2014/04/22 米国における役員報酬の開示規制、日本への影響は?

 日本では、2010年3月期から上場会社に対し、報酬1億円以上の役員の個別開示が義務付けられたが、米国では、コーポレート・ガバナンス強化の観点から、さらに厳しい開示規制がある。例えば「Pay Gap」開示規制だ。

 これは、リーマン・ショック(2008年9月)をはじめとする金融危機が短期的業績に過度に連動した高額報酬が一因となって引き起こされたとして、経営監視を強化するために2010年に導入された「ドッド・フランク法」に盛り込まれたもの。具体的には、・・・

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2014/04/22 米国における役員報酬の開示規制、日本への影響は?(会員限定)

 日本では、2010年3月期から上場会社に対し、報酬1億円以上の役員の個別開示が義務付けられたが、米国では、コーポレート・ガバナンス強化の観点から、さらに厳しい開示規制がある。例えば「Pay Gap」開示規制だ。

 これは、リーマン・ショック(2008年9月)をはじめとする金融危機が短期的業績に過度に連動した高額報酬が一因となって引き起こされたとして、経営監視を強化するために2010年に導入された「ドッド・フランク法」に盛り込まれたもの。具体的には、上場企業の最高責任者(CEO)の報酬と従業員の給与格差(CEOの報酬と従業員の給与の中央値の比較)を開示することを義務付けている。Pay Gap開示規制は、法施行後3年が経過しながらも運用開始が遅れていたが、昨年(2013年)秋に米国証券取引委員会(SEC)が運用案を公表し、早ければ今年にも運用が開始する予定となっている。

 一方、企業側はPay Gap開示規制の導入にかねてから反対してきた。一口に「従業員の給与中央値」といっても、多国籍企業が給与水準や労働慣習の異なる各現地法人の従業員給与を集計し、一元的に比較可能な数値を算出するには、多大な時間やコストがかかるからだ。企業側のこうした声を受けSECは、従業員の給与中央値の決定に際しては、任意の従業員のみを対象とすることを認めた。

 Pay Gap開示規制に対しては、株主が役員報酬の妥当性を検討する際に重要な役割を果たすとの意見がある反面、CEOの報酬と従業員の給与中央値を比較しても投資家にとって有意な情報とはならないという否定的な意見もある。とはいえ、米国における経営者と従業員の給与格差は、S&P500社を対象とした調査によると、1980年の42倍から2011年には実に380倍へと拡大しており、この数字を見ると、Pay Gap開示規制導入にも一定の合理性があるように見えなくもない。

 このほか、ドット・フランク法では、「Say on Pay」規制も導入されており、役員報酬の妥当性に対する株主の意思表明も可能となっている。

 日本の上場企業の役員報酬は米国企業ほど高くないこともあり、米国のような規制がすぐに導入されるとは思えないが、日本における役員報酬の開示が米国等を参考にされて導入されたように(ちなみに米国では、一定の基準に該当する役員の過去3年分の開示などが必要)、米国の規制を日本が取り入れるケースは少なくないだけに、米国における役員報酬を巡る規制の動向に注視していきたい。

2014/04/21 株主優待が交際費と認定されないためには?

 個人株主の増加に取り組んでいる上場会社は少なくない。個人株主の増加は買収防衛策として有効であるほか、BtoC(一般消費者向けのビジネス)を展開する上場会社では、「個人株主=消費者」ととらえ、会社のファンを増やしたいというマーケティング的な狙いもある。具体的には、単元株のくくり直し(1,000株から100株へ)、株式分割による株価の引下げ(個人株主が手を出しやすい価格への誘導)、株主優待制度の導入、株主総会の土日開催による個人株主の出席率の向上のほか、食品関連の会社では試食会を開催するケースも見られる。

 なかでも「株主優待制度」は個人株主からは“実質的な配当”として評価され、マネー雑誌でもしばしば特集されている。株主優待には、その会社が取り扱っている商品、サービスの利用券、食事券、入場券など様々なものがあるが、優待利回りの高い株主優待を実施している会社として有名なのが・・・

