2014/08/31 2014年8月度チェックテスト第2問解答画面(正解)

正解です。
 会社法の改正により「監査等委員会設置会社」制度が創設されました(施行は平成27年4月または5月)。これは、取締役会の中に設置された監査等委員会が、取締役の業務執行の妥当性の監査を行うとともに、株主総会において、業務執行者を含む取締役の人事(指名および報酬)に関する“意見陳述権”を有するという仕組みです。監査等委員会は取締役3人以上で構成されます。また、監査等委員会に属する取締役の過半数は社外取締役でなければなりません。なお、監査等委員会設置会社には監査役という機関は置かれません。
 問題文は、監査等委員会が「監査役」3人以上で構成されるとしている点で誤りです。

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2014/08/05 会社法施行前に「監査等委員会設置会社」へ移行で投資家にアピールも(会員限定)

2014/08/31 2014年8月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
 厚生労働省労働基準局長が平成13年12月12日に都道府県労働局長宛に発出した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」では、長期間の過重業務が原因で脳・心臓疾患を発症したと判断する際の目安として、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合」といった基準(過労死ライン)が示されています。人事労務担当の取締役としては、上司や人事部などが従業員の時間外労働を正確に把握できる体制を整備・運用するとともに、人員の補充や業務の合理化を進めることで長時間の残業とならないような勤務体制を構築していく必要があります。
 問題文は、過労死ラインを「月150時間」としている点で誤りです。

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2014/08/04 経営陣の2つのこだわりが招いた過重労働の負のスパイラル(会員限定)

2014/08/31 2014年8月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
 厚生労働省労働基準局長が平成13年12月12日に都道府県労働局長宛に発出した「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」では、長期間の過重業務が原因で脳・心臓疾患を発症したと判断する際の目安として、「発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合」といった基準(過労死ライン)が示されています。人事労務担当の取締役としては、上司や人事部などが従業員の時間外労働を正確に把握できる体制を整備・運用するとともに、人員の補充や業務の合理化を進めることで長時間の残業とならないような勤務体制を構築していく必要があります。
 問題文は、過労死ラインを「月150時間」としている点で誤りです。

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2014/08/04 経営陣の2つのこだわりが招いた過重労働の負のスパイラル(会員限定)

2014/08/31 2014年8月度チェックテスト

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【問題1】

厚生労働省が定める残業時間の“過労死ライン”は月150時間である。


正しい
間違い
【問題2】

会社法改正により創設された「監査等委員会設置会社」は、3人以上の監査役により構成される委員会が取締役の業務執行の妥当性の監査を行うという機関設計になっている。


正しい
間違い
【問題3】

改正会社法の「施行前」に、あらかじめ「監査等委員会設置会社」を設置する旨定款を変更し、変更後の定款の始期を同法の施行日としても差し支えない。


正しい
間違い
【問題4】

株主の「外国人比率」が高い上場会社ほど、買収防衛策の導入議案への賛成率は低くなる傾向にある。


正しい
間違い
【問題5】

営業部門の担当者が同業他社とカルテルを結んでいることが社内の調査で発覚した場合、その同業他社に先んじて1番目に公正取引委員会へ“自首”をすることで課徴金は全額免除されるものの、刑事告発を受ける可能性をゼロにすることはできない。


正しい
間違い
【問題6】

特別取締役の設置に際しては、社外取締役の存在が前提条件となる以上、必ず社外取締役を特別取締役に任命しなければならない。


正しい
間違い
【問題7】

繰延税金資産の積み増しは、税引後の当期純利益にマイナスの影響を与える(利益を減らす)。


正しい
間違い
【問題8】

ダイバーシティとは女性の活躍を推進することである。


正しい
間違い
【問題9】

イスラム法の教義である「シャリア」では、利息を取ることが禁止されているため、イスラム圏の投資家から債券により資金調達することは不可能である。


正しい
間違い
【問題10】

企業が消費財を購入したり消費者の立場でサービスを利用したりする行為は、消費者契約法の適用対象になり、同法で保護されることになる。


正しい
間違い

2014/08/30 【ガバナンスのあり方】監査法人を変更したい

 

上場廃止でも監査を受け続けるケースも

上場会社であれば、必ず監査法人の会計監査()を受けることになります。監査法人の数は200を超えており(こちらを参照)、規模の大小や国際的なネットワークの有無等様々です。そのため、会社をとりまく経営環境や事業領域、営業領域の変化に応じて、より大規模で、かつ、国際的なネットワークを活用できる監査法人に変更することを検討する会社もあります。また、監査報酬の交渉がどうしても折り合わない場合や、監査法人が公認会計士法に基づき金融庁より処分を受けた場合など、会社側に事業領域等の変化が特段なくても監査法人を変更する場合もあることでしょう。さらに、監査法人による再三の指摘事項に対して会社側が改善の取り組みを行わないことから、監査法人側が粉飾リスクの高さに躊躇して契約更新をしない場合もあることでしょう。このように、監査法人の変更理由は様々と言えます。

監査法人 : 公認会計士法に基づき、5名以上の公認会計士により共同で設立された法人

 なお、以下は「監査法人」による監査を受けるケースに限定して解説します。「個人の公認会計士」による監査を受けるケースについては「監査法人を変更する際の留意事項」で後述します。

監査法人の変更の解説に入る前に、会計監査とは何かについて押さえておきましょう。上場会社が受ける会計監査には、会社法により作成が求められる(連結)計算書類およびその附属明細書に対する「会社法上の会計監査」と、金融商品取引法により作成が求められる有価証券報告書・四半期報告書の財務諸表(および連結財務諸表)に対する「金融商品取引法上の会計監査」があります(ちなみに、証券取引所により提出が求められる「決算短信」は会計監査の対象ではありません)。それぞれどのような場合にこれらの会計監査を受けることになるかを、以下整理しておきます。

