券報告書や決算短信を閲覧することで容易に財政状態を把握できますが、取引先が未上場会社である場合、金融機関でない限り、取引の開始前に決算書を入手できるケースは非常に少ないものと思われます。通常、決算書等を入手できるのは、取引先の業績が悪化し、支払期日の延期などを申し込んできた場合が多いと言えます。取締役としては、営業担当者に、普段から取引先と良好な関係を構築し、定期的に取引先の決算書を入手できる間柄になっておくよう指示しておくことが大切です。

(2)得意先からの支払猶予の要請への対応
取引先(得意先)から支払猶予の要請がなされた場合、まずは、取引先に対する債権をいかに保全し、回収するかということを考えなければなりません。担保を取得していないのであれば、取引先と交渉して保証人を差し出してもらう等、何とかして価値ある担保を取得するべきです。

また、今後も取引を継続していくべきか否かも判断しなければなりません。倒産の可能性が高いと判断した場合には、取引を中止すべきです。担保を取っていても、いざという時に簡単に行使することができなかったり、換価するのに時間を要したりして、結局、何らかの損害が発生することがよくあるからです。

ただし、取引を中止する場合には、・・・

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取引先との関係を解消する手段

取引先がどうやら経営危機に陥っているようだといった噂が舞い込んできた場合、会社としては、今後の取引を見合わせるとともに、それが得意先であれば、そこへの売掛債権をすぐにでも回収したいと考えるのが通常でしょう。しかし、仮に得意先が本当に経営危機であったとしても、その事情だけをもって一方的に契約を解除し、当初の入金予定日前に売掛債権を回収できるわけではありません。

取引先が経営危機にあるかどうかにかかわらず、こちらの都合だけで取引先との契約関係を一方的に終わらせ、お互いの債権・債務をすぐに解消するためには、契約上、そういった約束が取り決められていることが必要になります。仮にそのような取決めがないのであれば、契約解除や債権回収は、法律上定められた一定の場合にしか行うことができません。では、具体的には、どのような場合に契約解除等が可能なのでしょうか。以下、検討することにします。・・・

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「期限の利益」を喪失させるための方策

将来に向かって契約関係を解消するには、上述したとおり、契約書で「解除権」についてきちんと規定しておけば大丈夫ですが、それでは、現に得意先に対して有している売掛債権についてはどうでしょうか。

一般に“ない袖は振れない”以上、経営危機に陥った得意先から債権を回収するのは容易ではありませんが、できるだけ他社に先んじて回収にあたる努力はするべきでしょう。そのためには得意先のどこに資産があるかを調査しなければなりませんが、その前提として、そもそもこちらの債権が履行可能であること、すなわち、既に支払時期が到来していることが必要になります。

それでは、得意先の支払時期が未だ到来していないケースでは、ただ支払時期の到来をじっと待つことしかできないのかというと、そうではありません。支払時期がまだ到来していないのであれば、・・・

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債権回収を放置するとどうなる?

得意先の経営状態が悪く、売掛債権をすぐに回収することができない場合には、ひとまず様子を見て、状況が好転してから改めて支払いを求めるのも有効な債権回収の方法の1つです。しかし、長期にわたって回収の努力をせず放置した場合には「時効」が到来してしまい、得意先から支払いを拒まれてしまうことにもなりかねません。

債権者が何もせずに一定の期間(これを「時効期間」と言います)が過ぎ、債務者が「時効になったので支払わない」という意思表示(これを「時効の援用(自己の利益のために主張すること)」と言います)をすると、債権はなくなってしまい(これを「消滅時効にかかる」と言います)、その後はたとえ裁判に訴えても債務者に対して支払いを強制することはできなくなります。もちろん債務者が時効を援用せず、自分の意思で払ってくれれば問題はないわけですが、債権者という立場で債権をしっかりと保全するためには、時効期間が経過する前にその進行を中断させる必要があります。そのために・・・

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時効を中断させる方法

上述した民法が定める3つの時効中断事由はいずれも、要するに「時効によって消滅させるつもりがない」ことをはっきり示すことによって、時効の完成を拒否する姿勢を明確にするものと言えます。

1つずつ見てみましょう。・・・

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債権保全のために何をすべきか

では、上述した消滅時効にかからずに債権を回収するためには、具体的にどのような手順を踏めばいいのでしょうか。

まず、債権の種類に応じて時効期間が異なりますので、問題となる債権の種類を確認する必要があります。主な債権の時効期間は下表のとおりです。・・・

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債権回収の方法と一部弁済があった場合の取扱い

債権回収の方法としては、全額を通常の方法で弁済を受ける方法以外に、次のような方法による回収も可能です。・・・

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債権回収にあたってはどこまで無理が許される?

取引先が経営危機に陥っている場面では、既に他の債権者も同じように債権回収に取りかかろうとしているでしょうから、まさに一刻を争う状況にあるといえます。このため、可能な限り多額の債権を回収しようとする立場としては、・・・

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刑事・民事上の責任が生じかねない回収行為とは?

まず頭に入れて置いていただきたいのは、得意先が経営危機にあるという特殊な状況下では、普段はあまり問題とならないような行為であっても、刑事責任に問われる危険性が大きくなるということです。

例えば、・・・

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債権回収を知人に依頼しても違法になる恐れ

以上のとおり、債権回収にあたってあまり強引なことをすると、思いもよらない責任を負うことになりかねません。そこで、自ら債権回収を行うのではなく、知人などの第三者に回収を委託したり、売掛金自体を第三者に売却したりすることにより、回収を外部の者に任せてしまいたいと考えることもあるかもしれません。

しかし、このような行為は・・・

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回収した売掛金の返還を求められることも

「得意先の経営状態が危ないらしい」と聞いたら、会社としては、売掛金などの債権の支払いをいち早く受けたいと考えるでしょう。債権者である会社が、得意先から弁済期にある売掛金の支払いを受けたり、支払督促や訴訟提起、差押え等の法的な手続を執ったりすることは、債権者として当然の権利です。したがって、通常であれば、後になってこの権利を否定され、回収した金銭の返還を求められることはありません。

ただし、債権回収行為によって他の債権者に不利益が生じた場合(例えば、自社だけが優先的に債務者から弁済を受けたことで、他の債権者への返済の原資が枯渇してしまった場合)には、他の債権者から、債権回収行為の効果を否定され、回収した金銭を返還するよう求められることがあります。債権者に認められたこの権利を・・・

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詐害行為取消権はどのような場合に認められる?

詐害行為取消権は民法に定められた権利であり、「無資力の債務者が、ある債権者を害することを知っていながら、他の特定の債権者のために担保提供、債務弁済等を行った場合に、これにより不利益を受けた債権者は、裁判所を通してその行為の取消しを求めることができる」というものです(民法424条)。例えば、経営危機にあるA社に対して100万円の債権を持つ得意先のB社がA社と通謀して優先的にその全額を回収し、その結果、A社に200万円の債権を持つ別の得意先のC社が1円も回収できなくなったような場合には、C社は、A社のB社に対する支払いを取り消すよう裁判所に訴えることができるのです。

ただし、判例は、・・・

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詐害行為取消権よりはるかに強力な否認権

一方、「否認権」は詐害行為取消権よりも強力ですし、より広い範囲で認められる権利です。

上述のとおり、否認権は得意先が法的な倒産手続に入った後に行使されるものですが、詐害行為取消権同様、詐害行為による債権の回収のほか、債務者が支払不能支払停止となった後にした弁済や担保設定等の行為、登記などの対抗要件の設定、差押え―――なども対象になります。

支払不能 : 弁済期にある債務について、一般的かつ継続的に弁済することができない状態

支払停止 : 一般的、継続的に債務を弁済することができない旨を表明する態度をいい、典型例としては手形の不渡りがある。

対抗要件 : 権利関係を第三者に主張するための所定の手続

そこで、得意先が破産等の法的手続に入ってしまうと、せっかく他の債権者に先駆けて債権を上手く回収できたとしても、破産管財人からその効力を否定されてしまう可能性が高くなります。これは、弁済期が到来した債務の弁済(本旨弁済)であったとしても同じです。この点、詐害行為取消権が本旨弁済ではない場合に限定している(上記判例参照)のとは範囲が異なるので要注意です。

