2014/08/28 (新用語・難解用語)スクーク(会員限定)

 オイルマネーで潤うイスラム圏だが、イスラム圏の投資家から資金を集めたり、イスラム圏への投資を行う際の障害となりかねないのが、イスラム法の教義である「シャリア」だ。シャリアではそもそも利息を取ったり、社債を発行する行為が禁止されているほか、豚肉、アルコール、武器、賭博などに関係する投資も許されない。

 このシャリアに抵触しない債券として考案されたものがスクーク(sukuk)である。ちなみに、シャリアに従っていることを「シャリア適格」という。要するに、シャリア適格の債券がスクークということになる。スクークでは、利息の代わりに、実体のある事業や資産からの収益が配当されることになる。

 スクークに対するグローバル単位での需要は、2014年に5,360億米ドルに達するという(Thomson Reuters Zawya調べ)。一方、供給可能なスクークは3,060億米ドルにとどまっており、需要が供給を大きく上回る。これが2018年になると、需要が9,370億米ドル、供給が7,490億ドルと、需給ともに成長し、両者のギャップは徐々に小さくなると見込まれている。

 ちなみに、スクークの流通市場で圧倒的な地位を占めてきたのがマレーシアだが(2010年頃はマレーシアのシェアが80%)、流通市場の成長とともにマレーシアのシェアは縮小し、2013年第3四半期実績では66%程度となっている。マレーシアに続く市場はUAE(アラブ首長国連邦)とサウジアラビアで、市場関係者が将来性に注目している国としては、世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアのほか、パキスタン、トルコがある。日本でも2011年5月の税制改正によって、税制面で社債と同等の扱いを受ける「日本版スクーク」が発行できるようになり、日本企業はイスラム圏の投資家から「円建て」で資金を調達することが可能になったが、いまだ活用実績はない。一方、日本国外では、野村ホールディングスが2010年にマレーシアで米ドル建スクークを発行(発行額1億米ドル)、2014年6月には、三菱東京UFJ銀行のマレーシア現地法人が、多通貨での起債が可能なスクークプログラムを開始している(発行枠5億米ドル)。

 このように高い成長性を示すスクークだが、全世界における債券発行残高は2014年第1四半期終了時点で100兆米ドルであり、発行額(3,060億米ドル)だけをみればスクークの存在感は微弱だ。

 ただ近年は、「スクーク」の枠組みを通じて発行されるソブリン債*も急速に拡大している。2014年6月には、イギリスが非イスラム圏の国家としては初めてイスラム国債を発行したほか、香港およびパキスタン政府も年内にスクーク・ソブリンの発行を予定している。アフリカではセネガルが7月に先陣を切って募集を開始、南アフリカは早ければ9月上旬から発行する(発行枠:最低5億米ドル)。ケニア、チュニジアも近いうちに発行する見込み。さらに、モロッコ、エジプトも発行に必要な法整備の準備を進めているほか、フィリピン、ルクセンブルクもイスラム国債の発行に意欲を見せている。このようにアジアやアフリカの新興国を中心とする世界各国でイスラム国債が発行され、新興国の経済成長により市場が拡大するとともに、イギリスや香港の参入によりグローバルな資金調達手法としてイスラム国債、ひいてはイスラム金融の地位が確立し、国際標準化が進めば、日本企業にとっても、イスラム金融を活用した資金調達は有力な選択肢となり得るだろう。特にイスラム圏での成長を目指す日本企業にとっては、単に資金調達手段の多様化を図るのみならず、潜在的なメリットは大きいと言えそうだ。

* 国債をはじめ、政府や政府関係機関が発行したり保証する債券

2014/08/27 税制改正きっかけに子会社や投資先の持株比率引上げも

 政府は現在、安倍政権が“国際公約”としている法人税率の引下げを実現するため、その財源を検討している。「財源」と言っても別に新たな税金を課すわけではなく、あくまで法人税等の課税ベースを拡大することで捻出しようというのが政府の方針(地方税である外形標準課税の強化など、一部で法人税以外の税目も取りざたされている)。特定の業界や企業を対象にした特別償却制度の縮小・廃止や減価償却制度の見直し(減価償却費の縮小)などと並び、その有力候補の1つになっているのが、受取配当に対する課税の強化だ。