【会社法上の会計監査】
会社法上の会計監査は、「大会社」すなわち資本金5億円以上または負債200億円以上の会社に対して義務付けられているものです。

上場会社の中には会社法上の「大会社」に該当しないところもあります(すなわち、資本金が5億円未満で、負債も200億円未満)。このような会社が「会社法上の会計監査」を受けるかどうかは、少なくとも“会社法上は”任意ということになります。ただし、上場会社の場合は、証券取引所の規則により、会計監査人を選任することが義務付けられています(東証の有価証券上場規程437条1項3号)。そのため、上場会社であるうちは、金融商品取引法上の会計監査とともに、会社法上の会計監査も受けなければなりません。もちろん、上場会社でなくても、会計監査人を任意に選任することは認められています。上場準備会社や上場会社の子会社が、ガバナンスを高めるためにあえて会計監査人を選任するようなケースがよく見受けられます。

【金融商品取引法上の会計監査】
新規に上場する場合や1億円以上の増資を公募する場合には、財務(支)局に「有価証券届出書」を届け出ることが必要となります。そして、「有価証券届出書」には直前期とその前の期の2期分の(連結)財務諸表を掲げるとともに、その(連結)財務諸表は監査法人による会計監査を受ける必要があります。「有価証券届出書」を提出した会社は、提出した期以降、継続的に「有価証券報告書」の提出が必要になりますが、有価証券報告書でも(連結)財務諸表を掲げる必要があり、それについて監査法人の会計監査を受け、監査証明を添付することが求められます。

上場会社であるにもかかわらず監査法人による会計監査を受けていない状況になれば、有価証券報告書に監査証明書を添付することができないため、有価証券報告書を提出することができません。その結果、法定提出期間の経過後、証券取引所の定める一定期間内に有価証券報告書を提出できない場合、「有価証券報告書の提出遅延」という形で、上場廃止基準に抵触することになってしまいます(東京証券取引所 有価証券上場規程601条10号)。実際、宝飾品の販売を手がけているクロニクルは、2013年9月期第2四半期報告書の提出遅延により、平成25年7月に上場廃止となっています。

このように、上場会社であり続ける限りは、会社法上の会計監査と金融商品取引法上の会計監査の両方を受けることが義務付けられています(なお、証券取引所の規則により、金融商品取引法上の監査と会社法上の監査は同一の監査法人が担うことが求められています)。このような会計監査は当然ながらコストがかかるものですし、受ける側の手間も大変です。時には、「監査を受けること自体やめたい」と思うこともあるかも知れません。場合によっては、近年増加傾向にあるMBO等による「上場廃止」が経営陣の頭をよぎることもあるでしょう。

MBO : マネジメント・バイアウト:経営陣による買収

では、上場を廃止すれば監査法人による会計監査を受けなくて済むようになるのでしょうか。

【会社法上の会計監査】
会社法上の会計監査は、上述のとおり「大会社」(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)に義務付けられているものです。仮に上場廃止となっても、引き続き資本金が5億円以上または負債が200億円以上であれば、会計監査人の監査を受け続ける必要があります。会社法上の要件を満たすにもかかわらず会計監査人を選任しなかった場合は、取締役等に対して100万円以下の過料が科されるといった罰則があります。また、同時に会社としての社会的な信頼を失うことでしょう。

【金融商品取引法上の会計監査】
有価証券報告書の(連結)財務諸表に係る会計監査については、「株主の数」次第ということになります。具体的には、直近5事業年度のいずれかの末日における株主数が「1,000人以上」である場合、上場廃止後も会計監査を受ける必要があります。逆に言うと、直近5事業年度のいずれにおいても株主数が1,000人未満となった事業年度からは、(たとえその後、再び株主が1,000人以上になったとしても)金商法上の会計監査は不要となります。

このように、上場廃止になったからといって、必ずしも監査法人による会計監査を受けなくて良いことになるわけではありません。上場会社や上場会社クラスの規模を有する会社にとって、監査法人との関係は切っても切れないものと言えます。

もっとも、会計監査を受け続けるにしても、冒頭でも述べたように、会社をとりまく経営環境や事業領域、営業領域の変化に応じて、監査法人の変更を検討しなければならない場面も出てくるでしょう。

では、監査法人を変更する場合、どのような点に留意し、またどのような手続を経る必要があるのでしょうか。以下で解説します。

監査法人を変更する際の留意事項

監査法人を変更する場合、監査法人が提供する会計監査の品質という要素を無視して、単に前の監査法人よりも今度の監査法人の監査報酬の方が低廉であるとか、今度の監査法人のパートナーと役員との間に個人的なつながりがある、といった理由だけで判断していないでしょうか。

こうした安易な理由だけで監査法人を変更してしまうと、会計監査を受ける会社にとってリスクを抱えることになりかねません。もし新たな監査法人が、会計監査の品質に問題があり、職業的専門家としての正当な注意を払わないまま監査を実施してしまうとどうなるでしょう。通常の会計監査であれば発見できたであろう、決算の数値に重大な影響を及ぼすような会計上のミスを見逃したまま、会社が有価証券報告書を提出してしまうリスクが発生します。後日、そのような会計上の重大なミスが発見された場合、会社は過去に遡って有価証券報告書の決算数値を訂正しなければならない可能性があります。株式市場からは会社の内部管理体制に疑念の目が向けられ、長期的な株価に悪影響を及ぼす恐れもあります。

一方、間違った決算数値に基づいて投資を行った株主は、この訂正により株価が下落し損失を被る可能性があります。

この場合、会社や株主は監査法人に対し「会計監査が十分ではなかった」として責任を追及することも不可能ではありません。しかし、そもそも財務諸表を作成する責任は会社にありますので、株主等から責任を追及されるとすれば、一次的には会社ひいては取締役ということになります。