このように、否認権が債権の回収を厳しく制限しているのは、そもそも否認権という制度が、特定の債権者による回収によって債務者が失ってしまった財産を、破産財団として回復することによって、「すべての債権者」に対して“平等・公平”に配当することを可能にするためのものであるからです。

破産財団 : 破産管財人が管理・処分する破産者の財産

否認権の種類を整理すると、次の表のとおりとなります。・・・

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事前にやっておくべきこと

このように取引先が倒産した場合、取引先から債権を全額回収し終えるまでに大変なエネルギーを費やすことになります。可能であれば、そのような事態は避けたいものです。そこで、回収不能といった事態を可能な限り回避するため、会社として事前にやっておくべきことをリストアップしてみました。・・・

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損金算入できなくても貸倒引当金の計上は必要

取引先の倒産の兆候を把握した者(営業担当者、債権管理担当者など)は、その取引先に対する債権の回収可能性を検討し、検討結果を経理部門に伝達する必要があります。

そして、経理部門は、債権の貸倒見積高を適切に算定して、これを「貸倒引当金」として財務諸表に計上しなければなりません。財務諸表上、貸倒引当金は、受取手形や売掛金、貸付金などの債権を控除する形で表示されます(下図参照)。すなわち、貸倒引当金には、債権金額を適正な評価額まで切り下げて表示する働きがあります。

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逆に言うと、債権の価値を適正に評価するうえでは、貸倒見積高の算定が正しく行われていることが大前提となります。そして債権の評価に先立ち、まずは債権を債務者の財政状態に応じて、次の3つに分類するのが通常です。
(ア)一般債権
(イ)貸倒懸念債権
(ウ)破産更生債権等

(ア)は何の問題も起きていない債権、(イ)は債務者が経営破綻状態に至ったわけではないものの、債務の弁済に重大な問題が生じているか、または生じる可能性の高い債権、(ウ)は倒産に至った債権を言います。「倒産の兆候のある債権」は、(イ)の貸倒懸念債権に分類されます。

貸倒懸念債権の貸倒見積高は、「財務内容評価法」もしくは「キャッシュ・フロー見積法」により算定されます。

財務内容評価法とは・・・

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約定解除権および期限の利益の喪失についての契約書条項のサンプル

契約書作成時の参考までに、約定解除権および期限の利益の喪失について契約書で規定する場合の文言のサンプルを下に掲げておきます。・・・

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2014/09/29 【経営上のリスク】取引先が経営危機にあることがわかった(会員限定)

 

毎年1万社の企業が倒産

「あの取引先が危ないらしい」――自社の営業担当者などから、こうした噂話を耳にしたことがあると思います。単なる噂話ならよいのですが、事実である場合も少なくありません。

帝国データバンクの集計によると、倒産件数は2007年度以降、毎年1万件を超えていましたが、2009年12月4日に施行された中小企業金融円滑化法の効果もあり、2009年をピークとして減少傾向にあります。今後の景気動向にもよりますが、同法の適用期限が2013年3月末で切れたこともあって、今後は倒産件数がある程度高い水準で推移していく可能性もあります。

中小企業金融円滑化法 : 中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律。金融危機・景気低迷による中小企業の資金繰り悪化等への対応策として、中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた場合に、できる限り貸付条件の変更等に対応するよう努めることなどを内容とする法律であった。

このように毎年多数発生している倒産が、いつ自社の取引先に起こっても何ら不思議ではありません。もっとも、会社は人間と同じで“突然死”することは少なく、倒産までに何らかの兆候が見られるのが通常です。では、取引先の倒産の兆候としてどのようなものがあるか、また、そういった兆候が見られた場合に取締役はどのように対処するべきかを見て行きましょう。

倒産の兆候とは?

倒産の兆候には様々なものがありますが、典型的な事象は以下のとおりです。

(1)支払猶予
「支払猶予」とは、販売先からの要請に基づく現金払いの猶予、買掛金の支払期日の延長などのことです。買掛金(自社から見ると売掛金)を例にすると、買掛金の決済日が翌月末日のところを翌々月末に延長すれば、資金繰りに1か月の余裕が出ます。このような支払猶予は、それを要請した会社の資金繰りが悪化している兆候と言えます。また、取引先が保証金(取引開始にあたり、信用を担保するため仕入先から要求される金銭)の一部または全部の返還を求めてきた場合も、同様に資金繰りが悪化している兆候と言えます。

(2)決済の早期化の要請
仕入先と掛取引をしている場合、仕入先から売掛金(自社から見ると買掛金)の入金予定日を早めてもらえないかと打診を受ける場合があります。その背景には、仕入先の資金繰り悪化があることから、このような要請があることは、倒産の兆候と言えます。

(3)手形のジャンプ
手形のジャンプとは、(1)で説明した支払いの猶予と同様、手形を振り出した相手に対して、不渡りになるのを避けるため手形を取立てに出さないように要請し、手形の決済日を延長してもらうことです(その代わりに、支払期日を数か月先に設定した別の手形を渡すことになります)。手形の決済日が本来の期日よりも数か月先に“ジャンプ”することから、このように呼ばれています。

手形のジャンプは、資金繰りがかなり厳しくなった時に緊急措置的にとられる手法であるため、これが行われると倒産の危険性が非常に高まっていると言えます。

(4)融通手形の発行
融通手形とは、親しい取引先などに頼んで、実際には商品の売買等がないのに振り出される空(カラ)手形のことです。金融のために手形を融通することから、融通手形と呼ばれています。手形を受け取った後は、それを金融機関で割り引くことにより 、自社の資金繰りを補います。

手形の割引 : 金融機関が支払期日前に手形を買い受けることを「割り引く」という。金融機関は、手形金額から割引料(手形の買受日から本来の支払期日までの利息に相当しますが、会計上は手形売却損としてP/Lに表示される)を差し引いた金額で買い取ることになる。

例えば、資金繰りに窮したA社が、親しい取引先であるB社に融通手形の依頼をした場合を考えてみましょう。A社はB社に手形を融通してもらい、その手形を銀行で割り引いて、当面の運転資金を確保します。B社から融通を受けた手形の支払期日が来るとA社は何とか資金を作ってB社に渡し、B社はそのお金で手形を決済します。このようにB社から手形を融通してもらったA社が、その後(事業が上手くいって)融通手形を決済する資金が準備できれば、何も問題は生じません。しかし、もともと資金繰りの苦しい会社が、融通手形を決済する資金を準備できる可能性は高くありません。手形を割引いた銀行が手形の振出人であるB社に対して取立依頼をすると、B社は支払いを余儀なくされるのですが、商取引の実態がない手形を振り出したB社としても、満期日までにA社が資金を準備してくれなければ、これを決済することは容易ではありません。

業績が芳しくない会社同士が、相互に融通手形を発行し合うことも珍しくありません。この場合、お互いに相手の信用力を利用し合っているため、そのうち1社の資金繰りが破綻すると、破綻した会社の手形が決済されないうえ、残りの会社が振り出した手形も決済を迫られますので、結局、残りの会社も連鎖破綻してしまいます。

取引先が融通手形を発行しているかどうかを確認するには、同業他社、特に地元の同業者から取引先に関する情報を入手することが有効です。地元の同業者は、取引のある地域の金融機関や商工会議所、共通の仕入先、従業員の知人などから、さまざまな情報を入手していることが多いからです。融通手形を発行しているとなれば、その取引先はすでに金融機関からの借入れが行えないほど信用力が落ちている証拠ですので、倒産の重大な兆候の1つと言えます。

このほかにも、大株主の交代(*1)や経営幹部の相次ぐ転職(*2)、従業員への給与の支払いの遅滞や社会保険料の滞納など、倒産の兆候にはさまざまなものがあります。そこで取締役としては、取引先においてそのような事態が発生していないか、常にアンテナを張っておくことが重要です。具体的には、営業担当者が、取引先の営業所や工場等へ出向いた際に、その雰囲気や代表者をはじめとする役員や従業員の態度、様子などをよく観察し、変化がないかどうかをチェックし、異常があればすぐに上長に報告するような体制を整えます。また、情報入手ルートがあれば、取引先の取引金融機関から取引先に対する考え方、信用状況の変化等を聞いてみるのもよいでしょう。