 現行法人税法では、配当が「法人税を課された後に支払われるもの」であることを踏まえ、二重課税を防止する観点から、受取配当への課税を制限している。具体的には、受取配当の全部あるいは一部を法人税の課税所得計算上の「益金」に算入しないという仕組みとなっている。

 益金不算入割合は、株式の持分比率に応じて変わってくる。持分比率が100%に近く、配当を支払う会社と受取る会社の一体性が強いほど「配当=グループ内での資金移動」という性格が強いため、益金不算入割合も大きくなる。具体的には、下表の通りとなっている。

  持分比率 益金不算入割合
(1) 100% 受取配当額の「全額」
(2) 25%以上100%未満 受取配当額-配当を受ける株式を取得するために要した負債利子額
(3) 25%未満 (受取配当額-配当を受ける株式を取得するために要した負債利子額)×50%

 では、これがどのように見直されるのだろうか。現時点で当フォーラムが把握している情報では、・・・

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2014/08/27 税制改正きっかけに子会社や投資先の持株比率引上げも(会員限定)

 政府は現在、安倍政権が“国際公約”としている法人税率の引下げを実現するため、その財源を検討している。「財源」と言っても別に新たな税金を課すわけではなく、あくまで法人税等の課税ベースを拡大することで捻出しようというのが政府の方針(地方税である外形標準課税の強化など、一部で法人税以外の税目も取りざたされている)。特定の業界や企業を対象にした特別償却制度の縮小・廃止や減価償却制度の見直し(減価償却費の縮小)などと並び、その有力候補の1つになっているのが、受取配当に対する課税の強化だ。

 現行法人税法では、配当が「法人税を課された後に支払われるもの」であることを踏まえ、二重課税を防止する観点から、受取配当への課税を制限している。具体的には、受取配当の全部あるいは一部を法人税の課税所得計算上の「益金」に算入しないという仕組みとなっている。

 益金不算入割合は、株式の持分比率に応じて変わってくる。持分比率が100%に近く、配当を支払う会社と受取る会社の一体性が強いほど「配当=グループ内での資金移動」という性格が強いため、益金不算入割合も大きくなる。具体的には、下表の通りとなっている。

  持分比率 益金不算入割合
(1) 100% 受取配当額の「全額」
(2) 25%以上100%未満 受取配当額-配当を受ける株式を取得するために要した負債利子額
(3) 25%未満 (受取配当額-配当を受ける株式を取得するために要した負債利子額)×50%

 では、これがどのように見直されるのだろうか。現時点で当フォーラムが把握している情報では、「持分比率」の区分は現在の3つから下表の4つになる(「?」としているのは、現時点ではまだ確定していないため)。

  持分比率 益金不算入割合
(1) 100% 受取配当額の「全額」?
(2) 50 %(or33%)以上100%未満 受取配当額-配当を受ける株式を取得するために要した負債利子額?
(3) X%以上50%(or33%)未満 (受取配当額-配当を受ける株式を取得するために要した負債利子額)×50%?
(4) X%未満 0%(全額益金算入)?

 上の表における「X%」とは、少数株主権に関する割合を指している。少数株主権は、10% 以上で解散請求権、3% 以上で株主総会招集請求権、役員の解任請求権、1% 以上で議題提案権など様々であり、「X%」がどの数字になるかは現時点では決まっていない。また、(2)(3)のち「50%」は株主総会の普通決議を単独で成立させることできる割合(会社法上は50%超)、「33%」は株主総会の特別決議を単独で阻止できる割合(会社法上は3分の1超)を念頭においたものだが、これがどちらの割合になるのかは今後の議論次第ということになる。
いずれにせよ、受取配当に対する課税強化により、今後は「支配関係を目的とする場合」と「運用を目的とする場合」への課税がより明確に分けられることになる。上の表のとおり、持株比率50%未満の場合には、受取配当に対する税負担が増加する可能性が高い。特に少数株主権に関する割合である「X%」未満のケースでは全額益金不算入となる恐れがある。