こうしたトラブルを回避するためには、監査法人を選任するにあたり、監査報酬、監査時間、能力、担当者との相性、審査体制、規模、評判、親会社との兼合いなど様々な事項を総合的に考慮する必要があります。以下、各事項について詳しく説明していきましょう。・・・

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監査法人変更に必要な手続

以上のような検討の結果、監査法人(以下、本項では会社法上の用語に合わせ「会計監査人」(監査法人or個人の公認会計士)とします)を変更することになった場合、いくつかの手続きが必要になります。

まず最初にやらなければならないのが、・・・

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監査法人の変更には株主も高い関心

監査法人を変更した上場会社は、監査法人を解任したことや辞任に伴う選任をしたことなどを開示することが法令や証券取引所の規則で求められています。仮に監査法人の変更を開示する必要がなければ、会社は投資家に気づかれることなく、自社の都合のいいように監査法人を変えることが可能になってしまいます。監査法人の監査意見に頼らざるを得ない投資家としては、会社がどの監査法人の会計監査を受けているのかに高い関心がある(監査法人の変更についての株主の懸念については後述の「監査法人変更で会社のレピュテーションを傷つけないために」を参照してください)ことから、監査法人の変更は株主や投資家に開示されるべき重要情報と位置付けられています。

具体的な開示書類およびその内容は以下のとおりです。・・・

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監査法人変更で会社のレピュテーションを傷つけないために

監査法人の変更を検討した会社は少なくないものと思われますが、実際に変更に至るケースはそれほど多くはありません。これは、監査法人を変更すると、・・・

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2014/08/30 チェックリスト:監査法人を変更したい(会員限定)

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■チェックリスト:監査法人を変更したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
監査法人を変更する際、各監査法人に対し相見積もりをとっているか、また、コンペを開催しているか。
監査法人を変更する際、選任候補の能力が適切かどうかを検討しているか。
監査法人を変更する際、見積監査時間数が適切かどうかを検討しているか。
監査法人を変更する際、選任候補の規模(例えば、海外のメンバーファームがあるか否か)について検討しているか。
監査法人を変更する際、選任候補が上場監査事務所登録制度に登録されているかを確認しているか。
監査法人を変更する際、親会社と同一の監査法人に変更すべきか否かについて検討しているか。
会計監査人を変更する際、会社法に基づいた適切な選任手続を経ているか。 株主総会の決議や監査役会の同意が必要
監査法人を変更する際、有価証券報告書・四半期報告書、臨時報告書、事業報告、証券取引所の適時開示による開示を行っているか。
監査法人変更時のレピュテーションリスクへの対応はなされているか。 後任の監査法人が市場からどのように評価されているのかについて、事前に調査しておく。

ケーススタディ役員実務「監査法人を変更したい(会員限定)」はこちら

2014/08/30 【ガバナンスのあり方】監査法人を変更したい(会員限定)

 

上場廃止でも監査を受け続けるケースも

上場会社であれば、必ず監査法人の会計監査()を受けることになります。監査法人の数は200を超えており(こちらを参照)、規模の大小や国際的なネットワークの有無等様々です。そのため、会社をとりまく経営環境や事業領域、営業領域の変化に応じて、より大規模で、かつ、国際的なネットワークを活用できる監査法人に変更することを検討する会社もあります。また、監査報酬の交渉がどうしても折り合わない場合や、監査法人が公認会計士法に基づき金融庁より処分を受けた場合など、会社側に事業領域等の変化が特段なくても監査法人を変更する場合もあることでしょう。さらに、監査法人による再三の指摘事項に対して会社側が改善の取り組みを行わないことから、監査法人側が粉飾リスクの高さに躊躇して契約更新をしない場合もあることでしょう。このように、監査法人の変更理由は様々と言えます。

監査法人 : 公認会計士法に基づき、5名以上の公認会計士により共同で設立された法人

 なお、以下は「監査法人」による監査を受けるケースに限定して解説します。「個人の公認会計士」による監査を受けるケースについては「監査法人を変更する際の留意事項」で後述します。

監査法人の変更の解説に入る前に、会計監査とは何かについて押さえておきましょう。上場会社が受ける会計監査には、会社法により作成が求められる(連結)計算書類およびその附属明細書に対する「会社法上の会計監査」と、金融商品取引法により作成が求められる有価証券報告書・四半期報告書の財務諸表(および連結財務諸表)に対する「金融商品取引法上の会計監査」があります(ちなみに、証券取引所により提出が求められる「決算短信」は会計監査の対象ではありません)。それぞれどのような場合にこれらの会計監査を受けることになるかを、以下整理しておきます。

【会社法上の会計監査】
会社法上の会計監査は、「大会社」すなわち資本金5億円以上または負債200億円以上の会社に対して義務付けられているものです。

上場会社の中には会社法上の「大会社」に該当しないところもあります(すなわち、資本金が5億円未満で、負債も200億円未満)。このような会社が「会社法上の会計監査」を受けるかどうかは、少なくとも“会社法上は”任意ということになります。ただし、上場会社の場合は、証券取引所の規則により、会計監査人を選任することが義務付けられています(東証の有価証券上場規程437条1項3号)。そのため、上場会社であるうちは、金融商品取引法上の会計監査とともに、会社法上の会計監査も受けなければなりません。もちろん、上場会社でなくても、会計監査人を任意に選任することは認められています。上場準備会社や上場会社の子会社が、ガバナンスを高めるためにあえて会計監査人を選任するようなケースがよく見受けられます。

