会社経営では「ヒト、モノ、カネ」といった要素が不可欠となります。とりわけ、「カネ」は「ヒト、モノ」を調達する原資になるとともに、それが欠けると会社は倒産してしまうことから、最優先で手配する必要があります。会社経営で必要となる「カネ」は、運転資金(営業債務や人件費の支払い等)、設備資金(工場の新設や機械設備の更新など生産設備への投資資金)、在庫資金(商品や原材料を用意するために必要な資金で、運転資金の一種)、決算資金(会社決算に伴う配当金等の支払いに必要な資金)等様々です。
こうした資金をすべて手元資金でまかなうのであれば、資金調達に頭を悩ます必要はありません。しかし、資金がよほど潤沢な会社でない限り、どこからか調達してこなければなりません。そして、その調達方法次第で、資本コストや財務状況、会社の支配権等が大きく変動することになります。そのため、会社の経営方針に照らして、目的にフィットした資金調達方法を選択することが重要となります。
- 資金調達の種類とそれぞれのメリット・デメリット
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資金の調達方法は、大きく分けてデット・ファイナンス(社債やローンによって調達する方法)、エクイティ・ファイナンス(新株発行によって調達する方法)、アセット・ファイナンス(債権や資産の流動化によって調達する方法)の3つに分類されます。まず、それぞれの方法のメリットとデメリットを見ていきましょう。
デット・ファイナンスは、調達先から経営に直接介入されることなく資金を調達できる点がメリットです。もっとも、期限が来ると返済しなければならないという点や、調達額を増やすことでデット・エクイティ・レシオが悪化し会社の格付けにマイナスの影響を与えるというデメリットがあります。
デット・エクイティ・レシオ : 有利子負債/株主資本。返済義務のあるデット(有利子負債)が返済義務のないエクイティ(株主資本)の何倍あるかを示し、長期の支払い能力を判断(安全性分析)する際に使われる指標。この数値が「1」を下回れば、有利子負債のすべてを株主資本でカバーしていることを示しており、財務の安全性が高いと言える。
一方、エクイティ・ファイナンスは、新規に株式(エクイティ)を発行することにより投資家から資金を調達する方法です。デット・ファイナンスと異なり、返済期限がなく、利息の支払いも必要ないという点や、資本の増強によりデット・エクイティ・レシオの改善につながるというメリットがあります。ただ、エクイティ・ファイナンスでも、配当や株価上昇期待(キャピタルゲイン)という「資本コスト(資本の調達に伴って生じるコスト)」が発生しています。我が国では「無借金経営」が理想的な経営であるかのように言われることが少なくありませんが、実は、配当の支払いや株価上昇期待に応えなければならない株式市場からの資金調達の方が、利息を支払えば済む借入金よりも資本コストが高いとされています。株主は債権者のように資金の返済を受ける権利を持たずに事業リスクを直接的に負担していることから、そのリスクの分だけ高いコストを求めるのも頷けるところです。この資本コストの高さは、エクイティ・ファイナンスのデメリットと言えるでしょう(資本コストについては「固定資産を取得したい」の「購入原資は自己資本か、それとも借入金か?」でも触れています)。また、エクイティ・ファイナンスには新株引受け(=資金の拠出)に応じなかった株主の持分率の希薄化が生じるという問題もあります。
アセット・ファイナンスとは、会社が保有している債権や不動産を金融機関等が運営する特定目的会社等に譲渡(流動化)することを通じて行う資金調達です。アセット・ファイナンスでは、流動性の低い不動産や債権に流動性を付与することが可能となり、オフバランスが認められれば財務指標が改善するというメリットがあります。また、流動化においては、会社の信用力ではなく、動産や不動産そのものの価値に基づく資金調達が可能となり、金利を低く抑えられる点もメリットとなります。一方、流動化を行うためには、スキームの構築において専門的知識や煩雑な手続が必要になるという点がデメリットとなります。また、アセット・ファイナンスには、会社が保有している不動産、債権、無形固定資産(著作権等)等を担保にその収益力や信用力に基づいて金融機関から融資を受けることも含みます。この場合には、アセット・ファイナンスのメリットの一つである会社の信用力に基づかない資金調達の実施が可能である一方で、通常のデット・ファイナンスと同様のデメリットが存在することになります。
最近では、「劣後ローン」のように、デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの中間的な位置づけのローンの活用が注目されています。実際に、最近では金融機関が優良企業を中心に劣後ローンを提供するケースも増えています。「劣後ローン」とは、返済が他のデット・ファイナンスより劣後(返済が後回しにされるという意味です)するローンです。劣後の内容と返済期限次第では、金融機関や格付会社の審査に際して、返済義務のない資本と同等と判断されることから、「資本性借入金」とも称されます。もちろんローンである以上返済期限はあります。ただし、超長期(例えば期間60年)の期限を設定することで、審査上は資本と同等と判断されるわけです。劣後ローンにより、資金繰りが相当安定化するとともに、格付会社の格付けも向上し、社債の利率の低下をもたらすというメリットも享受できます。また、発行済株式が増加するわけではないので、会社の支配権も変動しません。デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの「いいとこどり」と言えます。
このような劣後ローンは東日本大震災の影響や当時の急激な円高の進行等から資本不足に直面している会社のバランスシートの改善を図り、経営改善につながるように配慮することおよび金融機関における融資査定の緩和につなげることを目的として、金融庁が平成23年11月に銀行に対する金融検査マニュアルの運用を緩和したことでも話題となりました。
取締役としては、これらのメリットとデメリットを理解したうえで、どの資金調達方法が自社にとってベストか、意思決定する必要があります。
