2014/06/27 女性の役員比率開示義務化決定 政策達成のために利用される開示(会員限定)

 政府は今週(2014年6月24日)、「日本再興戦略(2013年6月に出されたものの改訂版)」を閣議決定したが、その中に、企業経営に影響を与えそうな開示関連の政策が3つ盛り込まれている。

 まずは、有価証券報告書における「役員の女性比率」の記載の義務付けだ。企業での女性活躍を後押しすることを目的に、内閣府男女共同参画局の会合などで、記載義務付けの可否について議論が行われてきたことは、2014年3月17日のニュース「『女性の活躍状況』の開示と企業の開示負担」でお伝えしたとおりだが、今回、政府の判断で“義務付け”に踏み切った。

 2つ目も女性関連で、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書において、企業における役員、管理職への女性の登用状況や登用促進に向けた取組みを記載するよう各金融商品取引所に要請する」との一文が盛り込まれている。役員の女性比率とは異なり“義務付け”ではないが、この2つの政策からは、女性登用促進に向けた政府の強い意思が感じられる。

 3つ目が、「上場企業に対し、会計基準の選択に関する基本的な考え方について、投資家に説明するよう東京証券取引所から促すこととする」というものだ。これは、なかなか進まないIFRSの任意適用を促進ことを狙いとしている(2014年6月2日のニュース「3月決算企業、IFRS適用の趨勢は?」参照)。こちらも、開示を義務化するわけではないが、将来的に義務化の方向性の議論に発展する可能性は十分に考えられる。

 このように、今回の日本再興戦略は、政府の政策意図達成のために開示を“利用”しているのも1つの特徴と言える。これに対し、企業側からは早くも開示負担の増加を懸念する声が上がっている。また、開示項目がいたずらに増えることに歯止めをかけるため、「開示のあり方について作成者(企業)と投資家がコスト・ベネフィットを議論する場を作り、開示項目を増やすかどうかは、必ずそこを通す仕組みを作るべき」との意見も出ている。今後、企業の開示項目を決める枠組みの変更につながる可能性もありそうだ。

2014/06/26 (新用語・難解用語)特定適格消費者団体

 昨年(2013年)秋の臨時国会において、米国でいうクラスアクションに相当する集団訴訟を可能にする法律「消費者裁判手続特例法」が成立したが(施行は2013年12月11日の公布日から3年以内)、米国のような濫訴*を防ぐため、同法では個々の消費者による提訴は認めず、政府が認定した消費者団体が「実際に被害を受けた個々の消費者に代わって」損害賠償請求訴訟を提起する仕組みとなっている(2014年3月19日のニュース「集団訴訟の対象とならないためにやるべきこととは?」参照)。この「政府が認定する消費者団体」が特定適格消費者団体である。今後、企業と対峙することになる可能性があるだけに、企業にとっては気になる存在だろう。

* むやみやたらに訴訟を起こすこと。

 消費者裁判手続特例法の附則に「特定適格消費者団体が権限を濫用することがないよう検討を行い、必要な措置をとる」旨規定されているように、特定適格消費者団体は政府の厳格な認定・監督を受けることになる(団体の認定・監督指針は、現在消費者庁で検討中)。このため、特定適格消費者団体になれるのは、2006年の消費者契約法改正により消費者に代わって契約の不当な勧誘や不当条項の差し止めを求めることができることとされた「適格消費者団体」のうち一定の実績を積んだ団体で、かつ、政府の認定を受けたところに限定される。適格消費者団体は現在のところこちらの11団体となっている。

 これまで、適格消費者団体が事業者に対して販売の差し止めを求める場合には、実際にアクションを起こす前に・・・

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2014/06/26 (新用語・難解用語)特定適格消費者団体(会員限定)