【金融商品取引法上の会計監査】
新規に上場する場合や1億円以上の増資を公募する場合には、財務(支)局に「有価証券届出書」を届け出ることが必要となります。そして、「有価証券届出書」には直前期とその前の期の2期分の(連結)財務諸表を掲げるとともに、その(連結)財務諸表は監査法人による会計監査を受ける必要があります。「有価証券届出書」を提出した会社は、提出した期以降、継続的に「有価証券報告書」の提出が必要になりますが、有価証券報告書でも(連結)財務諸表を掲げる必要があり、それについて監査法人の会計監査を受け、監査証明を添付することが求められます。

上場会社であるにもかかわらず監査法人による会計監査を受けていない状況になれば、有価証券報告書に監査証明書を添付することができないため、有価証券報告書を提出することができません。その結果、法定提出期間の経過後、証券取引所の定める一定期間内に有価証券報告書を提出できない場合、「有価証券報告書の提出遅延」という形で、上場廃止基準に抵触することになってしまいます(東京証券取引所 有価証券上場規程601条10号)。実際、宝飾品の販売を手がけているクロニクルは、2013年9月期第2四半期報告書の提出遅延により、平成25年7月に上場廃止となっています。

このように、上場会社であり続ける限りは、会社法上の会計監査と金融商品取引法上の会計監査の両方を受けることが義務付けられています(なお、証券取引所の規則により、金融商品取引法上の監査と会社法上の監査は同一の監査法人が担うことが求められています)。このような会計監査は当然ながらコストがかかるものですし、受ける側の手間も大変です。時には、「監査を受けること自体やめたい」と思うこともあるかも知れません。場合によっては、近年増加傾向にあるMBO等による「上場廃止」が経営陣の頭をよぎることもあるでしょう。

MBO : マネジメント・バイアウト:経営陣による買収

では、上場を廃止すれば監査法人による会計監査を受けなくて済むようになるのでしょうか。

【会社法上の会計監査】
会社法上の会計監査は、上述のとおり「大会社」(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)に義務付けられているものです。仮に上場廃止となっても、引き続き資本金が5億円以上または負債が200億円以上であれば、会計監査人の監査を受け続ける必要があります。会社法上の要件を満たすにもかかわらず会計監査人を選任しなかった場合は、取締役等に対して100万円以下の過料が科されるといった罰則があります。また、同時に会社としての社会的な信頼を失うことでしょう。

【金融商品取引法上の会計監査】
有価証券報告書の(連結)財務諸表に係る会計監査については、「株主の数」次第ということになります。具体的には、直近5事業年度のいずれかの末日における株主数が「1,000人以上」である場合、上場廃止後も会計監査を受ける必要があります。逆に言うと、直近5事業年度のいずれにおいても株主数が1,000人未満となった事業年度からは、(たとえその後、再び株主が1,000人以上になったとしても)金商法上の会計監査は不要となります。

このように、上場廃止になったからといって、必ずしも監査法人による会計監査を受けなくて良いことになるわけではありません。上場会社や上場会社クラスの規模を有する会社にとって、監査法人との関係は切っても切れないものと言えます。

もっとも、会計監査を受け続けるにしても、冒頭でも述べたように、会社をとりまく経営環境や事業領域、営業領域の変化に応じて、監査法人の変更を検討しなければならない場面も出てくるでしょう。

では、監査法人を変更する場合、どのような点に留意し、またどのような手続を経る必要があるのでしょうか。以下で解説します。

監査法人を変更する際の留意事項

監査法人を変更する場合、監査法人が提供する会計監査の品質という要素を無視して、単に前の監査法人よりも今度の監査法人の監査報酬の方が低廉であるとか、今度の監査法人のパートナーと役員との間に個人的なつながりがある、といった理由だけで判断していないでしょうか。

こうした安易な理由だけで監査法人を変更してしまうと、会計監査を受ける会社にとってリスクを抱えることになりかねません。もし新たな監査法人が、会計監査の品質に問題があり、職業的専門家としての正当な注意を払わないまま監査を実施してしまうとどうなるでしょう。通常の会計監査であれば発見できたであろう、決算の数値に重大な影響を及ぼすような会計上のミスを見逃したまま、会社が有価証券報告書を提出してしまうリスクが発生します。後日、そのような会計上の重大なミスが発見された場合、会社は過去に遡って有価証券報告書の決算数値を訂正しなければならない可能性があります。株式市場からは会社の内部管理体制に疑念の目が向けられ、長期的な株価に悪影響を及ぼす恐れもあります。

一方、間違った決算数値に基づいて投資を行った株主は、この訂正により株価が下落し損失を被る可能性があります。

この場合、会社や株主は監査法人に対し「会計監査が十分ではなかった」として責任を追及することも不可能ではありません。しかし、そもそも財務諸表を作成する責任は会社にありますので、株主等から責任を追及されるとすれば、一次的には会社ひいては取締役ということになります。

こうしたトラブルを回避するためには、監査法人を選任するにあたり、監査報酬、監査時間、能力、担当者との相性、審査体制、規模、評判、親会社との兼合いなど様々な事項を総合的に考慮する必要があります。以下、各事項について詳しく説明していきましょう。

【監査報酬】
一般的な商品やサービスと比較すると、監査報酬の相場は分かりづらい面があります。適正な価格で契約するためには、複数の監査法人から相見積もりをとり、コンペを開催するのも一つの方法です。コンペには、単に監査報酬の相場を把握するだけでなく、各候補先のやる気を推し量ることができるというメリットもあります。同じコンペに参加している監査法人の中でも、会社と監査契約を結ぶことを望む度合い(真剣さ)に濃淡があれば、それが結果として監査報酬見積額に反映されてしまうことは、何も監査契約のコンペに限られる話ではありません。なお、上場準備会社では、取引銀行からの紹介や、ショート・レビューを受けた経緯から、コンペを実施することなく、監査法人を決めるケースも多いようです。

