2014/06/20 上場銀行・銀行持株会社に2名以上の社外取締役、いまだ未設置は6社(会員限定)

 上場会社等に社外取締役の選任を強く促す改正会社法の今国会での成立が確実となったことを受け、上場会社による社外取締役の選任が加速している。東証によると、社外取締役を選任する東証一部上場会社の割合は、2013年8月の61%から、2014年6月には74.2%(+253社)と大幅な増加となる。

 こうした中、安倍政権が6月中に打ち出す予定の日本再興戦略(昨年2013年6月に出した同戦略の改訂版)には、さらに上場銀行と上場銀行持株会社に向けて、「少なくとも1名以上、できうる限り“複数”の独立社外取締役の導入を促す」旨の文章が盛り込まれる可能性が出てきた。また、上場銀行持株会社の傘下の銀行(例えば、〇〇フィナンシャルグループの傘下の××銀行)においても独立社外取締役を導入を検討するよう促す。今月(6月)16日に公表された素案の段階では「上場銀行、上場銀行持株会社について少なくとも1名以上の独立社外取締役導入を促す」としか記載されておらず、“複数”という文言は一切見当たらなかったが、ここにきて急きょ銀行にはより高いガバナンス機能を求めるという案が浮上している。

 ちなみに、当フォーラムの調査によると、今年6月の株主総会を経ても社外取締役のいない上場銀行および上場銀行持株会社は、京都銀行、伊予銀行、北國銀行、四国銀行、千葉興業銀行、トモニホールディングス(徳島銀行、香川銀行)の6社となっている(東証一・二部、マザーズ、ジャスダックを調査)。

 また、ガバナンス関係では、「コーポレートガバナンス・コード」の導入も明記される。同コードは東証と金融庁を共同事務局として検討され、今年の秋頃までに基本的考えをまとめる方向。最終的には東証の上場規則に盛り込まれ、上場会社に対して、“Comply or Explain”(遵守するか、しない場合にはその理由を説明するか)が求められることになる。同コードは東証が「来年の株主総会シーズンに間に合うように」策定するとしていることから、来年の株主総会ではコーポレートガバナンス・コードの遵守がテーマの1つとなりそうだ。

2014/06/19 (新用語・難解用語)集団型確定拠出年金

 年金制度を確定給付年金から確定拠出年金に変更する上場企業は少なくないが、確定拠出年金の受給額は、必ずしも運用の専門家でない受給者個人が選択した運用方法・方針に左右されるため、運用の失敗により退職後の生活が脅かされかねないというリスクを抱えている。それゆえ、企業における従業員の投資教育の問題もある。

 こうした確定拠出年金のデメリットを補う可能性があるのが、集団型確定拠出年金だ。集団型確定拠出年金とは、確定給付年金のように、企業単位等で各個人ファンドをとりまとめ、一括して運用を行う仕組み。各個人が自身のファンドの運用方法・方針を決める確定拠出年金と異なり、集団でリスクをシェアすることになり、受給者1人1人へのマーケットインパクトを集団で吸収することができるのが最大の特徴にしてメリットと言える。また、運用を一元化することで運用コストが削減され、その分を受給額に回せるとも言われる。

 集団型確定拠出年金は既にカナダやオランダでは導入されているほか、イギリス政府も今月になって導入の方針を発表しており、今後日本にもその波が押し寄せて来る可能性がある。

 もっとも、集団型確定拠出年金にもデメリットがないわけではない。

 まず、・・・

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2014/06/19 (新用語・難解用語)集団型確定拠出年金(会員限定)

 年金制度を確定給付年金から確定拠出年金に変更する上場企業は少なくないが、確定拠出年金の受給額は、必ずしも運用の専門家でない受給者個人が選択した運用方法・方針に左右されるため、運用の失敗により退職後の生活が脅かされかねないというリスクを抱えている。それゆえ、企業における従業員の投資教育の問題もある。