 昨年(2013年)秋の臨時国会において、米国でいうクラスアクションに相当する集団訴訟を可能にする法律「消費者裁判手続特例法」が成立したが(施行は2013年12月11日の公布日から3年以内)、米国のような濫訴*を防ぐため、同法では個々の消費者による提訴は認めず、政府が認定した消費者団体が「実際に被害を受けた個々の消費者に代わって」損害賠償請求訴訟を提起する仕組みとなっている(2014年3月19日のニュース「集団訴訟の対象とならないためにやるべきこととは?」参照)。この「政府が認定する消費者団体」が特定適格消費者団体である。今後、企業と対峙することになる可能性があるだけに、企業にとっては気になる存在だろう。

* むやみやたらに訴訟を起こすこと。

 消費者裁判手続特例法の附則に「特定適格消費者団体が権限を濫用することがないよう検討を行い、必要な措置をとる」旨規定されているように、特定適格消費者団体は政府の厳格な認定・監督を受けることになる(団体の認定・監督指針は、現在消費者庁で検討中)。このため、特定適格消費者団体になれるのは、2006年の消費者契約法改正により消費者に代わって契約の不当な勧誘や不当条項の差し止めを求めることができることとされた「適格消費者団体」のうち一定の実績を積んだ団体で、かつ、政府の認定を受けたところに限定される。適格消費者団体は現在のところこちらの11団体となっている。

 これまで、適格消費者団体が事業者に対して販売の差し止めを求める場合には、実際にアクションを起こす前に当該事業者に連絡をとるケースが多かった。事前の協議により解決を図る方が効率的だからだ。同様に、消費者裁判手続特例法の下でも、まず特定適格消費者団体が、事業者の違反行為の内容を慎重に検討するため、事前に事業者に接触してくることが十分に考えられる。消費者に変わって裁判を提起することについて政府の“お墨付き”を得た団体だけに、接触を受けた際には、企業側は慎重な対応を求められることになりそうだ。

2014/06/25 機関投資家に賛成される買収防衛策とは?

 買収防衛策(ライツプラン*1ポイズンピル*2)の導入を諮る株主総会議案に対して、機関投資家が議決権行使で反対票を投じるケースが目立っている。5月20日から6月20日に提出された臨時報告書によると、買収防衛策の導入議案は16個提出されており、そのうち時価総額が500億円以上の10社について賛成率を確認したところ、単純平均で73.7%にとどまっている。3月決算企業の株主総会は6月23~28日の週にもっとも多くの開催が予定されており、さらに賛成率の低い事例が多数出てくるものと予想される。

*1 買収防衛策の1つで、敵対的買収者が被買収企業の株式(議決権)の一定割合を取得した場合、一定条件の下で、既存の株主が時価より安い価格で新株を購入できる権利を、あらかじめ既存の株主に与えておく、もしくは与えることを定めておく手法。敵対的買収者の持株比率を低下させるとともに、(株数を増やすことで)買収者が保有する株式1株当たりの価値を低下させる、すなわち買収コストを引き上げることを狙いとする。

*2 「毒薬条項」と訳される、米国で主流の買収防衛策。日本ではライツプランと同義で使われている。

 特に今年の株主総会シーズンでは、初めて買収防衛策の否決事例が出ている。過去には、株主総会開催日の直前に議案を撤回するという、いわば“実質否決”となった事例が2008年9月と2013年6月に1社ずつ存在する。しかし「反対多数により否決となった」旨が株主総会の場において報告された例は、2005年に日本で買収防衛策が導入されて以来、初めてのケースだと見られる。否決された会社は、来年の株主総会で買収防衛策を再提案することも検討中というが、株主構成における機関投資家の割合や同社のコーポレートガバナンス体制などが大きく変わらない限り、可決されることは極めて難しいと予想される。

 では、なぜ多くの機関投資家は、日本企業の買収防衛策に反対するのだろうか。
 日本企業でもっとも多く採用されている「事前警告型ライツプラン」は、(1)買収者に対して提案内容など詳細な情報を要求する、(2)社外有識者などによる独立委員会が買収提案を精査する、(3)独立委員会の勧告を踏まえて取締役会が対応を決定する、という流れを基本的な構造としている。(1)の情報に不備・不足がある場合や、(2)で買収提案が不適当なものと判断された場合など、“濫用的な買収行為”に相当すると認められれば、(3)において新株予約権の発行が決議されることになる。