ショート・レビュー : 監査法人が上場準備会社と金融商品取引法に準ずる監査契約を締結する前に実施する短期調査。企業実態、会計処理の妥当性、内部統制の整備状況等を把握する目的で実施される。

もし候補となる監査法人が少なく、監査報酬見積額にバラつきがあるため相場がつかめないという場合には、他社の有価証券報告書や、日本公認会計士協会の「監査実施状況調査」「上場企業監査人・監査報酬実態調査報告書」を調べれば、同業他社や同規模の会社の監査報酬を知ることができます。ただし、各社の実態は様々ですから、同業・同規模といっても単純に比較できるものではないことには留意が必要でしょう。

【監査時間】
監査時間も重要な比較ポイントとなります。通常の監査法人であれば、期末実証手続四半期レビュー手続・内部統制の整備状況評価・内部統制の運用状況評価等の活動区分別にどれほどの時間がどの時期に発生するかを詳細かつ合理的に見積もっているはずです。そこで、監査契約の候補先である各監査法人から監査時間に関する見積もりを入手し、比較してみてください。監査時間は多ければいいというわけではなく、逆に、少なければいいというものでもありません。企業規模別の平均的な監査時間や監査報酬等は、日本公認会計士協会の「監査実施状況調査」で確認することができます。

期末実証手続 : 財務数値の適正性を、現物実査・帳簿との突合・確認・分析手続等を通じて検証する監査手続
四半期レビュー手続 : 四半期財務諸表に対する監査人の「レビュー」のこと。四半期財務諸表の作成・開示には迅速性が重視されることから、監査人側でも年度決算の会計監査で行われる実査(帳簿上の数量や金額が実際の在り高と整合しているかを確認する作業)や棚卸立会等を省略することになる。そのため、監査人の意見は年度決算の会計監査と同水準の保証をするものではなく、手続きも「監査」ではなく「レビュー」と呼ばれる。

一般的に監査報酬は監査時間と比例関係にあります。そのため、監査報酬は監査時間に比例して高くなりますが、あまりに監査時間が少なく報酬も低い場合、会社の規模、業態、リスク等などを考えれば当然に必要となってくる監査時間を十分に確保していない、つまり、十分な監査が実施されない可能性もあります。

逆に、「監査実施状況調査」で把握した平均的な監査時間数と比べて監査時間が極端に多い場合には、その理由を問い合わせてみましょう。監査は「リスクアプローチ」の考えに基づき、重要な虚偽表示リスクのある項目に対して重点的に行われますので、監査時間が極端に多いということは、重点項目以外の項目に過度な監査時間を見積もっている可能性があります。

リスクアプローチ : すべての項目に対して網羅的に監査を行うのではなく、経営環境・会社の特性等に応じ、財務諸表上の重要な虚偽表示リスクのある項目に対して重点的に監査を行うという考え方

なお、監査時間の見積もりに関する資料の提出が著しく遅延したり、そもそも提出を拒否したりするような監査法人は、監査時間を詳細に見積もっていない可能性があるので注意が必要です。

【能力、相性】
監査契約を結んだ後には、監査法人に会計上の質問をする機会は多々あることでしょう。その際に監査法人から誤った会計処理を指導されたり、質問に対するレスポンスが遅すぎたりするようでは困りものです。候補先の能力を見極めるために、自社であらかじめ答えを用意した質問を選任候補の監査法人に投げて反応を見てみるのも一案です。

また、監査法人内でインチャージ(現場での責任者)となる予定の公認会計士が特定できているのであれば、その者と面談しておくべきです。インチャージ予定者が会社の属する業界に詳しいのか、会社側の責任者・担当者と相性が合うのかといったあたりも、監査の現場においては重要な要素となってくるからです。

【品質管理体制】
監査法人において適切な品質管理体制が整備・運用されているかどうかも重要な判断要素です。

監査は一定の水準にあるマニュアルに則り組織的に行われているか、監査の計画や手続き・意見に対する審査体制は十分か、研修制度は整っているか、監査報告書に署名する業務執行社員(いわゆる監査責任者)のローテーション制度(公認会計士法では、業務執行社員は7会計期間(上場会社等の筆頭業務執行社員は5会計期間)を超えないこと、交替後2会計期間(同、5会計期間)は再度関与できないことが定められています)の運用状況等の品質管理体制について、監査契約前に会計監査人の候補となる監査法人から説明を受けておく必要があります。なお、業務執行社員のローテーション制度については、同じ業務執行社員ができるだけ長い期間担当した方が、会社のことを深く理解し、より効率的な監査ができるのではないかという考え方もあります。しかし、長期間、同じ業務執行社員が監査を担当していると会社との関係が密接になりすぎて、つい監査に手心を加えてしまう、またはそのように外部から邪推され会社に対する会計監査人の独立性が疑われ、監査結果への信頼性が損なわれてしまうといった事態を避けるため、強制的なローテーション制度が導入されました。

【規模】
一定以上の規模の監査法人はメンバーファームを世界各地に有しており、クライアントはそのメリットを享受することができます。例えば会社が国外に子会社や工場を持っている場合、これに対応するのが日本国内にいる公認会計士のみでは、言語の問題や、現地に頻繁に赴くことができないことなどが原因で、効率的な監査は期待できません。一方、監査法人のメンバーファームが現地にあれば、こういった不都合はありません。

また、小規模な監査法人と監査契約を締結する場合には、その監査法人が日本公認会計士協会の上場会社監査事務所登録制度に登録されているかどうかを確認しておく必要があります。上場会社監査事務所登録制度とは、上場会社を監査している監査事務所に対して、協会の品質管理委員会に設置された「上場会社監査事務所部会」に登録を求め、監査事務所の概要のほか、品質管理のシステムの方針や手続の概要等を開示させるとともに、品質管理に不備がある場合には制裁的措置を課すことなどにより、企業の目に見える形で登録事務所の品質管理の強化を図ろうという制度です。東京証券取引所の有価証券上場規程では、上場会社が遵守すべき事項の一つとして上場会社監査事務所の監査を受けることが定められています。