 こうした確定拠出年金のデメリットを補う可能性があるのが、集団型確定拠出年金だ。集団型確定拠出年金とは、確定給付年金のように、企業単位等で各個人ファンドをとりまとめ、一括して運用を行う仕組み。各個人が自身のファンドの運用方法・方針を決める確定拠出年金と異なり、集団でリスクをシェアすることになり、受給者1人1人へのマーケットインパクトを集団で吸収することができるのが最大の特徴にしてメリットと言える。また、運用を一元化することで運用コストが削減され、その分を受給額に回せるとも言われる。

 集団型確定拠出年金は既にカナダやオランダでは導入されているほか、イギリス政府も今月になって導入の方針を発表しており、今後日本にもその波が押し寄せて来る可能性がある。

 もっとも、集団型確定拠出年金にもデメリットがないわけではない。

 まず、集団型確定拠出年金では企業から「予想利回り」が示されるとはいえ(この点は、退職後の生活設計をしやすくなるという意味ではメリットでもある)、確定給付年金のように受給額が保証されているわけではない。当然ながら、運用実績に応じて受給額が変動する。あくまで「確定拠出年金」の一類型に過ぎないということだ。実際、昨年、オランダでは、415ある集団型確定拠出年金の約13%にあたる55の集団型確定拠出年金で受給額の減額が実施されている。

 また、集団型確定拠出年金による運用益や運用コスト削減を享受するためには、一定の規模が必要になる。その点では、集団型確定拠出年金は、新興企業よりも、規模の大きい企業に向いていると言える。仮に集団型確定拠出年金が日本で導入されるとしても、採用するのは一部の超大手企業に限定される可能性もあろう。

2014/06/18 日本版スチュワードシップ・コードによる議決権行使厳格化で「否決」増加も

 機関投資家の間で、日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則。以下「日本版コード」)の受け入れが進んでいる。金融庁は先週(2014年6月10日)、2月に確定した日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明した機関投資家のリストを公表したが、その数は127におよぶ。金融庁は3か月ごとにリストを更新する予定で、初回の受け入れ表明の期限は5月末に設定されていた。日本版コードは「日本の上場株式に投資する機関投資家」が対象であり、リストには50の海外年金基金や運用機関などが含まれている。

 この127という数字は、日本版コードがモデルとし、2010年に英国FRC(財務報告評議会)によって策定されたスチュワードシップ・コード(以下、英国版コード)の初年度の数字を上回る。もっとも、英国版コードを受け入れた機関投資家は初年度こそ74に止まったが、その後は急激に増加しており、2013年には185にまで達している。これは、英国版コード導入後、年金基金などが運用委託契約を締結する際の条件として、その受け入れを運用会社に求めるようになったことが影響している。

 日本版コードが初年度から127と多くの機関投資家に受け入れられたのは、上述の英国版コードと同様のプレッシャーが早くも運用機関にかかったためだろう。例えば7兆円を超える運用資産を誇る国家公務員共済組合連合会も、新年度の資産運用委託先の選定作業に際し、各運用機関に「日本版コードを受け入れるか否か」を確認しているという。

 さらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月30日に公表した「スチュワードシップ責任を果たすための方針」で、「他の条件が同じであれば、スチュワードシップ責任をより果たしていると考えられる運用受託機関を高く評価する」ことを明らかにしている。そして、これに先立つ4月4日、GPIFは国内株式運用受託機関の選定で、アクティビストとして著名なファンドなど外資系を大幅に増やしている。国内系の運用機関としては、運用委託契約を確保するため、日本版コードに沿った取り組みが厳しく求められることになろう。

 このような動きは、上場会社にとってどのような影響があるのであろうか。具体的な影響としては、・・・

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2014/06/18 日本版スチュワードシップ・コードによる議決権行使厳格化で「否決」増加も(会員限定)

 機関投資家の間で、日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則。以下「日本版コード」)の受け入れが進んでいる。金融庁は先週(2014年6月10日)、2月に確定した日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明した機関投資家のリストを公表したが、その数は127におよぶ。金融庁は3か月ごとにリストを更新する予定で、初回の受け入れ表明の期限は5月末に設定されていた。日本版コードは「日本の上場株式に投資する機関投資家」が対象であり、リストには50の海外年金基金や運用機関などが含まれている。