例えば、デット・エクイティ・レシオの目標値を設定している場合には、上述のとおりデット・ファイナンスでの資金調達によってデット・エクイティ・レシオが悪化してしまい、目標値を達成できないリスクが高まります。そこで、エクイティ・ファイナンスによる資金調達も検討する必要があります。デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの選択については、「固定資産を取得したい」の「購入原資は自己資本か、それとも借入金か?」も参照してください。
また、資産の入替を検討している場合には、アセット・ファイナンスを利用することにより、既存の資産を流動化することによって調達した資金を原資として別の資産に再投資することが有用であると考えられます。一方、多額の資金調達を必要とする場合には、自己の資産を原資とするアセット・ファイナンスは有用ではないと考えられます(流動化の対象となりうる資産には限りがあるため)。
なお、流動化のような複雑なスキームではなく、単純にノンコア事業(事業の選択と集中を進める場合、コア(中核)事業とノンコア事業の選別が不可欠となります)や遊休資産を外部に売却することで、資金を調達することも検討する価値があります。ちなみに遊休資産の売却は、資金調達が不要であっても、継続的に検討すべき課題と言えます。なぜなら、稼働率が低い資産を売却し、成長事業へ資金を振り向けることでROA(総資産利益率)を高めることができるからです。役員は、遊休資産や稼働率が低い資産をリストアップすることで「見える化」しておき、タイミングを見て売却することで、デット・ファイナンスやエクイティ・ファイナンスが不要になるかも知れません。
- 各資金調達方法に潜むリスク
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資金調達方法によっては、資金の出し手や会社が抱えるリスクが異なる点には留意が必要です。
例えば変動金利によるデット・ファイナンスであれば、会社は「金利リスク(金利が変動するリスク)」を抱えることになります。また、資金の出し手はエクイティ・ファイナンスやアセット・ファイナンスであれば「市場リスク(株価や不動産価格が変動するリスク)」、また、デット・ファイナンスであれば「信用リスク(借入金の返済が行われないリスク)」を抱えることになります。
そういったリスクは、資金調達の可否や調達コストに反映されることになります。具体的には、株価や不動産価格が低迷したり、融資枠が縮小したりすれば十分な資金調達ができなくなるでしょう。また、金利が上昇すれば利息負担が増えますし、株価が高くなれば、株主が求める配当額や株価上昇期待に応えるためにはより大きな資本コストが必要になります(株主が求める配当利回りは変わらないとしても、利回り計算のベースとなる株価が高くなれば必要な「配当額」は増えますし、同じ株価上昇率を達成するにも、株価が高くなればより大きな時価総額の上昇が必要になります)。そういった資金調達コストの上昇の影響を受け、利払い後ベースでの投資利回りが悪化する可能性があります。投資利回りの最低水準を社内規程で定めている場合、資金調達のコストの上昇により投資利回りがこの最低水準を下回れば、そもそも資金調達自体をとりやめるという選択肢も出て来るでしょう。
また、リスク管理規程等の社内規程により調達限度額(とくに借入限度額)を定めている会社も少なくありません。身の丈を超えた資金調達は、過度な利息や資本コストの負担となって、会社経営を圧迫するからです。そのような規程を持たない会社は、仮に金融緩和で融資を受けやすくなったとしても、調達額に上限を設けることの是非を検討する必要があります。さらに、デット・エクイティ・レシオの高い会社では、ストレステストを実施して、金利が上昇した場合の資金繰りや利益に与える影響をシミュレーションすべきです。
- 実際に使われることが多い資金調達の方法は?
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上述のように、資金調達の方法にはデット・ファイナンス、エクイティ・ファイナンス、アセット・ファイナンスの3つがありますが、このうち実際によく利用されるのが借入れ、社債(ともにデット・ファイナンス)、新株発行(エクイティ・ファイナンス)、ファクタリング(債権の売却。アセット・ファイナンスの一つ)の4つです。それぞれの特徴をまとめると下表のとおりとなります。
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資金調達方法 |
調達コスト |
担保 |
返済義務 |
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借入れ |
支払利息、アレンジメント・フィー(*1)
エージェント・フィー(*2)、保証料 |
原則として「有」 |
有 |
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社債 |
社債発行費用、社債利息 |
原則として「無」 |
有 |
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新株発行 |
株式発行費用、配当
株価上昇(キャピタルゲイン)への期待 |
無 |
無 |
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ファクタリング(*3) |
支払利息相当額(債権額-売却額)
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原則として「無」 |
無 |
*1 シンジケート・ローン(複数の金融機関が協調して貸付を行う方法)におけるアレンジメント業務(シンジケート・ローンの組成に関する事務手続)の対価
*2 シンジケート・ローンにおけるエージェント業務(シンジケート・ローンを継続、維持するための管理)の対価
*3 債権譲渡
このうち「新株発行」は、第三者割当や株主割当、ストック・オプションや種類株発行等さまざまな手法に細分化できます。さらに、設備投資のための借入れであれば、「リース」という選択肢も比較対象に加える必要があります。リースについては「固定資産を取得したい」の「購入かリースかは一概に判断できず」を参照してください。
本稿では、借入れにより資金調達する場合に役員が検討すべきことについて解説します。
- 借入れによる資金調達の際に検討すべき事項とは?