 こうした中、税負担の増加を回避するために、持株比率を引き上げる企業が出て来ることも予想される。上場企業の役員は、税制改正に関する最新情報を入手しつつ、自社が保有する株式の持株比率を総点検しておくべきだろう。

 本件については動きがあり次第、続報したい。

2014/08/26 欧米金融機関が外国人経営者の招聘に積極的な理由

 今年6月の株主総会で、武田薬品工業の社長に外国人、しかも純粋な外部人材であるクリストフ・ウェバー氏が就任し、大きな話題を呼んだ。これまでは、傘下の海外子会社から抜擢するケースや(2014年4月2日のニュース「外国人社長の招聘事例に見る武田薬品工業のトップ人事のインパクト」参照)、自動車メーカーなどで見られるように、外国資本の支援を受けるのにあわせて経営トップが派遣されるケースが目に付く。武田薬品工業のケースがこれだけ話題になったこと自体、このトップ人事が日本企業としてはいかにレアであるかを物語っている。

 一方、外国人を経営トップとして招聘することにもっとも積極的なのが、欧米の金融機関だ。欧米の金融機関では、むしろ外国人経営陣を起用することが明確な“トレンド”になっていると言っていいだろう。例えば、ドイツ銀行の共同CEOの1人はインド出身、イギリスでは中央銀行であるイングランド銀行(BOE=Bank of England)のカーニー総裁がカナダ出身であり、ロイズ銀行のCEOがポルトガル出身、RBSのグループのCEOがニュージーランド出身、プルデンシャルのCEOがコートジボワール出身、イタリア最大手保険会社であるジェネラリのCIO(Chief Investment Officer=最高投資責任者)はシンガポール出身といった具合だ。このほか、JPモルガン、UBS、クレディスイスなども外国人経営陣を起用している(ただし、フランスとスペインについては、日本同様、社内の自国出身者を登用する傾向がある)。

 その背景にあるのが、・・・

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2014/08/26 欧米金融機関が外国人経営者の招聘に積極的な理由(会員限定)

 今年6月の株主総会で、武田薬品工業の社長に外国人、しかも純粋な外部人材であるクリストフ・ウェバー氏が就任し、大きな話題を呼んだ。これまでは、傘下の海外子会社から抜擢するケースや(2014年4月2日のニュース「外国人社長の招聘事例に見る武田薬品工業のトップ人事のインパクト」参照)、自動車メーカーなどで見られるように、外国資本の支援を受けるのにあわせて経営トップが派遣されるケースが目に付く。武田薬品工業のケースがこれだけ話題になったこと自体、このトップ人事が日本企業としてはいかにレアであるかを物語っている。

 一方、外国人を経営トップとして招聘することにもっとも積極的なのが、欧米の金融機関だ。欧米の金融機関では、むしろ外国人経営陣を起用することが明確な“トレンド”になっていると言っていいだろう。例えば、ドイツ銀行の共同CEOの1人はインド出身、イギリスでは中央銀行であるイングランド銀行(BOE=Bank of England)のカーニー総裁がカナダ出身であり、ロイズ銀行のCEOがポルトガル出身、RBSのグループのCEOがニュージーランド出身、プルデンシャルのCEOがコートジボワール出身、イタリア最大手保険会社であるジェネラリのCIO(Chief Investment Officer=最高投資責任者)はシンガポール出身といった具合だ。このほか、JPモルガン、UBS、クレディスイスなども外国人経営陣を起用している(ただし、フランスとスペインについては、日本同様、社内の自国出身者を登用する傾向がある)。

 その背景にあるのが、サブプライム問題に端を発する世界金融危機への反省だ。欧米では、こうした金融危機は経営陣の“画一的思考”によって増幅されたとの分析がコンセンサスになっており、これが経営陣の多様性(ダイバーシティ)を図る流れへとつながっている。ちなみに、BOEがカナダ人、RBSがニュージーランド人をトップに招いた理由の1つには、これらの国が金融危機を上手く乗り切ったため、そのノウハウを活用しようという狙いもあるようだ。