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2014/04/21 株主優待が交際費と認定されないためには?(会員限定)

 個人株主の増加に取り組んでいる上場会社は少なくない。個人株主の増加は買収防衛策として有効であるほか、BtoC(一般消費者向けのビジネス)を展開する上場会社では、「個人株主=消費者」ととらえ、会社のファンを増やしたいというマーケティング的な狙いもある。具体的には、単元株のくくり直し(1,000株から100株へ)、株式分割による株価の引下げ(個人株主が手を出しやすい価格への誘導)、株主優待制度の導入、株主総会の土日開催による個人株主の出席率の向上のほか、食品関連の会社では試食会を開催するケースも見られる。

 なかでも「株主優待制度」は個人株主からは“実質的な配当”として評価され、マネー雑誌でもしばしば特集されている。株主優待には、その会社が取り扱っている商品、サービスの利用券、食事券、入場券など様々なものがあるが、優待利回りの高い株主優待を実施している会社として有名なのが焼肉チェーンの株式会社安楽亭(東証二部)だ。

 同社では毎年3月31日及び9月30日現在の株主名簿および実質株主名簿に記載された株主のうち、「1,000株以上」所有者には13,000円相当の株主優待券1冊(500円券×26枚)、「2,000株以上」所有者には26,000円相当の株主優待券(13,000円相当の株主優待券2冊)を付与している(それ以上の株数を有していても26,000円相当が上限。このほか割引券も付与される)。同社の株価は直近の株主の権利確定日である2014年3月31日現在390円であり、最低投資単位が1,000株であることを考えると、39万円の投資で半年に1回、13,000円相当の株主優待券をもらえることになる。

 ただし、同社では2013年7月1日から株主優待券の利用方法を変更している。従来は「株主優待券のご利用につきましては、特に制限はなく、現金との併用も可能です。ただし、株主優待券のみのご利用の場合における釣り銭の支払い及び現金との引換えはできません。 」とされており、株主優待券だけで食事が可能だった。それが、2013年7月1日以降は、「割引等計算後 1,000円以上の会計につき、1,000円ごとに株主優待券500円分を1枚利用可(上限なし)」に変更されている。これは、株主優待券だけでの食事ができなくなり、半分以上の現金支出が必要となることを意味する。株主にとってみれば“改悪”と言われてもいたしかたない変更だろう。

 高優遇の株主優待制度を採用している会社として個人株主の知名度が高い同社が、株主優待券の利用方法を変更した理由は、同社が一昨年(2012年)に税務当局から受けた更正処分にある。同社では株主優待券を「売上値引き」として処理していたが(直営店の場合。FC店等の場合はFC店等に対して株主優待券の使用金額相当額を支払ったうえで、同額を「支払手数料」として処理)、2012年8月、この処理について関東信越国税局より、株主優待券は「交際費」に該当する旨の更正処分を受けている。同社はこの処分を不服とし、処分の取り消しを求め2012年10月17日に関東信越国税不服審判所に審査請求を行っていたが、同社の主張は退けられている(同社が2013年10月11日に公表した「株主優待券に係る国税不服審判所長の裁決書受領について」参照)。

 法人税法上、交際費(租税特別措置法61条4項3号)に該当するかどうかは、次の3要件に該当するかどうかで判断される(東京高裁平成15年9月9日)。

(1)支出の相手方が事業に関係ある者等であること
(2)支出の目的等が事業に関係ある者等との間の親睦の度を密にし、取引関係の円滑な進行を図るものであること
(3)行為の形態が接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為であること

