2014/09/06 【配当】配当予想を修正したい(会員限定)

 

株主総会前に配当予想を行うことの是非

配当予想とは、上場会社が来期の配当の「予想額」を公表することであり、決算短信の開示に合わせて行われます。配当予想額は、決算短信の冒頭部分にある「サマリー情報」の下の方(通常は2ページ目の下部)に、「配当の状況」の題名で、前期・当期の配当実績と合わせて記載されます。

会社法上、配当金額は「株主総会の決議」によって決定されるのが原則です(会社法454条1項)。ただし、中間配当については、「取締役会の決議によって剰余金の配当を行う」旨を定款に定めるだけで、1事業年度の途中において行う「1回」に限り、取締役会の決議のみによって行うことができます(会社法454条5項 取締役会による配当金額の決定については「配当をしたい」の「取締役会の決議のみにより剰余金の配当分配を行う方法」を参照してください)。また、一定の要件を満たす会社は、定款による授権により、中間配当以外の場合であっても取締役会の権限で期中に配当することが可能とされています(随時配当については、「配当をしたい」の「1事業年度中に何回配当できる?」を参照してください)。このような中間配当や随時配当といった例外を除くと、配当は株主総会の決議で“最終決定”されるのが原則です。

ところが、定時株主総会の1年以上前に、取締役会や経営会議等で来期の配当見込み額を予想し、これを今期の決算短信において配当予想額として公表する上場会社が少なくありません。また、前期に予想した今期の配当予想額のうち期末の配当金の額も、決算短信の公表時点では、いまだ株主総会の決議を経ているわけではありません。

このように会社法では「株主総会で決定する」ことになっている配当額を、株主総会での決議を経ない段階で会社の経営者の判断により公表しても良いものでしょうか。

この点、証券取引所の適時開示ルールで公表される配当予想額は、文字通りあくまで「予想」に過ぎないため、配当額を最終的に決定するのは株主総会であるという会社法のルールに抵触しているわけではありません。一方、実際の配当額が事前に予想した額に満たない場合には投資家の信頼を損ねるという問題が発生しますが、配当予想額の公表は投資家のニーズでもあるため、来期になってから開催される定時株主総会に上程する予定の配当議案は可決される見込みが高いと経営者が判断している限りは、株主総会の前に経営者の判断で公表することもやむを得ないと言えるでしょう。

配当予想の修正を行った場合に必要な手続き

もっとも、「予想」は外れることもあります。例えば、当初の予想よりも業績が相当程度変動し、分配可能額(分配可能額の定義については「配当をしたい」の『配当の上限を定める「分配可能額」』を参照してください)が想定より大きく変動しそうな場合、分配可能額や発行済株式総数等の配当の前提に大きく影響を与える企業再編等が決定し配当方針の変更が必要になった場合、株主からの増配要求を受け入れる場合などには、配当予想を修正すべきかの検討が行われることになります。

配当予想額が当初発表値から“少しでも”変更された場合には、直ちにその内容(「前回予想額」「今回の予想額」「予想を修正する理由」)を適時開示しなければなりません。これは、上場会社に要求される適時開示の項目として、証券取引所の規則に明記されています(有価証券上場規程405条2項)。また、適時開示とともに、自社のサイトにも同じ内容を掲載するケースがよく見受けられます。適時開示が行われる証券取引所の適時開示情報閲覧サービスを見ることが少ない個人投資家などのことを考えれば、その方が親切と言えます。

また、配当予想額を変更する場合には、取締役会や経営会議等の経営者の意思決定機関で変更を決定することが多いようです。会社法上、配当予想値の修正が取締役会の決議事項として求められているわけではありませんが、会社の正式な機関ではっきりと決めていないにもかかわらず配当予想の修正を公表するということは対外的に説明しづらいため、取締役会や経営会議で決定するという形をとっていると言えます。

配当予想修正の株価への影響

では、配当予想の修正を公表するとどのような影響があるのでしょうか。

株主は、投資の意思決定をする際に、「配当額 ÷ 株価」により「配当利回り」を計算し、これを他の銘柄の株式、あるいは株式以外の投資先(債券等)と比較することで、投資の判断材料の1つにしています。また、「配当額 ÷ 当期純利益」により求められる「配当性向」にも高い関心を持っており、会社が獲得した利益のうちどの程度を株主に還元するのかという経営方針(「経営者の姿勢」と言ってもいいかも知れません)もしっかりと見ています。