 日本企業における外国人経営者への報酬の高さを見ても、報酬コストという点では、国内人材を起用した方が割安なのは確かだが、それは欧米の金融機関も同様。報酬コストの増加を受け入れてでも欧米の金融機関が外国人を経営陣に起用する理由の1つとして、しばしば日本の銀行による海外展開の失敗事例が引合いに出されているという事実を、日本企業の役員は(耳の痛い話ではあるが)認識しておくべきだろう。

 そもそも人材がグローバル化している欧米の金融業界のように日本企業が外国人経営者を採用するのは容易なことではないが、企業の持続的な成長のため、外国人の招聘を含む大胆なトップ人事が求められる時代は遠からず訪れることになろう。

2014/08/25 最低賃金引上げが及ぼす上場企業への影響

 このところ「最低賃金*引上げ」に関する報道が目に付くが、これは、先月7月29日に厚生労働省の中央最低賃金審議会から都道府県別の最低賃金の目安額(全国平均で780円。昨年より16円増)が示されたため。この目安額を踏まえて、各地方審議会は独自の最低賃金額を決定することになる。8月15日までに結審した25地域では、677円(鳥取、大分、熊本、宮崎)~888円(東京)に改定される。

* 「最低賃金法」を根拠として、労働者の生活の安定や労働力の質的向上に資することなどを目的に、国によって保障されるが賃金の最低額のこと。最低賃金は、労働者を1名でも雇用していればすべての企業に適用される。最低賃金は、47都道府県ごとに時間額で設定されている。現時点で一番高いのは東京の869円、一番低いのは沖縄など9地域の664円となっている。最低賃金の対象は従業員に対して毎月支払われる基本的な賃金であり、時間外・休日割増賃金や賞与・一時金(ボーナス)などは除外される。

 上場企業の役員の中には、最低賃金について「地方の中小企業や小規模事業者の話」と考えている向きが少なくないが、これは誤解なので注意したい。

 実はこの最低賃金額は、・・・

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2014/08/25 最低賃金引上げが及ぼす上場企業への影響(会員限定)

 このところ「最低賃金*引上げ」に関する報道が目に付くが、これは、先月7月29日に厚生労働省の中央最低賃金審議会から都道府県別の最低賃金の目安額(全国平均で780円。昨年より16円増)が示されたため。この目安額を踏まえて、各地方審議会は独自の最低賃金額を決定することになる。8月15日までに結審した25地域では、677円(鳥取、大分、熊本、宮崎)~888円(東京)に改定される。

* 「最低賃金法」を根拠として、労働者の生活の安定や労働力の質的向上に資することなどを目的に、国によって保障されるが賃金の最低額のこと。最低賃金は、労働者を1名でも雇用していればすべての企業に適用される。最低賃金は、47都道府県ごとに時間額で設定されている。現時点で一番高いのは東京の869円、一番低いのは沖縄など9地域の664円となっている。最低賃金の対象は従業員に対して毎月支払われる基本的な賃金であり、時間外・休日割増賃金や賞与・一時金(ボーナス)などは除外される。

 上場企業の役員の中には、最低賃金について「地方の中小企業や小規模事業者の話」と考えている向きが少なくないが、これは誤解なので注意したい。

 実はこの最低賃金額は、ここ数年で急激に引き上げられている。全国平均でみると、2006年までの引上げ額は一桁台だったが、2007年以降は10円以上の引上げが相次ぎ、その結果、最低賃金額は2007年の「687円」から2013年には「764円」へと大幅にアップしている。大幅な最低賃金引上げが“常態化”していると言っていいだろう。その大きな要因は、2008年の最低賃金法の改正によって、生活保護費との乖離解消(逆転現象の解消)が図られることになったことに加え、2013年6月に政府が閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(いわゆる骨太の方針)と「日本再興戦略」において、最低賃金の引上げに努める旨が明記されたことなどが挙げられる。

