<解説>
2024年11月1日以降に締結・更新等を行う業務委託契約に適用
いよいよ来月(2024年11月1日)からフリーランス新法が適用開始されます。前回の役員会 Good&Bad発言集では、同法の適用対象となるフリーランスかどうかの判定基準である「従業員の有無」について解説しましたが、今回は同法の適用対象の判断時期と業務委託の内容について解説します。
フリーランサーへの業務委託の期間が長期になればなるほど、フリーランサーの状況が変わる可能性が考えられます。たとえば、業務委託開始時点でフリーランサーが従業員を使用していたとしても、従業員数が一人や二人であれば契約期間中に従業員が全員いなくなることもあり得ることでしょう。この点について特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)Q&A(以下、Q&A)の問8では、次のように説明されています。
| 問8 業務委託の時点で、受注事業者が「従業員」を使用していましたが、その後当該「従業員」が退職し、受注事業者が「従業員」を使用しないものとなった場合、当該業務委託は本法の対象となるのでしょうか。 答 業務委託をする時点で、受注事業者が「従業員を使用」しており、当該受注事業者が「特定受託事業者」に該当しない場合、当該業務委託は、本法の対象となりません。業務委託の後に、「従業員を使用」しなくなったなどによって受注事業者が「特定受託事業者」の要件を満たすようになった場合も、本法の対象とはなりません。 |
従業員の有無を判断するのは、あくまで「業務委託をする時点」となります。なお、フリーランス新法の適用は2024年11月1日からなので、同日以降に締結・更新等を行う業務委託契約に適用されることになります。
下請法と異なる適用範囲
フリーランス新法と下請法はどちらも取引の適正化を目的とする法律であるため似ていますが、別の法律であり、両法の適用範囲は異なるので注意が必要です。たとえば、下請法は建設工事には適用されませんが(かわりに建設業法に下請法類似の規定が置かれています)、フリーランス法は建設工事にも適用されます(フリーランス法が建設工事に適用される点について2024年10月28日のニュース「自社だけでは完結せず フリーランス新法への抵触リスクを下げるためにやるべきこととは?」を参照)。
また、フリーランス新法において「業務委託」とは、事業者がその事業のために他の事業者に①物品の製造(加工を含む。)、②情報成果物の作成、又は③役務の提供を委託する行為を指します。「その事業のため」に委託するとは、当該事業者が行う事業の用に供するために委託することをいいます。気になるのは、下請法の適用範囲との違いの有無です。「①物品の製造(加工を含む。)」に関して、Q&Aの問24では、次のように説明されています。
| 問24 下請法上の製造・加工委託は同法第2条第1項において、業として行う販売の目的物たる物品等の製造、業として請け負う製造(加工を含む。)の目的物たる物品等の製造等を委託することであると規定されています。これに対して、本法上の物品の製造・加工委託は、同法第2条第3項において「物品の製造(加工を含む。)…を委託すること」と規定されていますが、両者の内容は異なるのでしょうか。 答 本法上の物品の製造・加工委託は、製造・加工を委託する目的物が、発注事業者が業として行う販売の目的物又は業として請け負う製造の目的物に限定されないため、下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号。以下「下請法」という。)上の製造・加工委託より広い範囲の製造委託が対象となります。 したがって、下請法においては、例えば、発注事業者が製造過程で用いる製造機械や工具の製造(自家製造している場合を除きます。)・加工を、他の事業者に委託することは製造・加工委託に含まれませんが、本法においては、発注事業者が事業のために他の事業者に物品の製造・加工を委託することは、全て物品の製造・加工委託に該当しますので、このような場合も物品の製造・加工委託に該当することとなります。 |
また、「③役務の提供」に関して、Q&Aの問26では、次のように説明されています。
| 問26 事業者が自ら利用する役務(自家利用役務)を委託することは「業務委託」に該当するのでしょうか。 答 本法第2条第3項第2号における「役務」は、「他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。」と定めているとおり、発注事業者がその事業のために他の事業者に役務の内容等を指定して依頼するものであれば、発注事業者が他者に提供する役務に限らず、発注事業者が自ら用いる役務も本法上の「業務委託」に該当します。 なお、下請法第2条第4項の「提供の目的たる役務」は、発注事業者が他者に提供する役務のことをいい、発注事業者が自ら用いる役務は含まれません。 |
「自ら用いる役務」(自家利用役務)はややイメージしづらい概念なので注意が必要です。たとえば、荷主から貨物運送の委託のみを請け負っており、貨物の梱包作業の委託は請け負っていないケースを想定してみます。このとき、貨物運送の役務を他の事業者に委託する場合には下請法が適用されますが、自らの運送作業に必要となる梱包作業を他の事業者に委託する場合は、当該梱包作業には下請法が適用されません(下請代金支払遅延等防止法ガイドブック「知って守って下請法」6ページを参照)。一方、フリーランス新法は自家利用役務であっても適用されるため、上記のケースで梱包作業をフリーランサーに委託した場合に適用されることになります(もちろん「従業員がいないこと」等の他の要件に該当する必要があります)。
さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
取締役C:「下請法とフリーランス新法は別の法律です。当社が自ら利用する役務を委託することは、下請法上の下請取引には該当しないとしても、フリーランス新法における「業務委託」には該当することから、フリーランス新法の適用対象になるのではないでしょうか。」
(コメント:自家利用役務について下請法は適用されませんが、フリーランス新法は適用されます。取締役Cはフリーランス新法と下請法の適用範囲の違いを理解できている点がGOODです。)
取締役A:「業務委託先のフリーランサーが契約期間中に従業員がいない状況になるとすぐにフリーランス新法の適用対象になるので、業務委託開始時だけでなく業務委託中も、委託先のフリーランサーにおける従業員の有無については常に注意しておかなければなりませんね。」
(コメント:フリーランス新法の適用関係は業務委託をする時点で判断することになります。業務委託をする時点で、受注事業者が従業員を使用しており、当該受注事業者が「特定受託事業者」に該当しない場合、当該業務委託は同法の対象とならない(業務委託中に「従業員を使用しない」状況になっても、それをもって同法の対象になることはない)ことから取締役Aの発言はBAD発言です。)
取締役B:「自家利用役務は下請法の適用対象外なので、フリーランス新法でも適用対象外になることには注意しておく必要があります。」
(コメント:フリーランス新法では、発注事業者がその事業のために他の事業者に役務の内容等を指定して依頼するものであれば、発注事業者が他者に提供する役務に限らず、発注事業者が自ら用いる役務も同法上の「業務委託」に該当します。そもそも、フリーランス新法は下請法と異なる法律です。取締役Bの発言は下請法が自家利用役務を対象外にしていることに引っ張られた誤解に基づくBad発言です。)