なお、上場会社においては、自社グループの規模や取引の複雑性等から、最近では後任の会計監査人として個人ではなく監査法人を選任するケースも多いようです。

【親会社の監査法人との兼合い】
親会社が存在する会社では、親会社の会計監査人との兼合いについても検討すべきです。親会社と子会社の会計監査人が同じ監査法人であれば、各社の担当会計士同士が密接にコミュニケーションをとることが可能になり、企業グループ全体として効率的な監査を実施することができます。

逆に親子会社で監査法人が異なる場合は、監査法人間でのコミュニケーションの確保が難しいうえに、監査作業の進め方が若干異なるという問題もあります。とりわけ企業買収に積極的な会社では、親子会社で監査法人が異なるケースが頻発することになります。その状態に手を付けなければ、監査が非効率となり、企業グループ全体としての監査報酬が増加してしまうことにもなりかねません。そのような場合は、「子会社の監査法人は親会社の監査法人に合わせる」というのが第一の選択肢となります。

このほか、監査法人を選択する際には“評判”も重要な判断要素となります。この点については、後述の「監査人変更で会社のレピュテーションを傷つけないために」を参照してください。

監査法人変更に必要な手続

以上のような検討の結果、監査法人(以下、本項では会社法上の用語に合わせ「会計監査人」(監査法人or個人の公認会計士)とします)を変更することになった場合、いくつかの手続きが必要になります。

まず最初にやらなければならないのが、既存の会計監査人の「解任(または再任しないこと。以下同)」です。

会社法上、会計監査人は、株主総会の決議でいつでも解任することができることになっています(会社法339条1項)。ただし、多くの上場会社が該当する監査役会設置会社で、会計監査人の解任を会社提案の議案とする場合、事前(招集通知を株主に送付する前)に監査役会の同意を得る必要があります(会社法344条1項2号3号、344条3項)。会社法上は「同意書」という書面を残すことまでは要求されていませんが、同意のプロセスを“見える化”し、記録として残すために、同意書や監査役会の議事録は作成するべきです。

監査役会設置会社 : 上場会社は委員会設置会社か監査役会設置会社か、どちらかを選択することになる(東証の有価証券上場規程437条1項2号)。

会社提案 : 取締役が会計監査人の選任に関する議案を株主総会に提出すること。

さらに、会計監査人が次の(1)(2)(3)の“いずれか”に該当する場合には、監査役会あるいは監査役「全員の同意」さえあれば、株主総会の決議を経ることなく会計監査人を解任(この場合は「再任しないこと」ではなく、解任となります)することができます(会社法340条1項・2項・4項)。

(1)職務上の義務に違反し、または職務を怠ったとき
(2)会計監査人としてふさわしくない非行があったとき
(3)心身の故障のため、職務の執行に支障があり、またはこれに堪えないとき

ただし、株主総会の“決議”は不要となるものの、監査役は「会計監査人を解任した旨」および「その理由」を解任後最初に招集される株主総会で“報告”する必要があります。

上場会社が会計監査人を解任したら、あわせて新たな会計監査人を選任する必要があります。さもなければ、上述したように、上場廃止になってしまいます。また、会社法では罰則(取締役等に対する100万円以下の過料など)も定められています。

会計監査人の選任に際しても、やはり株主総会の決議が必要となります(会社法329条1項)。また、監査役会設置会社において会計監査人の選任を会社提案の議案とする場合、事前(招集通知を株主に送付する前)に監査役会の同意を得る必要があるという点も、会計監査人を解任する場合と同様です(会社法344条1項1号、344条3項)。なお、会計監査人の報酬についても、監査役会の同意を得る必要があります(会社法399条1項および2項)。

このように、株主総会を開催して会計監査人を選任するには時間と手間がかかることから、とりあえず「一時会計監査人」を選任するという方法もあります。一時会計監査人とは、会計監査人が何らかの理由で欠けた場合で、次の会計監査人が遅滞なく選任されないときに、会計監査の空白期間を避けるため、一時的に会計監査人の職務を実施するために監査役会により選任される仮の会計監査人のことをいいます。監査役会で一時会計監査人を選任できるので、わざわざ株主総会を開催する必要はありません。一時会計監査人を選任した場合は、2週間以内に本店の所在地において登記が必要になります。なお、一時会計監査人の任期は、次の会計監査人が株主総会で選任されるまでとされています。

一時会計監査人ではなく通常の会計監査人の場合、その任期は「選任後1年以内に終了する事業年度」のうち“最終のもの”に関する定時株主総会の終結のときまで(会社法338条1項)と定められています。通常、会計監査人の変更は定時株主総会開催時に行われますので、例えば3月決算の会社であれば、6月下旬の定時株主総会をもって1年の任期を満了したことになります。もっとも、会計監査人は、定時株主総会において別段の決議(現任の会計監査人を解任する旨の決議)がなされない限り、当該定時株主総会において「再任」されたものとみなされます(会社法338条2項)。要するに、「会計監査人を解任させたい」との声が出なければ、会計監査人の方から降りない限り、会計監査人であり続けるための特段の手続きは不要()というわけです。