 では、このような最低賃金の大幅引上げは、企業経営にどのような影響を与えることになるのだろうか。

 多くの地域、とりわけ生活保護費と最低賃金の乖離解消を急激に進めた地域(北海道や東京、神奈川、大阪など)では、労働者に実際に支払われている賃金額と法定の最低賃金額との差がなくなり、最低賃金額近辺の賃金で働く労働者が急激に増加している。このことは、再び最低賃金が引き上げられれば、企業の業績に関係なく、最低賃金額近辺の賃金で働いている従業員の賃上げを行なう必要があるだけではなく、最低賃金額近辺に集中しているパートやアルバイトの募集賃金額もアップせざるを得ないということを意味している。つまり、最低賃金引上げが、そのまま企業の賃金引上げに直結するということだ。これは、東京や神奈川、大阪などの大都市圏でパートやアルバイトを多数雇っている上場企業にとっても無縁な話ではない。上場企業の経営者が最低賃金を「対岸の火事」として軽視することは危険である。

 今年の最低賃金額の改定審議は8月中にほとんどの地域で終了し、10月1日から随時、新しい最低賃金額が各地方で適用されることになる(発効日は地域によって異なる)。最低賃金額を下回る賃金額を定めた労働契約はその部分が無効となり、その地域の最低賃金額が賃金額とされる。違反した企業には「50万円以下の罰金」が科せられるという“強制力”もある。自社の所在する地域の最低賃金額を把握しておくことは、役員にとって必須事項であると心得るべきであろう。

2014/08/22 会計基準見直しで、「重要な繰越欠損金」抱える会社の業績が上振れも

 繰延税金資産の積み増し額が大きければ、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」も増えることになるが(繰延税金資産の詳細な解説は新用語・難解語辞典の「資産負債法」参照)、繰延税金資産は「将来の回収可能性」がなければそもそも計上することはできない。

 現行の税効果会計の実務では、将来の回収可能性を「会社の業績の良し悪し」によって5つに区分しているが(監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」。以下「66号」という)、現在、この分類の見直しが企業会計基準委員会(ASBJ)で進行していることは、2014年4月30日のニュース「繰延税金資産の回収可能性、会社に求められるより高い立証レベル」でお伝えしたとおりだ(ちなみに、66号の管轄は現在の日本公認会計士協会から企業会計基準委員会に移り、その位置付けも「監査の指針」から「会計の指針」に変わる)。

 その議論の中で浮上しているのが、5区分を「機械的」に当てはめるのではなく、会社の「経済実態」を踏まえて繰延税金資産の回収可能性を判断できないか、というものだ。こうした議論の背景には、IFRSや米国会計基準の取扱いがある。

 66号の5区分のうち下の2つを見ると、「重要な繰越欠損金が存在する会社等(規定の番号をとって「4号会社」とも言われる)」は「翌年1年分の課税所得の見積額」しか回収可能性の判断対象とできず、もっとも評価が低い「過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社等(5号会社)」は「繰延税金資産の回収可能性なし」と判断される。要するに、4号会社、5号会社のように過去に業績が低迷した結果、重要な欠損金を抱えるに至った会社については、繰延税金資産をほとんど計上させない規定ぶりになっている。

 一方、IFRSおよび米国会計基準(66号は単体会計基準であるのに対し、IFRSおよび米国会計基準は連結会計基準)には66号の5区分のような細かな規定はなく、会社の経済実態に即して繰延税金資産の回収可能性を判断することを要求している。したがって、たとえ4号会社や5号会社のような会社であっても、将来の課税所得が見込まれる場合には、(1年に限定せずに)将来の課税所得を見積もることができる範囲で繰延税金資産の回収可能性を判断することになる。この結果、5号会社のような会社であっても、繰延税金資産を積み増すことがある。

 また、5区分の見直しを検討している企業会計基準委員会が公表した経団連が国内企業に対して行ったアンケートでも、IFRS/米国基準を採用している会社では、4号、5号会社のような「重要な欠損金を抱えた連結子会社」についても、連結財務諸表の作成にあたっては繰延税金資産の積み増しをしている会社が多いとの結果が出ている。

 この結果から、・・・

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2014/08/22 会計基準見直しで、「重要な繰越欠損金」抱える会社の業績が上振れも(会員限定)

 繰延税金資産の積み増し額が大きければ、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」も増えることになるが(繰延税金資産の詳細な解説は新用語・難解語辞典の「資産負債法」参照)、繰延税金資産は「将来の回収可能性」がなければそもそも計上することはできない。