 問題は、日本企業のほとんどにおいて、・・・

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2014/06/25 機関投資家に賛成される買収防衛策とは?(会員限定)

 買収防衛策(ライツプラン*1ポイズンピル*2)の導入を諮る株主総会議案に対して、機関投資家が議決権行使で反対票を投じるケースが目立っている。5月20日から6月20日に提出された臨時報告書によると、買収防衛策の導入議案は16個提出されており、そのうち時価総額が500億円以上の10社について賛成率を確認したところ、単純平均で73.7%にとどまっている。3月決算企業の株主総会は6月23~28日の週にもっとも多くの開催が予定されており、さらに賛成率の低い事例が多数出てくるものと予想される。

*1 買収防衛策の1つで、敵対的買収者が被買収企業の株式(議決権)の一定割合を取得した場合、一定条件の下で、既存の株主が時価より安い価格で新株を購入できる権利を、あらかじめ既存の株主に与えておく、もしくは与えることを定めておく手法。敵対的買収者の持株比率を低下させるとともに、(株数を増やすことで)買収者が保有する株式1株当たりの価値を低下させる、すなわち買収コストを引き上げることを狙いとする。

*2 「毒薬条項」と訳される、米国で主流の買収防衛策。日本ではライツプランと同義で使われている。

 特に今年の株主総会シーズンでは、初めて買収防衛策の否決事例が出ている。過去には、株主総会開催日の直前に議案を撤回するという、いわば“実質否決”となった事例が2008年9月と2013年6月に1社ずつ存在する。しかし「反対多数により否決となった」旨が株主総会の場において報告された例は、2005年に日本で買収防衛策が導入されて以来、初めてのケースだと見られる。否決された会社は、来年の株主総会で買収防衛策を再提案することも検討中というが、株主構成における機関投資家の割合や同社のコーポレートガバナンス体制などが大きく変わらない限り、可決されることは極めて難しいと予想される。

 では、なぜ多くの機関投資家は、日本企業の買収防衛策に反対するのだろうか。
 日本企業でもっとも多く採用されている「事前警告型ライツプラン」は、(1)買収者に対して提案内容など詳細な情報を要求する、(2)社外有識者などによる独立委員会が買収提案を精査する、(3)独立委員会の勧告を踏まえて取締役会が対応を決定する、という流れを基本的な構造としている。(1)の情報に不備・不足がある場合や、(2)で買収提案が不適当なものと判断された場合など、“濫用的な買収行為”に相当すると認められれば、(3)において新株予約権の発行が決議されることになる。

 問題は、日本企業のほとんどにおいて、(3)決定する取締役会の過半数が“社内取締役”、すなわち経営陣で占められていることにある。投資家としては、企業価値が向上する優れた買収提案(高いシナジー効果が見込める、エクセレントカンパニーが買収者である、など)であっても、経営陣からすると自らのポストが危うくなる可能性がある以上、たとえ(1)で十分な情報を買収者から提供され、(2)で独立委員会が正当な提案だと勧告しても、(3)で保身のためライツプランが発動されてしまうのではないか、との懸念を排除できない。

 この点、米国においては取締役会の大部分が社外取締役で構成されているため、経営陣が保身を図ることで買収提案が十分に検討されないリスクは、少なくとも外形的には相当に低減されていると言える。このため、米国企業では、株主総会の議案として買収防衛策が諮られることはなく、実際に買収提案があってから取締役会が導入を判断する、いわゆる「有事導入」が通例となっている。すなわち、投資家は米国企業の取締役会の独立性を信用しているため、株主総会における「平時導入(まだ買収提案がないのに買収防衛策を導入すること)」は不要とされているわけだ。

