EBITDA (Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization 「エビーダ」「イービッダー」「イービットディーエー」などと呼ばれる)とは「現金ベースの利益概念」であり、支払利息、税金、有形固定資産の減価償却費、無形固定資産の償却費を差し引く前の利益を指す。損益計算書の営業利益(支払利息や税金が控除される前の利益)に有形固定資産の減価償却費および無形固定資産の償却費を足すことで算定が可能であるため、フリーキャッシュフロー*よりも簡易的に算定することができる点に特徴がある。
* 現金ベースの利益概念の一つで、営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを控除して算定する。
EBITDAは、売上高、企業価値等と対比させることにより企業評価のツールとして用いられる。また、「買収金額÷EBITDA」により求められるEBITDA倍率は、買収金額を何年で回収できるかを表わす。M&Aの際に、買収価格が「割高」か「割安」を簡易的に判断するために利用される。
サントリーホールディングスは今年(2014年)1月、米ビーム社を160億ドル(約1兆6400億円)で買収(過去3か月間の平均株価に対して24%のプレミアム)で買収することを発表した。一般的には、EBITDA倍率が「10倍台前半」でなければ買収は難しいと言われているが、この買収はEBITDA倍率が約20倍におよぶものであった。そのため、この買収を「割高」と評価する分析も見受けられる。
同社は近年、「グローバル総合酒類食品企業」を標榜して積極的なM&A戦略を展開してきたが、それまででもっとも大きい買収金額が仏オランジーナ・シュウェップスを買収した際の約3000億円(2009年)であることを考えると、同社の佐治社長が「一世一代の大勝負」と言うのもうなずけるところだ。ちなみに、約1兆6400億円という買収金額は、日本企業としては、2006年のJT(日本たばこ産業)による英ガラハーの買収(約2兆2500億円)、2013年のソフトバンクによるスプリント・ネクステルの買収(約1兆8000億円)などに次ぐ規模である。
サントリーホールディングスがこのような巨額かつ高EBITDA倍率の買収に踏み切ったのは、もちろん、ビーム社にそれだけの魅力があったからであろう。「ジムビーム」や「メーカーズマーク」などのバーボンウイスキーで知られるビーム社は、米国における蒸留酒最大手企業である。北米での販売比率が約60%を占めるが、「カナディアンクラブ」などカナディアンウイスキー、「ティーチャーズ」などスコッチウイスキーも手掛けており、幅広い品揃えをベースに、世界最大のウイスキー消費国であるインドなどへのグローバル展開も積極的に進める。
また、世界の蒸留酒業界の状況も、この買収を後押しした可能性がある。同業界では、首位の英ディアジオがジョニーウォーカーを買収(2000年)、2位の仏ペルノ・リカールもシーバスリーガルを買収(2005年)するなど寡占化が進展している。同様に、ビール業界は首位のインベブ(ベルギー)が2008年に3位の米アンハイザー・ブッシュ(バドワイザー)を買収したことで、カールスバーグ(デンマーク)・ハイネケン(オランダ)連合との2強体制が確立している。こうした中、元々は住宅関連用品を手掛ける米複合企業の傘下にあったものの、投資家から相乗効果が見込めないとして事業分離を要求され、2011年に単独上場(ニューヨーク証券取引所)したビーム社は“最後の出物”だったと言える。サントリーが巨額かつ高いEBITDA倍率の買収に踏み切った背景には、グローバル展開を図る上での選択肢が限られていたという事情もありそうだ。