 ただし、監査契約や再任の登記は必要となります。
監査法人の変更には株主も高い関心

監査法人を変更した上場会社は、監査法人を解任したことや辞任に伴う選任をしたことなどを開示することが法令や証券取引所の規則で求められています。仮に監査法人の変更を開示する必要がなければ、会社は投資家に気づかれることなく、自社の都合のいいように監査法人を変えることが可能になってしまいます。監査法人の監査意見に頼らざるを得ない投資家としては、会社がどの監査法人の会計監査を受けているのかに高い関心がある(監査法人の変更についての株主の懸念については後述の「監査法人変更で会社のレピュテーションを傷つけないために」を参照してください)ことから、監査法人の変更は株主や投資家に開示されるべき重要情報と位置付けられています。

具体的な開示書類およびその内容は以下のとおりです。

○臨時報告書
臨時報告書は監査法人の変更後遅滞なく、財務(支)局に提出する必要があります。臨時報告書には、監査法人の変更の理由等を記載することになります。

なお、その臨時報告書において、解任された監査法人が意見を述べることが認められています。監査法人の解任時には、会社は会社側の視点でリリースを出すのが通常ですが、これに対し監査法人にも一定の反論の機会を与えようというわけです。また、解任された監査法人に意見陳述の場を設けることで、監査法人の視点に基づく解任の事情が公となれば、会社がオピニオン・ショッピングをしづらくなり、結果として監査法人の独立性が失われることを避けるという狙いもあります。

オピニオン・ショッピング : グレーな会計処理を巡り会社と監査法人が対立した際に、会社側に都合のいい監査意見を表明してくれる別の監査法人を探すこと。意見(オピニオン)を買う(ショッピング)行為であり、クライアント獲得のためにこれを引き受けた監査法人は、グレーな会計処理を認めざるを得なくなるため、監査法人の独立性が害されるという問題がある。

○有価証券報告書、四半期報告書
有価証券報告書および四半期報告書の【経理の状況】の冒頭部分において、監査法人の変更があった旨の開示を行うことになります。

また、その変更について臨時報告書に記載した事項(上記参照)についても開示を行います。

○事業報告
事業報告では、解任または辞任した会計監査人の名称や解任の理由、会計監査人が述べた辞任の理由や解任に対する意見などを開示する必要があります。

○適時開示
取締役会で会計監査人の変更を決定した場合、証券取引所の規則によりその旨を適時開示することが求められます。

監査法人変更で会社のレピュテーションを傷つけないために

監査法人の変更を検討した会社は少なくないものと思われますが、実際に変更に至るケースはそれほど多くはありません。これは、監査法人を変更すると、後任の監査法人が会社のビジネスや会計処理等を理解するのにある程度の時間が必要となるうえ、会社側もそれを一から説明し直すといった手間(監査法人の変更コスト)を負担せざるをえなくなるため、会社が監査法人の変更に及び腰になることが原因です。また、上述のとおり、定時株主総会において「別段の決議」がなされなかった場合、会計監査人が再任されたものとみなされるという会社法上の規定も「会計監査人の地位の現状維持」に一役買っていることも事実です。

上場会社が監査法人を変更する場合、上述のとおりその内容を開示する必要がありますが、監査法人は頻繁に変えるものではないだけに、変更の開示やニュースはどうしても目に付きます。そして、投資家は、「会社と監査法人の間で会計処理について何か見解の相違があったのではないか」といった憶測を抱きがちです。よりストレートに言えば、「会社がグレーな会計処理を監査法人に認めさせようとし、監査法人がこれを拒否する、といったやりとりがあったのではないか」という疑念です。

会社として後ろめたいことはまったくないにもかかわらず、「あの会社はグレーな会計処理をして、監査法人が辞めてしまったらしい」といった噂が立つことで、会社は信用を落とし、株価が下落するかも知れません。いわゆるレピュテーションリスクと言われるものです。特に後任の監査法人が“問題企業”を多数クライアントに抱えるようなところである場合、投資家の中での「良からぬ噂」が「確信」に近いものとなりかねません。

では、こうした事態を避けるために、経理担当取締役としては監査法人の変更にどのように対応すべきでしょうか。

上述のとおり、上場会社が監査法人を変更する場合、会社は臨時報告書等で「変更に至った理由や経緯」を記載する必要があります。会社によってその記載内容は様々であり、例えば「任期満了に伴うため」といった簡潔な記載で済ます会社もありますが、投資家にあらぬ誤解を与えないためには、変更の理由や経緯について詳細な記載をすることをお勧めします。

また、経理担当取締役としては、後任の監査法人の監査に対する姿勢や市場の評価、公認会計士・監査審査会の検査結果の状況、他の監査クライアントの噂などを、知り合いの公認会計士や金融機関等から情報収集しておくとともに、インターネット上の噂(情報の質は玉石混交ですが、真実が散見されるのも事実です)を集めておく必要があります。また、「監査法人を変更する際の留意事項」でも述べたとおり、日本公認会計士協会の上場会社の監査事務所登録情報も確認しておきましょう。

監査役としても、監査報酬の見積書を比べるだけではなく、経理担当取締役とは別に独自に情報を収集して、監査法人の選任に同意すべきかどうかを判断する必要があります。

また、レピュテーションリスクの観点からは、監査法人の変更は、監査法人側によほどの落ち度がない限り定時株主総会のタイミングで行うのが良いでしょう。上述のとおり、監査法人の変更はそれほど頻繁に行われませんし、臨時株主総会でそれを行うことは極めて稀です。仮に臨時株主総会で監査法人を変えるとなれば、「監査法人の任期(1年)を待たずして変更しなければならない状況とは一体何なのか」といった投資家の疑心暗鬼を呼ぶ可能性があります。そこで、例えば監査法人が粉飾決算に関与していた等でない限り、定時株主総会のタイミングで変更するのが無難と言えます。

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2014/08/29 フランチャイズやインターネットモールの運営に影響 「消費者概念」の拡大は実現するか?