 日本では、2005年に経済産業省と法務省が発表した「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」において、株主総会決議による買収防衛策の導入プロセスは、株主の合理的な意思に依拠すべきとする「株主意思の原則」に沿うものとの見解が示されている(米国のように取締役会決議により買収防衛策を導入することについては「一律に否定することは妥当ではない」とするにとどめている)。これを受け、株主総会に導入議案を上程することが一般化、機関投資家は議決権行使を通じて反対を意思表明する機会を得ることとなった。

 したがって、買収防衛策の導入議案に賛成票を得るためもっとも有効なのは、社外取締役を取締役会の過半数にすることだと言える。実際、これまでに機関投資家から一定の賛成票を確保できた買収防衛策は、相対的に社外取締役の比率が高い企業によって上程されたものとなっている。上述の買収防衛策が否決された企業には社外取締役が3人いるが、取締役会における割合は30%にとどまる。日本企業としては高い比率だと言えるが、グローバル水準から見ると物足りないということだろう。同社が来年の株主総会で買収防衛策を再導入する際には、取締役会の独立性が向上したかどうか、注目したい。

 

2014/06/24 米企業、リタイア女性15名の採用枠に500人の応募も

 東京都議会における女性議員に対するヤジが大きな社会問題になっているが、批判の声は日本国内にとどまらず、早くから女性の社会進出に取り組んできた欧米からも上がっている。今回の一件が日本社会に対するイメージダウンにつながったのは間違いないだろう。

 女性の社会進出を加速させるための大きな課題の1つが、育児をしながら働く環境の整備だ。米国のワーキング・マザー誌は、毎年「100 Best Companies for Working Mothers(母親にとって働きやすい100社)」を選出しているが、トップ100社には、9週間の有給休暇を含む最長26週間の産休を認めたうえで、出産後の段階的な職場復帰や在宅勤務を選択できるようにしたり、米国では困難な週20時間勤務での医療保険への加入資格の付与、保育施設の優待利用や割引利用といった取組みを行う企業がランクインしている。トップ100企業の選出に当たっては、こうした育児休暇や育児サポート体制の充実度等のみならず、全従業員・上級管理職に占める女性比率、女性の昇進を促す制度の有無も評価対象になっている。

 また、少子高齢化社会の中で十分な労働力を確保するためには、結婚や育児、介護等のために仕事をリタイアした女性の社会復帰も重要な課題となるが、この点についても米国では先進的な取組みが見られる。例えばゴールドマン・サックスでは、過去に第一線で活躍しながらリタイアした女性を管理職として採用するプログラムを2008年から実施しており、既に120名超が正社員として復帰している。同様の取り組みは、モルガン・スタンレー、クレディ・スイス、JPモルガン・チェースなど他の大手金融機関にも広がっている。

 一方、女性側においても社会復帰への関心は高く、例えばモルガン・スタンレーのケースでは、15名の採用枠に対して500名超の応募者が集まったという。日本でも、かつて第一線で活躍した女性における社会復帰へのニーズは決して小さくないと思われ、同様の取組みを日本企業が実施すれば一定数の応募が集まり、優秀な人材が獲得できる可能性は十分にあろう。

 もっとも、ITやグローバル化の進展によりビジネスの変化が激しい時代においては、わずか数年間のブランクであっても埋めるのは容易なことではない。リタイアした女性の中に優秀な人材がいるのは事実だが、採用する場合には、・・・

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2014/06/24 米企業、リタイア女性15名の採用枠に500人の応募も(会員限定)

 東京都議会における女性議員に対するヤジが大きな社会問題になっているが、批判の声は日本国内にとどまらず、早くから女性の社会進出に取り組んできた欧米からも上がっている。今回の一件が日本社会に対するイメージダウンにつながったのは間違いないだろう。