 現行の税効果会計の実務では、将来の回収可能性を「会社の業績の良し悪し」によって5つに区分しているが(監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」。以下「66号」という)、現在、この分類の見直しが企業会計基準委員会(ASBJ)で進行していることは、2014年4月30日のニュース「繰延税金資産の回収可能性、会社に求められるより高い立証レベル」でお伝えしたとおりだ(ちなみに、66号の管轄は現在の日本公認会計士協会から企業会計基準委員会に移り、その位置付けも「監査の指針」から「会計の指針」に変わる)。

 その議論の中で浮上しているのが、5区分を「機械的」に当てはめるのではなく、会社の「経済実態」を踏まえて繰延税金資産の回収可能性を判断できないか、というものだ。こうした議論の背景には、IFRSや米国会計基準の取扱いがある。

 66号の5区分のうち下の2つを見ると、「重要な繰越欠損金が存在する会社等(規定の番号をとって「4号会社」とも言われる)」は「翌年1年分の課税所得の見積額」しか回収可能性の判断対象とできず、もっとも評価が低い「過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社等(5号会社)」は「繰延税金資産の回収可能性なし」と判断される。要するに、4号会社、5号会社のように過去に業績が低迷した結果、重要な欠損金を抱えるに至った会社については、繰延税金資産をほとんど計上させない規定ぶりになっている。

 一方、IFRSおよび米国会計基準(66号は単体会計基準であるのに対し、IFRSおよび米国会計基準は連結会計基準)には66号の5区分のような細かな規定はなく、会社の経済実態に即して繰延税金資産の回収可能性を判断することを要求している。したがって、たとえ4号会社や5号会社のような会社であっても、将来の課税所得が見込まれる場合には、(1年に限定せずに)将来の課税所得を見積もることができる範囲で繰延税金資産の回収可能性を判断することになる。この結果、5号会社のような会社であっても、繰延税金資産を積み増すことがある。

 また、5区分の見直しを検討している企業会計基準委員会が公表した経団連が国内企業に対して行ったアンケートでも、IFRS/米国基準を採用している会社では、4号、5号会社のような「重要な欠損金を抱えた連結子会社」についても、連結財務諸表の作成にあたっては繰延税金資産の積み増しをしている会社が多いとの結果が出ている。

 この結果から、今後の税効果会計専門委員会の議論では、「重要な繰越欠損金を抱える会社」である4号会社、5号会社の繰延税金資産の回収可能性の取扱いが焦点となることは間違いなさそうだ。66号の改訂内容次第では、4号会社、5号会社でも、従来よりも多くの繰延税金資産を計上できるようになる可能性がある。もしそうなれば、これらの会社の単年度の利益は上振れすることになる。

 企業の業績にも影響を与える66号の改訂がこのような方向で進むのかどうか、今後もASBJでの議論を続報したい。

2014/08/21 (新用語・難解用語)特別取締役

 取締役会であらかじめ選定した少数の取締役(3名以上)のこと。「重要な財産」の購入や売却、多額の借財は「取締役会の決議」を経て行うのが原則だが、特別取締役を設置している会社では、通常の取締役会を経ることなく、特別取締役だけで構成される取締役会(以下、「特別取締役による取締役会」と言います)によりこれらの意思決定を行うことができる。また、会社法や定款により「通常の取締役会」や「株主総会」のみが権限を有する事項(例えば、支店等の重要な組織の設置、変更、廃止など)でない限り、特別取締役による取締役会に意思決定権を持たせることも可能だ(例えば、「新製品を発売するかどうか」など)。

 ただし、特別取締役による取締役会で決議を行うためには、3人以上の特別取締役を選定したうえで、そのうち過半数が出席、さらにそのうちの過半数が賛成することが条件となる。また、監査役は原則として「全員出席」が原則だが、“迅速な意思決定”という特別取締役制度の趣旨からすれば、特別取締役による取締役会に出席する監査役を「常勤監査役」に限定してもよいだろう。

 取締役の多い会社など、取締役会を開催する負担の重い会社にはメリットが大きい特別取締役制度だが、特別取締役を設置できるのは、(1)取締役の数が6名以上、(2)取締役のうち1名以上が社外取締役――という2つの要件を満たす必要がある。

 ここで注目したいのは、・・・

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