*1 「大株主の交代」の中でも信用力の高い大株主から信用力の高くない株主に交代するようなケースは、会社の信用力の低下を意味することから注意が必要です。
*2 経営中枢にいる幹部が、経営状況の悪化や資金繰りの悪化を事前に察知して我先にと転職している可能性があるので、「幹部の相次ぐ転職」にも注意が必要です。

さらに、取引先の債権を管理する担当者を置き、営業担当者から取引先のナマの情報を吸い上げる体制を構築することや、帝国データバンク、東京商工リサーチ、リスクモンスターなどの信用調査機関の企業情報データベースを利用することも有効です。特に取引の開始にあたっては、相手先の財務状況や信用の度合いなどについて、信用調査機関に直接、調査依頼することも検討するべきでしょう。

このほか、商業登記簿謄本を入手し、それに記載されている会社の設立年月日、資本金の額、役員構成などを把握し、社歴の長短や資本金などからある程度の信用力を確かめることができます。また、商業登記簿謄本は、役員に悪い噂のある人物がいないかどうかを調べる取っ掛かりになります。さらに、本社土地・建物など自社所有の不動産を保有している取引先であれば、不動産登記簿謄本を閲覧することで、金融機関等の抵当権・根抵当権(後述の「事前にやっておくべきこと」の<物的担保>参照)の情報を知ることができ、被担保債権(抵当権・根抵当権により担保される債権)の額と不動産価値とを比較することで担保余力を知ることもできます。

倒産の兆候を把握したら何をすべきか

では、取引先の倒産の兆候を把握した場合、取締役としては何をすべきでしょうか。考えられる対応は以下のとおりです。

(1)決算書を確認する
まず、倒産の兆候のある取引先の決算書を再確認します。決算書の確認により、問題となる会社の現在の状況を知ることができ、倒産の兆候の真偽についての手掛かりを得るとともに、その会社の危険度をある程度予測することが可能となり、今後の対応方針を決定できます。

もっとも、問題は「そもそも決算書の入手は容易ではない」という点です。取引先が上場会社であれば有価証券報告書や決算短信を閲覧することで容易に財政状態を把握できますが、取引先が未上場会社である場合、金融機関でない限り、取引の開始前に決算書を入手できるケースは非常に少ないものと思われます。通常、決算書等を入手できるのは、取引先の業績が悪化し、支払期日の延期などを申し込んできた場合が多いと言えます。取締役としては、営業担当者に、普段から取引先と良好な関係を構築し、定期的に取引先の決算書を入手できる間柄になっておくよう指示しておくことが大切です。

(2)得意先からの支払猶予の要請への対応
取引先(得意先)から支払猶予の要請がなされた場合、まずは、取引先に対する債権をいかに保全し、回収するかということを考えなければなりません。担保を取得していないのであれば、取引先と交渉して保証人を差し出してもらう等、何とかして価値ある担保を取得するべきです。

また、今後も取引を継続していくべきか否かも判断しなければなりません。倒産の可能性が高いと判断した場合には、取引を中止すべきです。担保を取っていても、いざという時に簡単に行使することができなかったり、換価するのに時間を要したりして、結局、何らかの損害が発生することがよくあるからです。

ただし、取引を中止する場合には、いかにトラブルなく話を進めるかが重要となります。一方的に取引を停止すれば、相手の態度が硬化して残存債務の支払いを留保されたり、業界内に悪い噂を流されたりする可能性があります。また、取引停止により得意先の資金繰りを悪化させてしまい、債権回収がより困難になってしまう可能性もあります。そのようなことにならないよう、取引を中止する理由や中止した場合の取引先の経営への影響について取引先とよく話し合い、取引を円満に解消することを心掛ける必要があります。

仮に、今後も取引を継続していくといった判断を行う場合は、信用枠の削減、現金取引への移行もあわせて検討すべきです。

(3)仕入先からの決済の早期化の要請への対応
一方、仕入先から買掛金の期限前の支払いの要請(仕入先から見ると売掛金の期限前の決済の要請)があった場合、会社としては自社の資金繰りおよび今後の取引への影響を考慮しながら、要請に応じるか否かの検討を行うことになります。

(4)自社への影響を検討する
取引先が倒産した場合、それが自社にとって「売上先」なのか「仕入先」なのかによって自社への影響は異なります。

売上先(得意先)が倒産すれば、債権の回収ができなくなったり、販路が減ることによって今後の売上が減少したりする恐れがあります。倒産の可能性が高く、今後の取引を中止せざるを得ないと判断した場合には、債権保全のために、まずはその得意先に対する債権債務がいくらあるのかを正確に把握するとともに、それに対する担保を確認することで、債権の回収可能性を検討します。また、売上の減少に備え、別の販売先を開拓したり、倒産した得意先以外に販路を見出すことができない場合は製品のラインナップの変更を検討したりする必要が出て来る可能性もあります。さらに、得意先が大口取引先である場合には、自社の資金繰りへの影響も確認する必要があります。

一方、仕入先が倒産すれば、部品供給のストップによる生産停止、商品供給のストップによる販売停止、外注先からの役務提供が滞ることによる自社サービスの停止といった影響が生じる恐れがあります。また、無償支給の材料や部品および貸与機械の回収や前渡金の取扱いについても問題になります。そこで、仕入先に倒産の兆候を把握した場合には、代替供給先の選定、同業他社からの部材・商品・役務等の融通の可否、支給部材の有償化や貸与機械を回収した場合の影響などを検討する必要があります。

初期の兆候は、単なる噂程度の情報であることも少なくありません。しかし、そのような場合でも、取締役としては「本当に倒産するかもしれない」という想定のもとで対応を検討しなければなりません。危機管理において、「楽観視」と「希望的観測」は厳禁です。

取引先との関係を解消する手段

取引先がどうやら経営危機に陥っているようだといった噂が舞い込んできた場合、会社としては、今後の取引を見合わせるとともに、それが得意先であれば、そこへの売掛債権をすぐにでも回収したいと考えるのが通常でしょう。しかし、仮に得意先が本当に経営危機であったとしても、その事情だけをもって一方的に契約を解除し、当初の入金予定日前に売掛債権を回収できるわけではありません。

取引先が経営危機にあるかどうかにかかわらず、こちらの都合だけで取引先との契約関係を一方的に終わらせ、お互いの債権・債務をすぐに解消するためには、契約上、そういった約束が取り決められていることが必要になります。仮にそのような取決めがないのであれば、契約解除や債権回収は、法律上定められた一定の場合にしか行うことができません。では、具体的には、どのような場合に契約解除等が可能なのでしょうか。以下、検討することにします。

<法定解除権>
民法には、契約の当事者は、一定の場合に契約を解除できる旨の規定があります(民法541条~543条)。これを「法定解除権」と言います。具体的には、契約の相手方が債務を履行せず、さらに催告してもその債務を履行しなければ、契約の解除ができます(民法541条)。また、特定の日時や一定期間内に債務が履行されなければ意味がない場合、例えば、結婚式に間に合うようにウェディングドレスを手直ししてもらうような場合には、それに間に合わなければ催告なしに契約を解除することができます(民法542条)。さらに、そもそも相手方が契約を履行することができなくなった場合にも契約を解除できます(民法543条)。法律上、当事者が“一方的に”契約を解除することが認められているのはこのような場合に限られています。

<約定解除権>
逆に言うと、上記のような事情がない限りは、契約を一方的に解除することはできません。そこで、得意先が支払日に支払いができなければ、催告のうえで契約を解除できるものの(民法541条)、支払日がずっと先の場合には、いかに得意先が経営危機にあろうとも、得意先に対する自社の債務は履行し続けなければならないことになります。こうした事態を避けるためには、どういう場合に契約を解除できるのかを契約書にきちんと定めておくことが必要になります。このような一定の場合に契約を解除できる権利を「約定解除権」と言います。例えば、相手方との契約において、「『破産手続開始申立ての事実があった場合またはそのおそれがある場合』や『経済的信用が悪化し、またはそのおそれがある場合』には『催告のうえで解除できる』」旨の定めを置いておくことにより、得意先が経営危機となった場合には、この定めに従って契約を解除することができます。さらに、「何らの催告なくして解除できる」と定めておけば、「解除前に催告」というプロセスを踏むことなく、直ちに契約を解除することができます。