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デット・ファイナンスの一形態である借入れにより資金を調達する場合に、コンプライアンスの観点から必ず確認しなければならないのが、その借入れが会社法上の「多額の借財」(会社法362条4項2号)に該当するか否かという点です。もし「多額の借財」に該当する場合には、事前に取締役会で決議を行う必要があります。ここでいう「多額」には明確な基準はなく、会社の規模や考え方によって変わってくるものです。そこで、後から「本当は取締役会の決議を経るべきではなかったのか」といったトラブルになることを避けるために、社内規程で「多額の借財」について具体的な金額(例えば1億円以上)や総資産に対する割合等の明確な判断基準を設定する必要があります。
また、会社によっては、社内規程により、金額に関係なく新規借入自体を取締役会の決議事項としている会社もあります。一方、取締役会での決議を待っているとタイムリーに借入れをすることができないことから、特別取締役制度を導入して、特別取締役による取締役会で決議することも会社法上認められています(特別取締役制度については、「固定資産を取得したい」の「通常の取締役会を開催せずに高額な固定資産を取得する方法」を参照してください)。借入れによる資金調達を行う場合、財務担当取締役としては自社の社内規程を必ず確認し、その承認ルールに従うようにしなければなりません。
そして、取締役会での決議が必要な借入れであれば、決議に先立ち、金融機関(メインバンクやシンジケート・ローンにおける主幹事等)による借入条件(金利、各種手数料、借入期間、返済方法、利息支払方法、担保、コミットメント・ライン、コベナンツの設定等)の比較を行い、どこから借り入れるか、あるいは複数の金融機関から借入れる場合には、各金融機関のシェアをどうするのかなど、会社にとってベストの選択は何かを検討する必要があります。以下、具体的に解説していきましょう。
コベナンツ : 借入期間内における作為(実行することを要求される行為)・不作為(やってはならない行為)について借手が誓約する、借入契約(金銭消費貸借契約)における特約条項。借入れの際に締結するコベナンツの多くは「一定の自己資本比率の維持」「一定の純資産額の維持」等の財務的な遵守事項であることが多いので、財務制限条項とも呼ばれる。
(1)信用リスクと金利の関係
借入れについて取締役会決議を行う際には、当然ながら借入れの目的が明確になっている必要がありますが、実はこの借入れの目的(例えば冒頭で述べた「運転資金」か「設備資金」か)によって借入金利も変わってくることになります。例えば、資金繰りの悪化による「運転資金」の借入れであれば、通常の一時的な「運転資金」の借入れよりも金利は高くなります。一方「設備投資」の借入れであれば、「運転資金」の借入れよりも利率が低く決定される可能性があります。また、借入期間は、設備資金であれば長期(通常は5年から10年)、運転資金であれば短期(通常は1年から3年)になるのが一般的ですが、期間が長ければ長いほど金融機関の抱える信用リスクが高くなるので、利率も高くなります。
また、借入金利は、会社の信用リスクを測る物差しとなる「格付け」にも左右されます。ここで言う「格付け」とは、会社が金融機関に提出した財務諸表(利益や負債比率などを把握)や事業計画(将来性を判定)、資金繰り等を基に、金融機関内部で独自に算定されるものです。格付けが高い会社は信用リスクが低いことから低い金利が適用され、格付けが低い会社は信用リスクが高いことから高い金利が適用されます。ただし、格付けが低い会社であっても、金融機関が「担保資産により貸付額の回収は可能」と判断した場合には、低い金利が適用されることがあります。一方、2期連続赤字の会社に対しては、そもそも金融機関の融資姿勢が消極的になってしまうのが一般的です。
(2) 固定金利と変動金利、選択のポイント
適用される金利には、「変動金利」と「固定金利」の2種類があります。変動金利とは、ベースレート(TIBOR(タイボー=Tokyo Inter-Bank Offered Rate。東京市場における銀行間取引の金利)等の基準金利)に信用リスクを考慮したスプレッド(=利ざや。信用リスクが高ければ高いほどスプレッドは大きくなる)を上乗せしたものであり、固定金利とは、契約によって定められた一定の利率のことです。