 この3要件に照らして交際費に該当すると判断されれば、法人税法上、資本金が1億円を超える会社では当該費用の損金算入は認められない。関東信越国税不服審判所は、「株主優待券を配布する際に同封した書面には、株主に対して広告宣伝を依頼する旨の記載はなく、来店した株主による口コミという間接的な広告宣伝を支出の主たる目的としているとは認定できない」「株主優待券がその使用者の飲食代金の多寡にかかわらず一定額を値引くものであることを考えると、販売促進としての効果は決して大きいものではない」「株主優待券の使用者に対し、店舗において一般客と同様に飲食させるだけにすぎず、投資判断に必要な情報を提供するなど本件株主優待券の配付がIR活動であることをうかがわせるような行動は一切認められない」として税務当局側の主張を認め、交際費には該当しないとする同社の主張を退けている。

 裁決書を見ると、同社の優待制度が交際費に該当するかどうかの判定においては、高い優待利回りや株主優待券だけでの食事が可能といった点が考慮され、株主への供応と評価されたものと思われる。単なる”タダ券”の配布で終わるのではなく、例えば優待券を利用した株主からIRとしての意見を収集するための仕掛けや利用促進のためのチラシ同封、非株主の同伴来店の促進等同社の広告宣伝になるような仕掛けがあれば、別の判断になった可能性もある。

 株主優待券を広告費等で損金処理をしている会社では、もう一度交際費認定されるリスクの有無を検討するべきだろう。

2014/04/18 3月決算会社の先行事例となる「12月決算会社」の株主総会状況は?

 わが国における株主総会のピークは6月だが、3月はこれに次いで株主総会の開催が多い時期となっている。12月決算会社の株主総会が集中するからだ。

 TOPIX500採用銘柄を確認すると、12月決算の上場会社は37社(全体の約7%)ある。これら12月決算会社による3月総会への取組みをチェックすることは、6月総会を控える3月決算会社にとっても有用と言えるだろう。

 まず株主総会の開催日だが、・・・

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2014/04/18 3月決算会社の先行事例となる「12月決算会社」の株主総会状況は?(会員限定)

 わが国における株主総会のピークは6月だが、3月はこれに次いで株主総会の開催が多い時期となっている。12月決算会社の株主総会が集中するからだ。

 TOPIX500採用銘柄を確認すると、12月決算の上場会社は37社(全体の約7%)ある。これら12月決算会社による3月総会への取組みをチェックすることは、6月総会を控える3月決算会社にとっても有用と言えるだろう。

 まず株主総会の開催日だが、今年3月の集中日は28日(金)となっている(月末から2営業日目)。12月決算の上場会社37社のうち、この集中日に株主総会を開催したところは約半数の18社に上った。もっとも早い開催はヒューリックと協和発酵キリンの20日(木)で、これは集中日の8日前に当たる。休日開催はほとんど見られなかったが、堀場製作所が唯一、29日(土)に開催している。

 次に招集通知の発送日だが、会社法が定めている「総会開催日の2週間前」とした例はなく、プラス1日(15日前)とした会社も4社にとどまった。議決権行使の判断・手続に時間的余裕がない機関投資家からは、「3週間前」の発送を上場会社に求める声が強いが、37社の平均は「20.7日前」となっており、機関投資家の要望は概ねクリアしている。なお、もっとも早かったのは中外製薬の29日(4.1週間)前だった。

 もっとも、機関投資家等にできるだけ早く招集通知を見てもらいたいのであれば、必ずしも郵送に頼る必要はなく、インターネットで先行して開示することを検討すべきである。12月決算会社で、この「発送前開示」を東証ウェブサイトにおいて実施したのは、花王(発送の4日前、総会開催日の29日前)とDIC(発送の6日前、総会開催日の21日前)の2社であった。

 招集通知の英訳版を作成、発送した会社は23社で、全体の約6割に達している。TOPIX500に採用されるような時価総額の大きい企業を中心に、グローバル投資家を意識した取り組みが進んでいると言えよう。またページ数の削減によるコスト低減につながる施策として、連単注記表などのインターネット開示を実施した例は14社(約4割)あった。