 消費者契約法の改正に向け、これまでの同法の運用状況に関する検討が佳境を迎えている。俎上に載せられた論点のうち企業にとって気になるポイントが「消費者概念」の拡大だ。

 通常、私人(一個人)としての取引には民法が適用される一方、事業者との情報や交渉力の格差から特に消費者保護の必要が高い消費者契約については消費者契約法が適用されることになる。具体的には、契約の当事者がそれぞれ消費者契約法2条の「消費者」「事業者」に該当するかどうかで消費者契約法の適用の有無が判断される。消費者概念の拡大とは、「消費者」として認められる範囲を拡大し、消費者契約法が適用される範囲を拡大すべきというものである。

 消費者契約法2条1項は、「『消費者』とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいう」と定義している。

 つまり、消費者契約法の適用対象になるかどうかは、契約者が「事業目的」を持っているかどうかが鍵を握っていることになる。そして、事業目的かどうかの判断は、取引社会に参入し、“反復継続して”行為を行う目的を有しているかどうかが考慮される。

 仮に消費者概念が拡張されることになった場合に影響が受けそうなのが、フランチャイズシステムを構築している企業だ。例えば、・・・

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2014/08/29 フランチャイズやインターネットモールの運営に影響 「消費者概念」の拡大は実現するか?(会員限定)

 消費者契約法の改正に向け、これまでの同法の運用状況に関する検討が佳境を迎えている。俎上に載せられた論点のうち企業にとって気になるポイントが「消費者概念」の拡大だ。

 通常、私人(一個人)としての取引には民法が適用される一方、事業者との情報や交渉力の格差から特に消費者保護の必要が高い消費者契約については消費者契約法が適用されることになる。具体的には、契約の当事者がそれぞれ消費者契約法2条の「消費者」「事業者」に該当するかどうかで消費者契約法の適用の有無が判断される。消費者概念の拡大とは、「消費者」として認められる範囲を拡大し、消費者契約法が適用される範囲を拡大すべきというものである。

 消費者契約法2条1項は、「『消費者』とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)をいう」と定義している。

 つまり、消費者契約法の適用対象になるかどうかは、契約者が「事業目的」を持っているかどうかが鍵を握っていることになる。そして、事業目的かどうかの判断は、取引社会に参入し、“反復継続して”行為を行う目的を有しているかどうかが考慮される。

 仮に消費者概念が拡張されることになった場合に影響が受けそうなのが、フランチャイズシステムを構築している企業だ。例えば、フランチャイズに加盟しようと準備を進めていた者が開業に至らなかった場合、当該者から「それまでの行為は『消費者』の立場に基づくものである」との主張がなされる可能性がある。そうすると、情報・交渉力の格差を前提とする消費者契約法の「不利益事実の不告知」、「断定的判断の提供」といった規定が適用されて契約は取消しとなり、企業はこれまでかかった費用の返還等を迫られる恐れもある。

 また、インターネットモールの運営企業にも影響が及ぶことが考えられる。インターネットモールでは、通常、モール運営者と出店者が「出店契約」を締結することになる(出店者と消費者は「売買契約」を締結する)。出店契約を締結する際には、出店者が「事業者」であることを前提に出店審査を行うのが通常だ。

 しかし、最近では、個人が出店者となるケースも増えており、仮に消費者概念が拡大された場合には、出店者が「消費者としての保護」を主張する事態も生じかねない。通常、出店契約には「出店者と消費者との間の契約(=売買契約)から生じた損害の免責」「システムトラブル時のモール停止」といった条項が盛り込まれているが、「消費者保護」を理由にこれらの条項が取消しや無効になるとすれば、運営企業としては想定外の事態だろう。

 このように見ていくと、消費者契約法を改正して、「消費者概念」を拡大するのは困難だろう。消費者概念が拡大されれば、都合の悪いときだけ消費者として保護を受けようという者が出て来る恐れもある。取引の安定性という観点からも、法律上、事業者か否かの軸を動かすことは難しいと言える。ただし、消費者契約法の適用対象外だとしても、「私人(一個人)」として民法の適用を受け、信義則に基づき損害賠償請求などが行われる可能性はある。たとえ「消費者」ではないとしても、個人を相手に取引する場合には、注意したほうがよいだろう。

2014/08/28 (新用語・難解用語)スクーク

 オイルマネーで潤うイスラム圏だが、イスラム圏の投資家から資金を集めたり、イスラム圏への投資を行う際の障害となりかねないのが、イスラム法の教義である「シャリア」だ。シャリアではそもそも利息を取ったり、社債を発行する行為が禁止されているほか、豚肉、アルコール、武器、賭博などに関係する投資も許されない。

 このシャリアに抵触しない債券として考案されたものがスクーク(sukuk)である。ちなみに、シャリアに従っていることを「シャリア適格」という。要するに、シャリア適格の債券がスクークということになる。スクークでは、利息の代わりに、実体のある事業や資産からの収益が配当されることになる。

 スクークに対するグローバル単位での需要は、2014年に5,360億米ドルに達するという(Thomson Reuters Zawya調べ)。一方、供給可能なスクークは3,060億米ドルにとどまっており、需要が供給を大きく上回る。これが2018年になると、需要が9,370億米ドル、供給が7,490億ドルと、需給ともに成長し、両者のギャップは徐々に小さくなると見込まれている。

 ちなみに、スクークの流通市場で圧倒的な地位を占めてきたのがマレーシアだが(2010年頃はマレーシアのシェアが80%)、流通市場の成長とともにマレーシアのシェアは縮小し、2013年第3四半期実績では66%程度となっている。マレーシアに続く市場はUAE(アラブ首長国連邦)とサウジアラビアで、市場関係者が将来性に注目している国としては、世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアのほか、パキスタン、トルコがある。日本でも2011年5月の税制改正によって、税制面で社債と同等の扱いを受ける「日本版スクーク」が発行できるようになり、・・・

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