会社が将来キャッシュ・フローを固定させて安定的な事業計画を立案したいという場合には、固定金利を選択することにより、金利変動リスクを回避することになります。ただ、固定金利の場合、返済期間が長ければ長いほど、金融機関が要求する利率は高くなりますので、低金利の持続が見込まれる場合には、金利変動リスクを負ってでも変動金利を採用することも考えられます。
なお、変動金利による借入契約を締結した場合でも、将来金利が上がるリスクがあると予想するのであれば、これに併せて金利スワップ契約(一定期間に渡り、変動金利と固定金利を交換する契約。契約相手から、想定元本(借入金相当額)について変動金利で計算した利息相当額を受け取る代わりに、固定金利で計算した利息相当額を支払います)を当該金融機関(金利スワップ契約だけ別の金融機関と締結することも可能ですが、管理の観点から借り入れを行った金融機関とスワップ契約を締結するのが通常です)との間で締結することによって、借入れから生じるキャッシュ・フロー(利息の支払額)を固定させることが可能になります(借入れを行った金融機関に対しては変動金利による利息を支払いますが、スワップ契約に基づき同額の変動金利を受け取りますので両者は相殺され、最終的にはスワップ契約に基づき支払った固定金利による利息のみを負担します)。この場合、スワップ契約に関連して支払うことになる手数料を含めたうえで借入れのコストを計算し、固定金利で借入れた場合との比較を行う必要があります。
このスワップ契約を、金融機関の視点で見てみましょう。金融機関は資金の多くを変動金利で調達しています。そのため、固定金利で貸し出しをしてしまうと、将来的に逆ザヤ(調達金利の方が貸出金利を上回ってしまうこと)になってしまうリスクを背負ってしまうことになります。そのため、金融機関側も固定金利での貸し出しに消極的な面があります。一方で、借り入れる側は金利の上昇リスクを嫌い、固定金利での借入れを望みがちです。そこで、変動金利で貸し出しを行い、あわせてスワップ契約を締結することで、顧客の金利固定化のニーズに応えつつ、別の第三者と逆方向の金利スワップ契約等をもつことにより金融機関側のリスクをコントロールすることになります。また、スワップ契約に伴うアップフロント・フィー(最初に要求される手数料)という手数料収入も金融機関側がスワップ契約を結ぶインセンティブになっていると言えます。
このように、スワップ契約を結ぶとアップフロント・フィーが加算されることから、トータルの資金調達コストが多額になる可能性があります。財務担当取締役としては、金利の先高感があるのであれば、まずは固定金利での借入れの可能性を追求すべきと言えます。もし変動金利による借入れとスワップ契約の締結が不可避となれば、トータルのコストをしっかりと把握して、それが許容しうる水準なのかどうかを検討すべきです。
なお、金利の先安感がある場合は、固定金利を変動化したいニーズがあるかもしれません。そのときには、変動金利を支払い、固定金利で受け取るというスワップ契約を締結することも考えられます。
(3) 担保に何を差し入れるか
借入れに際して、会社の信用リスクが高い場合には、金融機関から担保の差入れを要求されることがあります。
担保には「物的担保」と「人的担保」があります。物的担保とは要するに特定の財産(不動産、債権など)を担保にとることであり、一方、人的担保とは、債務者(ここでは借入れを行う会社)以外の第三者(会社の代表者、親会社や関連会社など)の資力を担保にとることです。
一般的には、会社が保有する定期預金、有価証券、不動産等を担保として指定されます。例えば、資金用途が設備投資であれば、金融機関は新規購入した固定資産を担保として設定することになります。担保に供する資産については、金融機関と会社の関係にもよりますが、金銭消費貸借契約の締結の過程において、金融機関が会社資産から選択するのが一般的です。根抵当のように、極度額の範囲内での貸し付けに備えて不動産担保を差し出すケースもあります。製造業であれば、工場財団のように、工場の資産をまるごと担保に提供する場合もあります。
人的担保(連帯保証人)を用意できない場合には、保証協会等の保証会社(会社が返済不能に陥った場合に返済を肩代わりする会社)の保証を受けるとともに、保証会社に対して保証料の支払いが必要になるケースがよく見受けられます。その場合には保証料を資金調達コストの一部として見込んでおく必要があります。なお、保証料は返済期間に応じて費用に計上します。たとえ保証料の一括前払いが求められるケースでも、返済期間に応じた費用配分が必要となってくることには注意が必要です。
(4)将来の資金不足に備えるには?