そのような中、当初の予想よりも配当金額を少なくしたり、またはゼロ(無配)にしたりといった配当予想の修正を行うと、株主の失望感を招き、あるいは株式の購入を検討している投資家の購入意欲をそぐことになり、株価の下落につながることがあります。逆に、当初の予想よりも配当金額を増加させるという配当予想の修正を行うと、良い意味でのサプライズとなり、株価が上昇することがあります。もちろん、株価の変動要因は多岐にわたりますし、投資家の判断も複雑ですので、配当金額を増額修正したにもかかわらず、投資家は既にその修正を「織り込み済み」であるため株価に影響しなかったり、配当金額の増加が「会社資本を減らして、オーナー株主などの大株主に資金を還元する行為」とネガティブに評価されて株価が下落したりするケースもあります。

「配当予想修正の理由」は投資家心理に大きな影響

配当予想の修正を公表する際には、前回予想額、今回予想額と合わせて、「配当予想修正の理由」の記載も求められます。

配当予想の修正は、「業績予想の修正」と一緒に発表されるケースが少なくありません。この場合、配当予想の修正は業績予想が変わったことに起因しますので、配当予想修正の理由には「業績予想の修正の理由に記載のとおり」という表現が使われるケースをよく目にします。

これに対し、業績予想の修正とは異なる理由によって配当予想を修正する場合には、変更の理由をしっかりと説明する必要があります。例えば配当を増加させる理由としては、「業績好転」以外にも、「××記念配当を実施するため」といったものがあります。逆に「業績悪化」以外で配当を減らす理由としては、「長期的に安定した配当方針に変更したため」、あるいは「設備投資を行うため」などがあります。

このような配当予想修正の理由自体が「経営陣の意思」を表明するものと言えるため、投資家心理に大きな影響を与え、株価の乱高下を招くこともあります。

“見切り発車”による配当予想のリスクとその回避方法

配当予想の修正は、株価の乱高下を招く恐れがあるだけでなく、投資家に「配当予想をする能力がない会社」との烙印を押されることにもなりかねません。配当予想の修正が毎年のように続けば、「あの会社が開示する情報は信用できない」といった情報開示に対するマイナス評価が固定化し、中長期的には株価に悪い影響を与える可能性があります。

そこで、配当予想の修正を回避するために、決算予想発表時に配当予想額を「未定」とする会社もよく見受けられます。もちろん、配当予想額を「未定」としたこと自体が投資家に不信感を与える可能性もありますが、少なくとも“見切り発車”で配当予想額を示し投資家に期待させておいて、後からその期待を裏切るという事態は回避することができます。自社が属する業界あるいは経済全体が不安定で、会社の経営も不透明な状況にある場合は、無責任な配当予想額を発表するよりも、ひとまず「未定」としておくことも一案です。ただし、株式市場から「投資家への情報開示の後退」と見られないよう、配当予想額が固まった場合(=開示が可能となった場合)には、速やかにこれを開示することが求められます。

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2014/09/05 自社の社員が「みなし公務員」に

 スチュワードシップ・コード導入などによりますます存在感の高まる企業年金。大手上場企業の中には企業年金基金を抱えるところが少なくないが、企業年金基金と各企業はあくまで「別法人」という形態をとっている。とはいえ、年金基金には本体の企業から職員を出向させているケースが多く、給与水準も本体に合わせているのが通常。このため、出向者本人が「社員」の感覚でいたとしても、何ら不思議ではない。しかし、企業年金基金の役職員がそのような感覚でいることはリスクが高い。なぜなら、・・・

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2014/09/05 自社の社員が「みなし公務員」に(会員限定)

 スチュワードシップ・コード導入などによりますます存在感の高まる企業年金。大手上場企業の中には企業年金基金を抱えるところが少なくないが、企業年金基金と各企業はあくまで「別法人」という形態をとっている。とはいえ、年金基金には本体の企業から職員を出向させているケースが多く、給与水準も本体に合わせているのが通常。このため、出向者本人が「社員」の感覚でいたとしても、何ら不思議ではない。しかし、企業年金基金の役職員がそのような感覚でいることはリスクが高い。なぜなら、企業年金基金の役職員は「みなし公務員」に該当するからだ。