 女性の社会進出を加速させるための大きな課題の1つが、育児をしながら働く環境の整備だ。米国のワーキング・マザー誌は、毎年「100 Best Companies for Working Mothers(母親にとって働きやすい100社)」を選出しているが、トップ100社には、9週間の有給休暇を含む最長26週間の産休を認めたうえで、出産後の段階的な職場復帰や在宅勤務を選択できるようにしたり、米国では困難な週20時間勤務での医療保険への加入資格の付与、保育施設の優待利用や割引利用といった取組みを行う企業がランクインしている。トップ100企業の選出に当たっては、こうした育児休暇や育児サポート体制の充実度等のみならず、全従業員・上級管理職に占める女性比率、女性の昇進を促す制度の有無も評価対象になっている。

 また、少子高齢化社会の中で十分な労働力を確保するためには、結婚や育児、介護等のために仕事をリタイアした女性の社会復帰も重要な課題となるが、この点についても米国では先進的な取組みが見られる。例えばゴールドマン・サックスでは、過去に第一線で活躍しながらリタイアした女性を管理職として採用するプログラムを2008年から実施しており、既に120名超が正社員として復帰している。同様の取り組みは、モルガン・スタンレー、クレディ・スイス、JPモルガン・チェースなど他の大手金融機関にも広がっている。

 一方、女性側においても社会復帰への関心は高く、例えばモルガン・スタンレーのケースでは、15名の採用枠に対して500名超の応募者が集まったという。日本でも、かつて第一線で活躍した女性における社会復帰へのニーズは決して小さくないと思われ、同様の取組みを日本企業が実施すれば一定数の応募が集まり、優秀な人材が獲得できる可能性は十分にあろう。

 もっとも、ITやグローバル化の進展によりビジネスの変化が激しい時代においては、わずか数年間のブランクであっても埋めるのは容易なことではない。リタイアした女性の中に優秀な人材がいるのは事実だが、採用する場合には、企業側で何らかの研修プログラムを用意することは必須だろう。実際、米国企業の間では、入社前に10週間程度の集中的な研修プログラムを受講させるといった取組みが見受けられる。こうした研修プログラムは、ビジネス上のブランクを取り戻すだけのみならず、採用される側にも復職に当たっての生活リズムの確立やメンタル面の適応を促し、退職防止にも役立っているという。

 政府は2020年までに指導的な地位に占める女性の割合を30%にするという目標を掲げ、女性の社会進出促進に取り組んでいるが、政府の号令だけで実現できるものではない。日本経済をけん引する各上場企業の個別の取組みが期待されるところだ。

2014/06/23 日本の会計基準が4つに!企業の選択は?

 日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が検討を進めている「修正版IFRS(仮称)」の策定作業が大詰めを迎えている。修正版IFRSでは、「のれん」や「その他の包括利益(OCI)*1リサイクリング*2」の取扱いに関しては現行の日本基準どおりとする方向だ(のれんについては2014年4月7日のニュース「IFRS敬遠理由の1つ「のれん=非償却」という世界の常識は変わるか?」、その他の包括利益(OCI)のリサイクリングについては2014年4月16日のニュース「持合株式の売却益は“利益操作”の道具か」を参照)。

*1 IFRSでは、会計上の操作がやりやすい「純利益」よりも、会社の資産の増減、すなわち「期末の純資産額-期首の純資産額」により求められる「包括利益(CI=Comprehensive Income)」が重視されている。この包括利益と純利益の関係を算式で表わせば「包括利益=純利益+その他の包括利益」となる。すなわち、「その他の包括利益(OCI= Other Comprehensive Income)」とは、純利益と包括利益の差額であり、「純資産のうち純利益(損益計算書)とは関係のないもの(=損益計算書に記載されず、直接貸借対照表に計上されるもの)」を指す。例えば、持合株式のような長期保有目的の有価証券の評価差額(帳簿価格と時価の差額)などはこれに該当する。同様に、持合株式の売却益もOCIとなり、永久に純利益として計上されることはない。