現時点では資金が回っていても、将来的に資金不足が発生する可能性があるときは、財務担当取締役はどのように判断すればよいのでしょうか。念のため、今の段階で借入金を積み増しておくという手がありますが、その場合、利息を余計に支払わなくてはなりません。かといって、資金需要が生じたタイミングで必要な額を必ず借りることができるという保証はどこにもありません。こうした将来の資金需要に備えて活用したいのが、金融機関との「コミットメント・ライン」契約です。これは、金融機関にあらかじめ一定の融資枠を設けてもらい、この融資の枠内であれば、契約期間中はいつでも審査なしで金融機関から貸付けを受けられることを金融機関に保証してもらうものです。会社にとっては、審査を受ける必要がないため迅速な資金調達が可能になりますので、資金繰りへの不安が小さくなります。
ただし、コミットメント・ラインを設定する場合には、融資枠の金額に応じた契約料が必要になる点には留意してください。財務担当取締役には、その契約料と「早目に借入れを起こすことで支払いを余儀なくされる利息負担額」を比較して判断することが求められます。
(5)コベナンツ(財務制限条項)への対応
金融機関から借入れを行う場合には、借入等の契約書に「コべナンツ(財務制限条項)」が盛り込まれることがあります。
コベナンツとは、借入期間内における作為(実行することを要求される行為)・不作為(やってはならない行為)について借手が誓約する、借入契約(金銭消費貸借契約)における特約条項のことです。一般的なコベナンツは次のとおりです。
コベナンツの例
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項目 |
内容 |
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自己資本比率 |
一定水準以上の自己資本比率を維持すること(例えば、「貸借対照表に基づく自己資本比率が40%以上であること」等) |
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格付維持 |
格付会社の格付が一定の水準以上にあること(例えば、「格付会社甲社の評価が「B」以上であること」等) |
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利益水準 |
一定水準以上の利益を維持すること(例えば、「経常利益が1億円を下回らないこと」等) |
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純資産 |
純資産が一定水準以上下回らないこと(例えば、「純資産が100億円以下にならないこと」等) |
コベナンツを設定すると、借手である会社は金融機関に対してコベナンツの「順守状況」を報告する義務が生じます。例えば、一定の自己資本比率や利益水準、純資産を維持するといった財務的なコベナンツであれば、自社の財務情報を定期的に提示することが求められます。
また、会社としては、今後コベナンツに抵触する恐れはないかを継続的にモニタリングして、抵触しないように努力する必要があります。なぜなら、コベナンツに抵触した場合は会社がペナルティを受けることになるからです。ペナルティには、例えば「期限の利益喪失」といったものがあります。期限の利益とは、当初決めた期限が到来するまでは債務者は借入金を返済する必要がないという、いわば当然の約束事を指しています。そして、コベナンツに抵触してしまうと、当初の返済スケジュールが破棄され、「全額」を「すぐに」返済するよう迫られる可能性が生じることになります(実際に返済を迫るかどうかは債権者次第と言えます)。もしこの条項が発動されれば資金繰りが一気に悪化し、最悪の場合には倒産に至る恐れもあります。このほかのペナルティとして、「利率の引上げ」や「担保の追加差入」といったものがよく見られます。
財務担当取締役としては、ローン契約時に、コベナンツを課せられそうな場合、それを順守できなくなる可能性がどの程度あるのかについて、必ず検討しておきましょう。
また、結果としてコベナンツを課せられ、その後コベナンツに抵触しそうな事態になったときには、抵触する前に金融機関に状況を報告して、コベナンツ内容やペナルティを変更してもらうよう交渉する必要があります。コベナンツに抵触してからの「事後的な報告」となれば金融機関側が態度を硬化させることも考えられるため、事前に状況を報告し交渉をスタートしておくべきです。そのためにも、上述したようにコベナンツに抵触するかどうかの「継続的なモニタリング」が必要となるわけです。
- 自己資本比率が低く、金融機関が融資に消極的な場合の対応
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上述のとおり、金融機関が融資の可否を決定する際の重要な判断要素の1つが自己資本比率です。また、コベナンツにおいても自己資本比率はよく取り上げられる項目の1つとなっています。
自己資本比率は、借入金すなわち「負債」が増えれば小さくなり、逆に「資本」が増えれば大きくなります。本来、負債を減らすためには借入金を返済する必要がありますし、資本を増やすためには増資したり、資本に組み入れる純利益をあげたりする必要があります。しかし、こうしたことをせずに負債を減らし、かつ資本を増やす方法があります。それが「DDS」と「DES」です。
DDSとは「Debt for Debt Swap=債務の劣後化」の略で、会社が有している借入金を、返済期限が他の借入金の完済の後となる(=一番最後に返済すればよい)劣後ローンに借り換えすることをいいます。「債務の劣後(=他に遅れをとる)化」という言葉のとおり、返済期限や返済順序が他の借入金より後になる結果、借入金というよりは(返済義務のない)資本に近いという意味で「資本性借入金」とも呼ばれます。上述のとおり、資本性借入金は東日本大震災の影響や当時の急激な円高の進行等から資本不足に直面している会社のバランスシートの改善を図り、経営改善につながるように配慮することおよび金融機関における融資査定の緩和につなげることを目的として、金融庁が平成23年11月に銀行に対する金融検査マニュアルの運用を緩和して話題となりました。