 みなし公務員とは、公務員ではないものの、職務の公益性・公平性に鑑みて、公務員と同様に扱われる者を指す。企業年金基金は、国に納める厚生年金の保険料の一部を国に代わって徴収し、運用をする場合もある。そこで、厚生年金保険法では、その資産を扱う企業年金基金の役職員が私利・私欲を図ることを防ぐため、彼らを「みなし公務員」として、職務に関して賄賂を受け取ることを禁止している(平成25年6月26日法律63号附則5条、旧厚生年金保険法121条)。これは、政府系金融機関など「国が株式を保有している会社」の役職員について、各種法律で賄賂収受に関する罰則が規定されているのと同様である。

 ただ、仮に企業年金基金の役職員が収賄事件などを起こせば、世間からは自社の社員が不祥事を起こしたものと同一視され、会社の看板に泥を塗ることになるのは間違いない。実際、過去には証券会社から接待を受けていたとして大手企業の企業年金基金幹部が収賄の容疑で逮捕される事件も起きている。

 企業年金基金を抱える会社の役員としては、リスクマネジメントの観点から、取締役会で「うちの年金基金は大丈夫か?」という話題を一度は出しておくべきだろう。

2014/09/05 【2014年8月の課題】統合報告書:解答(会員限定)

「統合報告」への関心が高まりを見せる理由

 異なる報告書を1冊にまとめただけのものは、「統合報告書」ではなく単なる“合冊版”に過ぎません。確かに、2冊を1冊にすれば印刷代などの制作費が抑えられ、コストダウンが期待できるでしょう。統合報告書にも同じ効果が期待できるかも知れませんが、それは統合報告書の本質ではありません。

 では、統合報告書とは、一体どういうものなのでしょうか?

 それを知るうえで参考になるのが、国際統合報告評議会*(International Integrated Reporting Council: IIRC) が2013年12月に公表した「国際統合報告フレームワーク」です。

* 国際的に合意された統合報告のフレームワークを構築するため、2010年8月に設立された英国を拠点とする民間の非営利法人。規制当局、投資家、企業、会計の専門家、NGOにより構成される国際的な連合組織である。また、IFAC(国際会計士連盟)、IASB(国際会計基準審議会)などとも協力関係にある。

 同フレームワークでは、統合報告を「企業がどのように持続的な成長を実現しようとしているのかについて報告するもの」と定義しています。具体的には、経営者が、ビジネスの様々な問題にどのように対処するのか、自社の将来性をどのように描くのか、中長期的な経営戦略をどのように描くのか、なぜその戦略を取るのか、バリュードライバー*は何か、経営目標の達成度合いはどうか、長期にわたりどのように企業価値を作り出そうとしているのか―――といった内容の報告です。

* 企業価値に影響を与える要素で、企業価値を評価する際に利用される。例えば、売上高伸び率、営業利益率、運転資本増減率、設備投資率、資本コストなどがバリュードライバーとして挙げられる。逆に言うと、これらをコントロールすることにより企業価値が向上することになる。

 統合報告書の想定利用者は投資家であり、 国際統合報告評議会では「投資家が本当に聞きたいと思っている経営のストーリーこそが統合報告書の中核をなすべき」としています。したがって、アニュアルレポートとCSR報告書を単純に合体させただけのものは「統合報告書」ではありません。

 とはいえ、「統合報告書」はあくまで任意の報告書です。企業は既に、有価証券報告書、決算短信、事業報告書、株主総会の招集通知、コーポレート・ガバナンスに関する報告書、アニュアルレポート、株主通信、CSR報告書など数多くの報告書を発行しており、ステークホルダーのニーズに応えるべく、情報開示を充実させてきています。こうした中、さらに「統合報告書」を作る必要はあるのでしょうか?また、そもそも「統合報告」への関心が高まっているのはなぜでしょうか?