*2 その他の包括利益=OCIから純利益への振り替えを認めること。認めないことを「ノンリサイクリング」という。

 今回検討の対象となっているのは、IASB(国際会計基準審議会)が2012年12月31日までに公表したIFRSなどだ。ASBJでは、今後、修正版IFRSの公開草案を公表し、秋頃までには正式決定する方針を示している。

 修正版IFRSに関しては、今のところ新日鐵住金が適用を検討する考えを示しているものの、その他の企業がどの程度適用に踏み切るかは未知数。金融庁も「修正版IFRSを推奨したり、押し売りするつもりはない」としているからだ。

 修正版IFRSが完成した場合、我が国においては、現行の日本基準、米国基準、(IASBが策定した)IFRSと合わせて“4つの会計基準”が並存することになる。金融庁はいずれの会計基準も認めるとしているため、企業は4つの会計基準のうち、いずれか1つを適用すればよいことになる。どの基準を採用するかは企業の任意となる。

 政府の産業競争力会議が6月16日にまとめた日本再興戦略の改訂(素案)では、「上場企業に対し、会計基準の選択に関する基本的な考え方(例えば、IFRSの適用を検討しているか等)について、投資家に説明するよう東京証券取引所から促すこととする」ことが明記された。今後は株主やアナリストなどからIFRSの適用に関する質問を受ける機会も増えることが予想される中、企業としては、自社の方針を固めておきたいところだ。

 まず、海外子会社がなくグローバルな事業展開を行っていない企業であれば、IFRSを適用する必要性は薄い。これまでどおり日本基準をそのまま適用すればよい話だ。

 では、グローバルな事業展開を行っているか、あるいはそれを視野に入れている企業は、修正版IFRSとIFRSのどちらを採用すればよいのだろうか。この点、・・・

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2014/06/23 日本の会計基準が4つに!企業の選択は?(会員限定)

 日本の企業会計基準委員会(ASBJ)が検討を進めている「修正版IFRS(仮称)」の策定作業が大詰めを迎えている。修正版IFRSでは、「のれん」や「その他の包括利益(OCI)*1リサイクリング*2」の取扱いに関しては現行の日本基準どおりとする方向だ(のれんについては2014年4月7日のニュース「IFRS敬遠理由の1つ「のれん=非償却」という世界の常識は変わるか?」、その他の包括利益(OCI)のリサイクリングについては2014年4月16日のニュース「持合株式の売却益は“利益操作”の道具か」を参照)。

*1 IFRSでは、会計上の操作がやりやすい「純利益」よりも、会社の資産の増減、すなわち「期末の純資産額-期首の純資産額」により求められる「包括利益(CI=Comprehensive Income)」が重視されている。この包括利益と純利益の関係を算式で表わせば「包括利益=純利益+その他の包括利益」となる。すなわち、「その他の包括利益(OCI= Other Comprehensive Income)」とは、純利益と包括利益の差額であり、「純資産のうち純利益(損益計算書)とは関係のないもの(=損益計算書に記載されず、直接貸借対照表に計上されるもの)」を指す。例えば、持合株式のような長期保有目的の有価証券の評価差額(帳簿価格と時価の差額)などはこれに該当する。同様に、持合株式の売却益もOCIとなり、永久に純利益として計上されることはない。

*2 その他の包括利益=OCIから純利益への振り替えを認めること。認めないことを「ノンリサイクリング」という。

 今回検討の対象となっているのは、IASB(国際会計基準審議会)が2012年12月31日までに公表したIFRSなどだ。ASBJでは、今後、修正版IFRSの公開草案を公表し、秋頃までには正式決定する方針を示している。

 修正版IFRSに関しては、今のところ新日鐵住金が適用を検討する考えを示しているものの、その他の企業がどの程度適用に踏み切るかは未知数。金融庁も「修正版IFRSを推奨したり、押し売りするつもりはない」としているからだ。

 修正版IFRSが完成した場合、我が国においては、現行の日本基準、米国基準、(IASBが策定した)IFRSと合わせて“4つの会計基準”が並存することになる。金融庁はいずれの会計基準も認めるとしているため、企業は4つの会計基準のうち、いずれか1つを適用すればよいことになる。どの基準を採用するかは企業の任意となる。