劣後ローンは、金融機関や格付会社が会社の財務状況を判断する際にも「負債」ではなく「資本」とみなされることになります。したがって、それまでの借入金を資本性借入金に借り換え(DDS)することで自己資本比率が向上し、金融機関が融資を行う際の格付け上も有利になりますし、自己資本比率の水準がコベナンツに抵触しそうになった場合にも威力を発揮します(ただし、資本性借入金は、貸借対照表上の表示は負債のままとなりますので、会社決算への影響はありません)。
劣後ローンは「資本的劣後ローン」や「資本性ローン」、「資本性借入金」とも呼ばれており、主として中小企業向けには日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度」や「災害対応型劣後ローン」、中小企業再生支援協議会版「資本的借入金」といったパッケージがあります。劣後ローンは、必ずしもDDSとセットというわけではありません。また、中小企業だけのものでもありません。最近では、むしろ優良大企業に対して、金融機関が超長期(例えば期間60年)の劣後ローンの提供に積極的な姿勢を示しており、今後も増加することが見込まれています。
負債を減らし資本を増やすもう一つの方法がDESです。DESとは、「Debt Equity Swap=債務の資本化。銀行(債権者)から見ると『債権の株式化』」の略で、借入金を資本金に振り替えることです。資本性借入金はあくまで「借入金」ではあるため返済義務があるのに対し、DESでは借入金が株式に変わってしまうため、もはや会社には返済義務はなくなります。その代わりに債権者が会社の株主になり、場合によっては経営に介入することになります。金融機関は通常、一般事業会社の議決権の5%以上(保険会社の場合は10%以上)の株式を保有することを禁じられておりますが、業績不振会社の再建のために一時的に保有する場合には、公正取引委員会が個別に認可した場合に限り認められております。DESを行った結果、自己資本比率や債務超過からの脱却に貢献することになりますが、同時にエクイティ・ファイナンスにおけるデメリット(経営への介入)が生じることになりますので、それも考慮に入れて債権者との交渉を行う必要があります。また、DESが税務上、非適格現物出資に該当する場合には、税務上、債務免除益を生じさせることになり、課税所得を結果として増額させることになるため、税務上の取り扱いも含めて検討する必要があります。上場会社においても、DESを実施することにより企業再生を目指している例があります。たとえば、株式会社アークでは、平成23年3月に企業再生支援機構の支援およびメインバンクの借入金のDESの実施により経営再建計画を発表しております。
- メインバンクと非メインバンク、どちらを選ぶ?
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上場会社の多くは複数の銀行と取引があると思いますが、借入先としてどこを選ぶかは、これまで解説してきた借入の条件や、DDS、DESに応じてくれるかなど銀行側の姿勢によって判断するのが基本です。ただ、今後の付き合いを考えると、まずはメインバンクに対して貸付けの要請を行うことが妥当であると考えられます。
また、シンジケート・ローン(複数の金融機関が協調して貸付けを行う方法)という選択肢もあります。シンジケート・ローンは単に複数の金融機関から借入れをするのと異なり主幹事銀行が、会社に代わり、同一条件での借入を複数の金融機関から実行することが可能になります。
ただし、シンジケート・ローンの場合、通常の利息に加えて、アレンジメント・フィーやエージェント・フィーが必要となります。アレンジメント・フィーとはシンジケート・ローンの組成に関する事務手続の費用であり、エージェント・フィーとはシンジケート・ローンを継続、維持するための管理費用です。これらの費用は借入時に支払いを求められるケースが通常であることから、総称して「アップフロント(前払い)・フィー」と呼ばれます。アップフロント・フィーは決して安いものではなく、信用リスクが高い会社ほど高いフィーを要求される傾向にあります。ごくまれに借入金の利率にアップフロント・フィーを加味したトータルの利率が利息制限法上の上限利率を超えるケースもあります。アップフロント・フィーが利息制限法上の「みなし利息」に当たるのかどうかはケースバイケースですが、もし「みなし利息」に該当する場合には、「借入金の利率+みなし利息」が利息制限法上の上限利率を超えていれば「違法」ということになります。したがって、アップフロント・フィーがみなし利息に該当するのか否か顧問弁護士に確認し、該当する場合には、違法の事実をアップフロント・フィーの削減交渉に利用すべきでしょう。
なお、アップフロント・フィーについての画一的な会計処理方法はありませんが、提供される業務の性質および役務提供期間から会計処理を決定する必要があります。例えば、当該フィーが「将来の役務提供」の対価ではない場合には、「支出時」の費用として処理されます。
借入先を金融機関ではなく、企業グループ内で余剰資金を持つ会社から調達することも検討の価値大と言えます。その際、貸金業法への抵触の有無について検討しておくことが必須となります。また、CMSの導入もあわせて検討すべきと言えます。CMSとは「キャッシュ・マネジメント・システム」の略です。CMSを企業グループで導入することで、企業グループ内での支払いを単なる残高の付け替えだけで完了させる(振込が不要となり、コスト削減につながる)とともに、余剰資金のある会社から資金不足の会社に対して貸し付けを行うことも容易になります。これにより、企業グループ内での資金の効率的運用が可能になることから、グループ内での取引が多い企業グループを中心に、導入企業が増えています。
- コベナンツを課された場合や抵触した場合に開示が必要な場合も
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借入れによる資金調達を行った場合、借入れの状況はもちろんのこと、差し出している担保やコベナンツの内容まで様々な情報開示が必要になります。なぜなら、資金調達は会社の財政状態に大きな影響を与えることになり、投資家にとって、会社が今後の事業活動や経営成績によってどのような追加的なリスクを負うことになるかを予測するうえで重要な情報となるからです。具体的には以下のとおりです。