 確かに企業は既に多くの報告書を発行していますが、各規制(金商法、会社法、証券取引所の有価証券上場規程 )やニーズに対応した報告書を専門部署が作成するという”自己完結パターン”が多くなり(例えば、金商法に基づく有価証券報告書の【経理の状況】は経理部、有価証券報告書の定性的情報と会社法に基づく株主総会の招集通知は総務部、株主通信はIR室など)、専門的で詳細ではあるものの、「経営のストーリー」を理解するための情報収集に手間や時間が多くかかる、あるいは、そもそも企業の実態が見えにくいといった声が投資家から聞かれます。これは、報告書が増えて情報開示の量的な充実は図られてきたものの、質的には課題があるということを意味しています。

 投資家になったつもりで、少し考えてみてください。投資先の企業が、持続可能な成長を実現できるかどうかを評価するためには、どのような情報が必要でしょうか? そうした情報が、自社の既存の報告書には分かりやすく書かれているでしょうか?

 2014年2月には日本版スチュワードシップ・コードが策定されました。同コードの原則5には「議決権行使の方針が、投資先の持続的な成長に資するものになるよう工夫すべき」、原則7には「機関投資家は、投資先企業の持続的な成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、該当企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべき」と書かれています。このように、既に機関投資家に対しては、「持続的な成長」を評価した投資への方向付けがなされました。

統合報告書が2つのコードを結び付ける

 では、それに対する企業側の備えはどうでしょうか? 既存の報告書で、こうした投資家の動きと、それに伴い今後投資家から求められるであろう情報開示ニーズに対応できるでしょうか?

 現在、金融庁と東京証券取引所が検討しているコーポレート・ガバナンスコード(2014年9月2日のニュース「策定中のコーポレートガバナンス・コードで注目の“株主総会遅延化”、決算早期化の流れを変えるか?」参照 )は、「企業に持続的な企業価値向上のための自律的な対応を促すことを通じて、企業それから投資家、ひいては経済全体の持続的な成長に寄与するもの」であり、第1回の「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」では、 スチュワードシップ・コードとの関係について 「今後、コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードが、いわば車の両輪となって企業価値の向上、企業の持続的成長、それと投資家・受益者の投資リターンの拡大という好循環を生み出していくこと」への強い期待が示されています。

 つまり、企業の持続的な成長のストーリを描き、それを投資家に分かりやすく伝えることを目的とする「統合報告書」は、車の両輪であるスチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードを結びつけるものだと言えます。こうした一連の流れを踏まえれば、今後、投資家から「統合報告書」へのニーズが高まることは当然に予想されるところであり、企業としては、統合報告書の作成にチャレンジすることを真剣に検討する時期に来ているのは間違いないでしょう。

2014/09/04 (新用語・難解用語)垂直統合型事業モデル

 ある事業の上流から下流までの業務を統合した経営手法のこと。研究開発、部品製造、組立てから販売に至るまでの業務が系列企業グループ内で完結することが多い自動車業界などは垂直統合型事業モデルの典型と言える。

 系列外からの新規参入が困難であるなど、その閉鎖性が批判の対象になることもある垂直統合型事業モデルだが、経営上のメリットは大きい。バリューチェーン*が複数の独立した(系列関係にない)企業によって構成されている場合、どうしても中間コストが多くなり(川上の供給元は川下の供給先に対し、より高い値段で製品等を売ろうとするため)、最終的な製品やサービスの価格は高くなるとともに、利幅も薄くなりがち。これに対し、垂直統合型事業モデルでは中間コストを削減することが比較的容易なため、販売価格の低下や利益の確保につながりやすい。大手スーパーによるPB商品(プライベートブランド)や大手アパレルなどによるSPAも、下流工程に位置する小売業者が上流工程の原材料調達や開発、生産までを垂直統合したことにより実現したものである。また、垂直統合型事業モデルでは、そこに所属する企業が系列関係にあるということで、部品等の安定供給につながるというメリットもある。

* 購買した原材料に対し、技術開発、生産、販売、人材育成といった一つひとつの企業活動が価値を付加し、これらが一連となって、最終的に顧客に対する価値が生み出されるとする考え方

 垂直統合型事業モデルと対照的な概念が、・・・

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2014/09/04 (新用語・難解用語)垂直統合型事業モデル(会員限定)

 ある事業の上流から下流までの業務を統合した経営手法のこと。研究開発、部品製造、組立てから販売に至るまでの業務が系列企業グループ内で完結することが多い自動車業界などは垂直統合型事業モデルの典型と言える。