「期限の利益」を喪失させるための方策

将来に向かって契約関係を解消するには、上述したとおり、契約書で「解除権」についてきちんと規定しておけば大丈夫ですが、それでは、現に得意先に対して有している売掛債権についてはどうでしょうか。

一般に“ない袖は振れない”以上、経営危機に陥った得意先から債権を回収するのは容易ではありませんが、できるだけ他社に先んじて回収にあたる努力はするべきでしょう。そのためには得意先のどこに資産があるかを調査しなければなりませんが、その前提として、そもそもこちらの債権が履行可能であること、すなわち、既に支払時期が到来していることが必要になります。

それでは、得意先の支払時期が未だ到来していないケースでは、ただ支払時期の到来をじっと待つことしかできないのかというと、そうではありません。支払時期がまだ到来していないのであれば、“強引”に到来させてしまえばいいのです。具体的には、その債権について得意先の「期限の利益」を失わせることができれば、ずっと先であったはずの支払時期を「いますぐ」にすることができます。期限の利益とは、支払期限までまだ時間がある場合、債務者(得意先)はまだしばらくの間支払義務を猶予してもらえるという、債務者にとっての利益を言います。例えば支払期限が来月末であれば、得意先としては、それまでの間に経営危機を迎えたとしても、期限まで支払をしないことが許されるわけです。一方、こちらとしては回収することができそうな資産、例えば銀行預金があることがわかっていても、得意先から売掛債権を回収することはできません。そこで、得意先の「期限の利益」を喪失させ、すぐに債務を支払わなければならない立場にさせることが必要となるのです。

<法定の期限の利益の喪失>
期限の利益の喪失についても、上述の解除権と同様、法定のものと約定のもの(契約書で定めるもの)があります。法定のものとしては、次の3つがあります。

・債務者が破産手続開始の決定を受けたとき
・債務者が担保を毀損したとき(例えば債務者が抵当権を設定している建物を破壊した場合)
・債務者が担保を供する義務を負っているのにこれを供しないとき

この3つの場合には、債務者は期限の利益を主張できないことになっています(民法137条)。しかし、得意先の経営危機はこれらの場合にはあたりませんので、法律に基づいて債権回収を進めるのは難しいと言えます。

<約定の期限の利益の喪失>
そこで、上記の3つの法定された「期限の利益の喪失」に該当しない場合でも確実に債権回収ができるよう、契約書でしっかりと期限の利益の喪失について手当てしておくことが重要です。具体的には、上述の約定解除権と同様に、「『破産手続開始申立ての事実があった場合またはそのおそれがある場合』や『経済的信用が悪化し、またはそのおそれがある場合』には、『直ちに期限の利益を失う』」旨の定めを置いておくことにより、すぐに債権回収に動くことができます。

債権回収を放置するとどうなる?

得意先の経営状態が悪く、売掛債権をすぐに回収することができない場合には、ひとまず様子を見て、状況が好転してから改めて支払いを求めるのも有効な債権回収の方法の1つです。しかし、長期にわたって回収の努力をせず放置した場合には「時効」が到来してしまい、得意先から支払いを拒まれてしまうことにもなりかねません。

債権者が何もせずに一定の期間(これを「時効期間」と言います)が過ぎ、債務者が「時効になったので支払わない」という意思表示(これを「時効の援用(自己の利益のために主張すること)」と言います)をすると、債権はなくなってしまい(これを「消滅時効にかかる」と言います)、その後はたとえ裁判に訴えても債務者に対して支払いを強制することはできなくなります。もちろん債務者が時効を援用せず、自分の意思で払ってくれれば問題はないわけですが、債権者という立場で債権をしっかりと保全するためには、時効期間が経過する前にその進行を中断させる必要があります。そのために民法は、時効中断事由として、次の3つを規定しています。

・請求
・差押え、仮差押えまたは仮処分
・承認

では、これらはどのような方法なのでしょうか。以下で具体的に解説します。

時効を中断させる方法

上述した民法が定める3つの時効中断事由はいずれも、要するに「時効によって消滅させるつもりがない」ことをはっきり示すことによって、時効の完成を拒否する姿勢を明確にするものと言えます。

1つずつ見てみましょう。

<請求>
まず、「請求」とは、文字通り、債務者に対して支払うよう請求することです。ここでいう請求とは「裁判上の請求」、つまり訴訟を提起することであり、それを行うことで時効が中断します(民法149条)。よって、口頭による請求や単に請求書を送付したというだけでは時効は中断しません。ただし、訴訟によらずとも、支払督促(民法150条)、和解や調停の申立て(民法151条)、破産手続、再生手続、更生手続への参加(民法152条)(これらも裁判所が関与しますので「裁判上の請求」です)によっても、その申立て、参加の時点で時効中断の効果が認められます(ただし、各条文に一定の条件が定められている点には注意が必要です)。

以下、それぞれの方法についてまとめてみました。

訴訟の提起 管轄の裁判所(一審は地方裁判所) に訴訟を提起することです。
支払催促 債権者が金銭の支払い等を簡易裁判所に対して申し立てるもので、訴訟の提起よりも簡易、迅速な裁判上の手続です。一方、内容証明は一種の郵便によって支払いを求めるものであり、あくまで裁判所を通さない「裁判外の請求」であり、内容証明を送って支払いを求めても、それだけでは時効は中断しません。民法上は、内容証明を送ったうえで、それから6か月以内に裁判上の請求をしなければ、時効の中断の効果は生じないこととされています(民法153条)。内容証明が届いた日から6か月以内にこれらのアクションを起こした場合には、その日から時効が中断することになります。したがって、時効が目前に迫っているような場合にはとりあえず内容証明を送付することにも意味がありますが、その後に忘れずに裁判上の請求をしなければ、時効を止める効果はないことにご注意ください。
和解や調停の申立て 民事訴訟法、民事調停法、家事事件手続法に定めがあり、文字通り申立てによって和解や調停の成立を求める手続ですが、通常の訴訟とは異なる手続となりますので、どれを選択するかについては専門家に相談のうえで判断するのが望ましいです。
破産手続、再生手続、更生手続への参加 各手続において、債権の届出を行うこと等を言います。


<差押え、仮差押えまたは仮処分>
「差押え、仮差押えまたは仮処分」とは、債務者の財産の差押え、仮差押えまたは仮処分の手続を執ることを意味します。具体的には、いずれも裁判所に対する申立てによって、裁判所の決定を求める手続であり、裁判所が関与するという点で、これらは裁判上の請求と同じようなものであると考えればいいでしょう。

仮差押え : 差押えとは違い、暫定的に財産を押さえておく手続
仮処分 : 勝手に対象物を譲渡する等しないように、とりあえず現状を維持しておくための手続

<承認>
一方、「承認」とは、債権者から積極的にアクションを起こすものではなく、「債務者」が自ら債務の存在を認めることを言います。上述のとおり、そもそも時効が認められるためには、単に時効期間を過ぎたというだけではなく、債務者による「時効の援用」が必要です。したがって、債務者が「時効になったので支払わない」と主張(時効の援用)するのとは逆に、「支払う」という意思を見せた場合には、時効が中断することになります。なお、承認があったと認められるには、全額を支払うという意思を示すことまでは必要ありません。例えば、支払猶予の申入れや、利息のみの支払いがあったような場合でも、やはり債務があることを前提とする行為であることには変わりがないので、「承認あり」ということができます。承認は口頭でもOKですが、後日トラブルになった時に備えて、文書を交わしておいた方が望ましいです。

債権保全のために何をすべきか

では、上述した消滅時効にかからずに債権を回収するためには、具体的にどのような手順を踏めばいいのでしょうか。

まず、債権の種類に応じて時効期間が異なりますので、問題となる債権の種類を確認する必要があります。主な債権の時効期間は下表のとおりです。

債権の時効期間を確認したうえで、もし時効期間が過ぎそうであれば、まずは内容証明郵便などで催告(裁判外の請求)すべきでしょう。上述した裁判上の請求手続を踏めば裁判外の請求は必要ありませんが、専門家に任せても裁判上の手続きがすぐにできるとは限りませんし、催告であれば裁判上の請求ほど専門知識も必要ありませんので、手続きが簡単です。それによって6か月の猶予を得ることができますので、その後に裁判上の請求に取りかかり、時効を中断させればいいでしょう。