(1)借入れの状況の開示
有価証券報告書の「経理の状況」における附属明細表(連結財務諸表作成会社は連結附属明細表)として、借入金等明細表を作成する必要があります。具体的な様式は次のとおりです。
【借入金等明細表】
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区分 |
当期首残高 |
当期末残高 |
平均利率(%) |
返済期限 |
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短期借入金 |
XXX |
XXX |
X.X% |
XX年X月 |
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長期借入金 |
XXX |
XXX |
X.X% |
XX年X月 |
また、会社法の事業報告においては、会社の資金調達方法(コミットメント・ライン等の利用状況や資金調達手段(借入れか社債発行か等)を開示することを含む)等の資金調達の状況や主要な銀行毎の借入額を開示することになります。
開示例
資金調達等についての状況
当期の資金調達につきましては、当社は親会社が運営するキャッシュ・マネジメント・システムに参画しました。なお、当期末の社債及び借入金の残高合計は、XXX百万円で、前期末に比べXX百万円減少しました。
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(2)貸借対照表
貸借対照表では、期末日から1年以内に返済期日の到来する借入金は「短期借入金」として「流動負債」の区分に、また返済期日が1年超の借入金は「長期借入金」として「固定負債」の区分に表示されます。なお、長期借入金のうち「1年以内に返済される部分」は「流動負債」の区分に表示される点には留意が必要です。また、短期借入金がロール(借換え)を繰り返すことで実質的に長期借入金となっているケースがありますが、そのような場合でも、銀行側に「ロールしない」という選択権がある以上は、短期借入金に表示することになります。
(3)キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書においては、借入金の増減内容が「財務活動によるキャッシュ・フロー」の項目に表示されます。
具体的には、長期借入金の借入額が「プラスのキャッシュ・フロー」として、返済額が「マイナスのキャッシュ・フロー」として表示されることになります。借入金の返済というと、債務の負担から解放されることから「プラス」のイメージがありますが、少なくともキャッシュ・フロー計算書においては、借入金の返済によりキャッシュが減少してしまうことから、マイナスとして表示されることになるわけです。
なお、短期借入金については増減が頻繁に起こることから、通常は借入額と返済額を相殺した額がキャッシュ・フロー計算書に表示されることになります。
(4) 担保に供している資産の開示
借入れの際に担保(物的担保)を提供した場合には、貸借対照表の注記において、「担保に提供した資産」と「担保に係る債務」を開示する必要があります。それに備えて、担保に供している資産およびその債務に関して、対応関係をリスト化するとともに、資産の簿価と債務の残額を漏れなく集計できる体制を構築しておく必要があります。具体的な開示例は以下のとおりです。
担保に供している資産
建物 XXX百万円
土地 XXX百万円
計 XXX百万円
担保に係る債務 XXX百万円
短期借入金(一年内返済予定の長期借入金を含む)XXX百万円
長期借入金 XXX百万円
計 XXX百万円
(5)借入金の時価情報の開示
金融取引を巡る環境が変化する中で、金融商品の時価情報に対するニーズが拡大していることに伴い、会社が有する金融資産や金融負債については、決算日の時価を開示することが要求されます。この点、借入金は金融負債の一種ですので、例えば、固定金利での借入金の場合には、決算日時点の金利に基づいて借入金の時価を測定する必要があります。
(6)デリバティブ取引の開示
変動金利を固定化するため(あるいは、金利の先安感がある場合は固定金利を変動化するため)に、スワップ契約を行った場合、デリバティブ取引について、そのデリバティブの評価基準および評価方法の開示を検討する必要があります。また、金利スワップをヘッジ手段としてヘッジ会計を適用している場合には、ヘッジ会計の方法、ヘッジ手段とヘッジ対象、ヘッジ方針、ヘッジの有効性評価の方法等を会計方針に記載する必要がありますので、仮に会社が金利スワップについて特例処理を採用している場合には、ヘッジ会計の方法として特例処理を採用している旨を注記する必要があります。
(7)関連当事者取引に関する注記
オーナー色の強い上場会社などでは、社長をはじめとする取締役が自己所有の不動産等を自社の借入金の担保に提供しているケースがしばしば見受けられます。このような取締役による担保提供は「関連当事者取引」に該当するため、関連当事者取引に関する注記が必要になります(関連当事者の定義および具体的な注記内容については「会社と関係が深い者との取引があった」の「関連当事者取引注記が必要になる取引とは?」を参照してください)。
(8) コベナンツ(財務制限条項)の開示
上述のとおり、借入れの際には金融機関からコベナンツを課されることがあります。有価証券報告書等の提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をした場合(既に締結している契約や既に発行している社債に新たに財務上の特約が付される場合も含む)であって、その元本又は発行額の総額が連結純資産額の10%以上の場合には、契約の概要(契約の相手方の属性、元本総額及び担保の内容等)や財務上の特約の内容を記載した臨時報告書の提出が必要となります。臨時報告書は「契約の締結時」だけでなく、「財務上の特約に変更があった場合」や「財務上の特約に定める事由が発生した場合」にも提出が必要になります。「財務上の特約に変更があった場合」は当該変更内容を、財務上の特約に抵触した場合には抵触事由等を臨時報告書に記載することになります。
