最近、海外競合他社の外国人幹部や異業種大手企業の社長経験者など、外部から経営トップを登用するケースが珍しくなくなってきた。2014年の株主総会でも、外部人材の取締役選任を諮る議案が複数の会社で上程され、報道や論評は「プロ経営者」の時代が来たともてはやしている。このようなケースは今後、日本企業でも増加していくだろう。
外部の人材を経営者として招へいすることは、外部資源を取り込むM&Aに似ている。企業が長期的な成長イメージを描いた際、その実現のため必要なリソースが手元にそろっていなければ、欠如した部分を補わなければならない。企業内部にあるヒト・モノ・カネを活用して手当てできればいいが、それではスピード感に欠けるということも少なくないだろう。事業ポートフォリオやバリューチェーン*の弱点を早急に補うため、「時間を買う」ことのできるM&Aは効果的な手法と言える。
* 購買した原材料に対し、技術開発、生産、販売、人材育成といった一つひとつの企業活動が価値を付加し、これらが一連となって、最終的に顧客に対する価値が生み出されるとする考え方。
「経営人材」というリソースに関しても同様である。企業が従来の戦略を転換して新たな方向にカジを切る場合のほか、過去の成功体験から離れた取組みが求められる場合、経営悪化に陥ったり重大な不祥事が発生し、全社的に危機感を高める必要がある場合などにおいて、必ずしも社内に適切なリーダー候補がいるとは限らない。むしろ、既定路線の内部昇格でリーダーを選んだのでは、企業に変化をもたらすことが期待できないケースも多い。トップ人事も「目的」次第で外部調達を検討すべきである。
もちろん、極端な人選は、社内外のステークホルダーにあつれきをもたらす可能性も否定できない。役員・社員においては意欲や忠誠心の減退、顧客や取引先においては不安や不信感を呼ぶこともある。例えば、外国人経営トップを外部から招へいした際、株主総会で「これは乗っ取りだ」と拒絶反応を示した株主が出てきたり、ライバル会社からのトップ招へいに大口取引先が不快感を示した事例も報告されている。
しかし、「目的」の達成を厳しく追求するなら、「あつれき」というリスクも相応に覚悟しなければならない。リスク・リターンがともに極大化する典型的な事例が、グローバルなエクセレント・カンパニーから外国人経営者を迎え入れるケースだろう。そこまでのリスクを負うべきでない、または負う必要がなければ、例えば外資系企業での経営経験がある日本人を招くことも選択肢となる。また、社内・グループ内であっても、非中核事業や買収会社など“傍流”の人材を抜てきすることも考えられる。
ここで重要なポイントとなるのは、いかにして大胆なトップ人事を実現できるかである。近年における外部人材のトップ抜擢を俯瞰すると、オーナー系の企業が断行したケースが目立つ。優れたオーナー企業・オーナー経営者には、短期的な「あつれき」に腰が引けることなく、長期的な企業価値の向上にまい進することのできる風土・資質が備わっているということだろう。また、実際に選任時あるいは選任後に生じた「あつれき」を抑えるのにも、オーナー経営者が有する求心力・指導力が有効となる。
一方、このようなオーナーシップが期待しにくい非オーナー企業では、短期的なステークホルダーの利害に左右されず、長期的な企業価値に沿ったトップ人選ができる“仕組み”が必要だ。具体的には、社外取締役を中心とする指名委員会*がその役割を果たすことが期待される。指名委員会は、必ずしも委員会設置会社(会社法改正により指名委員会等設置会社に名称変更)でなくても「任意」に設置することができる。大胆なトップ人事を実現するためには、指名委員会と同様の仕組みの導入も一考に値すると言えるだろう。
* 委員会設置会社において、監査委員会、報酬委員会とともに設けられた委員会の1つで、取締役の選任や解任に関する議案の内容を決定する。