では、もし既に時効期間が過ぎていたらどうでしょう。その場合でも回収を諦めるのは早過ぎます。こちらから積極的に支払いを強制することはできませんが、上述のとおり相手方が債務を承認してくれさえすれば、やはり債務は消滅しないからです。そこで、たとえ時効期間を過ぎてしまった場合でも、まずは債務者に債権の支払いの請求をしてみるのも一手です。それによって、債務者が「ちょっと待ってほしい」と言ってくれば、承認(支払猶予の申入れ)があったものとして、さらにその時点を起算点として時効にかかるまでの間、改めて債権の支払いを求めることができるのです。そこで、担当役員・担当者としては、債務者の申入れを書面でもらうなどして、仮に後に債務者が言い分を覆そうとしたような場合でもそれに対抗できるようにしっかりと証拠を残すのが望ましいです。

債権回収の方法と一部弁済があった場合の取扱い

債権回収の方法としては、全額を通常の方法で弁済を受ける方法以外に、次のような方法による回収も可能です。

(1)一部だけ弁済を受ける

債務者が債権の全部を弁済すれば、それですべて終わりになるのですが、債務者の財政状態次第では全部の弁済が不可能ということもあるでしょう。その場合は、一部だけでも弁済を受けるべきです(これを「一部弁済」と言います)。それにより時効を中断する効果もあるからです。

ただし、一部弁済では、その弁済された額を何に充当するのかが問題になります。もし、当事者間で、例えば「この弁済はまず利息に充当し、残額について元本に充当する」といったような合意があれば、その順番で充当することになります。もしそのような合意がなければ、費用()、利息、元本の順番で充当されることになります(民法491条)。

 費用とは取立てに要した交通費や通信費等を指します。

(2)取引先が有する債権の譲渡を受ける
取引先に対する債権を回収するため、取引先が有する債権の譲渡を受ける手法もあります。

例えば、取引先A社に対する売掛金(下図のピンク色の矢印)の回収を目的として、A社が有するB社に対する売掛金(下図の緑色の矢印)を(自社が)譲り受けます。これにより、自社はB社から売掛金の支払いを受けることになります。

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ただし、A社が、B社に対する売掛金(債権)を自社に譲渡するためには、A社から自社に債権譲渡がなされた旨をB社に通知するか、または、B社が債権譲渡を承諾することが必要です(上図の「通知」or「承諾」)。そのいずれかが行われない限り、自社はB社に対して「自分が債権者である」と主張することはできませんので注意してください。

また、債権譲渡とは、債権の内容を変えないで債権を移転する契約ですので、この債権に付随する利息債権、担保権等も一緒に移転します。もちろん、債権者(自社)が債務者(A)に対して有する債権の金額と、債権譲渡によって(自社がB社から)支払いを受ける金額が異なることもあります。したがって、債権者(自社)は、債権譲渡により回収できた金額を債務者(A社)に対するどの債権に充当するかを、債務者(A社)とあらかじめ取り決めておくことが通常です。

(3)双方の債権を相殺する
相殺は、本来、お互いがお互いに対して有する債権をそれぞれ回収する時間と費用の無駄を省くために行われるものです。例えば、自社がA社に100万円の売掛金を持ち、A社が自社に50万円の売掛金を持つ場合には、「一方の意思表示」だけで双方の債権50万円を消滅させることができますが、これに加え、相殺には「担保的機能」もあります。例えば、A社が倒産した場合には、自社の100万円の売掛金がまったく回収できなくなる可能性があります。一方、自社は、A社が自社に対して持つ売掛金50万円をA社に支払う義務があります。そこで、相殺によって両債権を消滅させることで、実質的に50万円を回収するのと同じ効果を生むことができます(相殺についての詳しい解説は「得意先が倒産してしまった」を参照してください)。

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(4)債権放棄
こういった策を活用してもなお債権残高が残ってしまい、相手の財務状況から返済を見込むことが困難という状況であれば、法人税の取扱いに留意しながら債権放棄を選択することもあるでしょう(債権放棄の実施方法については、「取引先に対して債権放棄(債務免除)を行う」を参照してください)。

債権回収にあたってはどこまで無理が許される?

取引先が経営危機に陥っている場面では、既に他の債権者も同じように債権回収に取りかかろうとしているでしょうから、まさに一刻を争う状況にあるといえます。このため、可能な限り多額の債権を回収しようとする立場としては、後に他の債権者から詐害行為取消権(民法424条)の行使を受ける可能性や、破産管財人等から否認権(破産法160条等)の行使を受ける可能性(後述の「詐害行為取消権よりはるかに強力な否認権」を参照してください)を気にして、回収に慎重になり過ぎるのは適切な対応とはいえません。後で何か文句を言われたら、それはそれとしてその時点で対応すればいいものと考え、まずはできるだけ多くの金額を取り返すよう精一杯の努力を払うべきと言えます。

しかし、その一方で、債権回収のためには何をやっても許されるというわけではありません。無理な取立てを行うことによって、刑事上、民事上の責任を負う可能性もありますので、十分な注意が必要です。また、一筋縄ではいかない取引先からの債権回収にあたっては、その交渉を会社外部の者に依頼しようと考えることもあるかも知れません。この場合、暴力団等の反社会的勢力に交渉を依頼することが許されないのは当然ですが、実は一般人に交渉を依頼しても違法になる可能性があります。さらに、取引先が納得していない現金回収や商品の引上げは、たとえ一時的に債権回収が達成できるとしても、その後のリスクを考えると避けなければなりません。現金回収や商品の引上げにより債権回収をする場合には、あくまで取引先の承諾を得たうえで平穏に行うべきです。

では、どのような債権回収行為が違法となるのでしょうか。以下、具体的に解説します。

刑事・民事上の責任が生じかねない回収行為とは?

まず頭に入れて置いていただきたいのは、得意先が経営危機にあるという特殊な状況下では、普段はあまり問題とならないような行為であっても、刑事責任に問われる危険性が大きくなるということです。

例えば、債権回収にあたって相手方を脅迫または暴行する行為は、恐喝罪(刑法249条)に問われる可能性があります。ここで注意すべきは、たとえそれが債権回収という正当な行為の一環として行われたものであっても問題になり得るということです。すなわち、債権がないのに100万円の現金を脅し取れば犯罪にあたるのは当然ですが、例えば100万円の売掛金に対して100万円の現金を回収するような場合であっても、その際の言動が社会的に相当といえる範囲を超えるようなものであれば、恐喝罪にあたります。そこで債権回収にあたっては、通常の場面では“軽口”として許されるような言葉や、「自分には債権を回収する権利があるのだから多少のことは構わないはずだ」というような思い込みは戒めるべきです。

さらに、取引先の承諾がないのにオフィスに入れば建造物侵入罪(刑法130条)に、たとえ自社製品といえどもそこから在庫を引き上げれば窃盗罪(刑法235条)にあたります。その際に、鍵を壊したり、近くに置いてある商品に傷を付けたりしてしまうと、器物損壊罪(刑法261条)にもあたることになります。そのほかにも、回収の仕方次第では、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)等に問われる危険性もありますので、くれぐれも無理な回収を図らないよう注意すべきです。

また、このような行き過ぎた行為によって取引先に何らかの損害(例えば、従業員が怪我を負ったり、商品や備品が壊れたりした場合などがこれにあたります)が生じた場合には、民事上の責任として、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります(民法709条)。

債権回収を知人に依頼しても違法になる恐れ

以上のとおり、債権回収にあたってあまり強引なことをすると、思いもよらない責任を負うことになりかねません。そこで、自ら債権回収を行うのではなく、知人などの第三者に回収を委託したり、売掛金自体を第三者に売却したりすることにより、回収を外部の者に任せてしまいたいと考えることもあるかもしれません。

しかし、このような行為は弁護士法に違反する恐れがあるので要注意です。弁護士法72条は、弁護士以外の者が、報酬を得る目的で法律事件に関して「代理や和解その他の法律事務」を取り扱うことを業とすることを禁じています。そこで、第三者への回収委託は「代理や和解その他の法律事務」に該当し、同法に抵触する可能性があります。また、同法73条は、何人も、他人の権利を譲り受けて、和解等によって、その権利の実行をすることを業とすることを禁じています。売掛金を第三者に売却して回収にあたらせることは、まさに同法に違反してしまいます。