また、コベナンツに抵触する可能性が高く、通期の業績予測にも大きな影響を与えると予想される場合には、たとえ会計期間の途中であっても、その旨の適時開示を行う必要があります。そうなれば、株価へのネガティブな影響は避けられないでしょう。
このような事態を回避するため、役員としては、上述したとおりそもそも維持が困難なコベナンツを締結しないような管理体制や、コベナンツに抵触していないか、あるいは今後の抵触可能性について継続的にモニタリングする体制を構築・運用しておくことが必要になります。
以下、コベナンツに抵触する「前」と抵触した「後」の実際の適時開示および有価証券報告書の開示例を紹介します。
開示例-株式会社昭栄
(抵触前開示)-適時開示(平成23年11月29日)
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通期業績予想の修正に伴い、当社が複数の金融機関と締結しておりますシンジケート・ローン契約(平成23年11月29日現在借入残高31,150百万円)の財務制限条項のうち、平成23年12月末日の純資産(除くその他有価証券評価差額金)の見込み金額(連結ベース213億円・前年同期比66%)が純資産維持条項(抜粋…各年度の決算期及び第2四半期の末日における連結の貸借対照表における純資産の部の金額から、その他有価証券評価差額金を控除した金額を前年同期比75%以上かつ288億円以上に維持すること)に抵触するおそれがありますが、参加金融機関様へのご説明を別途予定しており、当該条項を適用しない旨の協議をお願いする方針です。
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(抵触時開示)-適時開示(平成24年1月16日)
当社は、平成23年11月29日付「不動産投資有価証券評価損、固定資産の減損損失、投資有価証券評価損の計上並びに通期業績予想の修正に関するお知らせ」(以下、「平成23年11月29日付お知らせ」といいます。)にて、当社が複数の金融機関と締結しておりますシンジケート・ローン契約(平成23年12月31日現在借入残高31,150 百万円)について、財務制限条項のうち、純資産維持条項(抜粋…各年度の決算期及び第2四半期の末日における連結の貸借対照表における純資産の部の金額から、その他有価証券評価差額金を控除した金額を前年同期比75%以上かつ288億円以上に維持すること)に抵触するおそれがあることを公表しておりましたが、平成23年12月31日の基準日で抵触することが確実となりましたのでお知らせいたします。
尚、シンジケート・ローン契約の参加金融機関に対しては、平成23年12月20日付「ヒューリック株式会社と昭栄株式会社の統合基本契約書締結に関するお知らせ」にて公表しております経営統合計画が進捗している限りにおいては、平成 23 年 12 月期決算(以下、「平成23年12月期決算」といいます。)の確定値が、平成23年11月29日付お知らせにおいて公表した修正後の連結業績予想数値を下回らず、平成23年12月期決算確定日までの期間において、平成23年12月期決算に重大な影響を及ぼす後発事象が発生していないことを条件として、期限の利益喪失に関わる条項を適用することなく、当該シンジケート・ローン契約を継続していただくようお願いしております。
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有価証券報告書(平成23年12月期)
※7 財務制限条項
当社が複数の金融機関と締結しておりますシンジケート・ローン(借入残高31,150,000千円)について、財務制限条項のうち、純資産維持条項に平成23年12月31日の基準日で抵触しておりますが、シンジケート・ローン契約参加金融機関からは、ヒューリック株式会社との経営統合計画が進捗している限りにおいては、期限の利益喪失に関わる条項を適用しない旨の書面による承諾を得ております。
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(9)その他
コベナンツに抵触した場合、金融機関側は期限の利益の喪失等を主張できる(期限前返済を求めることができる)ことになり、場合によっては資金繰りの急激な悪化も予想されます。また、コベナンツに抵触しなくても、単純に資金繰りが悪化することもあるでしょう。よって、そのようなコベナンツが存在するかどうかは投資家としては気になるところです。そこで、2025年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書より、有価証券報告書等の提出会社が、財務上の特約の付されたローン契約の締結又は社債の発行をしている場合であって、その残高が前期の連結純資産額の10%以上(判定にあたっては同種の契約・社債はその負債の額を合算して判定します)である場合には、有価証券報告書の【重要な契約等】の欄で当該契約又は社債の概要及び財務上の特約の内容を開示することが必要になりました。
コベナンツに抵触した場合には、さらに有価証券報告書の【事業の状況】の【事業等のリスク】(いわゆるリスク情報)および【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する分析】にその旨を記載するとともに、場合によっては継続企業の前提の注記を行うことも検討しなければなりません。
- ファイナンスについての役員教育が不可欠
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以上見てきたように、ファイナンスは極めて専門性が高い分野であることから、つい財務担当取締役にすべてを任せがちです。しかし、コンプライアンスの確保の観点からは特定の取締役に任せっきりという事態は避けなければなりません。取締役会を通じて他の取締役の業務執行を監督するという、取締役の本来の職務を果たすためには、取締役それぞれがファイナンスに関する正確な知識を持ち、様々なファイナンス手法のそれぞれのリスクを理解した上で、財務担当取締役の提案に対して適切なジャッジメントをできるようになっておくべきです。そのためには、取締役や監査役を対象にしたファイナンスについての社内勉強会を定期的に開催したり、外部セミナーの受講を義務付けたりといった役員教育が欠かせません。