 この127という数字は、日本版コードがモデルとし、2010年に英国FRC(財務報告評議会)によって策定されたスチュワードシップ・コード(以下、英国版コード)の初年度の数字を上回る。もっとも、英国版コードを受け入れた機関投資家は初年度こそ74に止まったが、その後は急激に増加しており、2013年には185にまで達している。これは、英国版コード導入後、年金基金などが運用委託契約を締結する際の条件として、その受け入れを運用会社に求めるようになったことが影響している。

 日本版コードが初年度から127と多くの機関投資家に受け入れられたのは、上述の英国版コードと同様のプレッシャーが早くも運用機関にかかったためだろう。例えば7兆円を超える運用資産を誇る国家公務員共済組合連合会も、新年度の資産運用委託先の選定作業に際し、各運用機関に「日本版コードを受け入れるか否か」を確認しているという。

 さらに、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は5月30日に公表した「スチュワードシップ責任を果たすための方針」で、「他の条件が同じであれば、スチュワードシップ責任をより果たしていると考えられる運用受託機関を高く評価する」ことを明らかにしている。そして、これに先立つ4月4日、GPIFは国内株式運用受託機関の選定で、アクティビストとして著名なファンドなど外資系を大幅に増やしている。国内系の運用機関としては、運用委託契約を確保するため、日本版コードに沿った取り組みが厳しく求められることになろう。

 このような動きは、上場会社にとってどのような影響があるのであろうか。具体的な影響としては、機関投資家による議決権行使スタンスの厳格化が予想される。特に国内系運用機関の場合、投資先と資本関係やビジネス関係などが存在することで、議決権行使で反対票を投じにくい状況が少なくない。しかし日本版コードを背景に今後、年金基金は運用委託先に厳格なスタンスによる議決権行使を強く要求すると見られ、受託する運用機関としては委託元の要求に従わざるを得ないだろう。買収防衛策の導入や役員退職慰労金の支給など、資本市場が特に注目している議案については、否決(もしくは撤回)される事例が増加するものと思われる。

 総会議案が否決されるということは、株主とのコミュニケーションが不全であることの証左と受け止められかねない。否決に至らなくても低い賛成率が恒常化するようでは、敵対的買収者やアクティビスト(モノ言う投資家)に付け込まれる端緒となる可能性もあるだろう。日本版コードは機関投資家と企業による「建設的な対話」すなわちエンゲージメントを求めている。経営陣はエンゲージメントを通じて資本市場と相互理解を図ることで、株主総会における否決リスク、ひいては敵対的な株主による経営リスクを低減するべきと言える。

2014/06/17 SNSの活用事例も登場 企業不祥事を防ぐ部門間交流

 多くの部門が存在する大手企業では、どうしても部門ごとの“セクト主義”に陥りがちだ。しかし、企業のリスクマネジメント上、このセクト主義がいかに問題であるかは、これまで起きた企業不祥事が物語っている。

 例えば、2008年のリーマンショックは、金融機関にはびこるセクト主義が組織横断的な情報共有を妨げたことにより、各金融機関がサブプライムローンの貸出金額の合計額を正確に把握できなかったことが原因の1つになったと言われる。また、2010年に英国の石油会社BPが起こしたメキシコ湾石油流出事故は、担当技術者はかなり前から掘削上の技術的問題点を把握していたにもかかわらず、これを安全管理責任者に報告していなかったことが大きな原因となり発生した。さらに最近は、アメリカの大手自動車メーカーであるGMが、点火スイッチの不具合によって走行中にエンジンが停止するという大規模なリコール問題を起こし、メディアを賑わせたばかりだ。本件でも、担当部署の一部の社員は点火スイッチの技術的欠陥に気付きながらも10年以上放置し、会社全体で情報共有がなされなかったことが、今回のリコールにつながったという。