それでは、弁護士ではなく、司法書士や債権回収会社(サービサー)の利用はどうでしょうか。確かに、それらの利用が可能となる場合はあります。しかし、司法書士が弁護士と同じように債権回収を代理できるのは請求額が140万円以下の少額債権のみですし、債権回収会社には一般的な売掛債権や請負債権の取扱いが認められておらず、法律に定められた債権(これを「特定金銭債権」と言います)についてしか利用できないので、注意が必要です(債権管理回収業に関する特別措置法2条1項)。

いずれにせよ、誰にでも債権回収を代わってもらうことができるわけではありません。自ら債権回収を行うのが難しいからといって、安易にそれを他人に依頼すれば法に違反してしまう危険があることには十分に留意すべきです。

回収した売掛金の返還を求められることも

「得意先の経営状態が危ないらしい」と聞いたら、会社としては、売掛金などの債権の支払いをいち早く受けたいと考えるでしょう。債権者である会社が、得意先から弁済期にある売掛金の支払いを受けたり、支払督促や訴訟提起、差押え等の法的な手続を執ったりすることは、債権者として当然の権利です。したがって、通常であれば、後になってこの権利を否定され、回収した金銭の返還を求められることはありません。

ただし、債権回収行為によって他の債権者に不利益が生じた場合(例えば、自社だけが優先的に債務者から弁済を受けたことで、他の債権者への返済の原資が枯渇してしまった場合)には、他の債権者から、債権回収行為の効果を否定され、回収した金銭を返還するよう求められることがあります。債権者に認められたこの権利を「詐害行為取消権」と言います。

また、債権を回収した後に得意先が法的な倒産手続、例えば破産手続に入った場合には、破産管財人*から、詐害行為取消権と同様に回収した金銭の返還を求められる「否認権」を行使されることがあります。

* 破産者の財産を管理し、換価して債権者への配当を行う者。通常は弁護士が裁判所より選任される。

では、どのような場合に、債権回収行為が否定されるのでしょうか。以下、解説します。

詐害行為取消権はどのような場合に認められる?

詐害行為取消権は民法に定められた権利であり、「無資力の債務者が、ある債権者を害することを知っていながら、他の特定の債権者のために担保提供、債務弁済等を行った場合に、これにより不利益を受けた債権者は、裁判所を通してその行為の取消しを求めることができる」というものです(民法424条)。例えば、経営危機にあるA社に対して100万円の債権を持つ得意先のB社がA社と通謀して優先的にその全額を回収し、その結果、A社に200万円の債権を持つ別の得意先のC社が1円も回収できなくなったような場合には、C社は、A社のB社に対する支払いを取り消すよう裁判所に訴えることができるのです。

ただし、判例は、「『弁済期の到来した債務』の弁済を求めることは債権者の当然の権利行使であって、他に債権者がいるからといって、その権利行使を阻害されるものではない」としたうえで、「債務者が一部の債権者と通謀して『他の債権者を害する意思』を持って弁済したような“特殊な場合”でなければ詐害行為にはならない」としています(最判昭和33年9月26日)。したがって、弁済期が来ている金銭債務の弁済を受ける(これを「本旨弁済」と言います)場合であれば、特にこの詐害行為取消権について心配する必要はありません。このときに、「「期限の利益」を喪失させるための方策」で検討したように、約定解除権の行使により得意先の「期限の利益」を喪失させることで、弁済期を到来させるという手法が活かされることになります。

詐害行為取消権よりはるかに強力な否認権

一方、「否認権」は詐害行為取消権よりも強力ですし、より広い範囲で認められる権利です。

上述のとおり、否認権は得意先が法的な倒産手続に入った後に行使されるものですが、詐害行為取消権同様、詐害行為による債権の回収のほか、債務者が支払不能支払停止となった後にした弁済や担保設定等の行為、登記などの対抗要件の設定、差押え―――なども対象になります。

支払不能 : 弁済期にある債務について、一般的かつ継続的に弁済することができない状態

支払停止 : 一般的、継続的に債務を弁済することができない旨を表明する態度をいい、典型例としては手形の不渡りがある。

対抗要件 : 権利関係を第三者に主張するための所定の手続

そこで、得意先が破産等の法的手続に入ってしまうと、せっかく他の債権者に先駆けて債権を上手く回収できたとしても、破産管財人からその効力を否定されてしまう可能性が高くなります。これは、弁済期が到来した債務の弁済(本旨弁済)であったとしても同じです。この点、詐害行為取消権が本旨弁済ではない場合に限定している(上記判例参照)のとは範囲が異なるので要注意です。

このように、否認権が債権の回収を厳しく制限しているのは、そもそも否認権という制度が、特定の債権者による回収によって債務者が失ってしまった財産を、破産財団として回復することによって、「すべての債権者」に対して“平等・公平”に配当することを可能にするためのものであるからです。

破産財団 : 破産管財人が管理・処分する破産者の財産

否認権の種類を整理すると、次の表のとおりとなります。

否認の種類 否認される行為 行為の時期
詐害行為否認(破産法160条1項) 詐害行為 制限なし
偏頗(へんぱ)行為否認 弁済や担保供与の義務あり(破産法162条1項) 弁済期が到来した弁済や、契約等によって義務を負っているためにする担保提供 支払不能になった後または破産手続開始申立後
義務なし(破産法162条2項) 弁済期が到来していない弁済や、義務としてする必要がない担保提供 支払不能になる前30日以降
無償否認(破産法160条3項) 無償行為およびこれと同視すべき有償行為 支払停止になった後若しくは破産手続開始申立てがあった後またはその前6か月以降


このうち、偏頗(へんぱ)行為否認とは、支払不能または破産手続開始申立てから破産手続開始までの時期になされた偏頗行為(担保の供与や債務の消滅に関する行為)については、破産者の詐害意思に関係なく否認の対象となることを言います。また、無償行為否認とは、支払停止等があった後やその前の6か月以内に、対価を得ないで財産を減少させ、または債務を負担する破産者の行為(具体的には、贈与、債務免除等があります)またはこれと同視すべき有償行為(無償ではなくとも対価が著しく低い取引等が該当します)が否認の対象になることを言います。

回収にあたって必要な心構えとは?

以上に述べたとおり、仮に得意先から債権を回収できたとしても、後でそれを否定されて回収の努力が無駄になることがあります。では、そもそも債権の回収に努めること自体諦めた方がいいのでしょうか。

確かに、詐害行為取消権、さらにはより広範かつ強力な否認権の行使によって、債権回収の努力は徒労に終わるかもしれません。しかし、詐害行為取消権については、上述のように「本旨弁済」であればその回収行為は否定されませんし、仮に本旨弁済でなくとも、弁済後、特に他の債権者から指摘を受けずに済むかもしれません。また、他の債権者との間で和解が成立して、全額とは言わずとも一部の回収は達成できるかもしれません。

一方、詐害行為取消権よりも強力な否認権についても、回収の時点では、得意先が破産手続の開始申立てを行うかどうかもわかりませんし、仮に申立てが行われたとしても、破産管財人が実際に否認権を行使するかどうかは不明です。

そこで、債権の回収に責任を有する取締役(営業担当取締役等)には、担当者に対して、まずは回収のためにできるだけのことをしておき、後でその回収行為が問題になった時に、それはそれとしてやむを得ないものとして対応するという指示を出しておくことが求められます。

事前にやっておくべきこと

このように取引先が倒産した場合、取引先から債権を全額回収し終えるまでに大変なエネルギーを費やすことになります。可能であれば、そのような事態は避けたいものです。そこで、回収不能といった事態を可能な限り回避するため、会社として事前にやっておくべきことをリストアップしてみました。

(1)約定解除権を契約に盛り込む
約定解除権を契約に盛り込むことで、信用不安時に取引先に期限の利益を与えないことが可能になります。約定解除権については「取引先との関係を解消する手段」を参照してください。