 系列外からの新規参入が困難であるなど、その閉鎖性が批判の対象になることもある垂直統合型事業モデルだが、経営上のメリットは大きい。バリューチェーン*が複数の独立した(系列関係にない)企業によって構成されている場合、どうしても中間コストが多くなり(川上の供給元は川下の供給先に対し、より高い値段で製品等を売ろうとするため)、最終的な製品やサービスの価格は高くなるとともに、利幅も薄くなりがち。これに対し、垂直統合型事業モデルでは中間コストを削減することが比較的容易なため、販売価格の低下や利益の確保につながりやすい。大手スーパーによるPB商品(プライベートブランド)や大手アパレルなどによるSPAも、下流工程に位置する小売業者が上流工程の原材料調達や開発、生産までを垂直統合したことにより実現したものである。また、垂直統合型事業モデルでは、そこに所属する企業が系列関係にあるということで、部品等の安定供給につながるというメリットもある。

* 購買した原材料に対し、技術開発、生産、販売、人材育成といった一つひとつの企業活動が価値を付加し、これらが一連となって、最終的に顧客に対する価値が生み出されるとする考え方

 垂直統合型事業モデルと対照的な概念が、「水平分業型」事業モデルである。バリューチェーンの上流から下流までが系列企業グループで完結する垂直統合型事業モデルに対し、水平分業型事業モデルでは、外注を活用することにより、自社は特定の業務に特化する経営手法を指す。水平分業型事業モデルには、得意分野に特化することによる収益力向上といったメリットがある反面、急な増減産に対応できないなどのデメリットもある。

 垂直統合型と水平分業型、どちらが優れているかは議論のあるところだが、かつて“囲い込みモデル”といった批判も聞かれた垂直統合型は、上述のとおり最近ではPBやSPAで活用されているほか、アップル社がOSから端末、アプリまでを自社のコントロール下に置く垂直統合型事業モデルでiPhoneを成功させたことから、再び同モデルへの注目度は高まっている。

2014/09/03 「グローバル化」を実現するために必要なこと

 少子高齢化により我が国の人口の減少が予想される中、多くの日本企業が「グローバル化」を経営課題の1つに掲げている。ただ、「海外進出=グローバル化」でない点には注意しなければならない。

 では、自社が本当の意味でグローバル化するためには何が必要だろうか。

 まず最初に挙げられるのが、経営陣が現地のマーケットに精通するということだ。現在、世界経済を牽引しているのが新興国であることからすると、新興国のマーケットを経営陣が理解することは極めて重要だと言える。そのために効果的なのが、経営陣のダイバーシティ*である。つまり、様々な国の出身者を経営陣に迎え入れるということだ。しかし、現状では外国人を経営陣に加えている日本企業は多くない。グローバル企業のランキングである「フォーチュン・グローバル500」にランクインしている日本企業の経営陣に占める外国人の割合はわずか5%に過ぎない。

* 人材の多様性のこと

 この割合は、欧州企業では28%、北米企業では13%となっている。日本企業に比べると欧米企業の方が経営陣のダイバーシティが進んでいるのは明らかだが、それでも十分とは言えないだろう。その原因としては、かつての日本がそうであったように、現地の優秀な人材は、外資系企業よりも、成長著しい国内企業志向であるということが挙げられる。「グローバル化」とは突き詰めれば人の問題であることを考えれば、それを達成するのは簡単ではないということだ。

 現地の優秀な人材の獲得が容易でないとなれば、自社で海外マーケットに精通した人材を育成することが考えられるが、基本的に欧米企業では海外駐在経験のある経営陣の割合は低下傾向にあり(1998年には56%あった海外駐在経験率が、2008年には12%に減少したとの報告もある)、グローバル人材が不足している状況にある。また、本社勤務の期間が長い方が昇進が早いという事実も、優秀なグローバル人材が育ちにくい要因の1つになっているようだ。

 こうした中、欧米の有力企業では、自社のグローバル化推進のため、様々な策を打っている。もっとも分かり易いのが、商品の市場性が一番高い地域への機能移転だ。例えば米国のGEは、医療部門の中のレントゲン部門を米国から北京に移転した。また、同じく米国のP&Gは、グローバル・コスメティック・パーソナルケア部門を米国からシンガポールに移転している。