 これらはいずれも外国企業の例ではあるが、日本企業、特に巨大企業においては、効率化のために組織を細分化した結果、特定の部署で何か問題が発生しても会社全体での情報共有がなされずに大規模な事故や不祥事につながるということが十分に起こり得る。

 では、経営陣としては、こうしたセクト主義を解消するためにはどうしたらよいのだろうか。実際、米国のフェイスブックや、紅茶のリプトンなど食品や洗剤など多数のブランドを抱える多国籍企業ユニリーバなどで見られるのが、・・・

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2014/06/17 SNSの活用事例も登場 企業不祥事を防ぐ部門間交流(会員限定)

 多くの部門が存在する大手企業では、どうしても部門ごとの“セクト主義”に陥りがちだ。しかし、企業のリスクマネジメント上、このセクト主義がいかに問題であるかは、これまで起きた企業不祥事が物語っている。

 例えば、2008年のリーマンショックは、金融機関にはびこるセクト主義が組織横断的な情報共有を妨げたことにより、各金融機関がサブプライムローンの貸出金額の合計額を正確に把握できなかったことが原因の1つになったと言われる。また、2010年に英国の石油会社BPが起こしたメキシコ湾石油流出事故は、担当技術者はかなり前から掘削上の技術的問題点を把握していたにもかかわらず、これを安全管理責任者に報告していなかったことが大きな原因となり発生した。さらに最近は、アメリカの大手自動車メーカーであるGMが、点火スイッチの不具合によって走行中にエンジンが停止するという大規模なリコール問題を起こし、メディアを賑わせたばかりだ。本件でも、担当部署の一部の社員は点火スイッチの技術的欠陥に気付きながらも10年以上放置し、会社全体で情報共有がなされなかったことが、今回のリコールにつながったという。

 これらはいずれも外国企業の例ではあるが、日本企業、特に巨大企業においては、効率化のために組織を細分化した結果、特定の部署で何か問題が発生しても会社全体での情報共有がなされずに大規模な事故や不祥事につながるということが十分に起こり得る。

 では、経営陣としては、こうしたセクト主義を解消するためにはどうしたらよいのだろうか。実際、米国のフェイスブックや、紅茶のリプトンなど食品や洗剤など多数のブランドを抱える多国籍企業ユニリーバなどで見られるのが、SNSを活用し、異なる部門の社員間で交流を促進するケースだ。また、スイスに本拠を置く農業大手のシンジェンタでは、商品ごとの部門編成を顧客セグメントごとに変更している。

 上記で紹介したBPは、社内の情報共有ができていなかったばかりに、400億ドル以上に及ぶ巨額の損害賠償を負った。企業で不祥事が起きた場合、“トカゲのしっぽ切り”のように特定の個人の責任を追及しがちだが、不祥事が発生した原因がセクト主義にあるとすれば、これにメスを入れない限り、不祥事が繰り返される可能性がある。

 GMでも、今回の大規模リコールをきっかけに、バーラCEOのトップダウンにより縦割り文化の見直しに動いているという。自社の部門間連携が不十分だと思う経営陣は、不祥事が起きる前に、これを改善するための部門間の交流や組織改革を検討すべきだろう。

2014/06/16 人材流出を防ぐ非正規社員の活用法

 最近、企業経営者の口から「人材不足だ」「人が集まらない」という声を聞く機会が増えた。労働人口の減少や景気回復による“売手市場化”もあり、特に出店による拡大戦略を続けている小売・外食業では深刻な問題となっている。

 こうした中、ゼンショーホールディングスが展開する牛丼チェーン「すき屋」において、最大123店舗で一時休業や時間帯休業の措置をとる事態が発生した。その要因としては、業界における折からの人材不足に加え、想定以上の手間を要する新商品の導入により従業員の負担が増加し、人材流出が重なったことが挙げられている(ゼンショーホールディングス「すき屋の職場環境改善に向けた施策について」参照)。小売・外食業ではパート・アルバイト等の非正規社員の比率が高く、本件の人材流出も主に非正規社員だと思われる。