(2)担保をとる
取引先に対する債権の回収を確実にする手段が、担保をとることです。担保には大きく分けて、人的担保と物的担保があります。

<人的担保>
人的担保とは、取引先(債務者)以外の第三者(債務者が会社等の場合にはその代表者、あるいは親会社や関連会社など)の資力を担保にとることで、具体的には、保証連帯保証連帯債務などがあります。

保証 : 債務者が債務不履行に陥った場合に、第三者が債務者に代わって弁済を約束するもの
連帯保証 : 債務者に支払い能力や支払いの意思があるかどうかに関係なく、支払い期日に、第三者に対して弁済を請求できるもの
連帯債務 : 取引先とともに、第三者にも債務を引き受けてもらうもの

<物的担保>
物的担保とは、取引先や第三者の特定の財産(不動産、債権など)を担保にとることで、質権抵当権根抵当権などがあります。

質権 : 債権者が直接、対象物件を占有し、担保するもの
抵当権 : 債権者が対象物件を占有することなく、“特定の”債権(債権金額が特定された債権)を担保するもの
根抵当権 : 債権者が対象物件を占有することなく、継続的な取引から反復継続して発生する“不特定の”債権を担保するもの。例えばA社がB社に対し継続的に掛売りをしている場合に生じる複数の金銭債権に一括して担保を設定したい場合などに活用される。

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これらの中で、一般に広く利用されている担保が人的担保の連帯保証です。また、物的担保の代表格である抵当権(根抵当権を含む。以下同じ)も、不動産を担保にとる方法として広く利用されています。これに対して、物的担保の1つである質権では、債権者が直接、質権の対象物件を占有するため、債務者が担保物件(例えば不動産、機械、商品等といった担保物権の目的物)を有効利用できず、事業を営めなくなってしまうことも考えられますので、実務上、取引先の債権を担保する手段としてはほとんど利用されていません。

では、人的担保である「連帯保証」と物的担保である「抵当権」のどちらを採用すべきでしょうか。連帯保証は比較的簡単な手続(当事者同士で契約を締結)で取得できますが、第三者の資力をアテにするため、その第三者が無資力であれば債権を回収できないというリスクを負わざるを得ません。これに対して、抵当権は取得するのに手間と費用(当事者間の契約に加え、登記手続、所定の登録免許税や司法書士費用など)がかかりますが、特定のモノの価値を担保にとっているので、人的担保に比べて債権の回収率は高まります。したがって、実務的には、金額的に重要な債権については債権回収が確実な抵当権を優先的に考えるべきでしょう。ただし、債務者である取引先から担保を取得するには、それなりの理由が必要になります。債権者としては、債務者に対して、すでに発生している債権はもちろんのこと、今後の取引により発生する債権の保全のためであること、特に債務者が信用不安の状態に陥っているのであれば、債権者として債権保全に不安があること――などをよく説明することが必要です。また、営業サイドから、せっかくの得意先を失うのではないかといった反対の声が上がるかもしれません。したがって、抵当権の設定は、得意先を失う可能性と貸倒リスクを天秤にかけて判断することになります。

(3)債権管理を徹底する
取締役は、与信枠を設定し、債権の回収状況をモニタリングするといった債権管理の内部統制を構築することが必要になります。

(4)保険や共済で備える
その他、得意先の倒産に備えて、取引信用保険や経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)を利用することも考えられます。

「取引信用保険」とは、取引先の倒産等による売掛債権リスクを補償するもので、欧州を中心に古くから発達した保険です。

「経営セーフティ共済」とは、中小企業倒産防止共済法に基づき、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営しているもので、毎月一定の掛金を積み立てておき、取引先が倒産して売掛金債権等が回収困難となった場合に、無利息で貸付けが受けられる制度です。もっとも、経営セーフティ共済の対象企業は資本金の額や従業員数が一定規模以下に制限されていることから、上場会社の利用は少ないと思います。しかし、子会社や関連会社での活用は一考に値すると言えます。

損金算入できなくても貸倒引当金の計上は必要

取引先の倒産の兆候を把握した者(営業担当者、債権管理担当者など)は、その取引先に対する債権の回収可能性を検討し、検討結果を経理部門に伝達する必要があります。

そして、経理部門は、債権の貸倒見積高を適切に算定して、これを「貸倒引当金」として財務諸表に計上しなければなりません。財務諸表上、貸倒引当金は、受取手形や売掛金、貸付金などの債権を控除する形で表示されます(下図参照)。すなわち、貸倒引当金には、債権金額を適正な評価額まで切り下げて表示する働きがあります。

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逆に言うと、債権の価値を適正に評価するうえでは、貸倒見積高の算定が正しく行われていることが大前提となります。そして債権の評価に先立ち、まずは債権を債務者の財政状態に応じて、次の3つに分類するのが通常です。
(ア)一般債権
(イ)貸倒懸念債権
(ウ)破産更生債権等

(ア)は何の問題も起きていない債権、(イ)は債務者が経営破綻状態に至ったわけではないものの、債務の弁済に重大な問題が生じているか、または生じる可能性の高い債権、(ウ)は倒産に至った債権を言います。「倒産の兆候のある債権」は、(イ)の貸倒懸念債権に分類されます。

貸倒懸念債権の貸倒見積高は、「財務内容評価法」もしくは「キャッシュ・フロー見積法」により算定されます。

財務内容評価法とは担保や保証がある場合に用いられる手法で、要するに、「担保や保証により回収できる金額」は貸倒引当金として積み立てる必要がないので、この金額を債権額から控除した額を「貸倒見積高」とするというものです。具体的には、債権額から「担保の処分見込額」および「保証による回収見込額」を減額し、さらに、その残額について債務者の財政状態および経営成績を考慮し、最終的な貸倒見積高を算定します。

一方、キャッシュ・フロー見積法とは担保や保証がない場合に用いられる手法で、将来いくらかでも元本や利息が返ってくると期待し、その回収見込み分を債権金額から控除した額を「貸倒見積額」とする方法です。具体的には、元本の回収および利息の入金により生じる将来キャッシュ・フローの見積りを行ったうえで、これを約定利子率(債権者・債務者間で取り決めた返済利率)等で割り引いた「現在価値」と「債権額」の差額を貸倒見積高とする方法です。

なお、貸倒引当金の計上基準は、企業会計と税務会計では異なっているので注意が必要です。企業会計は、会社の利害関係者(株主や債権者など)に対して、財政状態や経営成績を適切に表明することを目的としていますが、企業会計で計上された貸倒引当金繰入額のすべてについてフリーパスで損金算入を認めてしまうと、納税者間で不公平が生じるだけでなく、国の税収が減ってしまいかねないからです。このため、法人税法上の貸倒引当金の計上基準(=損金算入の要件)は厳しく、企業会計で計上した貸倒引当金繰入額の多くは、法人税の所得算定上損金算入が認められません。しかし、損金算入ができないからといって、会計上も引当を行わないということは認められません。損金算入の可否に関わらず、企業会計上はあるべき貸倒引当金繰入額を計上することが必要になります。なお、取引先への債権が実際に貸倒れてしまったケースについては、「得意先が倒産してしまった」を参照してください。

約定解除権および期限の利益の喪失についての契約書条項のサンプル

契約書作成時の参考までに、約定解除権および期限の利益の喪失について契約書で規定する場合の文言のサンプルを下に掲げておきます。

第●条
●において、以下の各号に該当する事実のいずれかが生じ、またはそのおそれがある場合には、●は、●に対し、何らの催告を要せず、直ちに本契約の全部または一部を解除することができる。
1 本契約上の債務の不履行があったとき
2 ●の振出し、引受け、裏書または保証に係る手形または小切手が一通でも不渡りとなったとき
3 差押え、仮差押え、仮処分、競売の申立て、公租公課による滞納処分のいずれかがなされたとき
4 破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始の申立てのいずれかがなされたとき
5 財産状態が悪化したとき

第●条
前条によって契約の解除がなされたときは、●は●に対する一切の債務について当然に期限の利益を失い、直ちに●に対して弁済しなければならない。

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2014/09/28 チェックリスト:取引先が経営危機にあることがわかった(会員限定)