 総会開催日の分散化、資料発送の早期化および発送前のウェブ開示、招集通知の英訳版作成などは、いずれもグローバルな機関投資家が強く支持する取り組みである。3月決算会社としては、上述のデータを参考にしながら、6月総会における「株主重視」「投資家フレンドリー」な施策を検討し、評価されるSR(Shareholder Relations)を構築してもらいたい。

2014/04/17 (新用語・難解用語)親会社株主に帰属する当期純利益(会員限定)

 経営者にとって「当期純利益」はもっとも重要な経営指標の1つである。平成27年4月1日以降に開始する年度からは、それまで連結グループの損益計算書(連結損益計算書)の「当期純利益」が示していた利益は、「親会社株主に帰属する当期純利益」として表示されることになる。

 連結損益計算書を見ると、多くの場合、その下の方、当期純利益の上あたりに「少数株主利益」や「少数株主損失」といった項目を見つけることができる。少数株主利益、少数株主損失(合わせて「少数株主損益」という)とは、連結子会社の損益のうち、少数株主(連結グループに属さない株主)に帰属する損益のこと。例えば、連結子会社(連結親会社が株式の60%を保有)が1社しかない連結グループを想定してみよう。その連結子会社の利益が100あるとすると、連結親会社は当該連結子会社の株式を60%しか保有していないことから、連結グループに帰属する利益は100のうち60(連結子会社の利益100×60%)のみで、残りの40は連結グループに属さない「少数株主」のものとなる。この40が「少数株主利益」である。

 少数株主利益は、平成27年4月1日以降に開始する年度より前の連結損益計算書(以下、「現行の連結損益計算書」)のでは「少数株主損益調整“前”当期純利益」から差し引かれる。連結決算の仕組み上、少数株主損益調整前当期純利益には連結子会社の利益の全額(100)が計上されているが、子会社が連結グループに寄与する利益はここから少数株主に帰属する利益(40)を差し引いた金額(60)に過ぎないからだ。そして、少数株主利益を差し引いた後の金額が、現在一般的に使われている「純利益」を指すことになる。

 ちなみに、もし連結決算を採用しているのに少数株主損益が計上されていないとすれば、それは、連結グループに100%子会社しかないからだ。なぜなら、少数株主損益は、100%子会社でない連結子会社を有する会社の連結損益計算書にしか出て来ないためである。

 「少数株主損益」という言葉は、株式の持分にフォーカスしたものだが、金融庁は、「他の会社の議決権の過半数を所有していない株主であっても、他の会社を支配し親会社となることがあり得る」ことから、より正確な表現にするため、平成27年4月1日以降に開始する事業年度からは、「少数株主持分」を「非支配株主持分」に変更する。この改正により、「少数株主利益」は「非支配株主に帰属する当期純利益」に、「少数株主損失」は「非支配株主に帰属する当期純損失」に名称が変わることになる。

 また、同時に「当期純利益」の内容も変更される。上述のとおり、現行の連結損益計算書において「当期純利益」と言った場合には、少数株主利益を差し引いた後の金額を指す。しかし、平成27年4月1日以降に開始する事業年度からは、少数株主利益(非支配株主に帰属する当期純利益)を差し引く前の金額が「当期純利益」として損益計算書に表示されることになる。

 そして、この当期純利益の内訳として、「非支配株主に帰属する当期純利益」と「親会社株主に帰属する当期純利益」が記載される。現行の連結損益計算書の当期純利益(少数株主利益を差し引いた後の金額)に当たるのは「親会社株主に帰属する当期純利益」であるため、現行の「当期純利益」と比較する場合には、「親会社株主に帰属する当期純利益」の数字を見る必要がある。

 上述の例で、現行の連結損益計算書と改正後の連結損益計算書を比べてみると次のとおりとなる。

2014/04/17 (新用語・難解用語)親会社株主に帰属する当期純利益

 経営者にとって「当期純利益」はもっとも重要な経営指標の1つである。平成27年4月1日以降に開始する年度からは、それまで連結グループの損益計算書(連結損益計算書)の「当期純利益」が示していた利益は、「親会社株主に帰属する当期純利益」として表示されることになる。・・・