 機能移転まで踏み切れない場合には、・・・

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2014/09/03 「グローバル化」を実現するために必要なこと(会員限定)

 少子高齢化により我が国の人口の減少が予想される中、多くの日本企業が「グローバル化」を経営課題の1つに掲げている。ただ、「海外進出=グローバル化」でない点には注意しなければならない。

 では、自社が本当の意味でグローバル化するためには何が必要だろうか。

 まず最初に挙げられるのが、経営陣が現地のマーケットに精通するということだ。現在、世界経済を牽引しているのが新興国であることからすると、新興国のマーケットを経営陣が理解することは極めて重要だと言える。そのために効果的なのが、経営陣のダイバーシティ*である。つまり、様々な国の出身者を経営陣に迎え入れるということだ。しかし、現状では外国人を経営陣に加えている日本企業は多くない。グローバル企業のランキングである「フォーチュン・グローバル500」にランクインしている日本企業の経営陣に占める外国人の割合はわずか5%に過ぎない。

* 人材の多様性のこと

 この割合は、欧州企業では28%、北米企業では13%となっている。日本企業に比べると欧米企業の方が経営陣のダイバーシティが進んでいるのは明らかだが、それでも十分とは言えないだろう。その原因としては、かつての日本がそうであったように、現地の優秀な人材は、外資系企業よりも、成長著しい国内企業志向であるということが挙げられる。「グローバル化」とは突き詰めれば人の問題であることを考えれば、それを達成するのは簡単ではないということだ。

 現地の優秀な人材の獲得が容易でないとなれば、自社で海外マーケットに精通した人材を育成することが考えられるが、基本的に欧米企業では海外駐在経験のある経営陣の割合は低下傾向にあり(1998年には56%あった海外駐在経験率が、2008年には12%に減少したとの報告もある)、グローバル人材が不足している状況にある。また、本社勤務の期間が長い方が昇進が早いという事実も、優秀なグローバル人材が育ちにくい要因の1つになっているようだ。

 こうした中、欧米の有力企業では、自社のグローバル化推進のため、様々な策を打っている。もっとも分かり易いのが、商品の市場性が一番高い地域への機能移転だ。例えば米国のGEは、医療部門の中のレントゲン部門を米国から北京に移転した。また、同じく米国のP&Gは、グローバル・コスメティック・パーソナルケア部門を米国からシンガポールに移転している。

 機能移転まで踏み切れない場合には、人材交流を活発化させるしかない。この点、独ダイムラー・ベンツ社では幹部育成プログラム参加者の半数以上を外国人としているほか、独ベルテルスマン社は、国外の優秀な管理職を数年間本社で起用する制度を設けている。逆に、国内(本社等)の人材を海外に派遣する事例としては、本部幹部を積極的に海外子会社に派遣しているIBMやFedExのケースが知られている。

 このように、日本企業よりグローバル化が進んでいる欧米企業でさえ、さらなるグローバル化のための取組みを行っているところが少なくない。海外に進出した日本企業は、こうした欧米企業のみならず、成長著しい新興国の国内企業とも競争していかなければならない。新興国の国内企業が2005年から2010年にかけて23%成長したのに対し、より高いブランド力があるはずの欧米企業の現地子会社は15%しか成長していないというデータもあり、その一因には欧米企業のグローバル化(視点を変えれば「現地化(現地マーケットへの精通)」とも言える)の不足があるとの指摘も聞かれる。グローバル化度では欧米企業に劣る日本企業は、今こそ自社の“グローバル化度”を再点検する必要があろう。

2014/09/02 策定中のコーポレートガバナンス・コードで注目の“株主総会遅延化”、決算早期化の流れを変えるか?