 人材不足は、店舗休業や想定数以下の人員での無理な営業によるミス・トラブルの誘因となり、また、顧客のニーズに十分に応えられなくなることによって、最終的には業績に大きな影響を与えかねない。そのため、経営陣としては人材不足を明確に“経営上のリスク”と認識し、適切な対策を講じていく必要がある。

 主な対策としては、・・・

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2014/06/16 人材流出を防ぐ非正規社員の活用法(会員限定)

 最近、企業経営者の口から「人材不足だ」「人が集まらない」という声を聞く機会が増えた。労働人口の減少や景気回復による“売手市場化”もあり、特に出店による拡大戦略を続けている小売・外食業では深刻な問題となっている。

 こうした中、ゼンショーホールディングスが展開する牛丼チェーン「すき屋」において、最大123店舗で一時休業や時間帯休業の措置をとる事態が発生した。その要因としては、業界における折からの人材不足に加え、想定以上の手間を要する新商品の導入により従業員の負担が増加し、人材流出が重なったことが挙げられている(ゼンショーホールディングス「すき屋の職場環境改善に向けた施策について」参照)。小売・外食業ではパート・アルバイト等の非正規社員の比率が高く、本件の人材流出も主に非正規社員だと思われる。

 人材不足は、店舗休業や想定数以下の人員での無理な営業によるミス・トラブルの誘因となり、また、顧客のニーズに十分に応えられなくなることによって、最終的には業績に大きな影響を与えかねない。そのため、経営陣としては人材不足を明確に“経営上のリスク”と認識し、適切な対策を講じていく必要がある。

 主な対策としては、
(1)非正規社員の活用
(2)シルバー層の活用
(3)多様化(外国人・女性の活用)
(4)職場環境・働き方の見直し
(5)業務プロセスの見直し
の5つが考えられるが、今回のゼンショーのケースで特に重要なのは、(1)の「非正規社員の活用」であろう。

 既存の非正規社員を活用する手段としてよく見られるのが、“正社員化”による囲い込みだ。雇用形態は「地域限定型」社員となることが多い。これは、非正規社員は地域性が強く、他地域に異動したがらない傾向があるため。逆に言うと、地域を限定した勤務ができるのであれば、正社員という安定した身分で精力的に活躍したいと考える人材も多いと思われる。地域限定型社員となった者のうち一部の人材は将来さらなる成長を志向することも考えられるため、「全国型」社員への転換ルートも整備しておくとよい。

 次に挙げられるのが、賃金体系を正社員と同水準に引き上げるケースである。労働契約の形態は異なっても同じ業務を行っているのであれば、正社員・非正規社員にかかわらず賃金水準を同程度にすることで納得感が得られ、非正規社員のモチベーション・責任感も高まることになろう。同様の狙いを持った取組みとして、賞与・退職金・手当・福利厚生制度の整備を行うケースもある。

 もっとも、働く動機付けとしてより重要なのは、「この会社で働きたい。ここで一緒に成長していきたい」と思えるか、あるいは、自分の夢・ビジョン・キャリアパスが描ける会社であるということだ。これらは専ら正社員について指摘されることであるが、非正規社員にも同じことが言える。社員がイキイキと働いている会社においては、トップが積極的に夢・ビジョンを語り、その夢・ビジョンに組織人事の制度・仕組みが連動している。そして、そのような会社は往々にして、社内のコミュニケーションが活発であることが多い。経営陣は、正規・非正規の壁を取り払い全社員が共通の目標に邁進できるような仕組みや社風の構築を自らの“最重要課題”と位置付け、これに取り組むべきである。

 昨年(平成25年)4月1日からは、非正規社員の活用に関わる規制改革として、改正労働契約法による「有期契約の無期転換ルール」がスタートしている。これは、同じ会社で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申し込みにより契約形態が「無期労働契約」に転換され、無期契約社員(期間の定めのない社員)になるというもの。