■チェックリスト:取引先が経営危機にあることがわかった

チェック事項 備考 対応未了 対応済
支払猶予を依頼してきた得意先はないか。 現金払いを掛取引に変更、あるいは、掛取引の支払期日の延長
早期の支払いを要請してきた仕入先はないか。
手形のジャンプを依頼してきた得意先はないか。
融通手形を利用している取引先はないか。
大株主の交代や経営幹部の退職が相次いでいる取引先はないか。 大株主の交代が信用力を下げる恐れがある。また、資金繰りの悪化を察知した経営幹部が我先にと転職している可能性がある。
従業員への給与支払いを遅延している取引先はないか。
社会保険料の納付を延滞している取引先はないか。
倒産の兆候が見られる取引先について、直近の決算書をチェックしたか。
得意先から支払い猶予を要請された場合、担保をとることを検討したか。
得意先に倒産の兆候が見られた場合、別の販路を探索するとともに、自社の資金繰りへの影響の有無を検討したか。
仕入先から決済の早期化を要請された場合、自社の資金繰りおよび今後の取引への影響を考慮しながら、要請に応じるか否かの検討を行ったか。
仕入先に倒産の兆候が見られた場合、代替仕入先の検索、親しい同業他社からの部材・商品・役務等の融通の可否などを検討したか。 仕入先の倒産による部品・商品・サービスの供給ストップに備える必要がある。
取引先に見られた兆候がわずかなものであっても、最悪の状況を想定して対応しているか。
取引先の経営危機に際して、約定解除権の行使による契約の解除を検討したか。 民法541条~543条
得意先の経営危機に際して、
・得意先が破産手続開始の決定を受けたとき
・得意先が担保を毀損したとき
・得意先が担保を供する義務を負っているのにこれを供しないとき
の3つのいずれかに該当する場合には、期限の利益の喪失を主張したか。
民法137条
得意先に約定の期限の利益喪失を主張できるよう、得意先との契約書に約定解除権を容易に行使できる旨盛り込んでいるか。
時効期間が過ぎそうであれば、まずは内容証明郵便などで催告をしたか。 それによって6か月の猶予を得ることができる。
時効が中断するよう裁判上の請求を行ったか。 裁判外の請求、例えば内容証明を送って支払いを求めても、それだけでは十分ではなく、それから6か月以内に裁判上の請求等をしなければ時効の中断の効果は生じない。
裁判所を通じて、差押え、仮差押えまたは仮処分を行うことを弁護士に相談して検討したか。
債務者が、自ら債務の存在を認めた(承認した)場合、それをあとから立証できるように、債務者の申入れを書面でもらうなどして証拠を残しているか。
一部返済があった場合、それを何に充当するのか(充当の順番)については、合意された順番に従っているか。 当事者間に合意があればその順番で充当される。合意がなければ費用、利息、元本の順番で充当される(民法491条)。
債権回収に際して、債権譲渡や相殺といった手法の活用を検討したか。
債権回収にあたって相手方を脅迫または暴行していないか。 恐喝罪(刑法249条)に該当する可能性
無理のある債権回収を行っていないか。 刑事上、取引先の承諾を得ずにオフィスに入れば建造物侵入罪(刑法130条)、たとえ自社製品といえども在庫を引き揚げれば窃盗罪(刑法235条)にあたる。その他、回収の仕方次第では、器物損壊罪(刑法261条)、脅迫罪(刑法222条)、強要罪(刑法223条)、暴行罪(刑法208条)、傷害罪(刑法204条)等に問われるリスクあり。
また、民事上、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うリスクもある。
債権回収を第三者に依頼すると弁護士法に違反する可能性があることについて、検討を行ったか。 弁護士法72条・73条
最高裁判例に照らして、詐害行為に該当するような債権の回収にあたらないことを確認したか。 弁済期の到来した債務の弁済を求めることは債権者の当然の権利行使であって、他に債権者がいるからといって、その権利行使を阻害されるものではないとし、債務者が一部の債権者と通謀して他の債権者を害する意思を持って弁済したような特殊な場合でなければ詐害行為にはならない、としている(最判昭和33年9月26日)。したがって、本旨弁済にあたる場合であれば、通常は特にこの詐害行為取消権について心配する必要はない。
否認権を行使されるような債権の回収にあたらないことを確認したか。 得意先が破産等の法的手続に入ってしまうと、他の債権者に先駆けて上手く回収できた債権について、仮にそれが弁済期の到来した債務の弁済であったとしても、破産管財人からその効力を否定されてしまう可能性がある。もっとも、否認権が行使されるかどうかは回収時点では不明である。そこで、まずは回収のためにできるだけのことをしておき、後でその回収行為が問題になった時に、それはそれとしてやむを得ないものとして対応するという姿勢が必要である。
債権の回収不能という事態を防ぐため、連帯保証や抵当権などの担保を取得しているか。
債権の回収不能という事態を防ぐため、取締役は債権管理に関する内部統制を構築・運用しているか。
債権の回収不能という事態に備えて、保険や共済の利用を検討しているか。
貸借対照表には、債務者の支払能力や担保価値を反映した適正な貸倒引当金が計上されているか。 会計上の繰入額は、すべてが税務上の損金として認められるわけではないことに留意。

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2014/09/26 副業した従業員を解雇できるか

 就業規則に「会社の許可なく業を営み、又は、在籍のまま他に雇われてはならない」といった副業禁止規定を置く会社は多い。

 就業規則は、法令や労働協約や公序良俗に反しない限り、どのような内容を定めるのは経営者の任意とされ、一般的には従業員はこれに従う義務を負っている。ただ、この副業禁止規定を巡っては、「従業員が会社の指揮命令下にない時間帯には何をするのも自由」との意見も根強く、退職後の競業避止規定と並んで、労働法の専門家の間でも賛否が分かれているテーマの1つだ。

 では、裁判所はどう判断しているかと言うと、副業禁止規定を置くこと自体は肯定しつつも、それをもって懲戒処分を科すことには柔軟な運用を求めるケースが多い。

 具体的には、・・・

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2014/09/26 副業した従業員を解雇できるか(会員限定)

 就業規則に「会社の許可なく業を営み、又は、在籍のまま他に雇われてはならない」といった副業禁止規定を置く会社は多い。

 就業規則は、法令や労働協約や公序良俗に反しない限り、どのような内容を定めるのは経営者の任意とされ、一般的には従業員はこれに従う義務を負っている。ただ、この副業禁止規定を巡っては、「従業員が会社の指揮命令下にない時間帯には何をするのも自由」との意見も根強く、退職後の競業避止規定と並んで、労働法の専門家の間でも賛否が分かれているテーマの1つだ。

 では、裁判所はどう判断しているかと言うと、副業禁止規定を置くこと自体は肯定しつつも、それをもって懲戒処分を科すことには柔軟な運用を求めるケースが多い。

 具体的には、建設会社の事務員が夜間にキャバレーで働いていたことを理由とする普通解雇を有効とした事件(東京地決S57.11.19)がある一方で、病気休職中に内職をしたことは就業規則で禁止される副業にはあたらないとした事件(浦和地判S40.12.16)、運送会社の運転手が年に1~2回、貨物運送の副業に就いたところで業務に具体的な支障は生じないとして、これを理由とする解雇を無効とした事件(東京地判H13.6.5)もある。

 そもそも会社が副業を禁じる目的は、企業秩序を維持し、秘密の漏洩や信用の失墜を防ぎ、従業員の労務提供に支障がないようにするためだとすれば、その目的に反しない限りは、副業したことのみをもって従業員に懲戒を科すことはできないと考えるべきだろう。

 むしろ近年は、私生活を含めたライフプランをどう設計するかは個々の従業員によって異なるものであり会社はその多様性を受け容れるべきとする「ダイバーシティ」の理念が重視されていることに加え、時短やワークシェアリングに伴って収入が減ったり、収入減にまでは至らないものの必ずしも給与が右肩上がりに増えるわけではない中で、インターネット等により容易に副業を探せるという実態を踏まえれば、副業を一律に禁止するよりも、会社への届出を徹底させ、条件付きで副業を容認していく方が現実的と言えるかもしれない。

 ちなみに、労災保険法では、平成18年の法改正により、二重就職している者が「第1の事業場」から「第2の事業場」に移動する間に起きた事故も“通勤災害”として認められることになった。法律が「二重就職」の存在を前提として改正されたという事実も、検討材料に加えておくべきだろう。