 政府の産業競争力会議が6月16日にまとめた日本再興戦略の改訂(素案)では、「上場企業に対し、会計基準の選択に関する基本的な考え方(例えば、IFRSの適用を検討しているか等)について、投資家に説明するよう東京証券取引所から促すこととする」ことが明記された。今後は株主やアナリストなどからIFRSの適用に関する質問を受ける機会も増えることが予想される中、企業としては、自社の方針を固めておきたいところだ。

 まず、海外子会社がなくグローバルな事業展開を行っていない企業であれば、IFRSを適用する必要性は薄い。これまでどおり日本基準をそのまま適用すればよい話だ。

 では、グローバルな事業展開を行っているか、あるいはそれを視野に入れている企業は、修正版IFRSとIFRSのどちらを採用すればよいのだろうか。この点、上述のとおり、修正版IFRSは「のれんの非償却」などIFRSの規定を採用していないため、そもそもIASBから“IFRS”として認められない可能性が高い。したがって、IFRSを適用する方が得策と言えよう。グローバルな事業展開を考えた場合、“IFRS”と認められない修正版IFRSを適用するリスクは否定できない。

 ただ、そうなると、そもそも企業会計基準委員会が修正版IFRSを策定する意図はどこにあったのかとの疑問がわいてくるが、金融庁に設置された企業会計審議会が昨年6月に取りまとめた「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」にもあるように、1つには日本が考える「あるべきIFRS」を国際的に示すことができる点が挙げられる。IASBとの協議は今後も続いていくからだ。

 2つ目として、リーマン・ショックなどの金融危機が日本で起きた場合、修正版IFRSが一種の“セーフ・ハーバー”として機能することも考えられる。修正版IFRSであれば、ASBJが柔軟にその中身を修正することが可能だからだ。

 なお、ASBJは、修正版IFRSを策定する際には、これと合わせてIFRS向けの教育文書やガイダンスを作成するとしている。これらは、日本企業がIFRSを適用する際に頭を悩ませると思われる会計基準等の解釈を示すもの。細かな規定を示していないIFRSに対して日本のASBJが解釈を示すことにより、日本企業がIFRSを導入しやすくなるという効果が期待できる。IFRSの適用に関しては、多くの企業が“様子見”といったところだろうが、将来的にIFRSの適用を視野に入れる企業は、情報収集など導入に向けた準備は継続して行っておくべきだろう。

2014/06/20 上場銀行・銀行持株会社に2名以上の社外取締役、いまだ未設置は6社

 上場会社等に社外取締役の選任を強く促す改正会社法の今国会での成立が確実となったことを受け、上場会社による社外取締役の選任が加速している。東証によると、社外取締役を選任する東証一部上場会社の割合は、2013年8月の61%から、2014年6月には74.2%(+253社)と大幅な増加となる。

 こうした中、安倍政権が6月中に打ち出す予定の日本再興戦略(昨年2013年6月に出した同戦略の改訂版)には、さらに上場銀行と上場銀行持株会社に向けて、「少なくとも1名以上、できうる限り“複数”の独立社外取締役の導入を促す」旨の文章が盛り込まれる可能性が出てきた。また、上場銀行持株会社の傘下の銀行(例えば、〇〇フィナンシャルグループの傘下の××銀行)においても独立社外取締役を導入を検討するよう促す。今月(6月)16日に公表された素案の段階では「上場銀行、上場銀行持株会社について少なくとも1名以上の独立社外取締役導入を促す」としか記載されておらず、“複数”という文言は一切見当たらなかったが、ここにきて急きょ銀行にはより高いガバナンス機能を求めるという案が浮上している。

 ちなみに、当フォーラムの調査によると、今年6月の株主総会を経ても社外取締役のいない上場銀行および上場銀行持株会社は、・・・

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