 コーポレートガバナンス・コードとは、独立役員設置など上場企業等のコーポレートガバナンス上の諸原則を示すもので、イギリス、フランス、ドイツなどでは既に導入されている(イギリスのコーポレートガバナンス・コードに関する話題は2014年7月18日のニュース「「継続企業の保証」は取締役の責任?本家・英国コーポレートガバナンス・コード改定が迷走」参照)。法令上の義務ではないものの、上場会社等に対して「Comply or Explain」(従うか、従わない場合にはその理由を説明せよ)が求められている。

 日本でも、今年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014を踏まえ、金融庁と東京証券取引所が事務局となり「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(座長:池尾和人慶應義塾大学経済学部教授)を設置し、コーポレートガバナンス・コードの策定に着手している。金融庁と東京証券取引所は年度内にも同コードを決定し、平成27年6月総会での活用を求める方針を打ち出している(2014年5月19日のニュース「大人数の取締役会はNG?「コーポレートガバナンス・コード」制定の動き」参照)。

 このコーポレートガバナンス・コード策定に関して今後議論を呼びそうなのが、独立役員の「複数」選任を盛り込むかどうかという点。自民党の日本経済再生本部が5月にまとめた「日本再生ビジョン」では、「取締役である独立役員を少なくとも2名以上確保しない場合、当該事業年度に関する定時株主総会において、取締役である独立役員を少なくとも2名以上置くことが“相当でない理由”を説明しなければならない」と明記されているからだ。

 同取引所の調査によると、全上場会社のうち独立取締役を2人以上選任している会社は390社(21.5%)に過ぎない。上述の通り、コーポレートガバナンス・コードは法令上の義務ではないが、東京証券取引所では上場規則に規定する方針を示しており、事実上の規範性を有することになる。したがって、独立取締役の複数選任が盛り込まれた場合には、多くの上場会社が独立取締役の追加選任を迫られることになろう。

 もう1点、議論を呼びそうなのが、経済産業省が検討している株主総会の開催日や基準日*の設定だ。上述した「日本再興戦略」改訂2014では、「企業と投資家との対話の促進の観点から、株主総会の開催日や基準日の設定等について国際的な状況を踏まえてその運用の在り方についての検討を行うとともに、産業関係団体等におけるガイドラインの検討を行う」ことが明記されている。これは、要するに定時株主総会の開催時期をずらすことにより投資家との対話を促進することを狙いとするものだが、そもそも会社法上そのようなことが可能なのかとの疑問を持つ向きもあろう。

* その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受けるといった株主の権利を享受できる、という日

 3月決算会社を例にとると、多くの会社が定款で定時株主総会の基準日を3月31日と規定している。ただ、会社法上は「事業年度の終了後一定の時期」に定時株主総会を開催すればよいとされているため、定款を変更して基準日を期末日より後の別の日(たとえば4月末)に定めておけば、6月末までに定時株主総会を開催しなくても会社法違反にはならない。もっとも、会社法においては、基準日から3か月以内に株主総会を開催しなければならないと定められている。そこで、基準日が4月末であれば7月末までに定時株主総会を開催すればよいことになる。“早期化”とは逆向きの、いわば“遅延化”である。

 ここで気になるのが、「株主総会の遅延化により、決算スケジュールも遅延化できるのか?」である。まず、・・・

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2014/09/02 策定中のコーポレートガバナンス・コードで注目の“株主総会遅延化”、決算早期化の流れを変えるか?(会員限定)

 コーポレートガバナンス・コードとは、独立役員設置など上場企業等のコーポレートガバナンス上の諸原則を示すもので、イギリス、フランス、ドイツなどでは既に導入されている(イギリスのコーポレートガバナンス・コードに関する話題は2014年7月18日のニュース「「継続企業の保証」は取締役の責任?本家・英国コーポレートガバナンス・コード改定が迷走」参照)。法令上の義務ではないものの、上場会社等に対して「Comply or Explain」(従うか、従わない場合にはその理由を説明せよ)が求められている。

 日本でも、今年6月24日に閣議決定された「日本再興戦略」改訂2014を踏まえ、金融庁と東京証券取引所が事務局となり「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(座長:池尾和人慶應義塾大学経済学部教授)を設置し、コーポレートガバナンス・コードの策定に着手している。金融庁と東京証券取引所は年度内にも同コードを決定し、平成27年6月総会での活用を求める方針を打ち出している(2014年5月19日のニュース「大人数の取締役会はNG?「コーポレートガバナンス・コード」制定の動き」参照)。

 このコーポレートガバナンス・コード策定に関して今後議論を呼びそうなのが、独立役員の「複数」選任を盛り込むかどうかという点。自民党の日本経済再生本部が5月にまとめた「日本再生ビジョン」では、「取締役である独立役員を少なくとも2名以上確保しない場合、当該事業年度に関する定時株主総会において、取締役である独立役員を少なくとも2名以上置くことが“相当でない理由”を説明しなければならない」と明記されているからだ。