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2014/04/16 持合株式の売却益は“利益操作”の道具か

 日本企業が持合株式を売却して売却益を計上することはよくある。この場合、株式売却益が企業の純利益の一部を構成すると考える経営者は少なくない。

 しかし、今後日本企業の間でも本格的に導入される可能性のあるIFRSでは、基本的に、持合株式を売却しても、売却損益を計上できない。つまり、100円で買った株式を150円で売却した場合に、値上がり益部分である50円は純利益にならないということだ。その理由を説明しよう。

 IFRSでは、・・・

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2014/04/16 持合株式の売却益は“利益操作”の道具か(会員限定)

 日本企業が持合株式を売却して売却益を計上することはよくある。この場合、株式売却益が企業の純利益の一部を構成すると考える経営者は少なくない。

 しかし、今後日本企業の間でも本格的に導入される可能性のあるIFRSでは、基本的に、持合株式を売却しても、売却損益を計上できない。つまり、100円で買った株式を150円で売却した場合に、値上がり益部分である50円は純利益にならないということだ。その理由を説明しよう。

 IFRSでは、会計上の操作がやりやすい「純利益」よりも、会社の資産の増減、すなわち「期末の純資産額-期首の純資産額」により求められる「包括利益(CI=Comprehensive Income)」が重視されている。この包括利益と純利益の関係を算式で表わせば「包括利益=純利益+その他の包括利益」となる。すなわち、「その他の包括利益(OCI= Other Comprehensive Income)」とは、純利益と包括利益の差額であり、「純資産のうち純利益(損益計算書)とは関係のないもの(=損益計算書に記載されず、直接貸借対照表に計上されるもの)」を指す。例えば、持合株式のような長期保有目的の有価証券の評価差額(帳簿価格と時価の差額)などはこれに該当する。同様に、持合株式の売却益もOCIとなり、永久に純利益として計上されることはない。

 持合株式とはいえ、投資の成果が確定したにもかかわらず、それが純利益を構成しないということに違和感を感じる向きも多いかもしれないが、その一因には日本側の要望がある。IFRSでは、原則的としてすべての金融資産について毎期末に時価評価を行い、評価差額を損益計算書に計上させる必要があるが、日本からの強い要望で、持合株式等については、毎期の評価損益を損益計算書に計上することなくOCIとするという選択肢が認められた(これを「OCIオプション」という)。ただし、このOCIオプションを採用すると、その売却時にも売却損益を損益計算書には計上せず、永遠にOCIにすることとされている。。日本のIFRS採用企業のほとんどはこのOCIオプションを選択しているため、持合株式の売却益を損益計算書に計上することができないというわけだ。

 IFRSが持合株式の売却益を純利益としない背景には、「経営者は、株式の売却時期を操作して、益出し・損出しの材料にする(earnings management)傾向があり、earnings managementを通して獲得した利益は企業の実力を適切に表さない」という考え方がある。

 これに対し、「企業の取引の実態をそのまま描写する」という日本の企業会計の考え方からすると、「実態として株式を売却したのであれば、その事実を適切に反映するよう売却損益を計上すべき」との意見が日本企業側にはある。

 こうした議論がある中、IFRSを開発している国際会計基準審議会(IASB)は現在、「概念フレームワーク」の見直し作業を行っている。「概念フレームワーク」とは、例えば「資産とは何か?」「負債とは何か?」「資産はいつ認識すべきか?」など、基準開発の基礎的な考え方を示すいわば会計基準の“憲法”だが、日本の企業会計基準委員会(ASBJ)などは、この「概念フレームワーク」の見直し作業において「純利益」を定義づけるとともに、「投資の成果が確定した(実現した)場合に純利益を計上すべき」と主張している。

 日本企業の経営者にとってもっとも重要な利益概念である「純利益」の考え方次第で、日本企業のIFRS採用意欲も変わってくることになりそうだ。