 ただ、この無期契約社員は正社員とは異なる。あくまで非正規社員としての労働条件のまま(例:時給○○円など)、契約期間だけが無期に変わるに過ぎない。改正労働契約法に従って企業が現在抱えている非正規社員の契約更新を続けていくと、近いうちに多くの非正規社員が無期契約社員になるが、人材獲得競争が熾烈化する中、従前の労働条件のままで人材がとどまってくれるかどうかは不透明と言える。無期労働契約に転換する前に、もっと自分を認めて評価してくれる会社、より良い条件で働かせてもらえる会社、「やりがい」を感じられる会社に流れてしまうことは十分に考えられる。労働契約法の改正をきっかけに、人材不足に拍車がかかる企業も少なからず出てくるだろう。

 こうした事態を避けるためには、上述したような「非正規社員の活用」に企業は真剣に取り組む必要がある。ゼンショーホールディングスも今回の件を深刻に受け止め、店舗の労働環境改善を経営の最重要課題に設定し、2014年6月2日付で全国7つの地域運営会社を発足させ、地元出身の幹部がより地域に密着したチェーン経営を行う体制とすることを発表している。新体制への移行には、地域の顧客と接する現場の従業員の状況を随時把握し、密なコミュニケーションにより彼らの声を吸い上げ、スピード感をもって対応していくという、強い経営の意志が感じられる。今回の件を機に、同社が非正規社員活用のモデルケースとなることを期待したい。

2014/06/15 【役員会 Good&Bad発言集】未払残業代

 PPP社(東証第一部上場)はメインフレーム用のアプリケーション開発を業務の柱としている。同社は、3年前にモバイルアプリケーションの開発会社であるSSS社を買収した。そのSSS社において「未払残業代」が多額にのぼることを、PPP社の内部監査チームが発見した。

 同社の取締役会では、開催日の3日前までには、取締役・監査役に事前に資料が送付されるのが通常だが、今回は内部監査室のレポートの仕上がりがぎりぎりになったため、取締役会の場で初めて資料が提供されることになった。

 取締役会の席上、数十ページに及ぶ分厚い報告書が配られ、冒頭のエグゼクティブサマリーに目を通した役員達の顔色が変わった。なんと、残業代未払額は創業時(7年前)から累積すると1億円を超えることが判明したからだ。

社長「参ったな。SSS社でこんな違法状態が野放しだったとは。なぜ、買収時に発覚しなかったのだ。」

経営企画担当取締役「買収は私が入社する前の話なので、当時の経緯はよく分かりませんが、買収当時、SSS社は経営危機の状態であったと聞いています。我が社は同社をタダ同然で買収できたことから、デューデリがおざなりなものになっていたのではないでしょうか。すみません、何しろ入社前のことなので、私自身もよく分からないところではあるのですが。」

経営企画担当取締役は、早くも逃げ腰だ。

社長「タダ同然といっても、未払残業代などという“隠れ債務”付きのものを買ってしまっては、どうしようもないだろう。」

モバイルアプリ担当取締役「ご存じの通り、SSS社は買収後の当社の支援により随分と経営を立て直したのですが、そうはいっても、現在の財務状況は未払残業代の支払いに耐えられるレベルではありません。」

社長「うーん、困ったな。みんなの知恵を貸してくれないか。」

 この後、他の取締役がそれぞれ自案を述べていきました。次のAからDの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

取締役A:「実際にSSS社の従業員から未払残業代の支払いを請求されたわけではありませんよね。請求されるまで、こちらから積極的に支払う理由はないと思います。」

取締役B:「残業代未払額は創業時(7年前)から累積すると1億円ですが、労働債権の時効を考えると、実際に支払いが必要となる額はそこまではいかないはずです。」

取締役C:「そもそもSSS社は年俸制を採用しています。年俸制だから残業代は発生しないはずです。」

取締役D:「これを機に、残業代を支払う必要のない裁量労働制を採用すべきではないでしょうか。」

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