 同取引所の調査によると、全上場会社のうち独立取締役を2人以上選任している会社は390社(21.5%)に過ぎない。上述の通り、コーポレートガバナンス・コードは法令上の義務ではないが、東京証券取引所では上場規則に規定する方針を示しており、事実上の規範性を有することになる。したがって、独立取締役の複数選任が盛り込まれた場合には、多くの上場会社が独立取締役の追加選任を迫られることになろう。

 もう1点、議論を呼びそうなのが、経済産業省が検討している株主総会の開催日や基準日の設定だ。上述した「日本再興戦略」改訂2014では、「企業と投資家との対話の促進の観点から、株主総会の開催日や基準日の設定等について国際的な状況を踏まえてその運用の在り方についての検討を行うとともに、産業関係団体等におけるガイドラインの検討を行う」ことが明記されている。これは、要するに定時株主総会の開催時期をずらすことにより投資家との対話を促進することを狙いとするものだが、そもそも会社法上そのようなことが可能なのかとの疑問を持つ向きもあろう。

基準日 : その日において株主名簿に名前が載っていれば、株主総会での議決権行使や配当を受けるといった株主の権利を享受できる、という日

 会社法上、株主総会は「事業年度の終了後一定の時期」に開催すればよいとされている。ただし、「基準日から3か月以内」が開催の期限となっている。3月決算会社を例にとると、現状では多くの会社が定時株主総会の基準日を期末日と同じ3月31日と(定款に)規定しているが、定款を変更して基準日を期末日より後の日、例えば4月末に定めれば、7月末までに定時株主総会を開催すればよいことになる。“早期化”とは逆向きの、いわば“遅延化”である。

 ここで気になるのが、「株主総会の遅延化により、決算スケジュールも遅延化できるのか?」という点。まず、決算短信公表日を後ろにずらすことができるかを検討してみる。東証上場会社の2014年3月期決算の決算短信公表までの平均日数は39.3日。およそ40日で連結決算をとりまとめなくてはならず、経理部やIR室、子会社の経理部等にかなりの負荷がかかっているのが現状だ。株主総会の遅延化によりゆとりを持った決算スケジュールを組むことができれば、経理部等の負担緩和につながる。じっくりと決算に取り組むことで、決算短信(ひいては有価証券報告書)の訂正といった“失態”も減らすことができる。しかし、株主総会の遅延化に伴う決算短信公表の遅延化は、残念ながら困難と言わざるを得ない。なぜなら、決算短信には「投資家への迅速な情報開示」という錦の御旗があり、決算短信公表を遅らせることはこれに反してしまうからだ。

 では、招集通知の発送日の遅延化は可能だろうか。株主総会の遅延開催を理由として招集通知の発送を後ろにずらすことができれば、事業報告等の作成スケジュールに時間的なゆとりを持たせることができる。しかし、それも困難と言える。招集通知の発送が法定の期限ぎりぎりになってしまうと株主が議案をじっくりと検討する時間を確保できなくなってしまうため、機関投資家を中心とした株主が少しでも早い招集通知の発送を会社に要請しているからだ。せっかく株主総会を遅延化しても、招集通知の発送まで遅延化しては、「投資家との対話」に後ろ向きな姿勢との評価を受けかねない。IRの観点からそれは避けたいところだ。

法定の期限 : 株主総会の開催日の2週間前

 せめて監査法人の会計監査のスケジュールだけでも遅延化できれば経理部等の負担はかなり減るが、ここでもやはり決算短信公表日がネックになる。一度公表した決算短信を後から訂正することを避けたい会社側としては、決算短信の公表までに会計監査を概ね終わらせて欲しいというのが本音だからだ。結局、決算短信の公表、招集通知の発送、会計監査のそれぞれに早期化が要請されることになり、株主総会を“遅延化”してもゆとりを持った決算は実現し得ないということになる。

 仮に定時株主総会の遅延開催がコーポレートガバナンス・コードに盛り込まれるとなれば、上場会社にとって「Comply」(コードに従う)を選択することの意味は、純粋に「投資家との対話」の実現だけと割り切った方が良さそうだ。